騎士よ、音より早く追え -仮面ライダードライブ異伝・マッハ×チェイサーVS仮面ライダーW- 作:たんぺい
『…そうだね、剛君には、僕たちのそもそもの捜査のきっかけから話すべきだ』
フィリップの声がスピーカーモードのスタッグフォンから流れる。
そして、そのまま、長い話が始まった。
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…6日前、風都…
ぶっふぉと、それはそれは芸術的なまでの水芸がごとく、翔太郎は自分の飲んでいるコーヒーを吹き出した。
フィリップは、汚いなとそれは冷めた目で見ながらも…心底驚いていた。
それは、1つ…依頼人が『所長』こと照井亜樹子…旧姓鳴海亜樹子、自分達の元所長の娘で自分の所長の依頼だった事。
もう1つ…翔太郎が浮気調査や単なる尾行調査があまり好きではない為ペット捜索など安い依頼ばかり受けており、50万と言うまとまった前金が翔太郎にとっては徳川埋蔵金のようにも思えた事。
だが、それ以上に、依頼の内容が、翔太郎とフィリップには衝撃的だった。
「お父さんが夜な夜な街を彷徨いて、街の人に暴力を振るっているらしいの!!みんなで止めないと!!」
なんだそりゃ、フィリップはそう思い…翔太郎は、それ以上に驚愕していたのだ。
鳴海荘吉、翔太郎の師匠でありフィリップの恩人。
そして…彼らを助けるために、風と共に逝った英雄…。
帽子とスーツと蹴りが似合う仮面ライダー、だった男の話なのだから。
亜樹子の話を簡単に纏めるとこうだった。
ある夜、とある女の子が家に帰る途中、偶然ある車を傷つけてしまう。
だが、それを目撃した持ち主のチンピラが…ふざけるなとばかりに、ナイフでその少女に切りかかる…その瞬間であった。
帽子をかぶった骸骨男が、その男を殴り飛ばし…部下らしきタキシード集団と共に、その男を滅多うちにした。
それからと言うもの。
ここ数日、チンピラやヤクザもの、犯罪者といった裏路地にたむろする若者を中心に襲いかかる、骸骨男とタキシード集団の暴力集団が現れる。
そして…まるで、時が止まったかのような世界の中で、彼らは去っていくのだと。
「…でも、お父さんが、あの黒服…マスカット、だっけ?」
「それ、マスカレイドだよ」
「フィリップくん、それそれ!…じゃなくて、絶対ドーパントとつるんでるなんておかしいし…何より、スカルの力をこんな気軽に使うお父さんなんてお父さんじゃない!」
…彼女の言うとおりだ、翔太郎とフィリップは頷いた。
鳴海荘吉は、誇り高い男だ。
限界ギリギリまで追い込まれないと気軽に変身しない、そして『仕事』にガイアメモリは使わない。
それはかつて、鳴海荘吉が招いた友の暴走からの自戒…そして、愛する者との決別から来る誓いでもあった。
それを知っている…亜樹子は半分偶然の産物なのだが…全員の意見は一致していた。
きっと、ドーパントがスカル…仮面ライダースカルの姿を借りて、名を騙っていたに違いない、と。
そう、彼らはかつて、ダミードーパントと言う、全く同じ様な手段で悪さを繰り返していたスカルの偽物と戦った事があったのだ。
そして、ウォッチャマンやサンタちゃんやクイーン達と言った、情報屋からそう言った目撃証言をかき集め、そして3日後、つまりベルトさんが重加速反応を検知した、あの日に翔太郎はその鳴海荘吉を名乗る男に出会うことになった。
…3日前、風都、裏路地の一角…
「…くそっこの骸骨コスプレ野郎がっ!」
痩身長躯の男が、目の前の帽子をかぶった骸骨男を睨みつける。
その男は、学生をターゲットに違法薬物をばらまく小規模な売人集団、そのリーダーだった。
だが、手下にて友人だった者達が次々と、いずこかから現れたタキシード集団に殴り飛ばされる。
大勢は、決した。
だが…その男は諦めなかった。
「…俺の力を、みやがれ!」
アノマロカリス!そう叫ぶガイアメモリを生体コネクタに挿入する。
するとどうだろう…その男は、その通り、かつて絶滅したと言われたアノマロカリスを模した化け物へ変化する。
