赤き旅人の巡る物語   作:morumo

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第20話 カスミ(それにしてもレッドって…)

ニビシティ・ポケモンセンター

 

「うぅ...」

 

一室の病室に数時間ぶりにそよ風によるカーテンの靡く音以外の音が発せられた。

 

「!」

 

バッとハッキリとした音を立ててニビジムジムリーダー・タケシが起き上がる。

その顔には目が覚めたばかりにもかかわらず既に眉間に皺が寄り冷や汗をかいている。

 

「みんな...‼︎」

 

そう言うとタケシはベッドを降りて慌しく病室を後にする。

 

白く綺麗な筈のポケモンセンターの通路が今のタケシの視界には自分を地獄に落としかねない負の黒道に見えている。

 

ー無事でいてくれ...‼︎頼む...‼︎

 

そう願いながら徐々に目に見えない...タケシが無意識のうちに幻想した闇に足を取られながらも一歩ずつポケモンセンターの集中医療室へと向かっていく。

 

ドサイドンによって瀕死状態にされたポケモン達が治療されているとしたら集中医療室以外考えられない、そしてハガネール...ロックとクロバット...ノイズ以外のポケモン達は瀕死状態にされた上で更に追い討ちを食らっていた、だとしたら治療後も集中医療室に設置してあるベッドで安静にしている筈だ。

 

タケシは必死に走った、最悪の結果を恐れて自らの足を止めようとする心の闇の妨害に遭いながらも、自分のポケモン達は無事でいるという希望の光で闇の侵食を防ぎながら目指す場所へと進んでいく。

 

 

ーそして

 

 

 

 

 

「あ...」

 

 

 

 

 

 

「!タケシ君...」

「っ...」

「......」

 

 

 

 

 

タケシが見たのは最悪の地獄だった。

 

 

 

 

 

「嘘だろ…なぁ…なぁ‼︎‼︎」

 

 

 

タケシはベッドに…いや、身体の腐敗を防ぐためのベッドに横たわっている自分のポケモン達に足を引きずるように歩きながら近づいていく。

 

そのベッドの上で横たわっているのはカブトプス、ゴローニャ、ゲンガーの3匹。

 

違うベッドに眠らされているウソッキーとその巨体ゆえモンスターボールに入ったまま治療されているハガネールはモンスターボールに入っているポケモンの状態を表すランプが正常の緑である事から命に別条はない事は分かった。

 

 

がそんな事は今のタケシには無意味

 

 

失ったものの大きさによる傷はタケシの中の心の闇と共鳴しタケシの全てを包み込む。

それは全てタケシの心情を表すための比喩でしかないが、タケシの自身自分でも制御の利かないほどドス黒い感情が溢れ出ている事に気づいていた。

 

「…ごめんなさい、ウソッキ「何も言わないでください。」……」

 

ジョーイの言葉をタケシが制す、ジョーイはタケシの言葉通り何も言わない、言いたくない。それはその場にいたオーキドとグリーンも同じ。

 

「…うぅっ…!」

 

 

 

タケシの悲しみの音だけが病室に響く。

 

 

 

 

しかしその場にいたオーキドとジョーイだけにはガラスが割れる音が聞こえた気がした。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「レッド…」

 

タケシのポケモン達におこった悲劇を聞いた後、レッドは1人ポケモンセンターの自分の部屋に篭ったきり出てこなくなった。

ブルーやナナミの更に心配してきたカスミが言葉をかけても一言もかえってこない。

 

「おつきみやまで私とレッドはロケット団と戦ったんです。」

 

「!」

 

ブルーの言葉にカスミが反応する。

 

「最終的に大勢のロケット団に囲まれて全滅にまで追い込まれた所で今まで引きこもっていたレッドのピカチューが出てきてあの強力な電撃で逆にロケット団を全滅させたんです。」

 

「あのピカチューが…?

