ガンダムSEED・クルセイド・イラ   作:ボストーク

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皆様、こんばんわ。
今回はより戦闘が激化し、混沌としてゆく戦場が舞台となっています。
かなり血腥い描写もあるので、ご了承ください。


第08話 ”とあるコロニーの血風戦禍(トラジディー)”

 

 

それは戦闘もしくは戦いと呼ぶには、あまりにも一方的な殺戮だった……

 

「ハアァァッ!」

 

”シュイン!!”

 

御坂美琴が左手に握るメタルバトン……

普通の人間の手の中にあるのなら、ただ液化金属(リキッド・メタル)を詰め込んだだけの無害な代物だったろう。

しかし、彼女が扱うのならそれは恐ろしい”凶器”へと変わるのだ。

 

そう、液状化された金属粒子を薄刃に電磁結束しながら粒子自体を振動/共鳴増幅させ、それに指向性を持たせた【指向性高周波微細振動刃(メーザー・バイブレーション・エッジ)】とした武器、形状や長さを必要に応じてランダムに変えるこの剣こそ美琴の十八番の一つ【流体刀剣(リキッド・ブレード)】だった。

その切れ味は凄まじく一定以上の強度を持った地球連合の標準防弾/防刃服ごとGAT-Xシリーズを守る衛兵を何の抵抗も感じさせずに切り裂いた。

 

骨も筋肉も脳髄も同じように両断された少し前まで確かに人間だった肉塊は、その中身を撒き散らしながら硬い床へと崩れる。

 

美琴は返り血を肢体の前面に展開してる電磁線のバリアラインで防ぎ、いつまでたっても慣れない鉄錆臭さと腐敗臭に顔をかすかにしかめる。

そう、彼女は一つの命を無残極まるビジュアル(ただし、脳が痛みを感じる間もなかったろうが)を残し奪ったというのに、”臭いに顔を顰める”程度の感情しか持てなかった。

兵士、いやザフトを代表する赤服の”戦士”としてはまったくもって正しい姿だが、果たして10代の少女としては……

 

こういう場合のお決まりの台詞は『そういう時代だから(戦争だから)、”仕方が無い”』だろうが、それで納得するには些か凄惨な光景のような気もする。

 

もちろん、真っ二つになった死体はそれ一つではない。

分子レベルですら乱れのないような美しい断面を見せる肉塊は、斬られた部位こそ違えど片手の指の数を超えている。

 

そして彼女、御坂美琴の生み出す死体のバリエーションは何も斬殺だけではない。

空いた手に握るのはザフト特殊部隊御用立ちのハイテク満載最新鋭自動小銃【トイソルジャー】。

フルオートの指きりバーストショットで撃ちだされる5.6mm弾は、的確に弾道に敵兵を捉えて命を奪っていった。

 

 

***

 

 

銃器に限らず相性のいい能力というのはあるが、実際美琴と銃器の組み合わせは銃器と抜群の相性を示す好例と言っていいだろう。

 

なにしろ能力強度Lv5の”電撃使い(エレクトロン・マスター))”たる彼女の能力の一つは、抜群の精度を誇るアクティブ/パッシブの”生体レーダー”だ。

その能力は訓練により体表部の細胞そのものを個別発振/受信器(電磁位相セル)とし、全身を【フェイズド・アレー・レーダー】として機能させることにより、『人間サイズのイージス艦』と評して良いレベルまで、同時多数の索敵/追尾/照準能力を獲得していた。

純軍事的な表現を用いるなら、代名詞たる”超電磁砲(レールガン)”などの直接的な攻撃手段だけではなく、彼女は生体電磁波/電波/磁場を複合的に用いた極めて高いベロシティ・サーチ(VS)/レンジ・ワイル・スキャン(RWS)/トラック・ワイル・スキャン(TWS)/単一目標追尾(STT)能力を有していた。

具体的な数値を言えば理想条件(平原のように遮蔽物の無い開けた空間)なら、美琴は同時に256目標をレンジ内に知覚し識別、同時に任意の48目標を同時追尾することができるのだ。

 

