赤き旅人の巡る物語   作:morumo

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お久しぶりの投稿です。
今まで通りの頻度で投稿できるようにはまだなりませんがこれからもよろしくお願いします‼︎



第11話 レッドの異変

おつきみやま

 

ニビシティとハナダシティを繋ぐこの山はカントー地方のガイドマップにはこう記されている。

 

『不思議な力を秘めた 星の降る山』

 

この場所はカントーで唯一ポケモンを進化させる為の石『つきのいし』が発掘でき、更に月との関係が深いとされているポケモン ピッピが生息しており宇宙と関わりの深い山として現在も研究が続けられている。

 

しかしこの山のマスコットと言われるポケモン ピッピは滅多に姿を現さず、殆どはイシツブテや超音波で周囲の情報を得て行動するコウモリを思い起こさせる姿をしたポケモン ズバットと、体にキノコを取り付けた特徴的な姿ポケモン パラスが主に見かけられるポケモンだ。

 

普段のおつきみやまは野生のポケモンが襲ってくる事もあるが比較的1番道路と同じように温和な場所である、

しかし今のおつきみやまのポケモン達の様子はそれと真逆をいっていた。

 

ポケモン達はとにかく目の前に現れた人に勝負を挑むといった行為を行っていた。

 

それは何故か?、恐らく今から約一週間前にこのおつきみやまに現れた大勢の黒服の集団、ポケモン密漁売買組織ロケット団が山中を徘徊し時としてここに住む野生のポケモンの巣などを破壊し自分達の生活が脅かされている、そのためポケモン達は自分達の居場所を守るためロケット団に立ち向かったがロケット団の持つポケモン達の前に敗北、しかも目に付いたポケモン達をロケット団は次々と捕獲していった。

 

レッドがゲットしたニドラン♂、ドドラも“ふいうち”というニドラン♂が覚えるのは珍しい技を覚えているためロケット団に狙われていた。

そのドドラの強力な技“ふいうち”も使用できる回数が多くないので大勢のロケット団相手にすぐに使用限界に達し、他の技じゃ大勢に対抗できず逃げる羽目になってしまった。

 

このように圧倒的数の前におつきみやまのポケモン達は敗北したのだ。

 

そしてロケット団に捕獲されることを嫌がるポケモン達は別の住処を探しに山を出る。

 

そのためおつきみやま周辺のポケモン達の様子は慌ただしく、人間に対して警戒心を抱いているため好戦的になっていた。

 

これがおつきみやま周辺がおかしかった理由だ。

 

 

そして

 

 

「ヒッポ!“ニトロチャージ”‼︎

キーク!“からてチョップ”‼︎

ドドラ!“にどげり”‼︎」

 

レッド達はドドラをゲットしてから約2日でおつきみやまの入り口付近まで辿り着いた。

 

錯乱している・・・恐らくズバットが放った相手を混乱状態にする音波を発する技“ちょうおんぱ”で混乱したイシツブテやイワーク達をレッドは3匹のポケモンを駆使して押さえ込んでいた。

 

「レッド‼︎ヒッポ達を下げて‼︎」

 

「あぁ‼︎みんな下がれ‼︎」

 

レッドはポケモン達を下がらせる、そしてそれを支持したブルーの足元には2日前のニドラン♀との戦闘でフシギダネからフシギソウに進化したフシくんが錯乱しているポケモン達に向かって背中の赤い蕾を向けている。

 

「“ねむりごな”‼︎」

 

ブワッと緑色の粉が蕾から放たれ錯乱しているポケモン達に降り注ぐ、ポケモン達はやがて眠気を催しフラッとふらつくと意識を失い、地面に倒れる。

 

「よし、戻れキーク、ドドラ。」

 

俺はヒッポを残して他のポケモン達をボールに戻す。

さっきヒッポの使った“ニトロチャージ”は相手に攻撃すると同時に素早さを上げる技だ。ポケモンの能力変化はモンスターボールに戻すと消えてしまう、そう考えるとこの様子だと更に激しい戦闘がおきそうだから能力の上昇は残しておいたほうがいいだろう。

 

「よし、行こ・・「待ちなさい!」痛い⁉︎痛い‼︎耳を引っ張るなって⁉︎」

 

