更新が不定期だったり、唐突に消す可能性があったり、書き溜めもしてません。
少しだけ訂正しました。
誰かは私をお姫様にしてくれると言った。
誰かは私を輝く星にすると言ってくれた。
だから、私は努力した。何も持ってない私は、お姫様を夢見た私は、ただただ努力を繰り返した。
お姫様のようになりたくて、ステップを踏んだ。
魔法使いに認められたくて、歌を歌った。
世界に求められたくて、ドレスを着た。
だからこそ、その対価のように魔法使いは私に夢を見せてくれた。
それは夢だ。夢でしかなかったのだ。
「お疲れ様です」
「――お疲れ様です」
扉の音がして反射的に放った言葉は数秒の間を置いて、同僚から返ってきた。年齢的には年上、体格もよく眼光も鋭い……言ってしまえば強面な職場の同僚さんは首の後ろに手をやってどこか困り顔をしたが、何も言わずに自分の席へと座った。
別に気にしなくてもいい、と彼には何度か伝えたのだけれどそれでも彼は気にしてくれている。
鬱陶しい。
互いに無言で、キーボードを打ち付ける音だけが部屋の中に響く。
「あの、」
「そういえば、武内さんの企画が通るらしいですね」
「……はい」
「おめでとうございます」
「ありがとう、ございます」
決して彼の方は見ない。どうせ彼はどうしていいか困り顔で首の後ろに手をやっているのだろう。
打ち込んでいたデータを保存して立ち上がる。スーツの上着を手に取り、鞄を持ち上げる。
「お疲れ様です。上がります」
「お疲れ様……です」
私は扉を開いて静かに扉を閉めた。
美城…346プロダクションから電車を乗り継ぎ、少し歩いた所に私の部屋がある。部屋の扉を開けて手探りでスイッチを探す。パチリと音を鳴らし、チカチカと不安定な光が数秒して安定する。
六畳のこの部屋が今の私の城である。
近くのスーパーで購入した材料を冷蔵庫に放り込んで麦茶を取り出す。流しにあるグラスを洗い、その中に麦茶を入れる。
喉に流し込んで、漸くまともに息が出来たと感じる。
敷いてあった布団に倒れて天井を見上げる。今日は武内さんに当たってしまった。明日はちゃんといつものように会話できるように頑張ろう。
―アイドルになりませんか?
きっと彼はなんてことなしに私に言った言葉。その言葉は私にとって甘く、そして同時に眉間を寄せなければいけない言葉だ。
急いで体を上げて洗面台へと向かった。
「ヴぉぇぇ…ォェェ……」
吐き出すものが無くなるまで、私は盛大に胃の中をぶちまけた。
今日は寝れそうにない。
「おはようございます。上津さん」
「おはようございます。千川さん」
翌朝になって出社すると明るい声の千川ちひろさんがいた。どうやら私は二番目らしい。
「ん?」
「な、なんでしょうか」
近くに寄ってきた千川さんに思わず一歩引いてしまう。ちゃんとシャワーは浴びたから汗の臭いはしない筈だし、シャツだって変えている。説教はないはずだ。
「いえ、少し元気がないようでしたので」
「……大丈夫です。問題ないですよ」
「何かあってからでは遅いんですよ?ここにエナドリがありまして」
ソソッと出してくれているソレを断れることも無く。ニッコリしている千川さんから逃げれる訳もなく。こういう笑顔の出来る人をアイドルにすればいいのに…と思ってしまったり。
そういえばこのエナドリは経費で落ちるのだろうか?あ、落ちないんですね。はい。
「部長が呼んでいましたよ」
「部長が?」
何用だろうか?
期日近くの仕事は無かったし、ミスなら私にメールする筈だ。それともミスが多かったのだろうか。
「上津です」
ノックして声を掛ければ向こうからすぐに声が帰ってきた。どこかのんびりしている癖にこちらの心情を読み取ってるように先回りをする。私が分かりやすいのかも知れないが、この上司の事は嫌いではなかった。
そもそも私をこの業界に……いや、346プロの事務員として在籍させているのも彼のお陰かもしれない。拾ってくれた、というよりは掬ってくれたというべきか。
心を整える為に一度息を吐き出して扉を開ける。
正面に座っている上司。そして私と上司の間に体格のいい、強面な黒スーツ……果たして私は四番目だった訳か。
「おはようございます。部長、武内さん」
「おはよう。上津君、早速だけれど呼ばれた理由はわかるかい?」
「……武内さんに関連する事なら、まあ、なんとなく」
「君には彼の企画の補佐をしてもらおうと思う」
その言葉を聞いた私はさぞかし眉間にシワを寄せて嫌な顔をしていただろう。同時に安堵もしていたけれど。
証拠に武内さんはやっぱり困り顔で首の後ろに手をやっている。
「わかりました。具体的には何を?」
「雑務やアイドル達の送迎……確か車の免許は持っていたね」
「持ってはいますが……ペーパードライバーもいい所ですよ?」
「君なら任せれるよ」
無責任な信頼ですこと。
溜め息をわかるように吐き出してみたが上司は相変わらずのニヤケ顔。私を呼んだ時点で彼の中では既に決まっていたのかもしれない。
「別に今やってることの延長みたいなものだよ」
「ならこうして明確に彼の企画の補佐、という事は言わなくてよかったのでは?」
「君自身、分かっていることだろ?」
「…………」
渡された企画書にはシンデレラプロジェクトと記載されている。頭の中に反響する言葉が頭蓋骨を割らんばかりに激しく動く。いけない、深呼吸をしよう。
瞼を閉じて深呼吸を一つ。
受けない、という選択肢は無い。だって私は挫折してなおバカみたいにへばりついているのだ。
「わかりました。精々カボチャの馬車程度にはなって見せますよ」
「じゃあ詳しい事は武内君に。武内君、任せたよ」
「はい……」
低い声が鼓膜を揺らし、私たちは同時に部屋を出た。
「……」
「……」
なんと気まずい。主な原因が私であるからたちが悪い。
「上津さん、昨日は申し訳ありませんでした」
「あれは……私も悪いですから」
八つ当たりに近しいそれを謝られると、こちらとしては困ってしまう。体格がいいくせに何処か恐る恐るな同僚。彼にとっても私は煩わしく感じてしまうだろう。
挫折したお姫様と挫折させた魔法使い。この言い方だと彼が私を挫折させた様だけれどそれは違う。
けれど、他者から見ればきっと同じなのだろう。なんせ意味は通じてしまうのだから。
「さて、武内さん。計画を練っていきましょう」
「はい」
いくらか慣れた笑顔で私は幾らか背の高い彼を促す。魔法使いはシンデレラを選び、カボチャの馬車はシンデレラ達を舞台へと運ぶために。
書き手の為の設定
主人公♀
上津さん(コウヅさん
年齢21歳の社会人。高卒の資格は取得済。
元アイドルで今は346プロダクションの社員。
過去のアイドル活動で信頼していたプロデューサーさんに一方的に裏切られたり、良いように使われて捨てられた経歴がある。
その経歴全てを自分の責任だと言われてソレを信じこんでいる。一切の責任は上津さんに無いので武内Pは勧誘をした。
アイドルという存在に未だに憧れて、常に努力はしているけれどトラウマで舞台には立てない。努力しているのに報われない、チャンスは掴まない。
悪く言えばトラウマを盾に停滞をしていたり、現実から必死で逃げてる挫折して、矛盾を抱えたヒロイン。
予定では武内君に信じてくださいだとか言われたり、CPの皆に勇気を貰って舞台に立つ予定です。
無理そう( 震え声