しかもトイソルジャーは、電子制御で『最も効率良く弾丸を当てるように』リアルタイムで弾道調整を行うシステムに裏打ちされた高い命中精度に、『卵の殻すら割らない』なんて売り文句の銃身を覆う衝撃吸収用の特殊ゴムと炭酸ガスにより、反動を極限まで軽減する反動抑制装置が組み込まれてる銃ときてる。

後はその情報(かんかく)にあわせ、美琴は”感じるままに銃口を向けて最適のタイミングで引き金を引く”だけで確実な死を音速の3倍の速度で蔓延させられた。

 

 

 

もっとも、個人携行火器や”能力”を併用したとしても、人間が一人当たり同時攻撃できる手段や手数はどうしたって限られる。

例えば今の美琴で言うなら、リキッド・ブレードとトイソルジャーの二つに過ぎない。

両手がふさがっていても電撃などの攻撃手段はあるのだが、ここは殺意と弾丸が飛び交う戦場であるが故に、電撃は攻性ではなく必要に応じて瞬時展開する防性の電磁線装甲(EMPバリアライン)として機能させていた。

 

しかし、高防御のEMPバリアラインという個人携行火器相手なら鉄壁と言っていい防御に、近接~短距離は抜群の殺傷力を持つリキッドブレード、中距離以遠はトイソルジャーからの正確無比な弾幕射撃、それらの攻防を統制する生体フェイズド・アレー・レーダー……この組み合わせは、まさに守備側にとっては悪夢としか言いようが無いだろう。

加えて生体電流を無意識に操作し、肉体を活性化しいわゆる”ブースト状態”にして身体能力を引き上げていた。

 

攻撃力/防御力/機動力、それを統制する演算能力と電磁波操作により、御坂美琴という少女は、すでに常任の枠組みを突破したキリング・マシーンとして戦場の支配者として存在していた。

戦闘による当たり前の興奮はあるが、”平静を保ったまま”でだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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四人の少女達が静かに突入したのは、4機のGAT-Xシリーズが眠るされていた隠蔽開発ブースだった。

 

陽動各部隊の動きや彼らには把握しきれない電子的/物理的な破壊工作によりやや浮き足立ってたとはいえ、その空間には完全武装の警備兵が確実に50名、1個増強歩小隊分程度はいたはずだった。

しかし……

 

 

 

「串刺しですわね」

 

まるで今日の夕食のメニューを語るような口調で白井黒子が放ったのは、左手の指の間に挟んだ”強化金属短矢”(メタル・フレシェット)だった。

もちろん、プラントの科学の一端であるそれがただの鉄矢であるわけはなく、より殺傷力をあげる方向で工夫が凝らされていた。

素材は【ジルコニウムの構造を擬似的に再現した多重金属結晶(ダミー・ジルコン)】であり、性質は【タングステンに近い比重と硬度の高硬度重金属で、血中のとある油脂分と化合すると金属自体が爆発する】というものであった。

 

そして黒子は寸分の狂いなく標的の”脳内”にダミー・ジルコンの短矢をテレポートさせる。

結果は書くまでも無いだろう。

矢を脳漿の奥深くに転移させられた衛兵は、頭蓋を内部から破裂させられ何が起こったか理解する前に絶命していた。

 

 

 

黒子がこのような(少なくとも見た目は凄惨な)戦い方をするのは理由がある。

彼女はザフトの”特務憲兵(ジャッジメント)”だった。

ジャッジメントの本来の意味は【審判者】、つまり裁きを下すものだ。その意味を裏切らずザフトにおけるジャッジメントの地位は高い。

端的に言うなら、軍規を乱す者に対しては、非常時において現場の判断と裁量で軍法会議や軍事法廷の裁判抜きに”即時処刑”する権限すら与えられている。

 

そう、ザフトにおいてはジャッジメントとは”殺しのライセンス”に近い意味を持っていた。

ここまで巨大な権限を持つのは、プラント……能力者達自身が、その”超常のチカラ”が自分達に向けられたとき、どのような被害を及ぼすか骨身に染みているからだ。

特に【兵器と能力が併用された場合】は、一気に被害は拡大するだろう。

 

