そして今回書きたいところまで書いたせいでいつもよりだいぶ長いです・・・あ、だから遅くなったのか・・・・
おつきみやまを抜けた先に待っているのは何か?
という質問に大抵の人はこう言う
『ハナダシティ』
しかしそれは誤りだ。
おつきみやまを抜けた先に待っているのはハナダシティではなく
『4番道路』
おつきみやまを抜けてきたトレーナー達の最後の関門。
その距離は短く、既にその先にはハナダシティが見えている。
これだけ見ると抜けるのも簡単に思えるかもしれない。
しかし、油断するとパーティーを全滅する羽目になる。
その原因は4番道路に生息するポケモン達だ。
いや、詳しく言うとアーボの群れだ。
アーボ達はおつきみやまで疲労したトレーナーやポケモンを狙って毒攻撃を仕掛けてくる。
ただでさえ疲労しているのに毒状態にされると例え毒状態に行動を縛るような効果がなくてもそのポケモンはまともに行動する事は出来ない。
しかし対処法がない訳ではない。
アーボは気性が荒いが臆病なポケモンだ、確かに襲われると恐ろしいがおつきみやまを出る際に自信を持って、堂々とした風格をしていれば、アーボは警戒して襲ってくる事はない。
今日もアーボの群れはおつきみやまの出口の周囲に身をひそめる。
あるものは出口の真上にで、あるものは出口近くの左右の岩で、そして殆どは出口正面の草木で、獲物が来るのをじっと待つ。
すると1人の少女が出口から出てきた。
泣いているのか顔を隠しながら走っていく。
その周囲に手持ちのポケモン達はいない
弱っている・・・・‼︎
アーボの口元に笑みがこぼれる。
さぁ、狩りの始まりだ・・・‼︎‼︎‼︎‼︎
最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ最悪だ
思わず自らの心の内を吐露してしまった。
今まで自分のために戦ってくれたポケモン達に酷い事を言おうとしてしまった。
そして何より・・・
逃げてしまった。
怖かった、レッドに向けられた怒りが
悔しかった、レッドに怒られた事が
そして、
嫌だった、ポケモン達に向けられた視線が
別にポケモン達が冷たい目で自分の事を見ていた訳ではない。
純粋に、取り乱した私を心配する目だ。
それが辛かった。
自分が酷い事を言おうとした事は理解しているはずだ、ポケモンは人の言葉を理解できる。
レッドの制止があったものの、あそこまで言ってしまったらその制止も意味をなしてないに違いない。
そんな自分を心から心配してくれているポケモン達をして見ると、申し訳なくて申し訳なくて・・・・
自分のポケモン達だけではない、レッドのポケモンも同じように自分を見つめていた。
1匹を除いて。
ピカチューだけは違った、ピカチューだけはスッと達観したような目で自分を見つめていた。
ピカチューは気づいてたのかもしれない。
自分がレッドの強さに、才能に嫉妬している事を。
今思えばピカチューはずっと見ていたんだ。
レッドのモンスターボールの中で、レッドの事を、そしてそのレッドと一緒に旅をしている自分の事を。
だとしたら
ー本当に大好きなのね、レッドの事が。
それに比べて私はどうだろう
そう思った矢先ー
『シャァァァァッ‼︎‼︎‼︎‼︎』
「⁉︎キャァァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎」
無数のアーボの群れがブルーに襲いかかる。
ブルーは思わず叫んでしまうが、すぐにイワークのモンスターボールを手に・・・
バチッ‼︎‼︎‼︎
「⁉︎」
アーボの放った“どくばり”がイワークのモンスターボールを撃ち抜く。
しかも運悪く開閉スイッチが撃ち抜かれている。
ーこれじゃあ、イワークが出せない!
