騎士よ、音より早く追え -仮面ライダードライブ異伝・マッハ×チェイサーVS仮面ライダーW- 作:たんぺい
1人の若人が、白を基調とした大型バイクを疾走らせる。
その速さはまるで、風のようである。
何かに追われる様な…否、何かを追うように、そのバイクは…風都と言う街を疾走していた。
そのバイクのライダー…詩島剛は、ため息を一つ吐いた。
「進兄さん…警察に、公務員にとらわれるのも大変だよな…こういう時に、フットワークに支障を来すんだから……」
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事の起こりは、3日前だった。
『進ノ介、剛!大変だ!』
久留間市の警察署地下、その秘密施設。
その中で、鎮座ましましとばかりに、銀色の台座に据えられたベルトが、二人の青年に向けてしゃべる。
そのベルトは続ける。
『重加速反応…それも、超進化体クラスのロイミュードの反応だ!』
ロイミュード
希代の天才、蛮野博士の生み出した悪の機械生命体。
己の欲望をとめられぬ、獣のような存在であり、…少なくとも、剛の中では…理性無き破壊者である。
彼らの目的はただ一つ、進化体を目指すこと。
バット・コブラ・スパイダーと言う、蛇や蝙蝠などをモチーフにした素体を遥かに凌駕する、オリジナルの能力を得た存在を、彼らは目指している。
ましてや超進化体となれば、その力は全く計り知れない奇跡の力だ。
そして…
重加速
それは、ロイミュードが操る特殊フィールドと思えば良いだろう。
通称「どんより」と言われる、時間が止まるかのような世界は…シフトカーやシグナルバイクと言う、同じかそれ以上の力でないと対抗できない、絶対的な、世界だった。
重加速の世界の中では、あらゆる存在がゆっくりと進む。
ロイミュードか、それに対抗できる存在でなければ、その世界で自由には動けず、
平たく言えば金縛りに合うような、そんな体験を否応なく味わうのだ。
そんな危険なものの反応があると知り、剛は焦る。
だが、それ以上に…進之介と呼ばれた、スーツ姿の男でありそのベルトの装着者たる泊進之介と言う男は、
闘志全開の目で言った。
「なんだって、ベルトさん!?今すぐに出撃しよう!」
『Good!それでこそ!ならば今すぐ、仮面ライダードライブの出撃だ!』
進ノ介と呼ばれた男が、己のベルトを『ベルトさん』などと言って居るが、ふざけている訳ではない。
そのベルトには「クリム・シュタイン『ベルト』」と言う男の…ベルトのシステムの開発者の精神が、
データとして入っているのだ。
つまり、このベルトには、意志がある。
そして、その二人の男が交わり生まれる仮面ライダーこそが『ドライブ』である。
様々なシフトカーにより、ボディも、あるいは能力も、多種多様に変化する。
その対応力と進ノ介のガッツ、ベルトさんの知識が合わさることで、その力は無限大に進化する。
ロイミュードが人類の天敵ならば…仮面ライダードライブは、更にそのロイミュードの天敵、
人類の…最後の希望の1人なのだ。
「……って、活躍できたら良かったんですけどね、泊ちゃん、クリムちゃん」
そこに水をさした男がいた。
泊の上司でベルトさんの友人…そして、この秘密施設を当初から知っていた男、本願寺である。
彼は続けた。
「ぶっちゃけうちの管轄から離れすぎてて、ちょっとうちの部署がでしゃばったら、微妙に五月蝿いんだよ…」
コレにくってかかったのが、進ノ介である。
何でだよ、仮面ライダーは世間にようやく知られたんだ!派閥だの管轄だのって言ってる場合か!…と。
ベルトさんもそうである。
いくらキミの言い分でも、私は納得できないぞ!…と。
しかし、当の本願寺も、その二人の言葉は納得しており…そして、頭を抱えながら言った。
「その重加速反応があった街は、仮面ライダーが、既に居るんですよね…しかも2人も、だからわざわざ余所から要らないなんて言われたら、私もどうしたら良いのか…」
その言葉には、その場に居た者達全員、絶句するしか無かった。
…俺達以外に、仮面ライダーが居るのかよ、と。
結局。
本願寺の言うとおり、ドライブの出撃はしばらく見合わせる事になった。
クルーの開発者の1人の沢神りんなを筆頭に、現場からは不満だらけではあったが、流石に上の決定ならばどうしようもない。
仮面ライダードライブは「刑事のライダー」、上層部の許可無く戦えないと言う不自由さもあるのだ。
その辺、俺は楽でいいや…
