赤き旅人の巡る物語   作:morumo

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第8話 ニビジム!レッドVSタケシ

ニビジム

岩で作られているかのような建物、ニビシティで圧倒的迫力を持つ建物だ。

レッドとブルーは今その建物の目の前に立っていた。

 

「たのもー‼︎おお‼︎」

 

レッドが勢いよく玄関のドアを開けるとそこには巨大なバトルフィールドが広がり所々に岩のオブジェクトが置いてありいかにも『岩のジム』と言っている。

 

「チャレンジャーか」

 

声のする方を見るとバトルフィールドの奥の岩でできた長いソファーに胡座をかいている人物がいた、ツンツンに尖った焦げ茶色の髪に細い目、それと対象に太い眉、オレンジのTシャツに緑色のベストを着た少年だった。

レッドはスゥーと息を吸って勢いをつけて

 

「俺はマサラタウンのレッド‼︎ジムリーダー・タケシにジムバッジをかけてポケモンバトルだ‼︎‼︎」

 

キィーンとレッドの口から放たれてた大声にブルーと声をかけてきた少年は思わず両耳を塞ぐ。

 

「うるさいわよ‼︎」

「イテッ⁉︎」

 

レッドの頭にブルーのチョップが決まる。

 

「元気のある奴は大歓迎だ。」

 

男は息を大きく吸うと

 

「俺がニビジムジムリーダー岩タイプのエキスパート、タケシだ‼︎その挑戦受けてたとう‼︎‼︎」

 

今度はレッドが耳を塞ぐ番だった。

 

「男ってホントバカ・・・」

 

さっきと同じく耳を塞ぐ羽目になったブルーはボソッと呟く。

レッドはジムの扉の横に設置してあるポケモンセンターに置いてあるポケモンボックスと似たような形をした機械のところをに行くと図鑑を画面に当てる。

 

RED AGE 11

BADGE 0

 

ENTRY COMPLETE

 

という画面が現れるとバッとバトルフィールドの上に設置してあるライトがバトルフィールドを照らす。

 

「所有バッジ数は0か、なら使用ポケモンは2体‼︎いいな‼︎」

 

「はい‼︎」

 

タケシは岩のソファーの隣に設置したタンスのような機械から2つのモンスターボールを取り出す。

 

ジムリーダーの使用するポケモンは相手のバッジの個数で決まる、当然バッジの個数が多い方がレベルの高いポケモンを使う。

 

なぜベストメンバーで挑まないのか、それはポケモンジムは相手の力量を試し、さらなる成長を促すための場であるからだ。圧倒的力で叩き潰したとしても新人トレーナーは育たない、実力が拮抗しているバトルにこそトレーナーは成長する、例えレベルが同じだとしてもジムリーダーはポケモン協会に認められるほどのトレーナーとしての技術があり、その道《タイプ》のエキスパートだ、そうやすやすと勝てるはずもない。

 

ジムリーダーのポケモンの扱い方を見て、それを盗み、対策をして、勝利する。そうすることによってポケモンとの絆を深め、さらなる高みを目指すことができる。

 

つまりジムリーダーとはいわゆる教員免許の持っていない先生なのである。

 

ーマサラタウン出身って言っていたな・・・つまりあいつの使うポケモンの1匹はおそらく・・・

 

タケシは先程のレッドの言葉からレッドの使用するポケモンを予想、その対策するための技を選択する。

 

「俺の準備もOKだ、始めよう。」

 

タケシがバトルフィールドの中心線の外側のラインに2つのフラッグを持っている審判に視線を向ける。

その視線を受けると審判は両手を上にあげ

 

「これより、ジムリーダー・タケシとチャレンジャー・サトシのジム戦を開始します。では・・・バトルスタート‼︎‼︎」

 

バトルの開始を宣言する。

 

「頼むぜ、キーク‼︎君に決めた‼︎」

「キキィッ‼︎」

 

「いけっ‼︎イシツブテ‼︎」

「ラッシャイ‼︎」

 

レッドが出したのはニジジム戦のために用意したポケモン、岩タイプに有効な格闘タイプを持つマンキー、ニックネームはキーク。

 