周囲には既に自分に襲いかかっているアーボ達の姿が
ーあぁ、これは天罰だ。
ーポケモン達の気持ちを裏切った私への
ーポケモン達の思いを拒絶した私への
ブルーはスッと目を閉じて、アーボの攻撃を待つ。
「ごめんなさい。」
「謝る相手が違うだろバカヤロー‼︎」
「⁉︎⁉︎」
その声の主に、いやその声のした方向にブルーは驚き目を見開く。
そして目の前に
無数のアーボ達の牙を己が身体で受け止めるレッドの姿があった。
「バカッ⁉︎⁉︎」
アーボの牙に毒があるのは常識、そしてアーボは毒で敵が弱るまで牙を離さないのも常識。
「バカで結構‼︎」
ブルーの背後からタタタタッと足音が近づいてくる。
「コケコッコーってな‼︎ピカチュー‼︎‼︎‼︎」
バッとピカチューがレッドに飛びかかる。
「俺ごとやれ‼︎“でんきショック”‼︎‼︎」
「ピカァッチューッ‼︎‼︎‼︎」
黄色い閃光がレッドとレッドに噛み付いているアーボ達を襲う。
レッドの細胞の1つ1つが悲鳴をあげる、意識を持っていかれそうなのを歯を食いしばり耐える。
ピカチューは体内に吸収された『でんきだま』によって、異常な強化がされている。
ピカチュー自身、コントロールは出来るがそれは相手を倒す上でのコントロールだ。
ダメージを最小限に抑えるようなコントロールは出来ない。
そのためレッドの身体には尋常じゃない痛みが走っている。
「シャァッ⁉︎」
アーボが電撃に耐え切れずレッドから離れるのを確認するとすぐにピカチューは電撃をやめ、レッドの前まで移動しアーボ達を威嚇する。
するとアーボ達は敵わないと見て一目散に逃げていく。
「ふぅっ・・・」
「レッド⁉︎⁉︎」
レッドがふらっと倒れたのをブルーが受け止める
レッドの息は荒く、身体中から汗が出ている。
「アーボの毒⁉︎」
ブルーは自分のバッグから毒消し作用のある木の実『モモンの実』を取り出すとレッドに食べさせる。
すると呼吸が落ち着き、悪かった顔色も良くなっていくのが目に見えて確認できた。
状態が良くなってきたレッドはブルーに向けてニヤッと笑みを浮かべる。
「バカッ⁉︎本当にバカ‼︎‼︎」
「バカで結構コケコッコ〜って言っただろ?」
「ふざけないでよ‼︎」
「ふざけてないよ。」
うっ、とブルーが言葉に詰まる。
「俺はブルーと違ってバカだからこうやって行動に移すしかないんだ。
さっきブルー言ったよな、自分は俺よりも惨めで小さいって。」
コクっとブルーは静かにうなづく。
「そんな事ないよ、俺もブルーのトレーナーとしての実力に嫉妬してたし、俺が大きな人間だったらあの時ブルーに手なんかださねぇよ。」
「でも私はレッドを見下して「そんなの当たり前じゃん、俺が見上げてるもん」!」
「トレーナーの実力でブルーが俺を見下してるのは構わない、実際俺はブルーを見上げてるんだ、ブルーが俺を見るには見下すしか方法はないだろ?」
「お人好しだって馬鹿にしたって構わない、
実際俺は馬鹿だから。それに俺は・・・」
「人の為に行動できる馬鹿ならそれでいい」
ー綺麗事。
ブルーはそう思った、だけど我慢できなかった、酷いことを言った自分を許そうとしてくれているレッドに、そんな自分を受け入れてくれるレッドに・・我慢できなかった。
ブルーの瞳から涙がこぼれる。
スッと毒が抜け少しブルーから離れたレッドが両手を広げブルーに差し出した、が、すぐに顔を真っ赤にしてその手を後ろに隠した。
ー包まれたかった。
そう思ったブルーはレッドの胸に顔をうずめた、恥ずかしいという感情はなかった、あったのはレッドに包まれたいという思いだけ
ブルーがレッドの胸に顔をうずめた瞬間、真っ赤だった顔を更に赤くし、小さく甲高い声を上げたレッドも笑みを浮かべて1度隠した両腕でブルーを包み込む。
トクン、トクン、トクン
ーレッドの鼓動が聞こえる。
トクントクン、トクントクン
ー早くなってきた・・・。
レッドの顔を覗いてみる。
するとレッドはブルーと目があうと、鼓動が早くなっていた事がバレた事に気付いて頬を赤く染めて目をそらす。
ー嬉しい。
ブルーは恥ずかしがる事なくそう思った、レッドが自分を1人の女性としてみている事が
ブルーの両手が少しづつ上がり、レッドが自分にしているようにレッドを包み込む。
恥ずかしいという感情はなかった、包まれたいという思いよりも今のブルーにあったのは、
レッドの温もりをもっと深くもっと長く感じたいという思いだけ。
その理由には気づかずに・・・・
マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ
ばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれたばれた
レッドは焦っていた。
確かにブルーを1人の女性としてみている事は認める、ナナミさんという好きな人がいながらもそういう目で見てしまう自分がいた事も認める。
だけどそれをバレるのは男としてなんというかどうというかとにかく恥ずかしい‼︎
ナナミさんと系統は違うがブルーも美人だ、そんな女性が涙を流し、頬を赤く染めながら自分の胸に顔をうずめたらどうなるだろうか?それで無意識に抱きしめてしまったらどうなるだろうか⁇
いろんな意味で鼓動が早くなるに決まってる‼︎‼︎
こうなって考えている間にも鼓動は早くなる一方だ‼︎
だけどこの状態をやめるのも抵抗がある。
なんでかって?