確かにピカチュウにしては能力が高かったけど…そこまで…」

 

ブルーは詳しくは言葉にしない、ピカチューの強さを、ピカチューの力量(レベル)はレッドの手持ちポケモンの中で一番低い事を、そしてその力量(レベル)は未だに10に届いていないことも。

 

「まさか敵が残っていたなんて…思いもしなかった。タケシさんを倒せるなんて思いもしなかった…」

 

「あなた達のせいじゃない。悪いのは全部ポケモンの命を奪ったロケット団よ。」

 

「そうですけど…そう簡単にどうこう出来る問題じゃないんですよ。

子供ですから…私達。」

 

そう言いながらブルーはずっとレッドの部屋の扉を見つめていた。

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ブルーとカスミが話していた頃、部屋に閉じこもっているレッドはピカチューを抱き抱えてベッドに横になっていた。

 

「なぁピカチュー…」

「ぴかちゅ?」

 

ピカチューが首を傾げる。

 

「俺…どうしよう。」

「ぴ?」

 

ーどういうこと?

 

ピカチューが問いかける。

言葉は通じなくてもニュアンスはレッドに伝わる。

 

「タケシのポケモン達の事を聞いて、最初はロケット団に対する怒りや恨みで一杯だったんだ…けど」

 

ギュッとレッドのピカチューを抱きしめる腕に力が入る。

 

「今は…怖いんだ。

ロケット団と戦う事が…」

 

ピクッとピカチューの長い耳が反応する。

そしてその瞳に映るのは部屋の微かな光を反射させているレッドの瞳。

 

その瞳は揺らいでいた。

 

光の反射で、涙で、そして心の揺らぎによって

 

「お前達を失う事が怖いんだよ…。」

 

ジムリーダーであるタケシが鍛え上げてきた1番の仲間達が全滅し、更にその半分の命を奪われた。

 

ポケモントレーナーとして駆け出しのレッドがそんな相手と対峙したら自分を含めてみんなの命は無いだろう。

 

ただでさえおつきみやまの件で自分はロケット団に楯突いている、あの人数からして大きな作戦だったに違い無い。

それを滅茶苦茶にした自分達をお咎めなしにはしないだろう、するような奴らならポケモンの命を奪う真似はしないだろう。

 

「俺の中でもうタケシの気持ちを考える余裕なんて無いんだ…ははっ、俺が愉悦に浸ってオーキド博士に確証の無い事を言った所為なのに…最低だよ。…色々と」

 

吐きすてるかのように言葉を放つレッド、そしてそれをピカチューは黙ってジッと…

 

 

 

「ぴぃかぁちゅーっ‼︎‼︎」

 

「あびあばばばばばばばばば⁉︎⁉︎」

 

 

 

 

見つめることはしなかった…。

 

 

ー部屋の外ー

 

『ぴぃかぁちゅーっ‼︎‼︎』

 

『あびあばばばばばばばばば⁉︎⁉︎』

 

「⁉︎」

「何⁉︎ピカチュー⁉︎レッド⁉︎」

 

ー部屋内ー

 

 

「ぬぁぁにぃぃすぅぅんだぁぁぁ⁉︎⁉︎」

「ぴかぴかちゅっちゅ( ̄‥ ̄)=3 フン」

 

「何怒ってんだよ…?」

 

顔を背けるピカチューにレッドが電気の痺れによって体を硬直させながら問いかけているとレッドの腰のモンスターボールの1つから真っ赤な体をした厳ついあいつが出てきた。

 

「リザッ」

「ぬおっ⁉︎ヒッポ⁉︎いきなりどうし…」

 

 

 

「リッザァァァァァァァッ‼︎」

「のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ⁉︎⁉︎」

 

 

リザードの“りゅうのいかり”‼︎

グリーンのカメールにトドメを刺した現在のヒッポの切り札である青い炎がレッドに襲いかかる、というかすでにレッドは食らっていた。

 

「ヒッ⁉︎ヒッポさぁぁぁん⁉︎それ洒落になんないから⁉︎死んじゃうから⁉︎天国に召されちゃうから⁉︎」

 

既に食らった後にそんな事を言っても説得力は0である。

 

 

 

ー部屋の外ー

 

『リッザァァァァァァァッ‼︎』

『のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ⁉︎⁉︎』

 

「ねぇ、レッドってまさかマz…」

「違います‼︎」

 