剛は、もう1人の「ライダー」は、1人ごちるのである。
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そして、時は現在に戻して、風都。
フリーのカメラマンたる剛の武器、それはフットワークの軽さにあった。
情報収集能力だけならば、それはドライブ達にはかなわない。
警察と言う、数と権力の力は、それだけ大きいのだ。
だが…その分、初動はやっぱり遅い、それも事実だった。
だからこそ、剛は…音速より速く、ドライブ達には負けないように、とにかく足で情報をかき集める。
人に聞き、噂を頼りに、口コミをメモしながら、写真を取りながら。
そんな中で、剛は一つの噂を耳にする。
風都の裏路地で、怪しいスーツかタキシードみたいな姿の男たちが、夜な夜なたむろしては、誰かを…20代ぐらいの男を、手当たり次第に襲撃していると。
…何故女の子じゃなくて、俺と同世代ぐらいのにーちゃん襲うのさ。
剛は、微妙に頭を抱えつつ、件の裏路地へとバイクを飛ばしているのだ。
そして、バイクを思い切り飛ばし、15分もしない内に、剛はその場所へと到着した。
…果たして、その場所にはと言えば…
「…なんだありゃ?ロイミュード…か?」
そのタキシード姿の男は…20人近くいる、それは…徒党を組まれたら異様の二文字だが、それは良い。
だが、その頭部には怪しい機械的な…平たく言えば、化け物がような、そんな人間離れしたモノが付いていた。
そして、彼らは、角材を持つものやナイフを取り出したものもおり、剛へ敵意を向けていた。
剛は、そんな彼らの姿を見るに、なるほどと納得し…深呼吸すると、腰につけたベルトを彼らに見せつける。
「パーティーのお誘いは男からはノーサンキューでね…レッツ…変身!」
シグナルバイク…ライダー!と言う、やたらテンションの高い変身音と共に、剛は光に包まれる。
そこから現れた白亜の戦士…
「追跡…撲滅、いずれも、マッハ!」
車をモチーフとしたドライブとは対になる様に、バイクその物をモチーフとしたもう1人の「仮面ライダー」…
肩の後輪をモチーフにした巨大タイヤのエンブレムと、開閉可能なヘルメット風の頭部が爽やかな、正義の味方…
「仮面ライダァァ!マッ…ハァァァァ!」
仮面ライダーマッハ、これこそが詩島剛の戦士としての姿である。
マッハは…剛は、一瞬だけ、もう一つのライダーの姿へと変える…シグナルバイクにてシフトカーたるもう一つの相棒を見るが…こんな雑魚相手にリスクは要らないとばかりに、通常のマッハの姿のまま、タキシードの集団へと突撃する。
「まずは、挨拶代わりだ!」
バイクの前輪のような銃、その名もズバリ「ゼンリンシューター」を構えつつ、剛は己の利用するシグナルバイクである一つを手に取ると、ベルトのバイクを差し替える。
シグナルバイク、シグナルコウカーン!カクサーン!
そんな音声が鳴り響いたと同時に、ゼンリンシューターからマシンガンのような弾丸の嵐が、そのタキシード集団へと襲いかかる。
狭い路地に集まっていただけに、それはもう、逃げる場所もない所に上から正面からと面白いように、弾幕の嵐で、タキシード集団は蜂の巣にされていく。
…なんだ、弱ぇなぁ…
剛は心の中でがっかりしつつ、とどめとばかりに、またシグナルコウカンする。
シグナルバイク、シグナルコウカン!トマーレ!
道路標識を止まれのサインのように、黄色く塗られた三角のオーラが、ゼンリンシューターから発射される。
そのオーラに触れたとたん…タキシード集団は一様に「固められた」。
そして…
シグナルバイク、シグナルコウカン!ライダー!ヒッサツ、フルスロットル!
シグナルバイクをもとの変身用のモノにもどして、自分のマッハドライバー…ベルトのバイクをぐいっと操作する。
するとどうだろう、バイクのマフラーを模したベルトからエナジーが燃え上がり、文字通り「マッハドライバー炎」となる。
そして、音声通りの『ヒッサツ』…エネルギーを纏った蹴りを敵にむけ、そのタキシード集団を爆散させる。
文字通り、完全勝利と言える、そんな一撃だった。
だが…剛は、ヘルメット状のゴーグルを上げて、エネルギーを排気しながら、訝しむようにあたりを見回した。
「人間じゃないよな……でも、コアが無い…やっぱりロイミュードでも無かったのか?」
小首を傾げて、彼らは何だったのかと言う答えが見えない疑問に頭を悩ます剛。
オツカーレ、剛のベルトの音声だけが、虚しく響いたのであった…。