騎士よ、音より早く追え -仮面ライダードライブ異伝・マッハ×チェイサーVS仮面ライダーW- 作:たんぺい
「ハート様、申し訳有りません!」
まるでバレリーナや中世の姫を彷彿とさせる…いわゆる、黒ゴスと言えば良いだろうか。
そんな、ふわふわとした華美な漆黒の衣装を身に纏った女の子が居る。
彼女の名前はメディック。
その「医療」と言う名前の通り、ロイミュードを癒す力を持った…死の天使、だった。
そんな彼女の氷の微笑みに救われるロイミュードは少なくないが…
破壊され未来が無くなるロイミュードも、また少なくなかった。
そんな、鉄の女が…顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。
それを、面白そうな表情で見ている男も居た。
「メディック、貴女らしくない…いやぁ、ハートの役に立たぬ穀潰しって意味だと、実に貴女らしい…ハートには悪いが、愉快で痛快で笑える光景だ」
そんな、昔の昼ドラみたいなねっとり嫌みを送る緑色の服の眼鏡の男、彼はブレンと言った。
その「脳みそ」と言う名前よろしく、頭はメディック以上に良い。
そして、それ以上にハートには高い忠誠心がある。
だが、彼風に彼を評価するならば…
「…うるさい!」
「ぬわぁ!私をコアに戻さないでぇ!」
…短慮で、嫌みで、小物臭い兄ちゃんでしかない。
そんな彼らを呆れた視線で眺める、紅いスーツを来た長身の違丈夫が居た。
彼こそがハート。
心臓と言う意味の名前の…平たく言えば、罪な男だった。
理性的で、優しく、そして一本気な性格のハート。
その実力と、それ以上の包容力は、メディックやブレンから無償の愛を受けるほどの器で有った。
そして、例えば、かつての冷酷非情な男…001すら、無条件で認めるほど、彼はロイミュードの王としての風格を身につけ始めていた。
彼は、そう…本来は上下関係の無いはずの…ロイミュードの長でありグローバルフリーズなど多くの事件での首謀者でありリーダーだった。
とは言っても、それこそ、毎日のように部下同士が喧嘩しているのを見るのは、鷹揚なハートからしたらでもウンザリする訳で。
肩を少しだけハートは落とすと、諫めるように言った。
「メディックも顔を上げて…ブレンも、仲間に言いすぎだ!」
ハートの言葉に顔をパッと笑顔にさせるメディックと、それとは対照的にいつの間にかロイミュードのコアから復活したブレンはハートに罰の悪そうな顔をする。
そして、その後、こう続けた。
「メディックは失敗しちゃったけど…108人しか俺の友達が居ないのに、109人目…いや、うまく行けば1000人だって10000人だって友達が増えるような、素敵な話なんだ…ちょっと怪我したぐらいで、俺は怒らないよ」
そう、骸骨男…スカルに吹き飛ばされてようやく立ち直れたロイミュード3人は、ある程度復活するために一週間近くアジトで静養するしかなかった。
そして一週間後の…つまり、剛とW…ついでにチェイスと竜が邂逅した丁度、今日。
ハートは昏睡から目を覚ましたのだ。
特に、あの時…スカルが3人にトドメを差そうとしたあの時。
スカルのマキシマムドライブから、味方のブレンとメディックをかばって、ハートは彼等の盾になった。
コアこそ破壊されなかったものの…長い長い昏睡状態になるほど、深いダメージを受けていた。
そして、その深いダメージは…元を正せば、全てメディックのものだった。
ごめんなさいごめんなさいと、顔をあげろと言われても泣き伏せる件の下手人メディックを…
ハートは優しく抱き留め、そして、更に諭すようにこう続けた。
「君が気に病むのはわかる、だが、過ぎたことは仕方ない…それより、メディックやブレン、君たちを失わなくて良かったよ」
「…は、ハート様……ありがとうございます!でも、全部私が悪いんです……あんな軽率な実験を、あんな失敗作でやるから!」
ハートは、仮にも友達になれるかもしれなかった物を失敗作って言うなよと、少し悲しい顔をする。
そんな光景を、ブレンはハンカチを噛みしめながら、見ていた。
