東方白双刀   作:はちみつえなじー

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黒歴史が出てきたぞ。


クール

今日は暗い夜だった。

森の中も静かだ。

月明かりがなかった。

妖怪はおとなしい。

だが闇を好むものもいる。

そんな輩が一人の少女を襲っていた、正確には捕食しようとしていた。

 

「グォォォオン!!」

 

「ひっ…た、助けて…。ど、どうにかして逃げなきゃ…」

 

本当ならばなぜこんな夜に少女がこの場にいるか説明しなければならない。しかし、それはいま大切なことではない。大切なのは知性のない獣に襲われた少女がどうなってしまうかである。

 

少女は震える足に力を入れ、怯える心に張り手を決め一目散に北に走る。北だと少女はきっと認識してもいない。

しかしその方向には自分の里があるに違いない。

少女は根拠のないその決めつけを信じなければやってられなかった。

もちろんその方向には里はない。

 

走る。

逃げる。

追いつかれそうになる。

また走る。

いつか自分はこの森から逃げ出し、妖怪からも逃げ、いつものように両親と暮らす日常に戻れると信じて。

 

 

しかしそんなことはない。

今こそ言おう。

少女は迷ったのだ。

 

この森で。

 

昼はのどかなこの森は夜になると一変することを知っていながらも愚かにこの少女は日が暮れる直前まで家で使う薬草を毟っていたのだ。そして迷う。

 

因果応報。

 

こんな愚かな彼女を助ける者などこの世にはいない。

 

彼女は賭けに負けた、しかしこれはもう仕方のないことだ。彼女に残された選択肢は死を待つのみだ。

 

ズシャァ

 

「うあっ!ぁあああ!!」

 

唐突に彼女はつまづいた。

その瞬間悟るのだ。もうだめだと。逃げても無駄だと。この月のない夜に自分は死ぬのだと。

 

歯がガチガチと震えた。

体から出る液体は全部出ている。

 

妖怪はもう獲物が動かないことがわかっているかのようにゆっくりと彼女の恐怖心を煽るかのようにひたすらゆっくりと一歩一歩近づいてくる。

 

「、、あ、ああああ…」

 

「グォォォオオオオ!!!」

 

妖怪は自分の勝利を自慢するように吠えた。

しかしこれは「いただきます」である。

ああ、無情。彼女は妖怪の大きさからするに一口では無理だ。咀嚼され痛い思いをするだろう。

彼女はそんなことを思いながら目をつぶり走馬灯を走らせ死の瞬間を待っていた。

 

 

 

 

 

音が聞こえた。

 

 

 

 

笛だ。この音は笛だ。

 

 

 

どう考えても場違いである。

 

 

 

 

彼女は目を開けた。

目の前には恐ろしい妖怪がいる。

 

時が止まっているかのように動かない。彼女も動けない。なせだ。

 

歩く音が聞こえる。

靴が草をかき分ける、そんな音。

 

妖怪も彼女もそこを見た。

 

女だ。

女が立ってる。

横笛を吹く女。

この暗闇の森と同化するほどの黒い女。

上から下まで全てが黒い。

髪も、服も、気配までも。

頭の上の耳は女もこの恐ろしい妖怪と同じ存在であることを表している。

しかし、恐ろしいという感情を忘れてしまうように透き通った笛の音色を奏でている…

 

 

笛の音を聞いて何秒たっただろうか。何分たっただろうか。

唐突に横笛から口を離して女は言葉を述べる。

 

 

「こんな静かな夜に人を喰らうとは風情というものがないのか貴様は。…人間を庇うわけではないが…」

 

 

仕事なのでな。

 

 

妖怪に近づいていく。

 

彼女は横笛を腰にかけ、逆の腰に手をかけた。その腰には二本の刀があった。

さすがに無知な妖怪も気付く。

そして女に向かって爪を振り下ろす!

 

しかし遅い。

目の前に女はいない。妖怪は後ろに気配を感じ振り返る。

何かがおかしい。首だけで振り返ったつもりが上半身全てが振り返っている。

一呼吸置いて妖怪は気付く。自分の腰は切断されていると…!

気付いた時には痛みもなく崩れ落ち、意識も落ちた。

 

「遅い…死んで出直せ…」

 

女は刀の血を払い鞘に戻し少女に振り向く

 

「大丈夫だったか…?貴様には捜索の依頼が来ている。…なんで愚かな奴だ。なぜこのような時間まで…」

 

女がチラッと彼女を見る。

彼女は妖怪が女に興味を示し始めたあたりから気絶していた。

 

「…」

 

「仕方ない…おぶってやろう。」

 

今回は特別サービスだと頭で言い訳しながら彼女を背中に背負い私は"南"に歩き始めた。

 

私は"進み"里にたどり着いた。

 

里には少女の家族と青い髪の女がいる。

慧音だ。慧音とはそこそこ仲がいい。

 

「依頼は成功だ。まだこいつは生きてる。気絶しているだけだ。」

 

家族に渡し代わりに金をもらう。

家族がお礼を言っているが仕事なのだ、気にする必要はない。

これにて依頼は終了だ。

慧音が話しかけてくる。

 

「本当にありがとう、ざらめ、お前のおかげで助かった。彼女のことを皆心配していたんだ。」

 

「心配ならば一人で薬草取りなぞ行かせなければようというのに…人間とはやはり愚かだ。」

 

「まぁそういうな、お前も里で暮らしている仲間だろう。」

 

聞き捨てならない。

 

「む、それは違うぞ、あくまで拠点にしているのであって別に里n「わかったわかった。今日はお疲れ様。奢るからミスティアのところにでも行こう。」…むぅ…わかった。酒というものは苦手なのだがな…あそこのめしはうまい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、いらっしゃい!いつもの2人だねぇ、いつものでいいよね?」

 

私は奢られる立場故何も言えぬ。慧音をチラ見する。慧音は「ああ、いつもので頼む」と当たり前のようにいい席に着いた。

 

私も遅れて席に着き、出されたいつものその1である大根おでんを食べ、いつものように熱がり。いつものように酒を飲み。いつのもように舞い上がり横笛を吹いて。いつものように酔いつぶれた。

 

 

 

 

次の日、慧音が「ざらめは酔うと甘えてくるぞ」と言い酔った時の私の真似らしき言動をし始めたが素面で慧音がそれをやっていると思うと恥ずかしさよりも慧音に笑えてきて笑ったらゲンコツが来た。

 

 

痛い。




黒歴史なんだぞ。
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