おつきみやまの入り口へと続く階段を上がろうとしたら急にブルーは俺の右耳を引っ張り出した。引っ張り出したって言葉おかしいな・・・いや、でも耳がちぎれるくらい引っ張ってきたぞこいつ・・・。

 

「何堂々と歩いてるのよ‼︎また野生のポケモンでもひっかけたら厄介でしょ‼︎」

 

そう言うとブルーは俺の袖を引っ張って自分の胸元へ俺を抱き寄せるって⁉︎顔⁉︎顔⁉︎

近い近い近い近い近い近い近い近い近い⁉︎⁉︎

 

ブルーの顔がレッドの丁度斜め上、レッドが視線を上に上げると丁度ブルーの整った綺麗な容貌と口に近い分、ブルーの吐息が間近にレッドに降りかかり、レッドは頭がクラクラしだした。

 

「フシくん戻って、この子の力を借りましょう。」

 

ブルーはフシくんをモンスターボールに戻すと新たに違うモンスターボールを取り出してニコッと笑みを浮かべる。

だから顔が近いって・・・ぁぁ、なんかいい匂いがするぅ〜・・・

 

「ちょっ⁉︎レッド何よその間抜けな顔は⁉︎」

「ふぁい?」

 

にゃんのことかにゃ〜へへへったのしくにゃってきたにょ〜〜ホホホホホホッ‼︎

 

あきらかにレッドの様子がおかしい、

とにかく先に進もうとブルーはすぐにボールを地面に投げつける。

 

「ワァァァック‼︎」

 

ボールから現れたのはイワーク、ブルーは先日おつきみやま付近のポケモンセンターで休んだ時、ある技を使うこのイワークを発見し捕まえていたのだ、レッドは部屋で爆睡していたためこの事は知らない。

 

「“あなをほる”‼︎」

 

ブルーの指示と共にイワークはズボッという音を立てて地面に潜り込む、ブルーは様子のおかしいレッドを抱えてその穴に飛び込む。

 

穴の中に入ったブルーは未だに穴を掘り続けるイワークに届くよう大きな声で指示を出す。

 

「おつきみやまの内部・・・人のいなさそうな小部屋に出て‼︎‼︎」

 

その後にイワークの低い声が鳴り響き、イワークの穴を掘るスピードが速くなる、イワークもブルーの指示を待っていたみたいだ。

 

ブルーはすぐに抱えているレッドと共に地面に座り込む。

 

「レッド‼︎どうしたのよ。」

「ふぁっ?」

 

レッドの頰は赤く染まっており、不思議と呼吸も早い気がする。

 

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ」

 

「本当にどうしたのよ・・・」

 

熱にしては急過ぎるわよね、そんな素振りも様子も全く見られなかったし・・・

技を食らった様子もなかったし・・・

 

「カゲェ・・・」

 

ーヒッポも心配してる・・・

 

レッドがボールの外に出していたヒッポは心配そうな声を上げてレッドに寄り添っている。

 

「レッド・・・キャッ‼︎」

 

ーえ?

 

ブルーはそっとレッドの手のひらに触れたその瞬間、レッドがブルーを押し倒した。

 

「ハァ・・ハァ・ハァ・・」

「ちょ・・・ちょっとレッド⁉︎」

 

両手首を握られ身動きを取れなくさせられるブルー、それを行っているレッドの息はさっきよりも熱っぽく、頰の赤みも増しているが。目も虚ろな状態で一見すれば風邪を疑うようなくらいだが、

 

 

 

 

ーちょっと待って・・・レッド・・・

 

 

 

 

 

ー発情してない・・・・?

 

 

 

 

真正面から間近でレッドの虚ろな瞳を見たブルーにはレッドの瞳の奥に獰猛な気配を感じた。同時に自分の危険信号が一気に真っ赤に染まる。

 

「ハァ、ハフゥッ・・・!」

「あっ・・・!やめてよ‼︎」

 

レッドはブルーの首筋に唇を這わす。

ブルーは両腕を押さえつけられているため両足をバタつかせ抵抗する。

 

レッドは暫くブルーの首筋に唇を這わすとスッと顔を上げる。

 

「ハァ・・ハァ・・・ハァァァァァ・・ン‼︎」

 

するとレッドは熱っぽく、男とは思えないほどの女らしい色っぽさを纏わせた声を発する。元々女顔っぽいため見ている側とすれば今の声が更にそう聞こえただろう。

 