もったいないだろ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
ブルーが珍しくわかる弱さを見せてんだよ⁉︎こんな事滅多にないよ⁉︎おつきみやまでからかい返した時よりもずっと気分がいいよいろんな意味で‼︎‼︎‼︎
とにかく‼︎
この温もりを少しでも長く感じていたいんだよ⁉︎⁉︎⁉︎
フッーと興奮してきた心を落ち着かせるためにブルーに気づかれないように軽く息をはき、上を見上げる
「・・・・・・・・」
そこにはものすごく冷たい目で俺を見つめるグリーンの姿があったとさ。
「・・・・・・・・」スゥー
「違うんだ⁉︎グリーン⁉︎誤解だ‼︎誤解‼︎‼︎‼︎」
無言で立ち去ろうとするグリーンにレッドがブルーを抱きしめたまま弁解を図る。
「ブルーがアーボの群れに襲われてそれを俺が庇って毒を受けて」
「抱き合ったまま言っても説得力がないんだが」
バッとお互いに離れるレッドとブルー。
どちらともその顔は赤く染まっている。
そしてそれを見るグリーンの目は冷たいまま・・・・
「何よりそうだとしても抱きしめあう必要はないだろ。」
何にも言い返せないような指摘をした。
「いや!、その、あのぉ〜エェ〜ト・・」
「・・・・・・」
レッドはどもり、ブルーはだんまり。
「ナナミ姉さんの事が好きなんだと思っていたんだが違うようだな・・・・
一応ナナミ姉さんに報告しておくよ。」
「それは勘弁して下さい⁉︎グリーン様⁉︎⁉︎」
レッドは目にも止まらぬ速さで土下座をする、何回も何回も頭を地面に打ちつけたせいで今ではトレードマークとなっている帽子も取れてしまいツンツンのくせ毛が露わになる。
「俺は女を取っ替え引っ替えするような奴が殺したいほど嫌いなんだ。姉さんがそんな奴に巻き込まれそうなら絶対に阻止する。」
とんでもなく冷たい目にとんでもなく冷たいオーラーをバンバンに放ちながらグリーンはとんでもなく冷たい声でレッドのは身体に言葉という名の槍を突き刺す。
「本当に俺とブルーはそんな関係じゃないんだ⁉︎」
その言葉にピクッとブルーが反応した事をレッドもグリーンもはたまたブルー自身も気付くことはなかった。
「信じられるか。」
その言葉に今度はレッドが反応した。
「この分からず屋がぁ〜‼︎‼︎‼︎それだからテメェはモテねぇんだよ‼︎‼︎」
2回しか会った事のないくせにレッドはグリーンの何を知っているのだろうか?
レッドは取れた帽子を乱暴に拾い被り、ビシッとグリーンを指差し叫ぶ
「ならポケモンバトルで決着をつけようぜ‼︎‼︎俺が勝ったらナナミさんにこの事は言うな‼︎そして俺とブルーがそういう関係じゃない事を信じろ‼︎‼︎‼︎」
後半のレッドのセリフにまたもやブルーが以下省略。
「いいだろう・・・」
「!」
ー驚いたまさか受け入れるとは思わなかった。まぁ、無理やりにでも受け入れさせるつもりだったけど・・・。これを受け入れたっていう事は思ったよりグリーンは俺を怒っていないのではないか?。
「ただし」
「なんだよ。」
「お前が使うポケモンはあそこにいるヒトカゲ、対して俺が使うのはカメール、一対一のバトルだ。それでいいな」
前言撤回、こいつ相当怒ってる。
「いや、でもそれは・「さぁ、ナナミ姉さんに報告しに行くか」それでいいです、お願いします。」
追記、こいつ相当性格悪い。
「ブルー、審判頼む。」
「えぇ。」
「審判は不要だ、完全に決着をつける。」
目がマジだよこいつ。
「ヒッポ‼︎頼むぞ」
「カゲッ‼︎‼︎」
おつきみやまの出口からヒッポが駆け寄ってくる。
それにつられて他のポケモン達も同じように俺とブルーの元に戻ってくる。
・・・ピカチューのやつわざわざおつきみやまの出口にまで戻ってやがった・・・。
「ごめんね、みんな。」
ブルーが自分のポケモン達に謝っている、それを『気にしなくていいよ』と言っているような仕草をするポケモン達を見ると、頑張らなければいけないなと思った。
ブルーとポケモン達との絆を確認したこのイベントが俺との変で勘違いな色恋沙汰という不名誉なイベントにならないために。
「絶対に勝つぞ、ヒッポ」
「カゲッ‼︎」
(目つきが変わったな・・・)
グリーンはレッドの目が変わった事に気づく、そして変わる前にレッドの見ていた少女の方を見る。
そこには少女が目に涙を浮かべながらポケモン達とじゃれ合っている姿があった。
(違うな、目的が変わったのか。)
フッと軽く笑みを浮かべると同時に、2人が抱き合っていた件は勘弁してやろうとグリーンは思った。
(だが、それはそれ、バトルはバトルだ。全力で倒してやる。)
「行けっ!カメール‼︎」
「カメッ‼︎」
「あのゼニガメが進化した姿か。」
カメールは水タイプ、炎タイプのヒッポは不利だ。
そしてカメールは進化してパワーアップしているのに対してヒッポはまだ進化していない。
これは俺のトレーナーとしての実力が大きく勝敗を左右するぞ・・・‼︎
ブルーとグリーンがオーキド博士から貰ったポケモンを進化させてるのに対して俺はまださせれてない時点でその差は明らかなのかもしれない。
