騎士よ、音より早く追え -仮面ライダードライブ異伝・マッハ×チェイサーVS仮面ライダーW- 作:たんぺい
…どうした、何故構えない。
スカルドーパントを名乗る、もう1人の『仮面ライダースカル』は、銃を構えながら聞く。
その言葉には、怒気は感じられない…馬鹿にした口調ですらない。
まるで、子供にキャッチボールを教えるかのような、そんな口調だ。
だが、問われた側と仮面ライダー達は、一様に動かない。
その内、代わりに翔太郎が聞く、何故今まであんな物騒な真似をした、と。
スカルドーパントは、真っ直ぐに答える。
俺は、街を泣かせそうなヤツをみたら、『鳴海荘吉』と違い我慢ができないから、戦う、と。
そして、剛には勘違いで襲ってしまい悪かった、と、付け加えた。
フィリップは聞く、あなたの時間は限られている、なら静養したら長生き出来るかもしれない…その内に地球の本棚とエクストリームを使えば、もしかしたらもしかするかもしれない、と。
スカルドーパントは優しく答える。
お前は優しいな、でも、自分でわかる…きっと、明日にでも俺は俺で無くなる。
ならば反面教師の姿を見せて、翔太郎を師匠離れさせる…『卒業式』ぐらいさせたかった、と。
竜は一言だけ、呟いた。
何も、貴方に送れない息子ですまない、と。
スカルドーパントは困ったような口調で返す。
『俺』に返すな、もう1人の方の俺の墓に旨い酒でも供えてとっとと孫の顔みせやがれ、と。
剛は、唸るような口調で聞く。
お前は『ロイミュード』か、『ドーパント』か、それとも…『仮面ライダー』なのか、と。
スカルドーパントは笑って答える。
全部だ、「スカルドーパント」はフィリップがくれたのが嬉しくて名乗ってみただけだ、と。
そして、弟子の友人のくれた名前だ、シンプルで良いだろう…と、自慢気に呟く。
そして、最後にチェイスが聞いた。
お前は神様にでもなったつもりか、と。
「…神様、『俺』が嫌いな概念で、もう1人の『俺』は亜樹子が産まれるときにしか祈った事も信じた事もない存在だ!」
スカルドーパントはチェイスの疑問に激昂したが、チェイスは怯まず続けた。
「…怒らせて、すまない…ただ、わからなかった…お前は『罪を数えろ』と言う、不思議な話だ、裁判官じゃない癖にお前の為に罪を数えて…それが何になる?…もしかして、昔の俺のように、死神でも気取って居るのでは無いのかと、俺は思ったんだ」
…そう、チェイスはとても純粋な男で有った。
だからこその真っ直ぐな疑問、お前の決め台詞、それは何を思い言っているのか、と。
そして、その言葉を受け継いだ翔太郎が横でうろたえる中…スカルドーパントは怒気を納めると、
わかりにくい決め台詞だったよな…すまない、と、前置きして話した。
「…それが、『正義』の、重さだ」
「…正義」
「そう、己の罪の数を数えて、自分の臆面のなさを再確認する…そして、相手の罪を数えて『ああはなるまい』と己を恥じる…そうすれば、己の拳に街を守るぐらいに強くて堅い…言うなれば『重さ』が生まれるのさ」
それこそが、「罪を数える」。
スカルドーパントの語る、正義の重さ…仮面ライダーとしての、誓いの言葉だった。
誰もが思った。
この男は…本当に、『鳴海荘吉』なのだ、と。
少なくとも、『仮面ライダースカル』を、真っ直ぐに受け継いだ者だ、と。
そして…怪物にも外道にも、誰も思えなくなった。
ふいに、チェイスが話し出した。
「…俺は、俺の罪が有るのなら、それは…お前と同じ、許されない命なのに、俺はお前とは違って周りに救われてばかりだ…一朝一夕で、返せないぐらいに…死神の時ですら、皆に…きっと救われていたのだ、だが俺は、壊してばかりだ…全てに、俺の疑問に答えてくれた、お前にさえ『恩をまだ返してない』」
次に、竜が言った。
「…俺はあんたから、少なくとももう1人のあんたから二度も奪おうとしている…父から娘を奪って、そして今…俺の意志で娘から父を奪おうとしている、『不出来な娘婿だ』」
フィリップも語り出した。
「元をただせば貴方のせいでもないこの事件、翔太郎を巻き込まないように誘導する方法もいくらでも有った…少なくとも、辛い選択肢を与える真似をする必要性は、なかった…『僕ばかり、相棒に痛みを与えてしまった』」
翔太郎が、力無く言った。
「あんたに追い付きたくて、格好も嗜好も…決め台詞すら真似して、今まで突っ走ってきた!でも…俺は、本当の意味で、『罪を数えてなかった』…」
そして、剛が、自嘲するように言った。
「『俺は、嘘つきだ』…俺が、追跡も撲滅も…本当にマッハでこなしていたら、こんな哀しい話に、こんな優しいヤツらを巻き込む事はなかった…もっともっと、俺は強くなきゃ、いけないんだ…」
そして、5人は力無くうなだれて…気合いを入れ直すように、右手を固める。
…そして、フィリップ以外の4人が己の腰にベルトを巻く。
そして、一斉に、叫んだ。
「俺は…俺たちは…『俺たちの罪を数えた』……さあ、お前の罪を…数えろ!」
スカルドーパントに、その右手で一斉に指を指しながら。
言われたスカルドーパントは…どこか、嬉しそうだった。