「・・・レッド⁇本当にどうしたのよ‼︎正気に戻りなさいよ‼︎ふぁっ⁉︎」

 

ブルーは叫び声をあげるがその瞬間レッドがブルーの両手首を掴んでいる手を離しギュッと力強く抱きしめた。

ブルーもいきなり抱きしめられ驚きの声を上げる。

 

ブルーの左耳元でレッドの熱を帯びた吐息がかかる。ブルーは目をきつく閉じ脱出するために精一杯暴れ出す。

 

「ハァァァ・・・はむっ・・ンゥゥッ!」

「‼︎⁉︎」

 

レッドが抱きしめたままブルーの耳を甘噛みする、そして何回も丁寧にその行為を繰り返す。

 

ー今のうちに

 

ブルーはレッドが自分の耳を舐めている間、その行為による妙な感覚に耐えながら自由になった右手で腰につけたモンスターボールを取ろうとするが

 

 

ーあれ・・・ない⁉︎

 

 

自分の腰にある筈のフシくんとコンちゃん、そしてレッドのドドラと一緒に自分達を襲ってきて捕獲したニドラン♀、ニドちゃんのモンスターボールがないのだ。

 

ブルーは自分の耳に夢中のレッドにポケモンを使って脱出しようとしていることを悟られないようにスッと右側に視線だけを移動した。

 

ー⁉︎

 

ブルーは目を大きく開く。

ブルーのモンスターボールは全て今のブルーの位置から遠いところにあったのだ。

おそらくレッドが自分に抱えられている間に取って遠くに置いたのだろう。

 

ーマズイ・・・!そうだヒッポ‼︎

 

ブルーはヒッポに助けを求めようと穴の中を照らす光を追いかけオレンジ色の体を見つける。

 

「・・・・・・・・」

 

ヒッポはなぜか両手で耳を塞ぎ小さく縮こまった姿でブルー達が入ってきた穴の入り口方面の隅っこでブルー達に背中を向けていた。

 

ーヒッポさぁぁぁぁぁん⁉︎⁉︎

 

ヒッポはレッドの現在の行動の真意を理解しているようだ。ただ一つ勘違いをしているとすればヒッポはブルーがそれを()()()()()()()と思っている所だろう。

実際は全くの逆だが、もしかするとヒッポがポケモン図鑑に書かれた『控えめな性格』は今のこの状態に現れているのかもしれない。

 

ー手持ちのポケモンは使えない、ヒッポに向かって叫んでもヒッポのボールはレッドが持ってる、戻されたらおしまい・・・

 

 

ーせめてヒッポがこっちを向いてくれたら・・・‼︎

 

 

そうすれば自分が助けを求めているのを知って貰えるのにとブルーが考えた所でレッドがブルーの耳から口を離しまた色っぽい声を上げる。

 

「ふぁぁぁぁぁぁ・・・っん・・・!」

 

「⁉︎」

 

ブルーの耳を舐めている時にレッドの男とは思えない程の艶っぽい声は聞いていたが、ブルーの目が大きく開かれた、しかしそれは別の理由だった。

 

ーウソ・・・ウソ・・・

 

 

 

 

 

『違和感』

 

 

 

 

 

()()が自分の足の付け根の内側に触れている『違和感』

 

 

 

 

ブルーはそれに目を大きく開いて驚いているのだ。

 

 

ブルーはレッドが嫌いではない。

一週間以上も一緒に行動しているのだ、しかも異性同士だ、嫌いな人とはそんなことできるはずがない。

 

しかし好きでもない。

恋愛対象ではないー友達として好きかどうかを聞かれたらブルーは好きだと即答するだろう。

それはレッドも同様だ。

レッドもブルーを異性としてみている節はあるしふとした瞬間にドキッとする事は多々あったがレッドにはナナミという好きな人がいる、そのためそんな事があっても恋愛感情を抱いた事は一度もない。

ブルーもレッドに意中の相手がいる事は知らないが自分の事を恋愛対象で見ていないことを察しているから一緒に行動している節もある。

 

だけど今この状況に陥って、

ブルーはレッドに押し倒され、耳を甘噛みされても不とは思わなかった。

だからこそ体で抵抗しながらも落ち着いてこの状況を打破する方法を考える事が出来た。

 

しかし、それは普通できることではない。

好きでもないと認識している相手にそういう事をされて冷静に対処するなんてことできるものじゃない。

 