だけどヒッポにはノーモーションで放てる“ニトロチャージ”がある。グリーンはこれを知らない。
だけど進化してるカメールとヒッポじゃ、ステータスの差は明らか、“ニトロチャージ”による素早さの上昇を詰まずに勝てる相手じゃない。
勝負の鍵は“ニトロチャージ”を使うタイミング‼︎‼︎
「先手必勝‼︎ヒッポ“ひのこ”‼︎」
「カゲッ!」
ボゥッと無数の細かい火の粉がカメールを襲う。
「カメール“みずでっぽう”」
「カメッ」
ボシュッと音を立ててカメールの放った水鉄砲があっという間に火の粉を消火しそのままヒッポに襲いかかる。
「まずい⁉︎避けろ‼︎」
ヒッポはバッと尻尾を地面に叩きつけた勢いを利用して水鉄砲を避ける。
「先手なんだっけ?」
「このヤロー・・・‼︎ヒッポ‼︎」
ヒッポは俺の指示を待たずに既に口に何かをためる。
「“えんまく”‼︎」
黒い煙がヒッポの姿をグリーンとカメールから隠す
「先手必勝と言っておきながら逃げ腰だな」
「うっせぇ‼︎“ひのこ”‼︎」
煙幕の中から一撃目と同じように火の粉が発射される。
「同じ事だ“みずでっぽう”」
バシュッと放たれた水流が火の粉を全て打ち消すと思ったが
「⁉︎」
火の粉の半分が打ち消される前に下に急降下し草むらの一箇所に集中的に当てられそこから火がおこる。
ちょうど火の粉が放たれた位置と被る、
「小癪な、そのままヒトカゲごと打ち抜け‼︎“みずでっぽう”‼︎」
「カメッ‼︎」
三たび放たれた水流は火を消しそのまま火の粉が出てきたところを煙を払いながら撃ち抜く。
しかし
「残念ハズレ〜‼︎‼︎」
「何⁉︎」
煙のはれた場所にはヒッポの姿はなくただの水溜りのみができていた。
「カメッ‼︎」
「⁉︎上か‼︎」
カメールが指差した方向を見るとヒッポが空高く飛び上がっていた。
煙幕から“ひのこ”を放った際に最初に“みずでっぽう”を回避したように長い尻尾をバネのように器用に使って空高くジャンプしていた。
煙幕もそれが気づかれないように横に広くではなく縦に長く放っていた。
「放て‼︎“ひっかく”‼︎」
「カゲーッ‼︎‼︎」
ヒッポが三たび尻尾を大きく振って勢いをつけてカメールに向かって急降下する。
「高く上がりすぎだ‼︎この距離なら間に合う‼︎“みずでっぽう”‼︎」
「っ、」
高く飛ぶように指示をしたせいで隙を狙うはずが逆に隙を見せてしまった。
だけど・・・
「大丈夫だ。」
「カッゲェェェ‼︎」
「!」
突然ヒッポの差し出した右爪を中心に風が舞起こりそれがヒッポの爪に集まり長い爪を形成する。
更に
「スピードが上がっただと⁉︎」
突然スピードが上がりだし
シュンッ‼︎
消えた。
「この技は・・・」
ブルーが呟いた瞬間
ズドッ‼︎‼︎‼︎
「カッ⁉︎」
「なっ⁉︎」
攻撃が命中した音と共に一瞬の動揺をみせ“みずでっぽう”を放つタイミングが遅れたカメールの呻き声がグリーンと俺の耳に届く。
「ヒッポ‼︎」
「カゲッ‼︎」
カメールの方を見るとカメールの背後にはヒッポが既に攻撃を命中させ地面に着地していた。
今のは・・・
「レッド、今の技“つばめがえし”よ‼︎」
「“つばめがえし”・・‼︎」
『つばめがえし』
目にも留まらぬ速さで攻撃する飛行タイプの物理攻撃、余りの速さにほぼ確実に攻撃が命中すると言われている。
「“ひっかく”から派生されて覚えたのか」
グリーンは驚きの声で呟く。
この技のスピードがあれば“ニトロチャージ”との組み合わせで弱点の水タイプのカメールとでも戦える‼︎
ーこれがレッドのトレーナーとして技術以上の力
このバトルを冷静に見ていたブルーは改めてレッドの、そしてレッドのポケモンの凄さを感じていた。今度は嫉妬の眼差しではなく純粋な尊敬の眼差しで。
“えんまく”と指示をする前からヒッポが技の準備をしていた事。
そしてその放ち方もレッドが指示をしなくても感じ取っていた事。
“ひのこ”の半分を草むらの一箇所に集中して打つ事も指示なしでレッドの考えを読んでやっている事。
そしてレッドがヒッポが新しい技を覚える事を無意識に感じ取り『大丈夫だ。』といった事。
確かに詳しい指示をしなくてもポケモンが技を思い通りに出す事だったらそれはブルーにもある。しかしレッドとレッドのポケモン達はそれをほぼ毎回やっているし、その規模が違う。
『ポケモンには少なからず人間の考えを感じ取る事ができる。』
とオーキド博士が学会で発表した事は有名だがレッド達のやっている事はそれを逸している。
まるでお互いが1つになっているのではないかというようなコンビネーション。
この世界でそんな芸当ができるのはレッド以外いないと思う。
ふふッとブルーが笑みをこぼす。
ー最初からこうやってレッドを見とけば自分を追い込む事がなかったのに。
ーレッドと比べる事が間違いだったのよ。
ポケモン達と1つになるなんて芸当はレッドだからできる事、あれがレッドの個性。
ブルーは心の中の雲が全てなくなり、大きな日輪が心の中を明るく照らし出したように感じた
「ヒッポ‼︎」
