朝起きた。
顔を洗う。
髪を梳かす。
着替える。
家から出て里を歩く。
リンゴを2つ買い、齧る。リンゴ特有の水っぽい甘みが口の中に広がり体が求めていた水分を吸収する。この瞬間が一番うまい。
生きててよかった。
やはりリンゴはいいものだ。持ちやすいし。
…そして可愛い。
里の見張りをちらっとみて里から出て歩く。
そばの森に入り森の獣道を歩く。
ここが神社への近道なのだ。
獣道の側でこちらを物欲しそうな目で見ている小さな獣に食べかけのリンゴを投げそいつが食べるのを確認してもう一つのリンゴを取り出し手で遊ばせまた歩く。
いくらか歩いて石段を見つけ側に座る。
「ふぅ…ここまで来るのは面倒だな。やはり"進め"ばよかったかな…」
仕事なのだ。仕方ない、我が家の決まりだ。
持っていたリンゴを手でこすり齧る。うまい。好きだ。好物なのだ。
石段から立ち上がり一段一段登る。
"進め"ば楽だが登る。これが私の信条だ。
時々休む。日差しが心地いい。
面倒だが登る。
石段を登りきると神社が見える。神社の賽銭箱(通称ゴミ箱)にリンゴの芯を捨て声をかける。
「おい霊夢、出てこい!この私が様子を見に来たぞ!」
出てこない…
あいつめ、もう昼も近いというのにまだ寝ているのか…
神社の裏に回り様子をみる。
「本当に寝ているのか?本当にしょうがない奴だ。」
私は息を吐き肩をすくめる。
少し待つと神社からガタガタと音がして霊夢が顔を出した。
「ちょっとざらめ!来るなら来るって言いなさいよ!!!通信用のお札持ってるんでしょ!!」
通信用の札?
そんなの初めて聞いたぞ。
「まったく…お前がサボっていないか様子を見に来たのに抜き打ちでなくてどうするんだ。それで?今まで寝てたのか?リボンがクタクタになってるぞ」
霊夢はそのクタクタになったリボンを直しながら言い訳をする。
「…き、今日は少し起きるのが遅かっただけよ。いつもはもっと早く…」
「わかったわかった…まぁ元気そうでなによりだ。用は済んだし私は帰るぞ。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!私の様子を見に来たならもうちょっと居てもいいんじゃない?お昼だってまだでしょ!」
霊夢はいつも私のことを呼び止める。
私のことを呼び止めるなんて暇な奴だ。
「週に1回ぐらいしかこないんだし…今日ぐらいは一緒にいてよね…」
霊夢は割と私に甘えてくる…気がする。
やはり霊夢がここにきた時からずっと側にいるからだろうか。しかし紫のやつは全然懐いてもらえてない気がするな。
「わかったよ…今日は他に仕事がないしここにいよう…。じゃあ昼飯でもご馳走になろうかな、よろしく霊夢。」
そう言うと霊夢は嬉しそうに頷き神社の中に入っていった。
私も続けて中に入る。
いつものように卓袱台の側に座り腰の刀、「黒糖」と「白砂糖」を床に置く。
置いた中から「黒糖」を手に取り鞘から取り外し刃の具合を確認する。
「黒糖」は全てが「黒」。そんな打刀だ。
刃も黒みを帯びている。父から授かった時から黒いのでそういうものだという認識をしている。思考停止だ。
「白砂糖」は真っ白な鞘の刀。「黒糖」よりは少し短いかもしれない。
闇を払う刀だと言われているが鞘から抜いた試しがない。
実際には抜けない。父も抜いた試しがないらしい。これも抜けない物という認識。思考停止だ。
「あんたも飽きないわね、よっぽどその刀が好きなのね。」
霊夢がお茶を持ってきた。
「む?別に刀が好きなわけじゃない…ただ好きなら笛の方がよっぽど好きだ。ただ、この刀は父から授かっt「はいはい、その話はもう何回も聞いたわよ。」…むぅ。」
自慢の刀だというのに…
「じゃあ私はご飯の準備するから、そこで待っててね。」