対してタケシのポケモンは石ころと見分けがつかないほど石にそっくりでそのままじっとしていれば少し大きな石で通りそうなポケモンイシツブテ。

 

「先手必勝‼︎キーク“けたぐり”‼︎」

「イシツブテ‼︎“ロックカット”‼︎」

 

ダッとキークがイシツブテに向かって走り出す。その間にイシツブテは自分の周りに砂塵を巻き上げ身体を磨ぐ、これによって素早さが2段階上がる。

しかし“ロックカット”を完了した時にはすでにキークが“けたぐり”をしようと構えていた。

 

「上にかわせ‼︎」

 

バッと先程あげたスピードと両腕を生かして上空へと飛び“けたぐり”をかわす。

 

「チャンスだキーク‼︎上空なら避けることは出来ない‼︎“けたぐり”‼︎」

「キャッ‼︎」

「“ロックブラスト”」

「キャッ⁉︎」

 

レッドの指示を受け、キークが飛び立った瞬間イシツブテの放った岩の弾丸を直にくらいそのまま地面に激突する。

 

更に2発3発4発5発と連続でキークのいる地面に岩の弾丸が放たれる。

 

「空中で避けることが出来ないのはお前のポケモンも一緒だ。何より、イシツブテは相手が空中で仕掛けてきても充分に技が発動できる高さに飛んでいた。今のはイシツブテとマンキーの空中での距離と技の発動時間を考えなかったお前のミスだ。」

「くっ・・・」

 

ー空中戦を誘われていた・・・まんまとそれに乗っちまった・・・

 

「キーク‼︎」

「キャッ‼︎」

 

バッと砂埃の中からキークがバク転をしながら現れる。

 

「ラッシャイ‼︎」

 

同時にイシツブテも地面に着地。

シーンとした時間が流れる。

 

ー今のターンは完全にレッドはタケシさんの掌の上で転がされていた・・・

 

観覧席から2人のバトルを見ていたブルーは現在の状況を確かめると

 

ーそれにしても、レッドは何やってるんだか・・・相性で勝っているからって余裕ぶっこいてるから相手のペースに巻き込まれるのよ。

 

そして再びバトルが動き出す。

 

「“にらみつける”‼︎」

 

「“ロックカット”‼︎」

 

キークはイシツブテの防御を下げに、イシツブテは自分の素早さをあげにかかる

 

「“みだれひっかき”‼︎」

 

「“ロックブラスト”‼︎」

 

キークが突っ込むとイシツブテの岩の弾丸が次々に襲ってくるがキークはそれを“みだれひっかき”によって受け流しながら近づいていく。

 

ー“ロックカット”に“ロックブラスト”自分のスピードを上げる技と相手を近づかせないようにする技、つまりタケシは俺が格闘タイプのポケモンを使うと呼んで格闘タイプの得意な接近戦をさせない技を選択している。

つまりあと2つを予測するなら・・・

 

「“がんせきふうじ”‼︎」

 

ー相手の動きを封じる技‼︎

 

「“けたぐり”で突破だ‼︎‼︎」

 

イシツブテが拳で地面を叩くとキークの周囲の地面から岩が現れキークを完全に囲む、がキークは“けたぐり”で目の前の岩を破壊そして

 

「“けたぐり”‼︎」

「キィッ‼︎‼︎」

「ガッ⁉︎」

 

キークの蹴りがヒットしイシツブテはそのままひっくり返され地面に激突。

 

「よっしゃ‼︎」

 

ーバカレッド‼︎まだよ⁉︎

ジム戦ではチャレンジャーに助言が出来るのはジムリーダーかジムリーダーチャレンジャーが許可した人のみなため、許可を取っていないブルーは心の中でレッドを叱責した。

 

「“がんせきふうじ”」

「キィッ⁉︎」

 

「なにっ⁉︎」

 

キークが再び岩の壁に囲まれる。

そしてその前には地面に腕をついたイシツブテの姿が

 

「俺のイシツブテの特性は『がんじょう』どんなに威力のある攻撃を受けても一撃で戦闘不能にならないんだ。」

「なっ⁉︎・・・いや、でももう体力は殆どないのは変わらないんだ‼︎キークもう一度“けたぐり”で突破だ‼︎」

 