 

 

ー部屋内ー

 

そしてヒッポに留まらずキークとドドラがレッドのモンスターボールからその姿を表す。

 

「ははっ…やあ、キーク、ドドラ…えーと、お前ら暇か?」

 

 

 

「キィィッ‼︎」「ニッドォォォッ‼︎」

 

「やっぱりねぇ⁉︎アブゴブサブナブゥッ⁉︎」

 

 

キークの“からてチョップ”とドドラの“にどげり”がレッドに炸裂‼︎

レッドはそのまま部屋の壁に激突‼︎

 

 

 

ー部屋の外ー

 

 

『キィィッ‼︎』『ニッドォォォッ‼︎』

 

『やっぱりねぇ⁉︎アブゴブサブナブゥッ⁉︎』

 

「ねぇ、やっぱりレッドって…」

「だから違いますって‼︎レッドォォォッ⁉︎」

 

 

 

ー部屋内ー

 

「なぁぁぁぁあん⤴︎なんだぁぁぁぁぁぁ⤴︎⁉︎

お前らぁぁぁぁぁ⁉︎

俺は今悲しんでんの悩んでんの不安がってるの⁉︎ただでさえ少ない俺のプラトニックな何ちゃらな時間を滅茶苦茶にしないでくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

 

 

ー部屋の外ー

 

「プラトニックって恋愛において肉欲を問わずに相手を思うさまのことよね。

…言葉間違ってない?」

 

「そこは突っ込まないであげて下さい…。」

 

 

ー部屋内ー

 

「ぴっかぴかぴかぴかっちゅ‼︎」

 

「何なんだよぉ〜俺のHPはもう0だよぉ〜俺のプラトニックな時間を返してくれよぉ〜。」

 

直訳

俺の{肉体上の欲望(=性欲)を関係なく相手を思う}(=純愛)の時間を返してくれ。

 

レッドの言いたい事

俺の真剣に悩んでいる時間を返してくれ。

 

注意!:決してレッドは今、恋愛について悩んでいるわけではございません。

レッドがこの様な言葉回しをしているのはただただレッドの頭が緩い(=バカ)だけです。

ご了承下さい。

 

「リッザァ!ザッザリッザッド‼︎ーーー」

 

–俺達を信じろよ⁉︎レッド‼︎

 

–確かに俺達はまだまだ弱いかもしれない!危険な戦いに身を置く事になるかもしれない‼︎

 

だけどっ‼︎‼︎

 

俺達は恐れはしない‼︎俺達はこれから強くなると信じてる!お前と一緒にいることで共に強くなれると信じてる‼︎お前と一緒ならロケット団なんて怖くない‼︎

 

「ぴかちゅぴちゅ」

 

–タケシのイワークにびびってたクセによく言うよ。

 

「リザリードリザッ⁉︎ーーー

ザッザリザリッ‼︎ーーー」

 

–ピカチュー⁉︎お前はこいつを励ましたいのか励ましたくないのかどっちなんだよ⁉︎⁉︎

そしてあの時は俺がまだ未熟だっただけだ‼︎

 

「ぴかちゅぴかぴかーーー

ぴかかかかッ‼︎」

 

–もちろん励ましたいさ。ただ僕は君がしゃしゃり出てレッドを励まそうとする事が気にくわないだけだよ。

で、イワークの時は君がまだ未熟だっただけだって?

それだとしたらこれからの君にとってあの出来事は相当な黒歴史だろうね❤︎

『無理だよ〜⁉︎無理無理⁉︎⁉︎僕にあんなでかい奴倒せるわけないよぉ〜⁉︎⁉︎

きっとあの尻尾で叩きつけられて死んじゃうんだ⁉︎紙みたいにペラペラになって死んじゃうんだぁぁぁぁぁ〜⁉︎⁉︎⁉︎』

クククククッ( ^∀^)ゲラゲラ

あぁ〜あの時の君はボール越しから見てても滑稽だったよ( ´,_ゝ`)プッ!

