博麗霊夢の朝は早い。
巫女という職業故かあるいは彼女の生活習慣故か、おおよそ日の出の少し前に目を覚ます。
朝食を早々に済ませた後、賽銭箱の確認をする。入っていることはめったに無いが、念の為というやつだ。
そこからはやや忙しくなる。境内の掃除やお札の制作、神社の掃除などを午前中に終わらせるためだ。別に午前中で終わらせる必要は無いのだが午後からはまったりする時間、と決めている為に用事は午前中に済ませておくのが基本だ。
昼食が終わったら、後は急用でもできない限りお茶でも飲みながら過ごしている。大概は誰か訪ねて来て、わいわいと騒がしい事になるのだが、この日は皆忙しいのか訪れる様子も無かったのである。
そんな珍しく静かな博麗神社での事。
ほう、とお茶を飲んで一息つく。
やるべき事は終わらせた、特に用事もない。約束した訳では無いが誰か来る様子もない。
…要するに暇なのだ。
ここの所、連日我が儘な吸血鬼だの金髪の魔法使いコンビだのと客人が多かった為に、今日の午後も来るかと思い待ち構えていたものの来なかったので、拍子抜けだ。
勘で言うならそろそろ紫あたりがくるだろうと踏んでいたのだが、スキマが開く気配もない。
となると、本格的に暇になるのだが…昼寝でもしてしまおうか。
いや、別に自分の神社で寝ていようが誰にもとがめられることも無いのだが、あのぶんぶんうるさい鴉のブン屋に写真を撮られでもしたら少々面倒なのだ。
誰も来ないようならそれも心配ないだろう、と一人で頷きつつ、のそのそと縁側へ這い出る。
この時間の縁側は太陽の光が良く当たり、非常に心地良い場所だ。
ぽふ、と座布団を枕代わりにして
「おやすみ」
等と誰に言うでもなく、微睡みに身を任せたのだった。
~ 少女昼寝中… ~
「ぅん……」
息苦しくて声を出したらしく、少し目が覚めた。どうやらうつぶせになってしまってしたらしい。
体感的にはそれほど時間がたっていないので、もう少し寝よう、と少し身じろぎしてもう一度暖かい枕に頭を乗せる。
……少しおかしくなかったか?枕が暖かいなんてことあるだろうか。確か私は座布団を枕替わりにしたはずだか。
その疑問を解消すべく、目をぱちりと開いたところ、目に飛び込んできたのは見慣れたようなむらさき色だった。
…むらさき?座布団は赤いものだったはず。
やはりおかしい、と今度は視線を上へと向けていく。
そのむらさき色はなにやら人の体の形をしているようだ、というよりはこれは…ドレス?
形の良い胸、細い首ときて整った顔。どうやらそれは紫のようだった。
成る程、紫だったか。と得心がいったので、今一度昼寝へ戻ろうとする私だったが…なんで紫が目の前にいる?
もしやと思いそっと確認するとやはり、私は紫に膝枕されていた…しかも紫の方に顔を向けて。
それを認識した途端に、顔が真っ赤になっていくのが分かった。流石にこれは恥ずかしいのですかさず飛び起きようとすると
「あら、霊夢起きたの?」
と図ったように紫が覗き込んできた。
真っ赤な顔を見られたくないので咄嗟に目を擦りながら寝ぼけている振りをした…あまり誤魔化せている気はしないが。
しかし紫は寝癖のついた髪を梳きながら
「まだ眠たいなら眠ってもいいわよ」
と微笑んだ。
いつもなら子供扱いするな、と払いのけるところなのだが、どうしてかとても安心する。
微睡みがもう一度襲ってきて、うとうとしてしまう。
それに応じるように、紫が優しく頭を撫でてくれるものだから、諦めて寝てしまうことにした。
「おやすみ」
と今度は紫に向けて呟いて、ゆったりと力を抜いた。直に眠ってしまうだろう。
「ええ、おやすみなさい」
なんとなく、紫はまた微笑んでいるんだろうと思うと、私の口元も自然と緩んでしまう。
別にどうってことない事なのだけど、ただ幸せだなあ、とそう思ったのだった。