そのために最も有効な手立ては能力の”核”、文字通り演算を行う『頭を潰す』ことだ。

つまりジャッジメントとは、『被害が拡大する前に対象者とその能力を素早く無効化する技能』を持つ集団であり、その任務には”一撃必殺”が含まれるのだ。

 

 

***

 

 

そういう意味では同じくジャッジメントの初春飾利も同類だった。

彼女は本来は情報収集/解析のエキスパート、立派な後方要員であるはずだが……だが、彼女が”チーム・ミサカ”の一員として最前線にいるのは、彼女自身が様々な前線統制官としての優れた資質があるのが一つ。

加えて高い戦闘力、ジャッジメントとして後方から急遽前線に出ることになっても耐えられるだけの戦闘力をもっているからだった。

 

「そこです……!」

 

初春の戦い方は徹底した”頭部狙撃(ヘッドショット)”だった。

ただし、撃ち方はかなり変則的だ。

なんとトイソルジャーだけは遮蔽物から出し、片手のセミオート射撃(いわゆる”拳銃撃ち”)でしとめているのだ。

 

 

たしかにトイソルジャーは無重力での使用を前提とした反動極小の軽量ライフルで、単発射撃(セミオート)ともなれば子供が片手でも可能だ。

とはいえ撃てるのはいいが、照準はどうやって合わせてるのだろうか?

答えはトイソルジャーの照準機(サイト)にあった。

トイソルジャーのそれは単純な光学サイトではなく、21世紀前半なら最先端主力戦車の火器管制装置(FCS)並みの処理能力を持った完全電子式のマルチモード・サイトだ。

 

そのような性質を持つトイソルジャーを四人の中でもっとも有効利用しているのは、もしかしたら初春なのかもしれない。

初春は前出のとおり方手持ちのトイソルジャーのみを遮蔽物より出し、もう片手に持つハンディ・ホロディスプレイでサイトの映像を映して照準を合わせていたのだ。

付け加えると、索敵も彼女がハッキングしたハンガー内各所の警備カメラで観測、その情報をリンクして最適な標的を選別していた。

 

自ら安全な場所にいて一方的に狙撃するのは、初春らしい合理的な攻撃といえるだろう。

 

***

 

 

「とうりゃあぁぁぁーーーっ!!」

 

”ヒュゴン!!”

 

ある意味、四人の中で最も豪快な戦い方をしていたのは佐天涙子ではないだろうか?

飛び道具こそ他の三人が持つのと同じトイソルジャーだ。

問題なのは佐天が発動したその能力。彼女は分類的には”空力使い(エアロハンド)”な筈なのだが……

 

”ヒュパッ……!!”

 

彼女が生み出した”環状加速圧縮されたカマイタチ”が、勢い良く衛兵の首を跳ね飛ばした!

 

「へへ~ん♪ 私の【真空円刃(ソニック・チャクラム)】の切れ味は気に入ってくれたかな?」

 

そう、彼女の得意技は過給吸気を環状遠心圧縮/加速して真空の刃を生み出す【ソニック・チャクラム】だった。

汎用性の低さにコントロールが大味なのと、有効射程距離が軍用拳銃とどっこいなので能力強度こそLv3認定だが、彼女の得意距離における威力だけなら自他共に認めるLv4クラスだ。

 

だからだろうか? 彼女には能力や技名以外の二つ名が存在していた。

それは、

 

「【切り裂き涙子(ルイコ・ザ・リッパー)】の二つ名、もし恐れないというのなら遠慮なくかかってきなさい!!」

 

そう佐天は盛大に見栄を切る!!