 

「リザァァァァァァド‼︎‼︎」

 

–あぁそうか、お前そんなに死にたいのか…なら素直に俺が殺してやらぁぁぁぁぁぁ‼︎

何が『でんきだま』を吸収して強くなってるだぁ⁉︎そんなの上にディグダ(体長0.1m)が止まってるかキャタピー(体長0.2m)がとまってるかの違いだろ?

そんなクソみたいな電撃、俺の炎で焼き尽くしてやるぜ‼︎‼︎

 

「ぴかぴかぴかっちゅちゅちゅーーー」

 

–"( ´゚,_」゚)プッ、ヒッシダナ"

進化して一人称が僕から俺に変わったくらいで調子に乗らないでよね。

一人称が変わったくらいで強くはならないから、そんなので変わるのは君みたいに自分の実力も知らずに威張り散らしたくせに何も出来ずに負けた時の絶望感だけだから

( ^∀^)ゲラゲラ。

 

 

「リッザァァァァァァァァァァァァッ‼︎‼︎‼︎」

 

–この社会不適合者がぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎

 

「ぴっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

 

–この(にわ)かかっこつけ野郎ぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎

 

ピカチューとヒッポがレッドに自らの思いを打ち明けるという行為を忘れ借りている部屋でバトルを開始しようとする。

 

「キィィッ⁉︎」「ニッドォッ⁉︎」

 

–やめるんだ⁉︎お前ら‼︎

 

–本来の目的を忘れるな‼︎

 

それをキークとドドラが止めに入る…

 

 

「ピィッガァァォァァッ‼︎‼︎」

 

–邪魔するな進化すらしてない豚猿がぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎

 

「キャキャキャキャキャッ⁉︎⁉︎⁉︎」

 

–あばばばばばばばばばばばば⁉︎⁉︎⁉︎

 

「リッザァァァァァァァ‼︎‼︎」

 

–邪魔すんじゃねぇよネズミの石コロぁぁぁぁぁ‼︎‼︎

 

「ニドォォォォォォォ⁉︎」

 

–“あまごい”覚えてるからってそれは酷くない⁉︎

 

ドドラは“あまごい”によってピカチューの電気技の威力を上げるための()()

布石→石→石コロ

確かに酷い。

 

キークはピカチューの怒りの電撃によって一撃にして戦闘不能、ドドラはヒッポの“ニトロチャージ”を受けても耐え忍ぶが…

 

「ニドォ・・」

 

–確かにさ、さっきの戦闘では完全に最後ピカチューのお膳立てして終わったけどさ!

石コロっていい方はなくない?なんか俺、すげえ遠回しに捨て駒って言われてるみたいじゃん?ていうか石コロって捨て駒以下だよね、そうだよね、勝利の為に犠牲にする価値もないってか?…( ̄。 ̄;)ブツブツ

 

拗ねていた‼︎‼︎‼︎

 

 

そして既に2匹から忘れられたレッドは…

 

 

 

「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ‼︎」

 

 

 

壊れてルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ⤴︎⤴︎‼︎‼︎

 

 

ー部屋の外ー

 

『ピィッガァァォァァッ‼︎‼︎』

 

『キャキャキャキャキャッ⁉︎⁉︎⁉︎』

 

『リッザァァァァァァァ‼︎‼︎』

 

『ニドォォォォォォォ⁉︎』

 

『ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ‼︎』

 

「え、何この混沌(カオス)…」

 

「ちょっと待ってよレッドおかしくない⁉︎

壊れてない⁉︎ポケモン達とハードSMプレイやり過ぎて壊れちゃった⁉︎⁉︎」

 

「あんたは黙ってロォォォォォォォォォ‼︎‼︎

レッドぉぉぉぉぉぉ‼︎戻ってきてェェェェ

カァァァァムバァァァァァァァァック‼︎‼︎‼︎」

 

今までの結論!:カスミは変態‼︎

 

 

 

「……何この状況。……混沌(カオス)?」

 

 

 

ポケモンセンターに戻ってきたナナミは今の現状を見て一言でそう言った。

 

「レッド君⁉︎今どういう状k…「リッザドォォォォォ」っ‼︎三○))д゜*) バキッ」

 