『もしかしたら自分はレッドに恋愛感情があるのかもしれない。』

 

頭の中でそういう考えがふとブルーに浮かんだ。実質レッドは顔は少し童顔っぽいが整っていない訳ではない、尊敬している部分もある、だから好きになる条件は揃っているのだ。

 

 

だけどその考えは間違っていた。

 

 

レッドのズボン越しにでもわかるソレを自分の肌で感じてブルーはそう思った、

いや、思うこともできなかった。今のブルーの中は

 

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

 

 

その事で頭がいっぱいだった。

今までバタつかせていた足もピタッと止まり、徐々に恐怖で震えだす。

 

「ハァ・・・・ハァ・・ハァ・・」

「いや・・・いやぁ・・・」

 

レッドが変わらず火照った顔に虚ろな目でブルーの瞳を見つめる。

さっきまでそれ以上のことをされていても冷静でいた筈のブルーは瞳を見つめられる程度の事で目尻に涙を溜め、潤んだ声で拒絶の言葉を吐く。

フッとレッドの口元に笑みが浮かぶ、レッドはそのままブルーの耳元に口を近づけ。

 

 

 

 

「ーー」

 

 

 

 

ある言葉を囁いた。

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

ブルーの顔が一気に蒼白に変わり、何処から出しているのかわからないほどの叫び声を上げる。

 

犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される犯される‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

「カッゲェッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

ドォン‼︎‼︎

 

 

 

その瞬間、レッドの左腕にヒッポが“たいあたり”を繰り出し、ブルーに覆いかぶさっていたレッドを突き飛ばした。

レッドはそのまま数回地面に激突しクタッと意識を失った。

 

「カゲッ⁉︎」

ーやりすぎた⁉︎⁉︎

 

ヒッポは身体中から冷や汗を流しながらフーッフーッと荒い息をしている。

自分の大切なトレーナーに思いっきり技を繰り出し気を失わせた事にとてもとても後ろめたさがあるらしい。

 

しかし明らかにさっきのブルーの悲鳴は異常だった。自分は耳を隙間がないくらい塞いでいたのにキーンと頭蓋骨に響くような声にクラクラしてしまいそうだった。

 

ブルーはすくっと上半身を起き上がらせたものの両手を互いに反対の肩に手を回し胸の前で交差した状態で未だに恐怖で震えている。

 

「ん・・・うぅ・・・」

 

ブルーとヒッポが自分の心の整理をしている間に仰向けで意識を失っていたレッドが目を覚ましたようだ。

ビクッとブルーの体が強張る。

 

「あれ・・・?ここ・・・どこだ・・?」

 

たしかブルーの胸元に抱き寄せられて・・・・なんか視界がグニャグニャして・・・あれ?そのあと・・・何があったんだ?

 

レッドが自分の現状を把握するため記憶を遡っている間にブルーは遠くにやられたフシくん達のモンスターボールを拾いレッドから距離をとる。

 

レッドは周囲をキョロキョロしながら視界にブルーを捉える。

 

なんであいつ俺をじっと見てるんだ・・・

なんか俺・・・やらかしたのか・・?

 

ブルーの視線はレッドに向いていた、しかしレッドにはその理由がわからない。

なぜならレッドにはさっきまでブルーに対して行った行為を覚えていないのだ。

 

自分の記憶の途切れとブルーの態度からレッドは意識がない間に自分が何かしらやらかした事を悟った

 

「なぁ、ブルー・・俺、何かし」

「見つけたぞ‼︎侵入者だ‼︎‼︎」

「っ!」

 

ブルーに俺のしでかした事を聞こうと思って声をかけた瞬間。侵入者のことを伝える声が聞こえたそれと同時に俺達の近くの穴から胸に大きく『R』と書かれた黒服に白い手袋をつけた人物達が降りてくる、いかにも泥棒みたいなダッセー服装だなこいつら・・・

 

「ここら辺のポケモン達の様子がおかしいのはお前らのせいか。」

 

侵入者だと叫んだ瞬間にモンスターボールを構えたあたり怪しいがもしかしたら味方の可能性もあるかもしれない、なら自分達がポケモン達の様子を見てこの場所に来たという事とその原因を追っているということをいっぺんに伝えられるこの台詞を使えばこいつらが敵か味方か判断できるはずだ。