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同時刻、風都の裏路地
『…結論から先に言おう、あの鳴海荘吉は1週間もしたら自壊する』
フィリップはこう前置きして、続けた。
曰わく、こういう事なのだ。
通常のロイミュード達は、バット・コブラ・スパイダーの素体から誕生する。
そして…進化する度に、仮面ライダー以上の進化と超能力を手に入れる。
だが、進化に届かない者も、やはり少なくなかった。
だが、最初から進化体クラスのエネルギーが有りそうなバイラルコア…ロイミュードのコアの素体以上のエネルギー体が有ればどうだろう。
そこに目をつけたのが…偶然、メディックが拾った、ビギンズナイトがあったあの場所にたまたま立ち寄った際、海岸に打ち上げられたスカルのガイアメモリだったのだ。
彼女はこの小さな棒から、不思議な力を感じた。
恐らく、自分たちロイミュードに匹敵する力を。
それは、うまく使えば、きっと大好きなハート様の新たな力になるだろう…メディックはそう結論付けた。
だが、バイラルコアの代用にいきなりハートを巻き込む訳には行かない。
ブレンでいいや…とは思うが、失敗して死んだら…恐らくハートが悲しむ、それはメディックにとって何より嫌だった。
そこで、彼女は…ふと気が付いた。
ああ、『X』ならば丁度良い、あれならうまく使えそうだ…と。
『彼女、メディックだったかな?それがXと名付けた存在、それは、言わばロイミュードが生み出そうとしたロイミュード…ナンバーが無い、文字通りのXナンバーだった』
フィリップが少し解説を挟みながら、話を続けた。
その『X』は、そう…とても良くできた、人形だった。
会話能力も、戦闘能力も、ロイミュードに欲しい最低限の力はある。
しかし…感情を持つことは、ついに、なかった。
ハート達は、ゆっくりその友達…あるいは、ハートにとっては娘や息子のような存在のそれを眠らせてやろう…そう思い封印したが、『人形』であった事に、メディックは目を付けた。
かつての魔進チェイサーやハートが搭載した超重加速の実験の素体として、バイラルコアを密かに使いメディックは実験台として利用していたのだ。
そして、反乱などの心配が無い、つまり意志がない事に油断したメディックは、スカルのガイアメモリに『X」のデータを差し込んだ。
だが、それはメディックの想定の外の事態を引き起こした。
それが『鳴海荘吉』の召喚、そして暴走であったのだ。
余談だが。
ハートに『X』を利用した事がバレたメディックは、それはそれはこっぴどくハートに叱られたと言う。
ハートは一度も手をあげず、こんこんと、ただメディックは叱られた。
…逆に堪えるわよ、ハート様。
メディックは内心思いながら、お説教を涙目で正座して聞いていたと言う。
そして、何故か、ハートの説教なら私もちょっとうけたいと、若干ウザくてキモくてホモの顔をしたブレンが居たとか居なかったとか。
…本題。
そして、フィリップは最後にこうしめた。
『そのX…ロイミュードと言うより、むしろガイアメモリが本体だから…仮にスカルドーパント、としよう…スカルドーパントは、本来有り得ない力のオーバーロードで並のドーパントやロイミュードの能力を遥かに凌駕するパワーを持っているが…身体が堪えられないだろうね、例えばバイクに飛行機のジェットエンジンを無理やりくっつけてるような話だ、遠からず自壊する』
なるほど、コーヒーでも~ってセリフは、そのタイムリミットが一週間以内なのかと、剛は思い納得するが…
次のフィリップの言葉に、思わず、そんなわけないと絶叫したのだ。
『…しかし、そのスカルドーパントの魂は、Xが鳴海荘吉をコピーしたと言うものではない…仮面ライダースカル、その魂として一緒に鳴海荘吉と共に戦い抜いたスカルのガイアメモリそのものの記憶と経験なんだよ、Xに意志は無いからね…だから、鳴海荘吉じゃなくても…彼は紛れもない仮面ライダースカル、そのものなんだ!』