それは、かつてばらまかれたガイアメモリの、ある種の生き残りだった。
だが…骸骨男は、平然と銃を構えて、こう言った。
「…1つ、お前は子供を狙って傷つけた…1つ、その罪の重さを気付かない…1つ、力に酔って勝てない敵に挑む…」
何をペラペラと、と、その化け物はうめき襲いかかろうとしたが…
「貴様は、罪を数える資格すら、無い」
そう言った後、アノマロカリスドーパントの攻撃より早く、その銃に蜂の巣にされてその表皮ごとガリガリと砕かれてしまい、近づいた骸骨男がとどめとばかりに腹を蹴る。
そのダメージに耐えられず、アノマロカリスのガイアメモリは粉々に砕かれ、その男は気絶した。
骸骨男は、その男を踏みつけると、その銃を男の頭に銃口を突きつけるような形で当てる。
そして、つぶやいた。
「貴様は、街の為に…消す!」
その、瞬間であった。
「止めろぉぉ!」
「何…!?」
その、処刑が始まる直前、止めに入ったものが居た。
緑と黒の戦士、仮面ライダーW、サイクロンジョーカーであった。
後ろには、Wに『入って』気絶したフィリップと、彼を抱える亜樹子も居た。
そして…その骸骨男、いや、仮面ライダースカルはその姿を見て…戦意を解いた。
そして、嬉しそうに、変身を解除した。
…翔太郎、お前はまだまだ甘いが、帽子が似合いだしたじゃないか
…フィリップ、俺の付けた名前を大事にしてくれてありがとう
…そして今更だけど、ちゃんと結婚する姿を見れなくて、ごめん亜樹子
そう、嬉しそうに、言っていた。
まるで、先ほどまでの処刑人の姿とはまるで違った、普通の父親の姿であった。
頭では、皆わかっている…この『鳴海荘吉』が偽物なのだ、と。
だが、W達は…その男が偽物には、一瞬、思えなくなった。
その刹那…『鳴海荘吉』は、亜樹子に手を伸ばす。
しまった…!そうWが思った瞬間、しかしその『鳴海荘吉』は…
彼女の頭を撫でる、それだけだった。
…俺は、やっと、やっと触れた…親父らしい事を、何一つ、できなくて、すまない…
彼は、泣いていた。
誰にも涙を見せたことが無い男が、泣いていた。
風都の為に、全てを失った男が泣いていた。
気が付けば、亜樹子も翔太郎も、フィリップすらも泣いていた…。
そして、情けない姿を見せたな…と謝罪すると、『鳴海荘吉』は悲しい顔をした。
ああ、俺は「違う」と、わかったか、と。
そうだ…本物の鳴海荘吉は…亜希子に触れる事が出来ない、「呪い」を受けている。
愛する者に触ると…爆死する筈だった。
…だから、そうだな。
その右手をかざすと、全ての時間が止まったかのような、そんな世界を巻き起こす『鳴海荘吉』は…闇の中へと消えていきながら、こう言った。
…俺を止めたければ、早くしろ、と。
後には、慌ててその姿を追いかけようとする亜希子と…無言で立ち尽くす翔太郎とフィリップ。
そして、『鳴海荘吉』が倒したであろう…気絶した外道どもが転がっているだけだった。
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『…そして、僕らは、その偽物の鳴海荘吉を追っかけて、翔太郎が手当たり次第に色々探していたのさ』
なるほど、と、剛は納得した。
恐らくはその正体はロイミュードなのだろう。
そして、本物の鳴海荘吉を…コピーしたのだ。
その父親らしい慈愛も嘘っぱちだ、剛は心の中で吐き捨てる。
きっと、コピー元の感情…未練を元に、超進化したいだけなのだろう。
親子愛すら、師弟愛すら利用するなんて…まして、こんな純粋な人たちの思いを踏みにじるなんて…
この場に進兄さんが居なくて良かったかもしれない、きっと、俺以上に怒りに震えるだろうから。
剛はそう思っていた。
…だが、フィリップの口から開いた言葉は、剛の予想の範疇を、超えていた。
『あの鳴海荘吉は…本物なんだ翔太郎!偽物だからこそ、完全な本物の鳴海荘吉なんだよ!』
実に矛盾する言葉。
だが、フィリップの口から語られた真実は、皮肉にもそれを証明しているのだった…。