【インコンシクエンシャル・パーソン・ストラグル】
「ドーモ、ゼンイチ=サン。ラビットフットです。」ゼンイチに逃げ場はなかった。あっという間に追いつかれ、眼の前のニンジャに逃げ道を封じられてしまった。どうしてこんなことになった?ゼンイチはここに至る経緯を回想する。
マドウ・ゼンイチは善良なるネオサイタマ市民であった。それも、ネオサイタマで生きるにはマジメ過ぎる程のだ。彼にとってはジョックの苛烈な虐め行為も、過酷なセンタ試験も苦ではなかった。カチグミになってマケグミの両親を安心させる。それだけがゼンイチを突き動かす原動力だ。
ゼンイチの人生は実際順風満帆であった。このまま大学を無事卒業出来ればカチグミになれる。両親を安心させることが出来るのだ。ところが、彼の人生に突然の暗雲が発生した。
最近全然疲れない。72時間眠らなくても眼が重たくならない。それに、異様にスシが食べたくなる。スシを食べればただでさえ元気な身体が、さらに元気になる。
これはおかしい。身体が元気過ぎて恐ろしいのだ!ゼンイチは自分の身体の異変に恐怖した。そして、恐怖しているうちにゼンイチは自分の口元を何かで覆い隠したくなるような衝動に襲われた。
賢いゼンイチはこの時点で、自身がおかれた状況を悟りつつあった。だが、いやそんなことはありえない。自分の身が、古事記に記された恐怖存在になるなど。ニンジャになるなど!
しかしその予想は当たってしまった。ゼンイチはその日、自身のニューロンに何か恐ろしいものが入り込んでくる夢を見た。ゼンイチはニンジャソウルという単語を知らないし、ディセンションも知らない。だがそれらの単語を知らなくとも、自身がニンジャになったことを自覚した。
ゼンイチは恐れた。超常的な力を手にした後に待っているのは何だ?破滅だ。大抵の者は身に余る力を制御出来ず破滅する。力を制御出来る人間は一握りのプロタゴニストだけ。そしてゼンイチは自身がただの脇役であることを弁えていた。
(オシマイだ……セプクするしかないのか?)ゼンイチは内心でハイクを詠む準備をしていた。だが、これでいいのか?両親のためにここまでやってきたはずだ。道半ばで倒れれば全てが水泡に帰す。そんなことがあっていいのか?いや、あってはならない。
ゼンイチのニューロンの中で逆転現象が起こる。(セプクは……しない!俺は生きる!)
「ほう、なかなか良い眼をするじゃないか。」眼の前のニンジャが近寄ってくる。ゼンイチは無意識にカラテを構えた。「お前、俺達と働かないか?」ニンジャの……スカウト!?これから殺されると思い込んでいたゼンイチは息を吐いた。
【NINJA SLAYER】
【NINJA SLAYER】
こうして不本意にも、ゼンイチはとあるニンジャ組織の一員になった。そう、不本意にだ。非合法ビズに関わるなど、善良な市民であったゼンイチには耐え難いことであった。だが、ニンジャ組織に逆らえば死あるのみ。つまりゼンイチは組織に逆らうこと敵わず、非合法ビズに従事するしかないのだ。
(視点を変えろ、ビズの報酬があれば食わせていける!)ニンジャになった時点で平穏な生活は望めない。ならばソンケイを積み、ビズの報酬で大金を狙う。キンボシだ!キンボシを狙うのだ!善良だったゼンイチにニンジャ邪悪さの萌芽が芽生えつつあった。
【インコンシクエンシャル・パーソン・ストラグル】Part1終わり Part2へ続く