ドカンッとキークが再び岩を蹴散らす。

 

ーバカレッド‼︎それは誘導よ‼︎

 

ブルーが観覧席から立ち上がる、握られた拳はプルプルと震えていた。

 

岩を破壊したキークの目の前には技を構えるイシツブテの姿があった

 

「“じたばた”‼︎」

「ラッッシャイッッッッ‼︎‼︎」

「キャッ⁉︎ァッァッァッァッ⁉︎」

「キーク‼︎⁉︎」

 

無造作に繰り出されるタックルとパンチを連続でくらうキーク、更に“がんせきふうじ”の岩に激突し更に更にめり込んでいく。

そしてついに岩が耐えきれなくなり壊れキークはタケシ側のバトルフィールドからレッド側の端っこまで吹っ飛ばされた。

 

「キーク‼︎大丈夫・・・か・・」

「キュウウウウッ・・・」

 

レッドが側に駆け寄るとキークは目を回して倒れていた。戦闘不能になった証拠だ。

 

「マンキー戦闘不能‼︎イシツブテの勝ち‼︎」

審判のフラッグがタケシの方に上がる。

 

キーク(マンキー♂)

select skill

けたぐり

にらみつける

きあいだめ

みだれひっかき

 

「よくやった・・・ゆっくり休め」

 

レッドはキークをモンスターボールに戻す。

 

「“じたばた”は自分のHPが少ないほど大きなダメージを与えることができる技、だから俺はこの技を岩タイプ対策をしてきたものに対しての対策技として使っている。」

 

ー『がんじょう』によってHPをギリギリ残しての“じたばた”・・・怖いコンボね・・・

 

ブルーはレッドの対戦を見ながら着々とタケシ対策をその眼で見てたてている。

 

ーレッドのポケモンは残り1匹、タケシさんは1匹と体力が殆ど残っていないイシツブテ、逆転できない数字ではないけど・・・レッドのもう1匹は・・・

 

「頼むぞ!ヒッポ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

「ヒトカゲか。」

 

レッドの出したポケモンは岩タイプに対して相性の悪い炎タイプのポケモン、ヒトカゲ。ニックネームはヒッポ。

 

「俺達も相性なんか覆してやるぞ‼︎」

「カゲッ‼︎」

 

ヒッポの尻尾の炎がボォッといつもよりも大きく燃え上がる。

 

「やる気は十分みたいだな。では行くぞイシツブテ‼︎“ロックブラスト”‼︎」

「“えんまく”‼︎」

 

イシツブテが“ロックブラスト”の準備をしている間にヒッポは口から黒い煙を出しイシツブテと自分を包み込ませる。

 

ーイシツブテの技は“ロックブラスト”“がんせきふうじ”“ロックカット”“じたばた”煙幕を払う技はない・・・レッドはヒッポの判断にかけたわね。

 

煙幕の中では相手に標準を当てられない。レッドは煙幕を使うことで、ヒッポの苦手な岩タイプの技を使わせることなくイシツブテの残り少ないダメージを削り切ろうとしているのだ。

 

「イシツブテ‼︎」

 

ー頼むぞ‼︎ヒッポ‼︎

 

やがて煙がはれる。

 

「カゲーッ‼︎」

「ラッッ・・・シャ・・・」

 

「イシツブテ戦闘不能ヒトカゲの勝ち‼︎」

 

そこには爪を立てていたヒッポとそこから少し離れたところでうつ伏せに倒れていたイシツブテの姿があった。

 

イシツブテ♂

select skill

ロックカット

ロックブラスト

がんせきふうじ

じたばた

 

「よくやった。イシツブテ」

 

タケシはイシツブテをボールに戻す。

 

「これで同じ1対1ですよ。」

 

「確かにそうだな、だけど流石にヒトカゲじゃあ・・・」

 

タケシがモンスターボールを投げる

 

「イワァァァァァァァッ‼︎‼︎」

 

「このイワークには勝てないだろう。」

 

