破れたカボチャの馬車(仮題   作:猫毛布

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キャラの口調も性格もあやふやすぎます。精進いたします。

キャラの名前すらもあやふやでした(絶望

少しだけ修正


カボチャの馬車

 誰かは私を非難した。

 お前のせいだ、と何度も言われる。

 誰かは私を否定した。

 お前なんて選ばなければよかった、と。

 

 私はその言葉を非難せずに立っていた。

 私はその言葉を否定せずに立っていた。

 

 私の夢はそこで音をたてて崩れ、

 私は舞台から逃げ出したのだ。

 

 

 

 

 

 

 武内さんは見ていて安心する。異性として、ではなくて仕事の話。ミスらしいミスも無く、期日までに仕事も仕上げる。補佐である私など要らなかったのではないだろうか。

 オーディションと書類選考も終了し、お姫様候補達……プロジェクトに因めばシンデレラ候補達にとってドキドキしているだろう日々。対して魔法使いとカボチャの馬車はキリキリと働かされている。

 

「三人、どうしましょうか」

「……善処します」

 

 シンデレラ候補が三人、諸事情でプロジェクトの参加を辞退した。彼女達の選択を否定する権利は当然無い。惜しいとは思いはしたが、ソレが仕事の立場からの想いなのか、それとも武内さんの手から離れたからの想いなのか。去るもの追わず。来るものはオーディションを。

 善処します、とまるで政治家に習ったように言った武内さんは書類に目を通している。

 

 自分の中の何かが鎌首を擡げ、喉の奥から声が出そうになる。息を飲み込み、少しだけ肩を落として口を開く。

 

「頑張ってくださいね」

 

 吐き出しそうになった言葉を励ましへと変えて、私は声を出した。

 私はもう誰かに夢を与えることをしてはいけない。与えるべき夢が壊れているのだから。壊れた夢は悪夢にしかならないのだ。

 

 

 

 

 

 忙しいプロデューサーに変わり、私はアイドルを車に乗せて移動する事が多い。毎日運転するという訳でもなく、移動自体もプロデューサー達が受け持っているし、アイドル自身が自分の足で行くと言えば私の運転は必要ない。

 含めて言えば、私の運転頻度というものは極めて珍しく、それこそ上司に言ったようにペーパードライバーも良いところだ。

 

「だから毎回私に頼んでくれなくてもいいんですよ、楓さん」

「上津さんの運転がこう、ズサンだからですか?」

「無理に絡めなくていいです」

 

 バックミラーで確認した実にミステリアスな美人のニコニコした顔に思わず溜め息を吐き出してしまう。感嘆や羨望ではなくて、その形のいい口から飛び出た駄洒落が問題なのだが。

 

「メイちゃんに頼むと何でもしてくれますから」

「言うほど何もしてませんよ」

「仕事終わりの一杯は?」

「既に居酒屋の予約と一部の大人組への連絡は終わってます。川島さんと菜々さんはすぐに返信がありました。残念ながら千川さんと武内さんはお仕事が煮詰まっているそうで無理でしょう」

「ほら、なんでもしてくれてるじゃないですか」

「元々、最初に当然と言ったのは誰ですか……」

 

 誰ですかねー、なんて呟いてる本人に分かりやすいように溜め息を吐き出して信号で止まっていた車を動かす。

 

「溜め息を吐くと幸せが逃げますよ?」

「美人と話せているので幸せが逃げるなんて迷信ですね」

「……メイちゃんは時々、ドキドキするような事を言いますね」

「楓さんがいつも寒いことを言ってるのと変わりないですよ」

 

 車を停めて後部座席のロックを外す。車の中が暑かったのか、少し赤くなっている楓さんを見て帰りはもう少し空調を下げておこうと頭の中に刻む。

 

「予定時間より遅れそうなら連絡を下さい。合わせて迎えに来ます」

「本当に至れり尽くせりですね」

「これでもカボチャの馬車ですから」

 

 茶化すようにそう言えば少しだけ残念そうな顔をされた。けれどその顔も隠すようにクスリと笑われてしまう。さすがアイドルだ。

 

「ちなみに今日は奢りですか?」

「それも当然でしょう?」

 

 やったーと子供のように、スキップでもせんばかりに喜びながらスタジオに入っていった彼女を眺めながら独りごちる。さすが25歳児だ、と。

 意識を切り替えるように息を吐き出して大して使わない貯金残高と財布の中身を思い出しながら車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