「ピヨピヨ、あっ…」

 

ヒッポの放った“ニトロチャージ”がレッドの部屋の扉を粉砕しそのままナナミをブレイク‼︎‼︎‼︎

 

「ナ、ナナミさぁーん?」

 

 

「…レッド君?ちょっといいかな。」

 

 

人生\(^o^)/オワタ

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ニビシティ・ポケモンセンター

 

「グリーン!」

「!じいちゃん。」

 

グリーンがポケモンセンターを出ようとするとオーキド博士が声をかける。

 

「わしからのお願いだ、ロケット団と戦闘になった時は迷わずにあいつで戦ってくれ。」

 

オーキドのその言葉に驚くようにグリーンの目が見開かれる。

 

「…普通はロケット団とは関わるなって言うんじゃないのか?それ。」

 

「確かにお前は長い間留学しとったけどな、お前はわしの孫だ、そんな事言っても聞かない事はわかっとる。

それに…留学したからこそお前はロケット団を野放しにはしないだろ?

お前はそこで学んだはずじゃ、ポケモンの大切さを…」

 

フッとグリーンから笑みがこぼれる。

そして再びオーキドの方を見る、その表情は普段はクールなグリーンが思想もないとても優しさに満ちた表情だった。

 

「そうだな、確かに留学先で学んだ事は俺に力を与えてくれた、けど1つ俺は失っていたものがあったんだよ。ポケモンの大切さを知ったあまりにな…」

 

グリーンの脳裏に浮かんだのは同じ図鑑所有者であるレッドとのバトル。

 

トレーナーとしての技術もポケモンの力量(レベル)も確実に上回っていたのに、負けたのはグリーンだった。

 

敗因はわかっていた。

 

「俺は俺がしっかりしないとと思って少し閉鎖的になっていたんだ、それがカメールとの心の差を生み出してしまった。」

 

無意識ではわかっていた、自分とカメールがお互いを確実に信頼していないと、そしてそれはレッドのバトルで自覚する事になった。

 

だけど、そんなのは負けた理由の一部分だけでしかない。

グリーンとカメールの心の差が現れたその瞬間はバトル後半の1つの攻撃だけ、その1つだけで負けるほどグリーンの留学先で学んだトレーナーとしての技術は低くない。

そして同じくカメールの力量(レベル)もだ。

 

初めて見たよ、師匠(せんせい)よりも絆を力に変える事の出来る関係を持った奴は…

 

再びグリーンが笑みを零す。

 

その笑みは優しさに満ち溢れた先程の笑みではないが、より熱く深いものからくる笑みであるとオーキドは感じ取った。

 

「じいちゃん、俺…先輩面するのはどうかと思うけど…あいつの将来が楽しみだよ。」

 

「あいつ…?」

 

「じいちゃんの人を見る力は最高だって事さ!」

 

そう言ってグリーンは走り出す、片手にカメールのモンスターボールを握りしめて、そしてカメールもまたモンスターボール越しに伝わったグリーンの思いに応えるかのようにモンスターボールからその姿を現した。

 

「…!ふははははははっ‼︎」

 

オーキドはどんどん小さくなっていくグリーンとカメールの姿を赤い少年と重ねながら嬉しいそうに大きく笑みを浮かべた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

くそぉっ…くそぉっ…くそぉっ…

 

 

 

ポケモンセンターの個室に鳴り響く殴打音。

 

 

 

 

やるしかない…やるしかない…いや、やるんだ、やるんだ…

 

 

 

 

殺るんだ

 

 

 

 

 

仲間の命を奪ったロケット団を…あいつらにも同じ苦しみを味あわせてやるんだ。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

「で、いったいどういう事?これは。」

 

現在の状況を説明しよう!