そこから現れたのは岩を幾つも繋いで蛇のようになっており、高さはとても高く普通に8メートルを超えているだろう。

迫力からして確実に先ほどのイシツブテよりも強いだろう。

 

「ヘッ、どんなに大きくたって俺のヒッポは・・・」

 

レッドがヒッポの方を見るとレッドはイワークを見たまま一切動くそぶりがない。

 

「」

 

「・・・ヒッポ?」

 

レッドが呼びかけるとヒッポは首だけレッドの方へ持って行き

 

「」フルフル

 

首を振ったそうだ。

 

「諦めるなぁー⁉︎大丈夫‼︎お前なら出来る‼︎俺はそう信じてる⁉︎」

 

これは唯のお世辞ではない、トキワの森で複数で相手にはしたがレベルの全く違うゴローニャを倒したヒッポの姿を思い出すとレッドのイメージにヒッポがイワークに負ける様子が映し出されないのだ。

 

しかし

 

「カゲ・・・」ウジウジ

 

「ヒッポさぁぁぁぁぁん⁉︎⁉︎⁉︎」

 

その思いが届くのには少し時間がいるようだ。

 

 

ー5分後ー

 

 

 

「カゲェーッ‼︎‼︎」

 

「バトル再開お願いします。」

 

「あ、あぁ・・・」

「イワ」

 

5分かかってようやくヒッポにレッドの気持ちが伝わったようだ。最初と同じがそれ以上の炎が尻尾から燃え上がる。

 

「なにやってんだか・・」

 

試合を中断してポケモンを説得するという情けない光景を目にしてブルーはコメカミを抑える。

 

「いくぜ!ヒッポ“えんまく”」

 

先程と同じように煙幕を吐くヒッポ、しかしヒッポにも1回に出せる煙幕の量は決まっているためイワークの大きい身体全てを包むことは不可能なためヒッポを隠すような形で黒い煙が放たれる。

 

「“ロックカット”‼︎」

 

イワークの身体から砂塵が舞起こりそれによって身体が磨かれ空気の抵抗が少なくなり素早さをぐんとあげる。

 

「“ひのこ”だ‼︎」

 

ボボボボボッ‼︎

煙幕の中から火の粉が出てくるとイワークを襲う。

しかし炎タイプの技は岩タイプであるイワークには効果いまひとつ、イワークに言う程のダメージは与えられない。

 

「煙幕の中に突っ込めイワーク‼︎“たいあたり”」

「ワーク‼︎」

 

イワークが“ロックカット”によって上がったスピードを最大限に利用した“たいあたり”が煙幕の中に突入する。

煙幕は体当たりのスピードで全て散らされ、ヒッポはイワークの攻撃を直接食らってしまう。

 

「ヒッポ‼︎っ‼︎」

 

ーこれじゃあ、煙幕で姿を隠しても意味がない・・・⁉︎

 

「自分へのダメージを減らすんだ‼︎“なきごえ”‼︎」

「カゲェェェェェッ‼︎」

 

ヒッポの口から特殊な音波が放たれイワークの攻撃の威力を下げる。

 

「無駄だ‼︎“がんせきふうじ”‼︎」

 

イワークが岩の尻尾を地面に叩きつける。

すると右、左、後ろ、前の順にヒッポの周囲に岩が出現しヒッボの逃げ道を塞ぐ。

 

「まずい・・‼︎ヒッポ上だ‼︎」

「もう遅い‼︎」

 

「イワァァァァァァァッ‼︎」

「カゲッ⁉︎・・グガッ⁉︎⁉︎」

 

ヒッポが岩を飛び越えようと上にジャンプすると真上から岩が出現しヒッポを巻き込んで地面に激突、ヒッポは大ダメージを受け前後左右と上を岩に囲まれてしまう。

 

「“たいあたり”‼︎」

「ワーク‼︎‼︎」

 

ドゴォォォッ‼︎‼︎‼︎

 

イワークの強烈な“たいあたり”は“がんせきふう”じによって出現させた岩を破壊してヒッポに命中。

ヒッポは水切りで投げられた石のように地面に何回もぶつかりながらバトルフィールド外の岩の壁に激突した。

 

「ヒッポォォォォッ‼︎‼︎」

 