 

 

 

 

 

その場で猛威を揮ったのは美琴だけではない。

一般にLv4(大能力者)以上が赤服とされているが、美琴や黒子だけでなく彼女達四人はどうやらチームとしての戦力も相当のレベルにあるようだ。

 

いや、それ以前に10代の少女達が生み出した現場と見るには、ここはあまりに死臭がきつすぎる。

まさに”魔女の大釜”の中身をぶちまけたような地獄絵図……

 

そして、ハンガーに彼女達以外に動く者がいなくななるまで10分とかからなかったことを記しておく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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一方、舞台は再び宇宙(そら)へと戻る。

 

 

 

「さあて、征くとすっかね~!」

 

ヘリオポリスから石弓で弾かれたように飛び出す【TS-MA2mod00MX "メビウス・ゼロ・マギウス"】のコックピットで土御門元春は強くかかるGにむしろ心地よさを感じ、自然と口元が歪んだ。

 

彼の目的は、ヘリオポリス直上を守る地球連合の防衛隊の支援とヘリオポリスに侵入せんとする敵MSの撃墜であった。

 

MSだけならともかく量産型MA(宇宙戦闘機)であるTS-MA2”メビウス”まで含めるならば、防衛側にわずかだが数の分があった。

 

何しろ今回の作戦のザフト側の参加戦力は、戦闘艦3隻に15機以下のMSに過ぎない。

まあ、数的に言えば戦力に乏しいザフトにしてみればむしろ大盤振る舞いという戦力投入ではあるが、攻勢側は一般即として守勢の3倍以上の戦力が必要とされる。

 

ならば連合の防衛隊の方が有利そうだが……

 

「チッ! 毎度おなじみとはいえ、早速押されてやがる……」

 

土御門はそうヘルメットの中で毒づいた。

 

 

 

***

 

 

 

戦場には様々な戦力倍加要素がある。

一番わかりやすいのは”性能差”というものでああろう。

例えば、同じジェット戦闘機を例に出せば、現用の日本国自衛隊制空戦闘機のF-15J”イーグル”と、朝鮮戦争で勇名を馳せたMIG-15要撃戦闘機では勝負にすらならないだろう。

しかし、この2機種は同じジェット戦闘機という枠組みの中にあり、なおかつ開発次期は半世紀とずれていない。

 

ここまで極端ではないにせよ、実はザフトと連合のMSには大きな性能の開きがあった。

素材自体には大きな差はない。

しかし、ザフト機にはその特徴とも言える大きな高機動フレキシブル・バインダーが搭載され、特に宇宙空間では全般的に機動力に優れる。

 

対して武装に関しては、意外なことにむしろ連合が勝っていた。

なにしろ初歩的ではあってもMSに携行可能なビーム兵器を先んじて開発し装備したのは、連合の【XGT-01”プロト・ダガー”】の方なのだ。

現在はザフトも大型MS火器の”M69バルルス改”特化重粒子砲や一部の専用機でビーム兵器の実戦投入はなされているが、どことなく威力と大きさが見合ってない……端的に言えば、コンパクト化が上手く行ってないようだ。

 

そもそも連合でビーム兵器の研究が盛んに行われ、特に威力を落とさずに小型化が達成されたのは、メビウスどころかプロト・ダガーすらも追従できないザフトの高機動MSに対抗するため……つまり『敵に命中させるためにはひたすらフラットに飛び、しかも弾速が極端に早い飛び道具じゃなければ不可能』と結論付けられたためだ。

 

プラントが地球上に満遍なくばら撒き、なおかつ戦闘宙域にも多数散布した”ニュートロン・ジャマー(NJ:中性子線阻害装置)”の副次効果でレーダーの有効範囲が著しく制限され、事実上長距離精密誘導兵器が無効化された現在となっては、亜光速で放たれる荷電粒子の弾丸でようやくザフトMSを捕捉できるかどうか……逆に言えば、武装で勝ってもなお不利なほど、連合とザフトMSの性能は隔絶していた。

 

 

 

***

 

 

 

では、それだけの性能差はどこから来るのか?

