騎士よ、音より早く追え -仮面ライダードライブ異伝・マッハ×チェイサーVS仮面ライダーW- 作:たんぺい
路地裏の物陰から、仮面ライダーが集まる姿を確認する…最後の仮面ライダーがいた。
仮面ライダースカル、件の事件の渦中にいる男だった…。
…全部ばれて、しまったな。
その仮面ライダースカル…否、フィリップの言うところなら『スカルドーパント』。
彼は自嘲するように呟いた。
…『俺』は鳴海荘吉、そう思いたい
ぽつりと、誰にも聞こえない程度の声で、それを続ける。
…だが、本当の『俺』はもうどこにも居なくて、俺は本物の残滓なんだろう
…だから、自分で自分を止められない、本能のままでしか動けない、獣だ
…もっと上手く、もう1人の俺は出来るだろう
…だが、この俺は、自分が街を泣かせる『悪』だと想えば殴るのを止められない
…愛するものを見れば、地球の記憶を覗き見してでも笑ってくれと素直に言ってしまう
…これじゃあまるで、翔太郎だなぁ…
…それと、剛だったか、彼には悪いことをした、銃を持って路地裏に来るからてっきりな…
最後に…口元が有るのなら、きっと薄くつりたげただろうスカルドーパントは最後に言った。
「『これ』が、『俺達』仮面ライダースカルの、最期の戦いかもな…」
小鳥のようなガイアメモリが宙を舞うのを見届けて、スカルドーパントは仮面ライダーたちの前へと、
その姿を現そうとした。
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「私…聞いてない……」
亜樹子はぽつりと、呻くように呟いた。
そう、遅れてきたチェイスと竜と彼女たちは、剛から説明を受けていた。
自分たちが追いかけている『鳴海荘吉』は、決して偽物ではないと。
剛はフォローするように、あれはあれで偽物でしかない…と、言っているが、自分でも薄ら寒いフォローだとは剛は感じていた。
例えば…剛にとっては、霧子だ。
彼女がもしも居なくなって、代わりに姿が全く同じ『霧子』が現れたとする。
それはそれは、剛は反発するハズだ、お前なんか姉ちゃんじゃない!と。
しかし、その偽物が本物と同じ記憶を持っているのならどうだろう。
更に言えば、大事な遺品や宝物から、だとしたら。
それは…本物以上に、本物なのだろう。
時間とは、記憶により繋がるものだ。
逆も、また然りだ。
剛も、本当なら、件の事件の張本人…その鳴海荘吉の娘に向かって言いたく等なかったが、
しかし黙ってしまうのは、もっと失礼な気がした。
フィリップが、真っ直ぐに翔太郎に向き合い、そして真っ直ぐ自分にぶつかった姿を見て、
もしかしたらそう…剛は思ったのかも知れない。
さて。
亜樹子は、翔太郎と剛に散々質問した。
己の『父親』を救う手立ては無いのか、そんな、まるでセミのように短い命を…悪人相手にばかりしかぶつけられないのか、と。
しかし、剛はもちろん…翔太郎はもっと、亜樹子に向かって「黙れ、俺が一番思ってるんだ!」と叫びたかっただろう。
だが、それは『仮面ライダー』として許されない…叫びだった。
…だから、彼らは黙ってその質問にはうなだれるばかりだった。
最後は見かねて竜が亜樹子を抑えに行くが、その表情は非常につらそうなものだった。
家族を非常に大事にする竜、しかも本来ならば義父にあたる男の話なのだから。
そんな様子を、チェイスはただ1人黙って見ていた。
いつか、『家族』の苦しみに、チェイスは困惑したことがある。
…彼には、家族は居ないのだから、それも赤ん坊のような情緒しかないのだから。
そう、チェイスは人間ではない…チェイスは000と言う、プロトタイプのロイミュードだった。
だからか、人間の人間らしい在り方をまだ、チェイスは知らない。
自覚していないだけの節はあるが、知識も少ない所が有った。
「…人間は、血が繋がらないのに、家族になれて、父親になれるのか」
…チェイスはまた一つ、かしこくなった。
そんなおり、甲高い鳥のような鳴き声が聞こえた。
X型の鳥のような…ガイアメモリ、だった。
それは『エクストリームメモリ』、地球そのものと直結する、究極のガイアメモリ。
仮面ライダーWの究極にして…最後の嵐を呼ぶ、切り札。
そして…
「前から思った事だが…僕はタクシーやバスに一生乗らなくても生きていけるよね」
地球の本棚、そのデータベースに直結出来るフィリップにとっては、貴重な移動手段だった。
そんな、悲壮感をぶっ壊すマイペースな登場に、亜樹子や翔太郎や剛はおろか竜すらひっくり返るが、
フィリップは構わずにチェイスに目配せし、言った。
…君は、気付いているんだろう?とっくに、『鳴海荘吉』がこの場に来てることに、と。
ざわざわ、と…周囲が騒がしくなる中で、チェイスはぽつりと答える。
「…何故なら、誰も、聞かなかったからだ!」
…フィリップ以外の全員が、ひっくり返った。
フィリップだけは、確かに…と、納得していた。
そんなおり、いきなり現れたのは『鳴海荘吉』、だった。
「言われなくても、みんな揃ったら出て行くつもりだったぜ…」
そんなことを言いながら、こつこつと、彼は歩を進める。
「良い後輩が出来たな翔太郎…最後の授業だ…変身…いや、違うか…」
その鳴海荘吉は…皮膚がボロボロと崩れるように、仮面ライダースカルの姿へと変化した。
…そうだ、この鳴海荘吉の正体はスカルのガイアメモリそのものだ。
『仮面ライダースカル』が彼の本来の正体、鳴海荘吉の姿は…『X』の力の副産物による、姿のコピーだった。
「…フィリップ、俺へと名付け返してくれてありがとう…俺の名前は…」
スカルドーパント、そう言って、自身の銃であるスカルマグナムを銃口を水平に構えた。