【インコンシクエンシャル・パーソン・ストラグル】Part2
大学生とニンジャ活動の両立は意外にも順調であった。昼は大学生として、夜はニンジャとして非合法ビズに従事する。過酷なスケジューリングだが、元々忍耐力があり、ニンジャになったことでフィジカルも強化されたゼンイチには容易いことだ。
とはいえ忙しいのは事実。気の休まる時間は僅かしかない。そんな彼のささやかな楽しみは、バイオ薔薇園に赴くこと。薔薇園で花々を観賞し、親しい従業員の一人、ハギ=サンと談笑することだ。
「やはりこの場所は何度来ても良いアトモスフィアが有りますね。心が休まります。」「休んでくださいねゼンイチ=サン。最近なんだか顔が険しいですよ?」「そうですか?ハハハ、なんだかお見苦しいものを見せてしまったみたいですね……」「そんなことはありませんよ。」
ゼンイチは泣きそうになった。ビズで薄汚れた自分に優しくされるような資格などないというのに。ハギ=サンの微笑みがニューロンに沁み込んでいく。「……また来ます。」「えぇ、またいらしてくださいね。」ゼンイチの短い憩いの時間が終わった。だが、この微笑みがあれば戦える。そう思った。
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「……どういう、ことだ?」バイオ薔薇園が、なくなっている。バイオ薔薇園があった場所には「建設中な」「これから建つ」「新たな癒し」といった無慈悲な文言が書かれた立て看板があった。(新たな癒しだと……此処だけが俺の癒しだった!)
さらに悲劇は重なる。肩を落とし路地を歩いていると、聞き捨てならないニュースをニンジャ聴力で聴き取った!ゼンイチはテレビが飾られている電気店のショーケースまで引き返す。
「昨晩未明、ネオサイタマ郊外の森林地帯にて交通事故が発生ドスエ。」森林地帯を走っていた自動車が突如爆発し、謎の炎上事故で搭乗者が死亡したことを、半裸のオイランアナウンサーが伝える。自動車を動かしていたのは、なんとあの薔薇園の従業者達。その中には当然ハギ=サンも含まれていた。
「ナゼダー!!!」ゼンイチは叫ぶ。雑踏を通り過ぎる人々が一瞬振り返り、それから程なくして何事もなかったかのように過ぎ去っていく。発狂マニアックの奇行などネオサイタマではチャメシ・インシデントだ。ゼンイチは発狂マニアックではない。だが、正気を失いそうな程のショックを感じていた。
急すぎる。あまりに急すぎる。悪い出来事は往々にして重なるものだ。それにしたって急すぎる。あぁ、もうハギ=サンに会えないのか?あの微笑みに会えないのか?ゼンイチはショーケースのガラスに爪を立て、崩れ落ちた。
(ナゼダ……彼女らが何をしたというんだ?)実際彼女らは何もしていない。だが無辜の市民が犠牲になることは珍しい事ではない。特にネオサイタマでは。むしろ事故に遭っただけで済んだのはラッキーと言えるのではないだろうか?事故に遭ってしまっただけ。それだけの話だ。
……本当にそれだけの話だろうか?急な薔薇園解体と新たな施設の建造計画。タイミング良く起こった従業員の死亡。キナ臭い。ゼンイチは訝しんだ。
【インコンシクエンシャル・パーソン・ストラグル】Part2終わり Part3へ続く