私の名は西木野真姫   作:イモリ

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一話一話が短く、また進行が遅いとお思いでしょう。
しかし、致し方無いのです。

何故なら漫画版のストーリーが未だ短いから。


opus5:珈琲

 どこかで聴いたような曲ーーまあ『愛してるばんざーい!』なんだが、弾き終えたとき。

 

 ぱちぱちぱちぱち。

 

 どこからか拍手が聞こえてきた。

 いや、そんなバカな。この世界は漫画版のハズだろう? なら見ているわけが、見られているわけがない。だって、これじゃまるでーー

 

 

 

 音楽室のドアの向こうに、高坂穂乃果がいた。

 

 

 

 ーーアニメ版じゃないか。

 

 

 

 

 

「すごいすごい! 西木野さん、ピアノも弾けるんだ!」

 

 高坂穂乃果がドアを開けて拍手しながら入ってくる。

 憂鬱だ。

 こんな所を見られてしまっては、余計に勧誘してくるだろう。

 

「今の曲聴いたことないけど、もしかしてオリジナル?」

 

 痛いところを突かれた。

 

 μ'sの曲なんて私がいないのだし、まだ一つも出来てはいない。

 つまりこの世界では完全にオリジナル曲だ。

 

「……まぁ、ね」

「おぉっ、やっぱりっ。すっごいなぁ、西木野さん……ねぇ、やっぱり西木野さんもやろうよっ、アイドル!」

「お断りしたはずですが」

「そんなこと言わずにさぁ」

 

 しかし。

 アニメ版かと思ったが、確かにシーンは酷似してるが、どことなく違うな。

 そもそもアイドル部の部室で会ってるから初対面でもないし。

 

「あ、そうだ。ほらこれ、穂むらの名物のおまんじゅう! すっごい美味しいから、コレ食べてっ。ね、ねねね?」

 

 ぐいーっと饅頭を押し付けられた。仕方なく貰っておく。

 だが、これを貰ったからといって入部はしない。何度もいうが、必死に心をひっぺがして原作から乖離したのだ。何故今更になって原作に沿わなければならない。

 

「……貰っておきますが、入部はしませんよ」

「えーっ!?」

「では、塾があるので」

 

 実は塾なんぞ早々に辞めさせて頂いたのだが、適当な嘘を吐いてその場を立ち去る。

 

 何がなんでも入部なんてしてやらんぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校を後にして帰宅。

 家には相変わらず誰もおらず、適当に夕飯をかき込んで自室で四肢を投げ出す。

 

「はぁーっ、疲れたぁ……」

 

 ピアノを弾いたからか、未だに曲の余韻が耳の奥に残っている。

 

 また、弾きたいな。

 

 自然とそう思ってしまえる。

 それだけピアノは魅力的だった。

 

 前世ではピアノなんて触った程度だし、さして興味もなかった。

 寧ろエレクトロニクスとか、電子音楽を好んで聴いていた気がする。

 クラシックなぞ魔王しか知らん。

 であるにも関わらず、私はピアノに魅了されてしまった。

 あの美麗とまで言える戦慄は、それほど衝撃的だった。

 もしくは西木野真姫が好きだったからかもしれない。

 

 しかし、それでも。

 私はピアノに魅了されたのだ。

 

 これは純然たる事実。

 西木野真姫だから、じゃない。

 私が魅了されて、私がやりたいのだ。

 ピアノを弾く理由なぞ、それだけでいい。それ以外にない。

 

 私は私なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝だ。

 いつものようにモソモソと朝食を食べ終えて登校する。

 最近はいつも寝不足のような気がする。いや、単に朝が弱いだけか? 西木野真姫が低血圧だったなんて聞いたことないが。

 

 とはいえ、西木野真姫になってからというものの、朝の度に寝不足気味のような気がしてならない。夜は十二時前には寝ているんだがな。

 何か疲れるようなことをした覚えもないし、かといって低血圧かと言われると、それも違うように思う。

 そこで私は思い出した。

 

 カフェイン不足だ。

 

 

 

 

 

 コンビニでブラックコーヒーを買ってきた。

 タブをあけてグイッと喉に流し込む。

 

 あぁ、これだ。舌に残る酸味をおびたような苦味。喉を通るブラック特有の豆の香り。体中にカフェインが染み渡るようだ。

 

 思い出したのだが、前世の私はカフェイン中毒であった。

 朝は挽きたてのブラックをあおり、昼は少し甘めにカフェオレで昼食を流し込み、夜はミルクのみの柔らかいコーヒーでしめる。

 子どもの頃からコーヒーばかりを嗜み、気付けばカフェインを摂取しなければ朝は起きれず、手足は少し震え、情緒もまた不安定という中毒症状すら出る始末。

 まさか西木野真姫になってからもカフェインの中毒症状が現れるとは考えもしなかった。

 

 はて、家にコーヒーメーカーはあったかな。

 そう考えながら学校に着いた。




実は私もリアルにカフェイン中毒気味だったり。
実際に手も震える程度には。
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