 

多少失礼かもしれないがそんなのはそんな怪しい服を着ているこいつらが悪い。

 

「ここら辺のポケモンがどうなったかなんてこっちにはどうでもいいんだよ。お前らロケット団に楯突くきか‼︎」

 

これで答えは出た‼︎

 

こいつらは敵だ‼︎‼︎

 

「ロケット団なんてダセー名前の組織知らねぇし、これがお前達の所為なら俺は全力でお前らを潰してやる‼︎ヒッポ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

ヒッポが俺とロケット団と名乗る組織の人物3人の間に立つ。

 

「生意気なクソガキが‼︎ゴルバット‼︎」

「アーボ‼︎」

「ドガース‼︎」

 

ロケッド団3人は構えていたボールからモンスターを繰り出した。

 

さっきのポケモン達の混乱の原因となったポケモン ズバットの進化した姿で体が一回り大きくなり、進化したことによって目が現れ少なからずの弱点であった視界がなくなったポケモン ゴルバット。

 

紫の体に鋭くきつく吊り上がった黄色い瞳に長い体、蛇を想像させるポケモン アーボ。

 

アーボと同じく紫の体を持っているが球体に近いような形をしており体に開けられた穴からガスを吹き出すポケモン ドガース。

 

「毒タイプのポケモン3匹か・・・」

 

毒タイプのポケモンの戦闘手段は基本、相手を毒状態にし、徐々にダメージを奪いつつ弱り切ったところに攻撃を当てる事だ、そのため長期戦や1対複数の戦闘に持ち込まれると厄介なポケモンだ。

 

俺の手持ちは3匹、炎タイプのヒッポの攻撃は毒タイプには通るけどキークとドドラが得意な格闘タイプと毒タイプの攻撃は効果いまひとつでしんどいところがある。

おそらくこいつらの他にも同じような奴らがまだおつきみやまにいるはずだ、囲まれないように出来るだけ1回の戦闘にかかる時間を少なくしないといけない、HPとPPの消費もそうだ。

 

俺の手持ちだけじゃしんどいな。

 

俺は自分の斜め前に座り込んでいるブルーに声をかけようと口を開く。

 

「・・・・‼︎」

 

声が出なかった。

座り込んでいるブルーの体はかすかに震え、目から涙が流れていた。

 

いつもの俺ならそれでも声をかけていただろう、そうしないとブルーの身も危険だから。

 

だけど俺の中で俺がその言葉を発することがおかしいと思ってしまった。

理由はわからない、しかしそれを言おうとすると胸の奥に痛みと同時に罪悪感で吐き出しそうになる。

 

俺は今来た吐き気を歯をくいしばる事で押さえ込みそのままブルーの元に走り出す。

 

「ヒッポ‼︎ゴルバットに“ニトロチャージ”!」

 

ゴルバット向かって炎纏ったヒッポが突進する。

しかしゴルバットはそれを避けたが壁に着地したヒッポは壁を利用してまた技を繰り出し命中させる。

しかし間髪入れずにアーボとドガースがヒッポに襲いかかる。

 

1対3ではいくらヒッポが技をノーモーションで出せるといってもキツイ。

なら相手のポケモンの中で1番厄介なゴルバットに狙いを定める。

ゴルバットは相手を混乱状態にさせる技と毒状態にさせる技を持っている。

毒は俺の手持ちにどくけしがあるからいいが混乱状態にさせられると一度モンスターボールに戻す必要がある。

それだと“ニトロチャージ”であげていた能力をリセットしてしまう事になるので避けたい。

 

ゴルバットの混乱状態に陥らせる技といえば『ちょうおんぱ』だ。

これは技を放つための溜めが長いため接近戦をされると出しにくい技だ、これを封じるだけで大分バトルの組み立てが上手くいく。

 

「ブルー、逃げるぞ!」

 

ブルーの元に走ってきた俺はブルーに手を差し伸べるが、

 

「あ・・・・・あ」

 

ブルーから出たのは言葉になっていない声と俺に怯えているような異常に震えた瞳。

 

 

本当に俺の意識がない間に何があったんだよ‼︎

 

 

そう叫びたかったがそんな暇はない、ブルーが俺を怖がっているのならしょうがない、俺はモンスターボールを取り出してキークを繰り出す。

 