 

俺は現在ピカチュー、ヒッポ、キーク、ドドラと共に怒るナナミさんの前に正座&お座りをしている。

 

理由は簡単だ。

 

ちょっと精神的にナイーブになった俺は部屋に閉じこもりピカチューに悩みを打ち明けたところ、ピカチューの電撃をくらい、更にヒッポ、キーク、ドドラの攻撃をくらい、面を食らっていたところで突然ピカチューとヒッポの喧嘩が勃発、止めに入ったキークとドドラはお互い別々の意味で戦闘不能に追い込まれ、混乱した俺は壊れることによってその状況を切り抜けようとしたわけだ。

 

そんな事では喧嘩を止める事は出来ないのは当たり前、ピカチューとヒッポはここが人様のものである事を忘れて大暴れ、瞼を閉じれば蘇る、炎が燃えて風が舞い、鳴き声轟くあのバトルが昨日の敵は今日の友って古い言葉があるけど今日の友は明日も友達そうさ永遠に(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ

 

「レェェェドくぅぅぅぅん?

話聞いてるかなぁ〜?」

 

「はひっ!聞いてます‼︎もう耳の穴にかっぽじって聞きすぎて鼓膜破れるくらい聞いてます」

 

「それって全く聞いてないって言ってるのと同じだよね?」

 

ナナミさんの周囲に闇がかかる、あ、コレマズイパターンダ…。

 

ピカチューとヒッポの喧嘩は激しく暴れまわった末ヒッポの“ニトロチャージ”によって扉がぶち壊され扉の側で俺に現状を聞こうとノックしようとしたナナミさんにも激突、そして現在にイタァール‼︎‼︎

 

「ちょっと真剣に話をしようか。私の部屋に来て」

 

「いや、でもぉ…「キナサイ」はい⁉︎」

 

ナナミさんの後ろに子分のようについていく俺、そしてナナミさんの部屋に入る。

 

流石に今のナナミさんの雰囲気はマズイよな、顔面に突っ込んだもんなヒッポの奴。

 

ナナミの雰囲気から自分の立場や何やらかんやらの危うさを感じ取ったレッドは恐る恐るナナミの表情を伺う。

そしてそこには不気味な笑顔が写っていた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

ガチャッと音を立ててレッドがナナミの部屋から出てくる。

 

「レッド」

 

「ピカピ」

「ザッ」

「キヤッ」

「ニドォ」

 

ナナミの雰囲気から同じようにレッドの身の危険を感じていたブルーとポケモン達がレッドの元へ近づき声をかける、そして声をかけられたレッド自身は

 

「もう大丈夫だよ。目が覚めた。」

 

そう言ってブルーにいつもと変わらぬ笑みを浮かべる。

 

「…怒られたんじゃないの?」

 

「…思い出させないでくれるか…必死に涙を我慢している事を察してくれ…」

 

「御意。」

 

おもったよりも清々しく出てきたレッドの顔がブルーの予想以上にやつれた表情へと変化を遂げる。

 

「流石はレッド君、立ち直りも早いのね。」

「ヒィッ⁉︎」

 

ズザッとレッドが悲鳴をあげてナナミから遠ざかる。

 

「…レェェェドくぅぅぅぅん?

何故遠ざかるのかしらぁ〜?」

 

「いや、あの、えぇーと…気分?」

「…」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「トラウマ刻まれちゃってる…」

 

死んだ魚のような目でひたすら謝り続けるレッドを見て、本格的にナナミの部屋で起こった事を聞く事はよそうとブルーは思った。

…この件については関わらない方が身の為だと

 

「俺には夢がある、その夢を叶えるのにロケット団なんかに臆してたら叶うわけがない」

 

グッとレッドは自分の右拳を力強く握りしめる。

 

「俺は強くなる事を疑わない」

 

 

「…」

 

 

心の中に眠るその強い意志をそのまま瞳に表したかのような瞳。

 

 

その力強さにブルーもポケモン達も思わず笑みをこぼす。

そしてブルーは…

 

「ねぇ、レッド」

 

「ん?」

 

 

 

 

「私ね…

 

レッドと別れようと思うの。」

 

 

 

「え…」

 

 

 

その次のレッドの表情を忘れる事はないだろう。




ナナミ「…レッド君?ちょっといいかな。」

カスミ(あ、これマズイ雰囲気だ…逃げよ。)

スタスタスタスタスタ…

カスミ(それにしてもレッドって…マゾだったんだ…)

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