グオッと再び風の爪を作り出し一瞬にしてスピードMAXとなる、このスピードの0からMAXの切り替えの速さがまるで消えたように見える理由だ。
「“つばめがえし”‼︎‼︎」
カメールに再び刹那の攻撃が炸裂する。
ように思われた。
「“こうそくスピン”」
キィン‼︎‼︎
「カゲッ⁉︎」
「なっ⁉︎」
ヒッポの“つばめがえし”が命中する直前にカメールが自身の甲羅の中に隠れる事によって攻撃をガードし、更に素早く回転する事でガードした後の反動を無に変えた。
「突っ込め‼︎」
「メッル‼︎‼︎」
ドカッ‼︎‼︎
受け止めた右腕を弾き飛ばしヒッポの体に強烈な体当たりをモロに命中する。
「カゲッ⁉︎」
「“みずでっぽう”‼︎」
ヒッポが高速スピンで空中に飛ばされている最中にカメールは甲羅から身体を出すと強烈な水流を発射しヒッポは高速スピン同様クリティカルヒットしてしまう。
「カゲェー⁉︎⁉︎」
「ヒッポ⁉︎‼︎」
ヒッポはそのままおつきみやまの出口横の岩に激突そのまま地面に倒れる、カハッと唸りつつも立ち上がるが大ダメージを受けたのは明らかだ。
「確かにほぼ避ける事が不可能な“つばめがえし”は苦手なタイプのポケモン相手には有効な技だ。」
レッドがヒッポからグリーンへ視線を向ける。
「レッド、お前油断しただろ、安心しただろ、甘くてぬるいんだよお前は。」
いつものように冷静に響くその声に、レッドは思わずおののいてしまう
「避ける事が出来なくても、防御する事が出来ないわけじゃないんだ。そこを見余ったのがお前のトレーナーとしての実力のなさの現れだ。」
「っ・・・ヒッポぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」
「カゲェェェッ‼︎」
すさまじい砂煙と共にヒッポが風の爪を纏いながら刹那の攻撃を繰り出す。
“つばめがえし”だ。
「言い返せなくなってやけになったか、カメール“こうそくスピン”」
「カメッ‼︎」
カメールが刹那の攻撃を受け止めるために甲羅にもぐる、
しかし
ピタッ‼︎
「⁉︎止まった」
ヒッポは“つばめがえし”をカメールの手前で中断する、そしてー
「“ニトロチャージ”‼︎‼︎」
「カッゲ‼︎」
炎を纏い、ノーモーションで繰り出された炎の突撃はカメールに熱によるダメージを与えカメールは思わずその甲羅から身体を出す。
「何っ⁉︎」
「隙だらけだ‼︎行けっ“つばめがえし”‼︎‼︎」
再び風の爪を作り出し放たれた攻撃を避ける術も防御する術もカメールにはなかった。
「カッメッ⁉︎」
カメールはおつきみやまの出口の反対側の森の木に激突する。
「“つばめがえし”を餌に使った・・‼︎」
「グリーン、お前油断したろ?安心したろ?甘くてぬるいんだよお前は。」
グリーンがカメールからレッドへ視線を向ける
「あれ?これどこかの誰かさんが言ってたセリフだな?まあいいやお前、人の事言えねぇんじゃねえの?」
「わざわざ挑発しなくても・・・」
してやった顔で笑みを浮かべるレッドにブルーは呆れた声を放つ。
「でも確かに俺は未熟だ‼︎だけどそれはまだまだ成長できる、進化できる証拠だ‼︎」
「油断するんだったら集中し続ければいい、甘くてぬるいんだったら、苦くて熱くなればいい‼︎」
「俺はポケモン達と一緒に強くなる‼︎」
「カゲッ‼︎」
フッとレッドの言葉に笑みを浮かべるグリーン。
「そこがぬるいんだよ、お前は」
バッとカメールが飛び出すとヒッポに向かって突進してくる。
ー“つばめがえし”でいくと“こうそくスピン”で受け止められる可能性がある、ならグリーンに奥の手があったとしても・・・・
「“ニトロチャージ”‼︎」
ー能力を上げさせて貰えば万々歳だ‼︎
ヒッポは炎を纏い猛烈な突進を繰り出す。
しかし
スルッ
「カゲッ⁉︎」
「なっ⁉︎すり抜けた⁉︎⁉︎」
カメールに技が当たった瞬間ヒッポがカメールの身体をすり抜けたのだ。
「“みがわり”」
「“みがわり”だと⁉︎」
“みがわり”は自分の体力を削って暫くの間敵の攻撃を代わりに受けてもらう技だ。
「隙だらけだ“こうそくスピン”」
「しまっ・・・⁉︎」
上にジャンプしていたカメールの本体が上空から滑り台のように高速スピンでヒッポの背後から激突する。
しかも滑り台のように上に上げるように攻撃されたためヒッポが身動きの取れない上空に放り出されてしまった。
「止めだ“みずでっぽう”‼︎」
「カメッ‼︎‼︎」
カメールが技を放つ瞬間
「“えんまく”だ‼︎」
「‼︎、カッゲェッ‼︎‼︎‼︎」
ヒッポが大量の煙幕を放ち、自分の姿を完全に隠した。
「カメッ⁉︎⁉︎」
「落ち着け‼︎落下スピードを予測して放て‼︎」
「カメッ‼︎‼︎」
黒い煙の中に強烈な水流が吸い込まれるように入っていった。
「・・・・・・」
ブルーは1人何かを悟ったような表情を見せる。
ドシャッ‼︎
「‼︎」
「‼︎」
「・・・・・・」
何が地面に倒れた音にレッドとグリーンが反応するが煙が地面にまで行っているため目視することが出来ない。