レッドの叫び声がニビジム全体に響き渡る。

 

ーレッドには悪いけど・・・勝負ありね。

 

観客席で見ているブルーはこの勝負の全てを悟った。

炎タイプであるヒッポに効果抜群である岩タイプの技“がんせきふうじ”をレッドの指示でジャンプして避けようとしてしまったため威力が追加され、更に“ロックカット”を利用した“たいあたり”を岩による追加ダメージ込みで直撃してまともに戦えるはずがない。

 

壁に激突した際に起こった砂埃がやむ。

 

「カ・・・カゲッ・・カ・・・」

 

ヒッポは四つん這いの状態だった。

身体中は傷まみれ、呼吸のリズムは早く、震える身体から、なんとか戦闘不能状態には陥っていないが

 

「虫の息・・・だな。」

 

タケシはそう呟くと、レッド、トレーナーの方を見る。

 

「ヒ、ヒッポ・・・」

 

ー降参するか、しないか。トレーナーとしての欲をとるか、自分のポケモンの安全をとるか見せてもらう。

 

 

 

 

 

 

ー目が霞む

 

ー身体中が痛い、震えが止まらない。

 

ーでも・・・立たなきゃ・・立つんだ‼︎

 

ヒッポは一生懸命立ち上がろうと力を込める。

その時ふと思い出した。

 

ーなんでヒトカゲを持っているのに使わないんですか?ー

 

レッドが旅立ちの日、1番道路でコラッタの捕獲に苦戦していたオーキドに言った言葉。

ポケモンはポケモンバトルで弱らしてからモンスターボールを投げる、このような常識をオーキドが知らないはずがない。

 

結局レッドは理由は聞けなかったがヒッポはその理由を知っていた。

 

 

フシギダネが逃げ出し慌てて自分のモンスターボールを持って外に出たオーキド博士は間違えて自分を持ってきたと呟いた。

 

ー僕が代わりに戦うよ!

 

モンスターボール越しにその思いをオーキド博士に伝えた。

 

しかし

 

「お前はまだトレーナーとともにバトルをしたことがない。できればレッド・・・お前さんの主人になる人と初めてのトレーナーとのバトルを経験して欲しいのじゃ。」

 

オーキド博士は自分を使う事を拒否した。

 

「・・・お前の主人になるレッドは『痛み』がよくわかる人じゃ、以前ポケモンバトルを見た時、ポケモンが傷つくのを異様に避けてバトルしておった。確かに正しいことじゃがそれに固執し過ぎると逆にポケモンを傷つけることになる。」

 

自分が他の誰かのポケモンになるのは知っていた。それが『レッド』という人物だという事も、オーキド博士はよく自分達に『レッド』の事を楽しそうに喋っていた。だからレッドの事でこんな少し重い空気を出したのは初めてだった

 

「その事を知って欲しい。ポケモンはポケモンバトルで傷つく事を恐れない、その先にある『幸せ』を手に入れるためならばそんな事気にしないって事を」

 

オーキド博士は自分を見ると

 

「まだその『幸せ』を経験していないお前に言ってもわからんじゃろうが、お前さんもすぐにわかるさ。」

 

その通りだった。

 

その幸せを確実に感じ取ったのは1番道路で襲われた大量のポケモンの群れと戦って勝った後だ。

 

 

勝てた事が嬉しい

 

自分が強くなっていく感覚がして嬉しい

 

全てを出し尽くした事による達成感が気持ちいい

 

そして・・・

 

レッドの役に立てて嬉しい

 

自分の頑張りでレッドが笑ってくれる事がとっても嬉しい‼︎

 

 

ーあぁ、これがオーキド博士の言っていた『幸せ』なんだ・・・・・。

 

 

それが今はどうだろう?