「ああ…私も朝からリンゴ2つでは少し足りなかった。早急に頼む。」
意外と大食らいなんだなぁ私は。
割といつも腹の虫が鳴いている気がする。
早く作れ霊夢。
「んもぉ仕方ないわねぇ。なるべく早く作るわ。大大大好きな刀でも眺めて待ってなさい。」
「…だから別に好きなわけではないと言っているのに。」
しかし刀の観察は大切だ。大事な商売道具だからな。
…そして亡き父の形見。
我が家の家宝。
霊夢が作った昼飯を食いながら親子のような会話をする。
友達とはどうか。
最近は何をして過ごしているのか。
ちゃんと修行もしているのか。
霊夢は嫌な顔をするときもあるがちゃんと私の言葉に耳を傾け返事をしてくれる。
霊夢がここにきた時から一番側で見てきているからか親心というかなんというか…情というものが湧く。
霊夢が元気でいてくれて嬉しい。
「ちょっと!ちゃんと聞いてるの?ざらめから昨日は何してたのか聞いてきたんだからちゃんと聞きなさいよね!!昨日はちゃんと修行したわ!魔理沙と弾幕ごっこでね!やっぱり私が勝ったけど魔理沙もそこそこやるわね。あいつはとんでもなく強くなるわよ。」
魔理沙か…あいつとも小さいときには相手をしてやったものだ。
強さに憧れて里を出て行ってから話をあまり聞いてなかったからどこかでくたばっていると思ったが少しびっくりだ。
「ほぉ…魔理沙か。里からいなくなってから心配していたが霊夢にそこまで言わざる奴に成長していたとはな…」
「むぅ、この話は魔理沙が凄いんじゃなくてその魔理沙に圧勝した私が凄いっていう話なのよ!!」
なんだその返しは…
魔理沙を褒めたのが気にくわないのか…?
「分かってるよ。霊夢は巫女としてしっかりしてるし、博麗としての力もある。ちゃんと修行しているのも分かっているよ。私は。しかし…」
私は卓袱台に身を乗り出し霊夢に近づく
「ん?なによ?私は博麗の巫女として完璧よ。」
「ふふふ、ご飯粒を頬につけていてはまだ一人前とは言えないな。」
それを取り霊夢の唇につけてやる。
霊夢は顔を真っ赤にして舌でそれを食べる。
「こんなの言われれば自分で取るわよ!!それにご飯粒と一人前かどうかは関係ない!」
ありゃりゃ
さすがに少し子供扱いしすぎたかもしれない。
そのあとは何気ない会話をしながら昼飯を食べ終え畳に横になり息を吐く。
この瞬間もリンゴを齧った瞬間と同じぐらい好きだ。
「ちょっと、食べたあとに横になると牛になるわよ?」
「私はいいのだ…私だけは牛にならん…」
なんだか眠くなってきたなぁ。
このまま寝てしまおう。
おやすみ。
「その根拠はどこから来るのやら…」
霊夢の半ば呆れた声を聞きながら意識が闇に落ちた。
真っ黒な空間にいる。
なにもない。
しかし、立っている。
ここは一体なんなんだろうか。
夢だ。
夢だな。
そう自己解決する。
「そうだ、夢だ」
誰かが声をかけてきた。私の夢なのに。
私の方は声が出ない。私の夢なのに。
声をかけてきた奴の方を向くと誰かが立っている。
「こっちに来い。」
どうせ夢だ。行ってやろう。
声をかけてきたのは真っ黒な衣装を着た女のようだ。
奴は私に似ている。
「構えろ。」
訳がわからない。夢だからか。
奴の腰には「黒糖」が。
私の腰には「白砂糖」が。
奴は「黒糖」を抜き私に向かってくる。
私は「白砂糖」を抜けない…!
奴が「黒糖」を振る。
ヤられる…!
「いてっ!」
「ちょっとざらめ!!!あんたでしょ!!このリンゴの芯を賽銭箱に捨てたの!!賽銭箱はゴミ箱じゃないっての!!何度言えばわかるのかしら…気づかなかったら大変なことになってたのよ!」
…なんだ夢か。
「ちょっと聞いてるの!!」
ぽかっ!
痛い。
全く関係ないけどジャミル・ニート好き