「キーク、ブルーを抱えて走れるよな‼︎」

「キャッ‼︎」

 

キークはブルーを抱えてロケッド団のいない方、穴の中を進んでいく。

 

「ヒッポ“えんまく”‼︎」

 

ヒッポは敵のポケモン3匹に向かって黒い煙を吐き出し吐き出された黒い煙は3匹とロケッド団を包み込む。

 

「ヒッポ行くぞ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

俺とヒッポは先に行ったキークとブルーを追って穴の中を進んでいく。

 

「⁉︎イワーク‼︎」

 

そして進んだ先にはキークとブルーを頭に乗せて上の穴の出口に移動させているイワークの姿があった。

 

「カゲッ!」

 

ヒッポが俺のズボンを引っ張ってイワークに指を指している、味方って事か・・・

 

「よくわからないけど、イワーク!俺たちが出たら穴の出口を塞いでくれ‼︎」

 

俺の指示にイワークは俺達を頭に乗せて俺達の背では届かない高さに開けられた穴の出口まで運び、“いわなだれ”で穴を生み出した穴で塞いだ。

 

「ありがとう、とブルー・・・」

「・・・・・」

 

出来るだけ戦闘を避けていく為にはイワークの巨体では無理があるからブルーにモンスターボールに戻してもらおうと思ってブルーの方向を見たはいいがブルーは地面に膝を抱えて座っているのは構わないのだが、纏う空気が重く俺は台詞を途中で中断してしまった。

 

その様子を見ていると俺の胸に鋭い痛みが走るが俺は一旦フゥッと息を吐くことでその痛みを緩和させ再びブルーに声をかける。

 

「イワークをモンスターボールに戻してくれ。」

 

するとブルーはスッと目線をこっちに向ける、その瞳を見るだけで未だに俺に対して恐怖を抱いている事がわかってしまう。

 

しかしブルーは黙ってモンスターボールを取り出しイワークをボールに戻す。

 

「俺が何をしたかは後で聞く。だけど今はロケッド団とかいう輩をこのおつきみやまから追い出す事を優先させてくれ・・・だから・・・その・・・」

 

「・・・・ごめんなさい。」

 

自分が何をしでかしたかはわかってはいないけどそれでもブルーはそれによって傷ついたのは明らかだ。

だからまず俺はブルーに対して謝った。

ていうか俺がブルーに今出来ることはそれしかなかった。

 

「なんで謝るの。」

 

しかしブルーから出た言葉は俺の行為の理由を尋ねるような言葉だった。

 

「え、いや・・・だって俺、ブルーに酷いことしたんじゃないのか?」

 

 

 

「あなたは何もやっていない。」

 

 

 

「へ⁇」

 

「だから別にレッドは何もやっていないから謝る必要がないのよ。」

 

いやいやいやいや⁉︎

じゃあ何なんだよさっきまで俺に対して向けていたあの視線は⁉︎

確実に俺なんかやらかしただろ⁉︎気を使って誤魔化しても無駄だかんな‼︎

 

「仲間が理由もわからず急に気を失ったら気にするに決まっているでしょ、例え意識を戻した後でも。」

 

ブルーは俺の考えを読み取ったかのように言葉をつむ。

 

「私の調子が悪かったのはレッドが意識を失った後にズバットの“ちょうおんぱ”を少し受けちゃっただけ、もう大丈夫だけど。」

 

これはブルーの嘘だ。

 

ブルーは実際ズバットの“ちょうおんぱ”を食らっていない。

しかもレッドに何もされていないというのも嘘だ。

 

なぜブルーはレッドに対して嘘を吐いたのか。

ブルーはレッドの意識が戻ってからずっと彼を観察していた。

 

現状がわかっていない事で起こった挙動不審な態度が演技ではないか?