それは、ザフトが全てのMSに採用している操縦システム、

 

【AIMインタラクティブ・シンクロナイズド・プロセッシング・リンケージ(AIM-ISPL:能力拡散力場触媒型双方向同調演算接続)システム】

 

が根本的な理由だ。

名前を見れば大体どんなシステムなのか凡その予想は付くと思うが、簡単に説明すると能力者(コーディネイター)なら誰でも発生させている”AIM拡散力場”を触媒に、機体の量子コンピューターと能力者の脳を同調させ、双方向の情報伝達と演算の並列処理を同時に行わせるという機構だ。

 

そもそも能力者の発動において重要な要素が二つある。

言うまでも無く【パーソナルイメージ】と【脳内演算】だ。

 

難しい理論を避けて簡便にまとめると、パーソナルイメージとは【現実がこうなるといいという”理想の状況”】であり、脳内演算とは【その理想に近づけるためにはどうすればいいかという”仮定方策の算出”】となる。

つまり、どういう風に自分の望む形に”現実を書き換えるのか? そのためにはどうすればいいのか?”をイメージし演算するのが、能力者の肝だろう。

 

"AIM-ISPDLシステム"は、AIM拡散力場を通じてそのパーソナルイメージをMSの操縦に反映させ、また脳内演算を機体コンピューターと双方向リンクして制御システムの一部として使う装置だ。

 

端的に言えば、『こういう風に動きたい』とイメージすればその通りにMSは動き、『狙って撃つ』ことを考えれば脳味噌と機内火器管制装置が同調し、双方向情報補完しながら最適の攻撃タイミングを示唆してくれるというわけだ。

 

 

 

ただ、断じて言えるのはこれは”魔法のシステム”などではなく、装置も『より強いイメージ』をした方がモーション・フィードバックさせやすいし、脳内演算の処理容量や速度は、機体性能に直結する。

つまり、やはり一般的には『高位能力者の方が優れたパイロットになりやすい』という生身とさして違わぬ現実がそこにはあった。

 

もっとも、能力強度が高ければそれだけで優れたパイロットになれるかといえば……当然そんな単純なわけもなく、パイロット適正やら軍用機ならではの戦闘センスやら性格やら瞬時の判断力やらが、能力云々以前の問題として総合的に関わってくるのだ。

 

極端に言うなら、どんなにLvが高くとも乗り物酔いする人間はMS乗りにはなれない……そういうことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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(現実はいつも厳しいってか?)

 

また1機友軍機が爆散したのを見て、土御門は冷静に熱くなる。

地球軍のMS操縦システムではザフトほどの高機動MSは作れない。いや、例えハードウエア的には作れても、その速度と機動を制御する処理能力のコンピューターもなければ、OSやマンマシン・インターフェースも存在しない。

 

とどのつまり同じMSという人型兵器というくくりにあったとしても、ザフトのそれが戦闘機とするなら連合MSはそれを打ち落とすために作られた”機動砲”という意味合いが強い。

 

更にザフトは連合がMSを投入するのを待っていたようにそれまでの主力機だった【ZGMF-1017”ジン”】から本格的な改良型の【ZGMF-1017M”ジン・ハイマニューバー”】に量産を切り替えると同時に【ZGMF-515”シグー”】やそのバリエーションなどの新型機や、あるいは”アサルトシュラウド”などの最新鋭装備を大量投入してきたのだ。

 

おかげで未だキルレシオで言うなら、ザフト:連合は1:3……つまり、ザフトMSを1機落とす間に連合は3機のMSを撃墜されてる計算となる。

地味に改良が続けられてる”メビウス”にいたっては最新型でも1:5という絶望的な戦力差が数字として弾き出されていた。

 

しかし、断じて連合はザフト脅威のメカニズムに対し無力でも無策でもない。

確かに能力者(コーディネイター)のようなデジタル的な意味での”演算脳”(スキル・ブレイン)を天然で持つものはごく少数だが、地球には能力者と異なる能力を後天的に持つことが出来た人種が少なからず存在した。

 

「【ML-DIF(マギ・リンク・ダイレクト・イメージ・フィードバック:魔術接続式直接イメージ投影)システム】、起動! システム・オール・グリーン! システム・エンゲージ……!!」

 

土御門はニヤリと笑うと、

 

「さあ、”俺達”のターンだぜい! 働け莫迦共!!」

 

その言葉が目覚めの呪文だったように土御門の操る【TS-MA2mod00MX "メビウス・ゼロ・マギウス"】より、”青竜”/”白虎”/”玄武”/”朱雀”と【四神】の名が刻まれたガンバレルが虚空に飛翔する!!