レッドの顔は笑顔とは真反対の今にも泣きそうな顔・・・

 

 

ー立つんだ‼︎

 

ー立って勝つんだ‼︎

 

ー勝って・・勝って

 

 

ーレッドに笑って貰うんだ‼︎‼︎ー

 

 

「カッゲェェェェェェェェ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

ヒッポが立ち上がり叫ぶと尻尾の炎が今までにない程燃え上がる、その大きさはレッドよりも大きい。

 

「カァァァァァァッ‼︎‼︎」

 

ヒッポの身体から赤いオーラが現れる

 

「これって・・・「ピコン!」‼︎これは・・・」

 

「『もうか』・・・そうよ!ヒトカゲの特性『もうか』が発動したんだわ‼︎」

 

『もうか』

体力が残り少なくなると発動するヒトカゲの特性、使用する炎タイプの技の威力が上がる。

つまりヒッポは体力は限界を迎えることで火事場の馬鹿力を発動するのだ

 

「・・・ただの『もうか』にみえないがな・・・」

 

ー迫力が違いすぎる。・・これは

 

タケシは『もうか』を発動したヒッポの目を見る。するとフッと笑みをこぼし

 

ートレーナーとの絆が見えるな・・・面白くなってきた。

 

「バトルを続けるぞ‼︎」

 

「えぇ‼︎いけっヒッポ‼︎‼︎」

 

「カッゲェェェェェェェェッ‼︎」

 

ヒッポの身体が激しい炎に包まれるとそのままイワークに向かって突進する。

 

「なっ⁉︎」

 

タケシの驚愕と共にイワークに炎の突進が命中する。

 

「今のって・・“ニトロチャージ”⁉︎」

 

「ノーモーションで発動しやがった⁉︎」

 

『ニトロチャージ』

 

炎タイプの物理技で使う度に自分の素早さを上げる能力を持つ技、しかしこの技は使用するために強い力で足踏みをするというモーションが必要なのだが、今のヒッポにはそのモーションがなくいきなり発動したためブルーとタケシは驚きに包まれている。

 

「『もうか』の影響か・・?だが、威力が上がったところで所詮は炎タイプの技‼︎イワークには効果はいまひとつだ‼︎」

 

「ヒッポ‼︎“ニトロチャージ”‼︎」

「カゲェッ‼︎」

 

ヒッポが再び炎を纏いイワークに襲いかかる。

 

「っ‼︎・・またノーモーションで・・・“たいあたり”で迎え撃て‼︎」

 

イワークとヒッポがぶつかる。イワークはそのままヒッポの炎を纏って弾き飛ばされる。

 

「力負けだと‼︎」

 

ー『もうか』の力はこの体格差をものともしなくなるのか・・・‼︎

 

「“がんせきふうじ”‼︎」

「“ニトロチャージ”‼︎」

 

イワークが尻尾を地面に叩きつけ岩を出現させる、ヒッポの目の前に岩を出そうとしたがもう遅く出した時には既にヒッポはその先に行っていた。

 

ー速い・・‼︎

 

「“ロックカット”だ‼︎」

「ワッ‼︎」

 

イワークの周囲に砂塵が巻き起こり、それを使って身体を磨ぎにかかる

 

「そのまま突っ込めヒッポォッ‼︎‼︎」

「カゲェッ‼︎‼︎」

 

ヒッポはイワークを囲んでいる砂塵に突撃、そして

 

「なっ⁉︎」

 

砂塵によって起こった風が“ニトロチャージ”の炎を強化、砂塵の壁を突き破る‼︎

 

「イワッ‼︎」

 

イワークは“ロックカット”を失敗し、ヒッポの攻撃を受けそのまま倒れる。

 

「わからなくなってきた・・・」

 

勝負の行方を悟ったブルーが呟く。

 

レッドのヒッポの体力はもう僅か、現に今も呼吸のリズムは早い、しかしイワークはヒッポの『もうか』の力に押されているし、ヒッポの“ニトロチャージ”のノーモーションと素早さの上昇について行けていない。

更に

 

「ワァァァッ〜‼︎」

 

イワークが地面に突っ伏したまま悶え出す。

よく見るとイワークの身体の一部が熱で赤くなっているところが見られる

 

「なっ・・⁉︎『やけど』だと・・・」

 

やけど状態になったポケモンは少しずつダメージを受け、動きを制限されるため攻撃の威力が半減する。

 

「まだだっ‼︎勝負はわからなくなってきたぞ‼︎ヒッポ“ニトロチャージ”‼︎」

 