ヒッポは戦闘不能になったのかなっていないのか、今わかっているのは冷静にバトルを見ているブルーだけだった。
(このバトル・・・)
(まだわからないわよ。)
「カッゲェェェェェェッ‼︎‼︎‼︎」
「ヒッポ‼︎」
「っ・・・外したか‼︎」
ーさっきの攻撃、カメールの“みずでっぽう”はヒッポの少し上に外れた、これはグリーンって人のミスね。
どうせ空中で体制の崩れている状態でヒッポができる事は口から放つ“ひのこ”と“えんまく”あとは“なきごえ”だけ、だから“えんまく”で的が隠れたことによって出来たカメールの動揺を落ち着かせる時間を取らなければならなかった。
そうしていれば動揺した状態であれだけ惜しかったのだから落ち着いていれば当たっていたはず。
ブルーの見てる方からもヒッポの姿は見えないはずだがブルーはそういう面に優れていた。ヒッポが落ちていく姿も、“みずでっぽう”の行方も完璧に頭の中でイメージされていた。
もしブルーがトレーナーであれば確実にこのシチュエーションで技を命中させるような指示を出していただろう。
ーヒッポに当たらなかったのは良かったものの・・・
スッとヒッポを見る。
「カァッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
ー肩で息をしてる。もう体力は殆ど残っていないわ・・・あと一撃当たれば確実にやられる。
体全体で技を繰り出す“ニトロチャージ”や“つばめがえし”は恐らくどちらか一方、しかも一回した放てないでしょうね。
「お前のヒトカゲはもう虫の息だ、しかもカメールにはまだ身代わりが残っている。もう詰みだ。」
“みがわり”で作り出した身代わりは作り出した時に消費した体力の分だけ続く、水タイプに対して効果いまひとつの炎タイプの技“ニトロチャージ”ではその分の体力を削りきれなかったのだ。
ー普通なら降参してもいい状況ね
ーでも
「俺は諦めない」
ーレッドは諦めない
「ヒッポがまだ立ってる。」
ーポケモンの気持ちがわかるから
「ヒッポの瞳にまだ炎が灯っている。」
ーポケモンの意志の強さを知っているから
「バトルが始まる前よりも熱く輝いてるんだ‼︎」
ーそして
「だからトレーナーの俺が諦める訳にはいかない‼︎‼︎」
ーそれを背負うトレーナーの重さを知っているから
ーレッドは負けない。だって
「お前の力はそんなもんじゃないだろ‼︎‼︎」
ーポケモンを大切にするその思いの強さに
「ヒッポォォォォォォォォォォォ‼︎‼︎‼︎‼︎」
「カッゲェェェェェェェェェェェ‼︎‼︎‼︎‼︎」
ーポケモンが答えてくれるから
キュォォォォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎
ヒッポの身体が光り輝く‼︎
「‼︎この光は⁉︎」
グリーンが驚く。
「ほらね」
ブルーが笑みを浮かべる。
「進化の・・・光‼︎‼︎」
レッドは見つめる。
逃さないように
ヒッポの新しい姿に変わる瞬間を
「リッザァァァァァド‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
光が弾け飛び現れたのはヒトカゲの倍の大きさとなった赤く筋肉質な身体に精悍な目つき、そして雰囲気はヒトカゲの時のような可愛らしいさはなくなり、攻撃的な見た目となっている。
レッドはその変わりようと、その凛々しさに戦闘中だということを忘れて図鑑をかざす。
No.5 リザード
かえんポケモン
尻尾を 振り回して 相手を なぎ倒し 鋭い ツメで ズタズタに ひきさいてしまう。
「リザード「ガァウッ‼︎‼︎」うぉう⁉︎」
レッドがリザードと呼んだ瞬間呼ばれた本人が激しく怒り出す。
遠目でもその迫力は凄まじい。
「ごめん、ヒッポ!」
「リッザァァド‼︎」
レッドがニックネームで呼ぶとリザードに進化したヒッポは喜んで空に炎を吐き出す。
ピカチューがレッドやオーキド博士にピカチュウと種族名で呼ばれる事を嫌う(レッドはピカチュウと呼んだ事はないが)のと同じようにヒッポも種族名で呼ばれる事が嫌いみたいだ。
そこまでニックネームを気に入って貰えた事がレッドは怒られたけどとても嬉しくてだらしない笑みを浮かべた。
そしてグリーンの方を向く
「さぁグリーンにここからが本番だ‼︎」
「進化したからといってこの状況は変わっていないぞ‼︎」
グリーンの言う通り進化したからといって体力は回復しない、リザードは進化した事により体力の上限が上がった事でさっきのように肩で息はしてないがそれでも呼吸のペースは早い。
「いくぜ“つばめがえし”‼︎」
ドシュッ‼︎
「くっ⁉︎速い‼︎」
一瞬にして間合いを詰められ身代わりに風の爪が炸裂、消費した体力を消費しきった身代わりは空気中に四散した。
「カメール“みずでっぽう”‼︎」
「カメッ‼︎‼︎」
カメールの水流がヒッポを襲う。
「頼むぜヒッポ‼︎進化したお前の新たな力を見せつけろ‼︎」
「リザッ!」
ザッとヒッポが右足を少し下げる。
「“りゅうのいかり”‼︎‼︎‼︎‼︎」
「リッザドォォォォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎」
リザードの口から竜の形をした青い炎が放たれる。
“りゅうのいかり”はタイプ相性関係なく同じダメージを与える事ができる特殊な効果のあるドラゴンタイプの技。
ヒッポの放ったその炎は『火は水に消える』という考えを覆すかのように水を飲み込みカメールの元に襲いかかる。
「⁉︎」
「竜の炎は水じゃ消せないぜ‼︎‼︎‼︎」
「カメェェェッ⁉︎⁉︎⁉︎」
ドゴォォォォォォォォッ
青い炎の龍がカメールを飲み込み爆発を引き起こす。
「カメール‼︎・・・!」
グリーンがカメールの名を叫んだ後に見たのは身体をボロボロにして倒れているカメールの姿だった。
「カメール戦闘不能ね。」
「・・・・・・」
グリーンは無言でモンスターボールにカメールを戻す。
「〜ッ‼︎勝ったぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
「ザッドォォォォォォッ‼︎‼︎」
レッドとヒッポが飛び上がって喜びを分かち合う。
「本当に偶然だらけの勝利ね。」
「む、そんな言い方ねぇだろ!運も実力のうちって言うだろ‼︎」
ブルーはレッドの勝利をからかうと同時に負けたグリーンのほうに視線を向けていた。
グリーンはカメールのモンスターボールに向かって小さな声で何かを呟いていた。
洞察力の高いブルーはそのセリフを読んで、笑みをこぼす。
ー自覚はしてるみたいね。
「グリーン!約束通りナナミさんには黙っとけ‼︎そして俺とブルーが色恋的な中でない事を信用しろよ‼︎いいな‼︎」
「わかったよ。わかりました。」
スッとグリーンがブルーに視線を向ける。
「レッドの件ですっかり忘れていたが、お前ブルーなんだよな。」
「初対面の人に向かっていきなりお前はないでしょう。」
「恋仲でもない癖に男と抱き合ってる時点で俺の中ではお前はお前だ。」
ーこのウニ頭・・・
どついてやろうという気がしたがそこは堪える、だって私大人だから
天然バカやウニ頭と比べて大人だから、ワタシ コイツラヨリモ オトナ All right?
「ハナダシティで姉さんがお前の図鑑を用意して待ってる。」
「‼︎」
「それだけだ、じゃあな。」
「バイバイ、グリーン‼︎」
その時ブルーは心の中に迷いが生じたのを自覚した。
ーおつきまやまー
「こんなものか」
ニビジムジムリーダー・タケシはオーキド博士の連絡を受け、おつきみやまにいるロケット団を殲滅しに来たのだが、行ってみるとロケット団は殆どおらず、監禁されていた化石を発見した人物も助け、現在タケシの手持ちのクロバット、『ノイズ』が出口まで送って行っている。
「残党はあとで警察に届けるとして、そろそろポケモン達を集合させるか。」
タケシは自身のポケモン4匹をおつきみやまに放ちパトロールさせていた。
タケシに鍛えられたポケモン達はトレーナーであるタケシの指示がなくてもロケット団の団員に劣らぬ強さを持っていた。
「さぁ、みんなを呼んできてくれ『ドゴォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎』⁉︎なんだ‼︎」
強烈な音の方へタケシは走っていく。
「⁉︎ヘルメ‼︎‼︎‼︎」
そこには戦闘不能状態で壁に埋まっているタケシのカブトプスの姿があった。
その頑丈な甲羅にはビビが入っており、戦闘不能状態よりはるかに危険な『瀕死状態』である事が伺えた。
タケシはすぐにカブトプス・ニックネーム『ヘルメ』をモンスターボールにしまう。
その瞬間
ドゴォン‼︎ゴォン‼︎ガゴォンッ‼︎
タケシの周囲に何かが3回投げつけられた。
「・・・・そんな・・・バカな・・・」
投げつけられたのはタケシの手持ちのポケモンである、ゲンガー・ウソッキー・ゴローニャの姿だった。
3匹ともカプトプス同様、瀕死状態であった。
「俺のポケモン達が・・・ここまでやられただと・・・‼︎」
スッとタケシがポケモン達が投げつけられた方へ向き直る、そして
「ドサイドォーン‼︎‼︎」
出てきたポケモンは巨大な身体、その身体を包む橙色の鎧、二本のドリルのようなツノを持ったポケモン
「ドサイドンだと・・・」
おつきみやまに生息していないそのポケモンを見た瞬間、タケシの身体から寒気が走った。
ーなんという迫力・・・‼︎
その迫力に逃げる事が不可能だと、タケシは今までの経験から感じ取った。
戦うしかないと。
本気で行かなければ・・・負ける‼︎
何故ドサイドンがおつきみやまにいるのか、そんな事を考える余裕はタケシにはなかった。
タケシはすぐに最後のモンスターボールに手をかけた。
「ロック‼︎」
「ネェェェェェェル‼︎‼︎‼︎」
モンスターボールから出てきたポケモンはてつへびポケモン『ハガネール』
イワークが進化した姿で岩だった身体はダイヤモンドよりも硬くなっており、そして立派な顎はあらゆるものを噛み砕く。
タケシの1番のパートナーであり最強の1匹である。ニックネームはロック
「“ロックカット”‼︎」
