INFINITE EVOLVE   作:00G

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生きてます。


束の間の夢

 全世界における未知の巨大生物出現からはや一ヶ月と数日、アメリカ軍によるモンスター討伐以降モンスターの活動はすっかりなりを潜めていた。

 あれだけ世界を騒がせていたモンスターたちの行動が沈静化したことに若干の不安を覚えながらも、人々はさほど変わらず生活していた。

 Goliath(ゴライアス)が暴れたイギリスでも同じような状態だった。

 未だにGoliathによる襲撃の爪痕が残るイギリスも最初の頃は市民たちは恐怖で家から一歩も出ることができず毎日のように装甲車両が見回りを行っていたが、今では買い物に出かける人が増え装甲車両による見回りもめっきり減った。

 壊された家屋や道路の補修も幾分か終了し、問題なく生活が送れるようにはなっている。

 しかしイギリス本土の各所、特に森に近い場所を重点的に複数の兵士と装甲車両が警備にあたっている。

 いつ現れるかわからないモンスターを相手にするなら当然の行動である。

 だがそれでもやはり人間。

 警備当初よりも緊張している様子が薄れ、時々欠伸が出てしまうくらいには気が緩んでしまっている。

 モンスターへの警戒、警戒中も行われる軍事訓練、隊内での女尊男卑思想の女兵士たちが起こす不祥事によるストレス……兵士たちは忙しいのだ。

 

「本日も異常無し……か」

 

 そんな忙しい兵士の一人『バリー・アンダーソン』は腕時計が1日が終了し、また新しい1日が始まった時刻になったことを確認するとため息を吐くように呟く。

 交代制とはいえ、真っ暗な森へと続く橋を暗視装置付きの双眼鏡で数時間見続けるのは疲れる。

 バリーは双眼鏡を下ろし、見張り台の梯子を降りて下で待機していた同僚と見張りを交代して休憩スペースへと足を運ぶ。

 そこでは訓練終わりの兵士たちや待機中の兵士たちが和やかに談笑していた。

 

 バリーはコーヒーカップを持ち、休憩スペースに設置されたコーヒーサーバーからコーヒーを注ぐ。

 コーヒーの香りがふんわりと漂い、その香りを堪能しながらバリーは砂糖とミルクをたっぷり入れる。

 コーヒーの香りは好きだが苦いのは苦手だ。

 もはやコーヒーではなくカフェ・オレと化したそれに舌鼓を打ちながら近くにあった椅子に腰かける。

 やはり甘いものこそ至高。

 

「先輩またそんな甘いもの飲んでるんですか?」

 

 コーヒー(甘口)に舌鼓を打っていると、椅子に腰かけるバリーの背後から女性の声がかけられる。

 バリーは声をかけた女性『エミリア・V(ヴァン)・アトラージ』に椅子に座り背を仰け反らせながら彼女の姿を視界に入れる。

 

「お前も飲んでみればいいのによ」

「嫌ですよ。太りますし」

 

 『うへぇ』と嫌そうに顔を歪め軽口をたたくエミリア。

 バリーは『旨いのに……』と残念そうに呟き、エミリアが両手に抱える資料へと目を向ける。

 

「あの化け物についての資料か?」

「はい。 細胞サンプルの研究結果の報告も予て目を通すように、と本部から送られました」

「読んでもいいか?」

「どうぞ」

 

 エミリアから手渡された資料を受け取ったバリーは、ペラペラと資料を1枚1枚捲りながらそこに書かれた内容を確認する。

 内容はイギリスを襲撃したGoliathの体組織の分析結果、他生物がこの体組織を何らかの形で体内に取り込んだ場合への影響、効果的な薬物兵器の模索などが書かれている。

 ミサイルの爆風で抉れた肉片と道路に巻き散った血液だけでよく調べれたと思えるほど事細かに書かれていた。

  アサルトライフルの銃弾を弾く強固な外皮。

 ミサイルを食らってもなお動ける体力。

 1cmの細胞片が4日間で5cmまで成長するほどの再生能力。

 細胞片を食べたネズミの凶暴化等々……。

 まとめるとこのような内容が書かれている。

 あとはGoliathの呼称を【ゴリアテ】と呼ぶことが決められたということも。

 

「……やっぱり地球生まれの生物じゃないっていう訳だな」

「にわかには信じられませんが、遺伝子の塩基配列が地球上に存在するどの生物のものとも一致しない以上そうとしか……」

「ふぅん……『なお、遺伝子を意図的に操作された可能性有り』? おいおい、まさか生物兵器だっていうのかよ……」

 

 資料に書かれた内容にバリーはため息を吐きながらげんなりと呟く。

 歩兵が持つ銃器、更にIS用に改良・調整された物でも種類によっては全く効かない化け物が何処かの惑星からやって来た生物兵器などまるでSF映画のようではないか。

 娯楽で楽しむ分には結構だが、現実に起こるのは勘弁願いたい。

 実際に起こってしまったためもう遅いが。

 

「あら、下賎な男がこんな所で何をしているのかしら?」

 

 コーヒー片手に資料を読んでいるバリーとバリーの隣に立つエミリアの後ろから、明らかに好意的とは程遠い態度で二人を見る女性が声をかける。

 その女性の目からは侮蔑と嘲笑の色が見てとれた。

 

「何って休憩ですよ少尉。 見てわかりませんか?」

 

 そんな女性に対して同じく馬鹿にするように返すバリー。

 煽り返された女性は馬鹿にされたことが悔しかったらしく、歯を食い縛りワナワナと握りしめた拳を震わせる。

 