そう思い警戒、恐怖しながらレッドを見ていくうちにその可能性は消えた。

自分が隠しきれずに放った恐怖を纏った視線に敏感に反応し、意識がない間にレッドが自分に何かしたのではないかと疑い、自分への対応の仕方に迷う様子はレッドの瞳を見ただけでわかった。

そしてブルーはキークに抱かれイワークの作った穴の出口に移動している際に確信に至った。

 

 

レッドは自分の意思であんな行動をしていない。

 

 

恐らくポケモンの技が中途半端に当たった所為だろう、ブルーがレッドにいった嘘と同じ様な事がレッドの身におこったのだろう。

 

それならレッドに非はないがそれによって行った行為が行為だ、確実に自分に後ろめたさを感じ、距離を置きにくるだろう。

それは今から行うミッションに支障をきたしかねない。

だから真実は伝えない。

 

これがブルーがレッドに嘘を吐いた理由だ。

 

 

「それより、これからどうやってあいつらを追い出すかを考えましょ。」

「正面突破は・・」

 

「馬鹿なの?こんな大規模な事をしてるのよ。相当力量(レベル)の高いポケモンを連れてるに決まってるでしょ。そんなのが出たら私達の手持ちじゃ歯が立たないわ。」

 

確かにあっちは以前から裏で名を馳せている巨大組織、旅立ってから1週間とそこらの俺達で対抗できない力量(レベル)のポケモンがいない筈はない。

それに例え力量(レベル)の低い相手だろうと数で責められてはいずれ俺達が底を尽きる。

ていうことは・・・

 

「つまり、強い奴とは戦わず更にそんなに戦闘をせずにあいつらを追い出さなきゃいけないって事か・・」

「そうよ」

 

「・・・・・・・無理じゃね?」

 

戦わないという事は可能だ、ヒッポの“えんまく”で相手の視界を封じている内に逃げる事は十分に可能だ。

 

しかし逃げてばっかでは相手を追い出せる筈がない。

その時点で強い奴とは戦わずに相手を追い出す事は不可能だ。

 

戦う方法も考えたヒッポの“えんまく”で視界を奪い、フシくんの“ねむりごな”で眠らせて俺達のポケモン全員で一気に叩くという手もあるが恐らくこれは1度しか使えない、その1度で相手のHPを削り切れると言い切れないためこれは難しい。

 

 

ー外部から応援を呼ぶか。

 

 

オーキド博士に連絡すれば何かしらの対応をしてくれるだろうけど。

 

「こんなに大事とは思わず連絡してないんだよなぁ・・・」

「この状況じゃあ無事に戻れるのも微妙よね。」

 

「カゲッ‼︎」

 

俺とブルーがこれからの行動について悩んでいるとヒッポがバッとおつきみやま内の個室の出口の方を向いて吠え出した。

 

 

「タイムオーバーみたいだな。」

 

 

軽く笑みを交えて放った言葉と同時に俺は目線をヒッポと同じ方向に向けた。

するとすぐに個室の出口からさっき俺達を襲ってきたロケット団と同じ服装の男3人が入って来た。

 

「気付いたとしてももう遅い、此処は既に囲まれている。諦めて手持ちのモンスターボールを全て渡せば命までは取らないでおいてやる。」

 

ベタな台詞だなと思うと同時にさっき俺たちを襲ってきた奴らの1人と声が一緒っていう事はこいつらさっきの奴らか。

 

「いやだと言ったら?」

 

ベタな聞き方したな・・・その後の台詞はわかってんのに。

思わずこの状況の不味さと自分の余りにもありきたりな、漫画の世界で言うような台詞に思わずもう一度苦しい笑みが溢れる。

 

すると団員3人は腰からモンスターボールを取り出しポケモンを繰り出す。

 

「力づくで奪うだけだ‼︎」

 

それぞれ繰り出したのは先程見たゴルバット、ドガース、アーボの3匹だ。

 

「ねぇ」

「ん?なんだよいきなり。」

 

この緊張した場面、俺たちにとっては絶体絶命の場面でブルーのこの状況には相応しくない気のない軽い声が響く。

 

「さっきタイムオーバーって言ってたけど諦めたの⁈」

「は?」

 

ブルーが挑発的な表情で俺を見つめる、この状況でその顔が出来るなんて本当にお前は恐ろしいよ・・・

ブルーが見せてくれた視覚媒体が今度は俺にこの状況に相応しくない表情を引っ張り出してきた。

 

 

ー満面の笑みをー

 

 

「タイムオーバーとは言ったけどゲームオーバーとは言ってねぇだろ?」

 

 

そう言ったと同時にブルーが少し馬鹿にしたような笑みを浮かべながら自分の手持ちを全て繰り出す。

 

それと同時に俺はヒッポ達と一緒に走り出しロケット団に突っ込む。

 

 

「戦闘開始だ‼︎‼︎‼︎‼︎」

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