ロックの周囲に砂嵐が起こりロックの身体を砥ぐ事で素早さをグンっと上昇させる。
「ドッサッ‼︎‼︎」
ドサイドンは頭のドリルを回転させながらロックに向かって突進してくる。
地面タイプの技『ドリルライナー』だ。
「“まもる”‼︎」
しかしドリルライナーはロックの繰り出した鉄壁の壁によって阻まれる。
特定の技以外全ての攻撃技を無効にする強力な防御技“まもる”。
圧倒的力を誇るドサイドンでもこの壁は壊せない。
「“いやなおと”‼︎」
キュイーンっと耳が潰れるようなノイズの波動がドサイドンを襲う。
この技によってドサイドンの防御はガクンっと下がる。
「今だ‼︎“アクアテール”‼︎‼︎」
ロックの尻尾に大量の水が発生しそれを“いやなおと”によってガードの下げられたドサイドンにぶつける。
ドサイドンは岩・地面タイプ、そのため水タイプの攻撃である“アクアテール”は最も苦手とするタイプ技の1つだった。
「よしっ‼︎・・・⁉︎」
自分のイメージ通りに技が決まった事に驚いたその瞬間、タケシは驚愕する。
「ドッサァァ・・・」
「受け止めた・・・だと⁉︎」
ーロックの重さと“ロックカット”で上昇したスピード、更に“いやなおと”で防御を下げた隙だらけの状態で放たれた“アクアテール”だぞ⁉︎
倒せないならまだしも・・・受け止めるなんてそんなバカな⁉︎
キィィィィィッ‼︎
ロックの尻尾をガッシリ掴んだドサイドンの身体が明るく輝き出す。
「⁉︎、まずい‼︎」
タケシはドサイドンの放とうとしている技を察知しロックをモンスターボールに戻そうとするが・・・
遅かった。
銀色の光がロックを包み込み爆発する。
“メタルバースト”
ドサイドンの進化前であるサイドンの進化前のサイホーンが卵から生まれた際に親からの遺伝によって稀に覚える鋼タイプの技。
1つの攻防で最後に受けた技のダメージを1.5倍にして相手に返すという特殊な技。
ドサイドンが最後に受けた技は今受け止めた“アクアテール”、ドサイドンの持つタイプの岩にも地面にも効果抜群な水タイプの技のダメージ量は通常のおよそ4倍と言われている。
更にドサイドンは“いやなおと”によって防御をガクンと下げられていた。
防御技の使っていないドサイドンがそれでもこの攻撃を耐えたのは、ロックとドサイドンの間には大きな
もし
つまりドサイドンはロックと同じ
そのダメージの1.5倍がロックに返ってくるとしたら・・・・
結果は明らかである。
ロックのダイヤモンドよりも硬く輝くその身体はビビが入りところどころ砕け、その輝きも失っていた。
そしてロックはタケシの手持ち4匹と同じ道を辿ってその場で倒れた。
「ロックぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ‼︎‼︎‼︎」
タケシの悲しい叫び声が洞窟内に響き渡るが、瀕死状態となったロックに返事をする術はなかった。
「ドッサッ‼︎」
ロックの瀕死を確認したドサイドンはトレーナーであるタケシの上空に大量の岩を生成した。
タケシはそれを見て顔をクシャクシャに歪めた。
「待ってくれ・・・⁉︎、瀕死状態のポケモンが5匹もいるんだ・・・‼︎‼︎、早くポケモンセンターで治療して貰わないと死んでしまう・・・⁉︎‼︎」
「・・・・・」
タケシの懇願、自分のポケモンの命を危険に晒したポケモンに頼むのはおかしい事だか、それでも同じポケモン、話せばわかってもらえる、
「ドッサッ‼︎‼︎」
しかし現実は無情だった。
ドサイドンは腕を振り下ろし生成した大量の岩をタケシに落とす。
岩タイプの技“いわなだれ”
自分を守ってくれるポケモンのいなくなったタケシに広い範囲で発動できるこの技はどうしようできない。
タケシは両手を握りしめ歯を食いしばり、涙を流した。
この技をくらえば最低でも確実に意識を失うだろう。
そうなった場合、例え自分が助かったとしても、駆け出しのトレーナーだった頃からの仲間達の命はない。
ークソッ・・
ークソッ・‼︎
ークソッ‼︎‼︎
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎‼︎
『ガラガラガラガラガラドゴォォォォォォォォッ‼︎‼︎‼︎』・・・・・・・・・」
タケシの悲しい叫びは岩の落ちる音にその身ごと飲み込まれ、再び聞こえる事はなかった。
「ジムリーダーのベストメンバーといってもこの程度か」
1人の男の声が響く
「ドッサッ」
ドサイドンは背後から聞こえたその声の主の元に近づきはしたものの襲う事はなかった。
「私が指示をするまでもない程の雑魚共の集まりが我々の1番の敵とは笑わせる。」
「我々ロケット団がこの世界を支配するのは思っているよりも簡単そうだ。」
そう呟いた男の胸には何処かで見た『R』の文字が
男はドサイドンをモンスターボールに戻すとどこかの時と同じように洞窟の闇へと消えていった。
ここまで読んでくださりありがとうございます‼︎
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