騎士よ、音より早く追え -仮面ライダードライブ異伝・マッハ×チェイサーVS仮面ライダーW- 作:たんぺい
剛があの時、タキシード集団を爆散させた時…実は、剛は違和感を感じていた。
銃ではなく、素手で触った事で感じた事だ。
『芯が無い』、これである。
あるいは骨の無い肉でも、それこそ棒が無いアイスでも、感覚的にはそんな感じだ。
何だか、固まりきってないエネルギーそのものを破壊した、そんな感触を覚えていた。
あるいは…アレこそがロイミュードの能力なのでは無いのか、剛は一つの結論に達した。
ロイミュードの進化体は様々な能力を持っている。
最近だと超進化体もどきの風使いだって相手にした…擬似的な雑魚ロイミュードを召喚する能力だって、
よく考えてみたらあっておかしくないだろう。
剛は1人で結論付ける。
そうなると…俺1人だとキツいかもな。
そう、剛はぼやきつつ、進兄さんに早めに協力を求める事も考えている。
仮に公的な制約でドライブに変身出来ずとも、ドライブピットのクルーを経由し、例えばドライブの持つマックスフレア辺りの能力強化シフトカーの一つでも借りる等のサポートぐらいならしてくれるだろう。
りんなさん達も嫌とは言えないハズだし、むしろ快く応じるだろうから。
…もう1人の心あたりは、強さはともかく、剛にとっては素直に協力を求めるのはプライドが許せなかった。
そんな時、いきなり剛の背後から冷たいモノが首筋に当たる。
そして、この惨状はお前がやったのか、と冷たく聞かれる。
ふと、剛が落ち着いて良く見たら…なるほど、
ゴミ箱は散乱し、壁や道路は穴だらけ。
窓ガラスも割れている箇所があった。
そこに無傷でたって居る男…なるほどそう言う事か、と剛はため息をついた。
「あー、これをやったのは確かに俺だよ、銃を乱射せざるをえなくてな…正当防衛さ、20人近い紳士集団にエスコートされかけて…」
力無く、剛は説明すると、その銃を突き付けた者は、もう一つ質問した。
ガイアメモリ、特にスカルのメモリを知って居るか、と。
知らない、ガイア何とかって何だ?
剛はその質問に逆に問い返すと…その者は、銃を下ろし謝罪した。
「すまなかったな、俺は、強引にでも今回の事件の犯人をしりたかったのさ…そしたら、怪しいのが居てな…」
『だから先に言ったじゃないか、彼は君の同類だよ、と』
その者は、体が一つなのに、声の種類が2つだった。
これが…この街の…と、小さく呟いた後、剛は一言突っ込んだ。
「この街の仮面ライダーは、腹話術が趣味なのか?」
それに怒った、この仮面ライダーは…こう返した。
「腹話術じゃねぇよ!俺達は!」
『2人で1人の、仮面ライダーさ』
そう、この左右二色のツートンカラーのこのライダー。
左が青で右側が緑、マフラーたなびく二人で一つのこのライダー…
この街の守護神、それこそが…
仮面ライダーWであった。
「俺は、左翔太郎、半分側が…」
『僕は、フィリップと呼んでくれたまえ』
お、おう…と、狼狽えながら、剛は頷くしか無かった。
頭ではわかって居たが、右に左にと、文字通り真っ二つに割れながら、交互にこのライダーは話している。
まるでジキル博士とハイドと言うか、あしゅら男爵だよ。
話を聞いていると、正直、無駄に疲れるな…進兄さんのシフトトライドロンで色々慣れてなきゃもっと混乱してた気がするよ…
こんな事を思いながら、剛は、このライダーのファーストコンタクトで、少なからず疲弊していた。
だが、そんなたわいない事が頭から抜ける程、彼等は、重大な情報を教えてくれた。
「多分、あんたが戦ったのは『マスカレイド』、しかも、その残滓だな」
「マスカレイド…仮面舞踏会…か?」
『そう、それは園咲家が昔使っていた、量産型最下級のドーパント、だよ』
ドーパントとはなんぞや、剛の質問に対してダブルは答える。
かつて、園咲家は人間の進化の先をめざした。
ガイアインパクト…地球(ほし)の本棚と呼ばれるネットワークを軸に、秘密結社財団Xをも巻き込んだ…風都を巻き込んだ、一大計画があった。
そして、その園咲の人間が利用したアイテム、地球の記憶そのものを直結させたようなUSBメモリ型のデバイス。
それこそが、ガイアメモリと言うものだった。
そのガイアメモリで進化した人間、それこそが…まるでドーピングを施した人間のような者に例え、ドーパントと呼ばれる存在であった。
それらは規格外の力が有り…仮面ライダーとしての力でもあるのだが…
とにかく、人の手に余る、超人…最早災害になるような、そんな存在でもあったのだ。
だが…マスカレイドは別である。
マスカレイドのメモリを使っても、他のドーパントとは違ってそこまで強大な力は手に入らない。
だが、「仮面舞踏会」の名に恥じない…複数人で一つのマスカレイドと言う特性があった。
そう、複数人同時に、その地球の記憶に突っ込んでもおかしくはない概念だったのだ。
それが故に、作りやすく量産しやすいメモリの一つとして流通しており…
その影響か、上級ドーパントに至っては、まるで手下のように、メモリ無しで召喚可能な有る種のドーパントの残滓としての降臨すら可能なドーパントであった。
最弱が故に、もっとも恐ろしい、そんなドーパントだった。
そんなことを聞かされた剛はWに言った。
「そんな…なら、急がねえと!俺が今そいつらをやったばかりだ!多分まだ近くに居るぜ、そのマスカレイドってのをどんどん産み出せる強いドーパントってのが!」
だが、そのWはまるで泰然とした口調で返したのだ。
「だから…俺がキーワードを集めて…」
『僕が検索するのさ…!ところで、彼は僕らの知らない事を知ってるみたいだ、翔太郎…僕はそろそろおいとまかな』
「…まあ、お前に対人交渉は無理だよな…しょうがねえか」
そう言うと、Wは変身が解ける。
緑の…風の記憶のメモリが消滅し、1人の男が青い、銃の記憶のメモリを抜く。
そこには、二人で1人のはずなのに…まるで、80年代のドラマのような、ステレオタイプな探偵ルックの伊達男が立っているだけだった。
その伊達男は、己の帽子を弄りながら、こう言った。
「改めて、俺が、左翔太郎だ…フィリップは、ちょっと今検索をかけてくれている最中でな、まあよろしく頼むよ!」
検索とはそもそも何なのか、二人で1人なのに1人しか居ないの理由は何なのか。
剛は混乱しながらも、自分の正体を開かすことにした。
「あ、ああ…わかったよ左先輩!俺は…」
指をビシッと構える。
「追跡…撲滅…いずれも、マッハ!」
そして腕をぐるぐる回し、決めポーズを取った。
「仮面ライダー、マッハァ!詩島剛だ」
…おう、と、何か寒い物を見るような目で、翔太郎は唖然としていた。
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一方、同時刻。
(俺はどうしたら良いのだ…霧子、教えてくれ…)
(俺は、どうしたら良い…亜樹子、応えてくれ)
紫と赤の二人の無口な男が、風都で固まっていたのだ…。