短いけども。
「……暇だ」
授業中、勉強が凄まじく簡単になってしまった現実を知った。
なんとなく分かっていたが、どうやら西木野真姫の経験は私にも受け継がれているらしい。
元々医学部を目指しているだけはある。今の授業レベルが随分と低い。
そんなわけで、授業中が暇だ。
まさか寝るわけにもいかず、こうして教師の言葉を聞き流すしかやることがない。
……まあ、同じクラスの星空凛は思い切り寝ているが。
羨ましい。
ーーキーンコーンカーンコーン
と、鐘が鳴る。一時限目が終わった。
次は数学室だったかな。
「凛ちゃん、起きてよ〜」
「んー、まだ寝足りないにゃぁ……」
などという掛け合いをスルーしつつ、教科書を持って教室を出る。
「……ん」
三年生の教室の前の通ると、見覚えのある顔。
高坂穂乃果と園田海未だ。
恐らく、矢澤にこをアイドルに誘うのだろう。
「やっぱり止めといたほうがーー」
「ちょっ、何言ってるのよ海未ちゃぁん!!」
すっげー見たことある光景だなぁ……今は三次元だが。
まあ私には関係ない。さっさと行こう。
■
全ての授業も終わり、放課後だ。
さて、これからどうしようか。
ここが、私が原作と関わるか関わらざるかの瀬戸際と言えよう。
選択肢は二つある。
UTX学園に行くか。行かないか。
私の予測なら、行くと原作と関わる……というより、原作の流れに乗る。
行かなければ、原作とは違う方向へ向かうだろう。
今日、UTX学園に矢澤にこが行く。
そこで私と会い、共にアイドル部へと入部を果たすのだ。
……どうしたい?
自問するも、答えは出ない。
正直に言って、どうでもいい。
流れに乗ってもいいし、乗らなくてもいい。
どうでもいいなら……
「私の好きなように生きてやろう」
開き直ってやる。
□
「ただいま」
家に着き、誰もいないために鍵をかける。
冷蔵庫にあった適当なもので夕飯を済ませ、部屋に戻る。
そして四肢を投げ出した。
「……ははっ」
にやける口元が止められない。
心の底から笑いが込み上げてくる。
「はははっーーやっちまったなぁ」
これで原作の流れは変わった。
もはやμ'sがどうなるか、私にも分からない。
それでいい。それがいい。
分かりきった人生なんざ捨て去るものだろう。
この人生、もはや私のものだ。
好きなように使い潰してくれる。
「はは、どうなるかな」
μ'sが、原作がどうなってるか。明日が見ものだな。
■
翌日。
既に両親のいない家に挨拶をしつつ、睡魔と戦争しながら通学路を進む。
まばらに音ノ木生徒が見え始め、とうとう学校が近くなってきた。
私がいないμ'sはどうなっているかな?
結果、何も変わってはいなかった。
学校は既に昼休み。午前中は普通に授業を受けていたのだが、特に何か接触があるわけもなく。ただ時間が過ぎただけ。
何という事か、私がいなくとも問題がないとは。
いやしかし、作曲者がいないか?
どうだろうか。漫画版だと、生徒会長である絢瀬絵里がギターを弾くコマがあった。
つまりは楽器が弾けるわけであり、もしかすると作曲も出来る可能性はあるか?
限りなく低くはあるが、可能性としては存在してしまっている。
ならばやはり私はいらないな。
ふぅ、良かった。私は関わらなくとも良さそうーー
「マッキー発見にこ!」
弁当箱を広げた瞬間、教室に響く声。
それは矢澤にこのものだった。