「連続で“がんせきふうじ”だ‼︎」

 

ヒッポを阻むための岩が次々と出現するがヒッポは上がった素早さを利用してどんどん避けていく。

 

ー“たいあたり”で迎え撃ったとしても・・・くっ・・ええい‼︎ままよ‼︎‼︎

 

「イワーク“たいあたり”に切り替えろ‼︎‼︎」

「イワッ‼︎」

 

イワークの攻撃と“ニトロチャージ”がぶつかるが『もうか』の力とやけどの影響でイワークは弾き飛ばされる。

 

「踏ん張れイワーク‼︎そのまま“がんせきふうじ”だ‼︎‼︎」

「⁉︎」

 

イワークは飛ばされている状態から尻尾を叩きつけて“がんせきふうじ”を繰り出す。

不意をつかれたレッドとヒッポは前後左右を岩に囲まれてしまう。

 

「とどめだぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎」

 

上空から岩がヒッポに向かって落ちてくる。

 

 

 

「ヒッポ“ニトロチャージ”‼︎‼︎」

 

 

 

ピシッ・・・

 

 

 

ピシピシッ・・・

 

 

 

ドゴォォォォッ‼︎‼︎

 

 

 

「カッゲェェェェェェェェッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

ヒッポの“ニトロチャージ”が前方の岩を砕く‼︎‼︎

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

「カゲェッッ‼︎‼︎‼︎」

「イワッ⁉︎」

 

 

イワークはヒッポと共に先程ヒッポが激突した岩壁と正反対の岩壁に激突、大量の砂埃が舞う。

 

「イワーク⁉︎」

「ヒッポ‼︎」

 

両者のトレーナーが自分のポケモンの名前を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

「カゲーッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜‼︎‼︎‼︎‼︎」

 

 

レッドの声にもならない叫び声をあげ、大きくガッツポーズをする。

 

砂埃が晴れた後にあったのは戦闘不能状態に陥ったイワークとその上で右手を上げているヒッポの姿だった。

 

 

「イワーク戦闘不能‼︎ヒトカゲの勝ち‼︎よって勝者チャレンジャーレッド‼︎‼︎」

 

イワーク♂

select skill

ロックカット

たいあたり

がんせきふうじ

しめつける

 

「いよっしゃぁぁぁぁぁっ‼︎やったぞヒッポ‼︎よくやったぞヒッポ‼︎」

 

「カゲーッ‼︎」

 

ヒッポ(ヒトカゲ♂)

select skill

ひっかく

なきごえ

ひのこ

えんまく

なきごえ

ひのこ

えんまく

ニトロチャージ

 

レッドはヒッポの元に走り出しギュッと抱きしめる。

同時にヒッポの傷だらけの身体を直にみてこんなになるまで頑張ってくれたことに心にきて、思わず目に涙を浮かべてしまう。

 

「いいバトルだった。」

 

パチパチと手を叩きながらタケシがレッドの元に近づいてくる。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

レッドはヒッポを抱きしめたまま立ち上がる。

 

「これがニビジムジムリーダー・タケシを倒した証、グレーバッチだ。」

 

レッドは左手でグレーバッチを受け取る、綺麗に磨かれた石のようなバッチだが不思議とレッドには何かしらの力を感じる気がした

 

「君が勝てたのはヒトカゲとの絆のおかげだ。君がヒトカゲのことを大事にしたことによってヒトカゲは君のためにバトルに勝ちたいと強く思ったことによって『もうか』が発動したんだ。『もうか』なんて特性たとえ体力が残り少なくなっても滅多に発動できないからな。」

 

タケシの話によるとポケモンの特性『もうか』『しんりょく』『げきりゅう』は体力が残り少なくなると各々炎、草、水タイプの技の威力が上がるのだが、その発動はポケモンの身体にとても負担をかけるらしい、その為、普段それを発動しないように無意識に力を制限、リミットをかけているらしい。それを自分の意思で解き放つことは本人達でも難しいらしい。

 

「これからもそのヒトカゲを大事にしてやれよ」

 

「はい‼︎」

 

レッドは涙を浮かべた満面の笑みでそう答えた。

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