 ヘレン・ローウェンス。

 IS部隊所属。

 年齢29歳。

 階級は少尉。

 BT適正はA-。

 BT適正の高さから一気に出世したエリート。

 しかし性格は高慢で今の世の女尊男卑思想に染まっており、事あるごとに男性兵士と騒ぎを起こす。

 そして、イギリスの代表候補生であるセシリア・オルコットよりBT適正がちょっと低いというだけで代表候補生から外された経歴を持つ。

 そんな彼女がバリーに絡んでいく理由は、単に自分より階級が低いくせに周りから信頼されているからという子どものような理由だけである。

 

「はぁ……少尉、本部から送られたあの巨大生物の資料です。 目を通してください」

 

 絡んでくる理由をなんとなく察したバリーはため息を吐き、先程まで自身が読んでいた資料を差し出す。

 いくら態度が悪くても一応は同じ軍に所属する兵士。

 しかも階級は向こうが上なため、こういった対応はする。

 それでも座ったまま資料を渡すくらい嫌っているが。

 向こうも同じ兵士……とまでは思っていないが、軍に所属するくらいなら本部から送られた資料は読んでおかなければならないのでバリーの手からひったくるようにして資料を奪う。

 

「ふぅん、まぁISに負けないものなんて無いのにここまで臆病になるなんて、やっぱり男ってダメね」

 

 パラパラと資料を捲り書かれている内容を確認するヘレンだが、IS絶対主義なためモンスターのことを下等で野蛮な生物としか見ていない。

 現に日本でISが2機コアごと破壊され、イギリスではIS操縦者が一人殺されている。

 よほどの自身があるのか、はたまた報告の確認をしていないのか良い意味でも悪い意味でも最悪だった。

 ヘレンは受け取った資料を捨てるようにバリーへと投げ返す。

 そして、バリーへの軽蔑する態度とは打って変わって熱を帯びた視線と表情でエミリアを見つめる。

 はっきり言おう。彼女はレズビアンだ。

 

「うふふ、さあエミリア。 こんな男なんて放って私とイイことしましょう?」

「お断りします」

 

 精一杯色っぽくお誘いをしたヘレンだったが、エミリアに即答で断られる。

 即断られるとは考えていなかったヘレンが驚いた表情で固まっているのを他所に、エミリアは断った理由を話していく。

 

「第一私は職務中なので仕事をほったらかしにしてサボろうとは思いません。 それに私は少尉と違って恋をするなら男性が良いです。レズではないので。 あとーー」

 

ーー私、付き合っている男性がいるんで

 

 堂々と言い放ったエミリアの周りにいた他の兵士たちが拍手を送る。

 中には口笛を吹いて囃し立てる者もいるが、エミリアは恥ずかしがる素振りを見せない。

 兵士たちの反応から見れば、周りから見られているヘレンの印象が悪いということがよくわかる。

 ヘレンは羞恥と悔しさでこの場にいられなくなり、顔を真っ赤にしながら逃げるようにその場から離れていった。

 

「お前中々言うな」

「先輩が早く私にウェディングドレスを着せてくれたら解決するんですけどね」

「今の化け物騒ぎが終わったらな」

 

 バリーに柔らかい笑みで微笑むエミリアの姿にバリーも思わず笑みが零れる。

 エミリアが付き合っている男性ーーそれが今カフェ・オレのように甘いコーヒーを飲んでいるバリー・アンダーソンである。

 バリーとエミリアの周りでは二人が結婚を控えていることは既に周知されており、予定ではもう結婚式をあげているはずだった。

 しかし、Goliath【ゴリアテ】がイギリスで大暴れしたことでそんな余裕がなくなってしまい、結婚式がさらに先に伸びてしまったのだ。

 休憩所ではエミリアとヘレンの攻防で囃し立てていた意味とは違う意味で周りの兵士たちが囃し立て始め、最初よりも盛り上がる形で休憩所が騒がしくなる。

 

「ふふ、それでは私は資料を提出しに行っていきますので先輩はゆっくり休んでくださいね」

 

 そう言ってエミリアは大量にある資料を抱えて休憩所から出ていく。

 エミリアがいなくなった代わりに、今度は休憩所にいる気の良い野郎共がバリーの周りに集まっていく。

 

「おうおうバリーよぉおめぇらアツアツだなぁ!」

「全くだぜ!俺にも良い娘がいたら紹介してくれよ!」

「お前が死んじまったらあいつ悲しむんだからよ、お前は安全なところで大人しくしてろよ!」

「うるせぇ!」

 

 肩を組まれガハハと大笑いする仲間たちと笑いながら口論という名の談笑を繰り広げられる休憩所は、モンスター騒ぎでピリピリしている世からかけ離れた実に能天気な場だったがそれでもバリーにとっても彼らにとってもとても心地よい空間だった。

 誰もがこのモンスター騒ぎが夢であればよかったのにと思ったが、現実は突如として鳴り響いた警報によってそんな小さな幸せを壊した。

 警報がなった瞬間、笑い合っていた彼らから笑みが消えて緊張した空間が広がる。

 そして、彼らの前を慌てた様子で走る兵士が叫ぶ。

 

「化け物の()()が来たぞおお!」

 

 地獄が始まる。

 

 




大変長らくお待たせしてすみません。

言い訳として、過去にスマホで書いていた小説のデータがスマホの画面が全くつかなくなり機種変更と共に全て消えたことでモチベーションがどん底にまで落ち、働くようになってうまいこと時間がとれず中々小説を書く時間がとれず、Distny2をメッチャやってせいで全然投稿することが出来ませんでした。

活動報告で生きていることを言えば良いかなって思いましたが、書いていないのにそんなこと言えないなと思いまして今回リハビリがてら復活して再び小説を書きます。

今後から不定期更新になると思いますが、小説はまだまだ書いていきますのでこれからもこの作品にお付き合いください。
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