「主催者が随分遅い登場じゃないの」

「メイちゃん、遅いですよ。ふふ」

「……」

 

 目眩がした。

 菜々さんが急遽仕事が入り泣く泣く不参加の申し出を受けた。それはいい。

 加えてカボチャの馬車である私は武内さんが誘いに行ったお姫様候補の為に資料作りで遅れてしまった。武内さんはその資料を見つけて難しそうな顔を浮かべていた。不足があったか尋ねればそうではないらしい。よくわからない不思議な空気に耐えられず、遅れながらも行き付けの居酒屋に到着した私を待っていたのは美女二人であった。

 

「まあまあここにお座りなさい」

「お酒も鮭もありますよーフフ、ふふふ」

「はぁ……お二人に挟まれるのは嬉しいですが、ここに座るのが怖いです」

 

 時計と伝票の確認をしながら川島さんと楓さんの間に座る。ソレほど量はないし、特筆して度数の高いものも無い。素面、という訳でもないだろうが酔いの回りが早すぎないですかね…。

 

「それじゃあ改めて、お疲れさまー」

「お疲れ様です」

「……お疲れ様です」

 

 冷酒のグラスを軽くあげて中に入った液体を飲み込む。喉を冷たく通り、息を吐き出せばアルコールと果実の風味が口からこぼれた。美味しい。

 流れるように飲み干して、適当な会話も交えつつ肴を食べる。時折、甘えてくる楓さんの頭をテキトーに撫でてやる。

 

「そういえばメイちゃん。アイドルに戻ってこないのかしら?」

「げほっ…ごほ、な、何でですか、突然」

「そーですよ、メイちゃん、一緒に舞台に立ちましょうよー」

「無理ですよ。お二人ほど綺麗でもありませんし。何よりカボチャの馬車が私にはお似合いです」

「カボチャ?」

「煮付けにしたら美味しいですよ」

「同僚の新規プロジェクトの補佐です。楓さんは知ってるでしょ」

 

 25歳児に向けて溜め息を吐き出してやれば可愛らしく頬を膨らましている。知ってますよー、とか呟かれたので適当に褒めながら次の銘柄を選ぶ。

 

「すいません、この芋焼酎なんですが、ダブルとかってできますか?……じゃあそれをロックでお願いします」

「詳しいことは知らないけれど、戻らないの?」

「戻れないんですよ。私は逃げちゃいましたから」

 

 あの日から…アイドルであった私が夢を壊された日から、私は私のファン達の前から逃げ出した。それはきっとアイドルとして許されない行為であり、そして今も尚立たないのは私の我が儘でもある。

 ヘラリと表情を変えて、やってきた焼酎を飲み込む。強烈な酒精が喉を火照らせ、独特の風味が鼻から抜けた。

 

「……わかったわ」

「よかったです。私を戻そうとするなんて無益ですし、武内さんを断るだけで手一杯です」

「メイちゃん。一緒にアイドルしましょ」

「全然分かってないじゃないですか」

「メイちゃん、コレ美味しいですね」

「楓さんはどうして私のお酒を飲んでるんですかね……」

 

 楓さんから取り戻して少しだけ減ったお酒を全部飲み干す。おー、という二つの声を無視して立ち上がる。

 

「明日も仕事があるんですから帰りますよ」

 

 えー、と非難の声を更に無視して会計を終わらせる。

 ぶうたれながらも席を立つ準備をしている川島さんと違い楓さんはいっこうに動こうとしない。

 

「メイちゃん。メイちゃん」

「なんですか25歳児。戯れ言なら怒りますよ?」

「おんぶしてくださいな」

 

 語尾に音符でも付き添うなぐらい上機嫌で言われた。私は溜め息を吐き出した。

なんだ、その程度かと。

 

「仕方ありませんね」

「えっ」

「タクシー拾うまででいいですね」

 

 本当に驚いてしまった。思わずホッとしてしまうぐらいには色々と恐れていた。 軽い体を背中に抱えて店を出た。

 

「……メイちゃんは色んな意味で男前ね」

「私は女ですよ?」

「ぽんこつなのね。わかるわ」

 

 ぽんこつとは失敬な。これでも出来ることは結構多いと自負しているのだ。

 溜め息を吐き出され首を振られたが、さっぱり意味が分からない。

 先程からあぅあぅとなにかを呟いている背中もやっぱり意味は分からなかった。

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