 

 

 

***

 

 

 

【TS-MA2mod00MX "メビウス・ゼロ・マギウス"】……カラーリングこそオリジナルと大きさに差はないが、実際は見るからにオリジナルのメビウス・ゼロと違う本格的なカスタム機であった。

 

まず、オリジナル機は連装砲を内蔵した大型ガンバレルを正面から見ると十字型に搭載するが、メビウス・ゼロ・マギウス(以下オリジナルに対して”マギウス”と略す)は上下の二つが外されて左右二つの大型ガンバレルが残されている。

しかもこの大型ガンバレルは有線誘導の機動砲としての機能はオミットされていて、量産型のTS-MA2”メビウス”のメイン・スラスターと同じく全周囲回転式のパノラマ・ターレットマウントされた”高機動スラスター”として機能するように設計されている。

 

その代わりに"GAU-758S"単装レールガンと"M70AMSAT"ミサイル×2発を内蔵したオリジナルよりやや小柄の試製ガンバレル(便宜上”ミニ・ガンバレル”と仮称)をエクステンション・パイロンを介してX状に4基搭載しているのだ。

このミニ・ガンバレルこそ一つ一つに【四神】の名が与えられ、本来の有線誘導機動砲として機能するのだった。

 

それでもリアヘヴィになりすぎた重心を是正するためか、フロント上面にM58Eガトリング機関砲が1門追加されているのも外観的特長であろう。

コンセプト的には、外観から察するに機関砲とミニ・ガンバレル×4の重量増加分で悪化した機動力を補うた、にオリジナル・ガンバレルを流用した高機動スラスターを追加したと考えるのが正解かもしれない。

 

だが、マギウスがオリジナルとの最大の相違は派手に変わった外観よりも、むしろ内部のシステム、特にガンバレルを核にした火器管制システム全般なのかもしれない。

 

 

 

***

 

 

 

土御門の言っていた【ML-DIF(マギ・リンク・ダイレクト・イメージ・フィードバック:魔術接続式直接イメージ投影)システム】とは、簡単に言えば……

 

『魔術制御術式を解析/変換し、そのカオスやメタも含むイメージあるいは極めてアナログ的な情報(例えば”偶像崇拝の理論”)を機体やシステムのコントロールに一部あるいは全体的に反映させる』

 

という物である。

と言ってもわかりにくいだろうから具体例を示せば、土御門は今『式神を使役するイメージでミニ・ガンバレルをコントロール』しているのだ。

そう、四神の名をそれぞれのミニ・ガンバレルに配したのは伊達ではなかった。

 

ビジュアル的にどんな物かを言うと難しいが、【ルーンをはじめ幾何学的な魔術処理の加えられたサイコフレーム】のような物を想像してもらうといいかもしれない。

 

 

 

蛇足ながらマギウスの系番であるTS-MA2mod00MXの"MX"は、Mがマギリンク(魔術制御システム)搭載機であることを意味し、Xは当然のように試作(テスト)機を意味する。

実はマギウスが製造された理由の一つは、ガンバレルとML-DIFシステムのマッチングを見るためでもあった。

それ以外にも、何らかの”次世代兵装システム”のテストも兼ねているようだが。

 

「うおらぁっ!!」

 

気合もろともはなったミニ・ガンバレルのオールレンジ攻撃が、ジン・ハイマニューバーを捉え爆散させる!!

 

AIM-ISPLシステムとML-DIFシステム……この二つの異なるシステムが同じ戦場で交錯することがプラントと地球、コーディネイターとナチュラル、そして科学と魔法が衝突する”この戦争”の一つの象徴なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
寄せ鍋のように色々な要素を詰め込んだ話でしたが、楽しんでいただけたでしょうか?

今回は種族間の対立と対決が、さらに技術面まで及んでいく描写を入れたかったのですが、なにやら想像以上に血みどろになってしまったような……?

基本的に不定期更新のこのシリーズですが、気長にお待ちいただけたら幸いです。
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