ゆかれいむ短編集   作:走る

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巫女思い立ちて

空を飛ぶ。

それは私にとっては当たり前の事で、だけど他人にとっては特別な事だったらしい。

ふわり、ふわり、と浮かびながら取り留めもなく考える。

幻想郷広しといえど、特別な力…即ち霊力や魔力を用いずに飛ぶ人間は私以外にほぼ居ない、らしい。

ほぼ、というのは他に居るわけではなく、こんな場所だからそこらへんにひょっこり居るのかもしれないというだけである。

つまり現時点では私しか確認されていないのだが、その一点においては私は人から外れているのかもしれないのだった。

だからといって何か変わる事も無し、博麗としてやるべきことをやるだけである。と、今日も奥義の修行とは名ばかりの空の散歩をするのだった。

 

世界から浮く、つまり干渉されなくなる。

博麗の奥義とは、言ってしまえばそれだけのことだ。

最もこれは私だからこのような形になっただけであって、過去の博麗はそれぞれ微妙に違った奥義に至ったらしい。

奥義を防御の極みとするか、攻撃の極みとするか。そういったところも違ったようだ。

私は既に奥義に行き着いている。

実際に試したわけではないけど、それでもやろうと思えば今すぐでも出来るだろう。

なぜやらないのかと言えば、他ならぬ隙間妖怪に止められているからだ。

彼女が言うには、

 

「今はダメ、ね。もし奥義に至ってしまえば、あなたは戻ってこられないでしょうね」

 

要するに、世界との繋がりが薄すぎるという話だった。

人間と距離を置き、妖怪とも距離を置き。そのうえ世界からも浮いてしまえば…そのまま戻れないだろう、と。

私は別にそれでもいいんじゃないかと思う。

私一人居なくなったところで、別にどうってことないだろう。

そう、言い返すと紫は溜め息をついて

 

「あなたが居なくなると悲しくなるひとだって、いるのよ」

 

そう言って、私の頭を撫でたが、その手付きがどうにも子どもに言い聞かせる親のようで、無性に腹が立った。

 

…そういえば、あの時もこうして空の散歩をしていたなと思い出した。

何時も通りに空に浮いて漂っていたら、突然真横にスキマが開いて紫が出て来たのだ。

毎回のごとく意味不明な話を適当に流していたら私の話になって、さっきの台詞を吐かれたわけだ。

世界への繋がりを強めるために友達か、それか伴侶でも探してみれば?…そう言い残してスキマに消えていったのを覚えている。

冗談だろうと思うが、それでも溜め息を吐いたときのあいつは少し悲しそうだった。

 

もしかしたら紫は私がいなくなったら悲しんでくれるのかな…なんて。

それは嬉しい、かもしれない。

何故かは判らないけど、紫が私のことで心を動かしてくれるのかと思うと、少し嬉しく思う。

或いは、紫だったら理由が解るのかもしれないけど、本人に聞くのもどうだろうか。

さしあたっては、少し紫との距離を縮めてみようと決意して地面に降り立つのだった。

 

 

 

翌日、距離を測りかねた私と困惑したような嬉しいような紫がいたのだが、それは別の話。

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