そのせいで文字数が1万7000文字を越えたけど!
それでは、INFINITE EVOLVE第6話どうぞ!
『やあラジオの前の諸君、こんばんは!みんなのお耳の恋人、ニコライ・エリックだよ!
早速なんだけど、今夜は季節外れだけどちょっぴり怖~い話をさせてもらうよ。
実は今夜話す話は僕の回りで噂されている話なんだ。
話のタイトルはこう。『亡霊』。
これはある二組のカップルが森で肝試しをしに行った時の出来事なんだ。
4人は有名な心霊スポットの森に懐中電灯を片手に入っていった。
肌寒く、辺りは真っ暗で懐中電灯で照らす先しか見えない道なき道を彼らは進んでいった。
一人の女性が言った。 『何も起こらないじゃない』
『これからだって』 その女性の彼氏が言う。
『ねえもう帰ろう?』 もう一組のカップルの女性が怯えた様子で言い、『大丈夫だよ』とその彼氏が優しく励ますように言う。
そのまま彼らは森の奥に進んでいったけど、何かが起こるわけでもなく、何かが出てくることもなくただ薄ら寒い夜風がザワザワと木の葉を揺らす音だけが聞こえた。
『なーんにも起こんねえじゃねえか』 男性がつまらなさそうに懐中電灯でぐるりと辺りを照らしながら言う。
『早く帰ろうよ。 私怖いわ』 自分の彼氏の腕を掴んで怯える女性に、その女性の彼氏は『じゃあ帰ろうか』と怯える彼女を優しく抱き締める。
『仕方ねえな。 おーい、帰るぞ』 男性は自分の彼女にそう言ったが、彼女からの返事はない。
男性が何度も呼び掛けるが勿論返事は返ってこない。
残った女性がさらに怯え始め、彼氏がなんとか落ち着かせようとその女性に近づく。
女性の彼氏が1歩踏み出した瞬間、暗闇からナニカが飛び出してきて女性の彼氏を掴むと暗い森の奥に連れ去った。
女性は叫び声を上げて一目散に逃げようとしたけど、女性の胸を突き破るようにして腕が女性の心臓を貫いて、男性と同じように森の奥に引きずり込んだ。。
残った男性は必死に来た道を辿って森の外に出ようと走ったけど、後ろから姿のわからないナニカが追いかけてきた。
時々視界の隅をナニカが白い軌跡を残しながら移動するのが見えたけど、男性には恐怖以外の何物でもなかった。
必死で、呼吸の仕方がわからなくなるくらい全力で走ったお陰かなんとか森の外に出ることができた。
ナニカはもう追いかけてくる様子はなかったけど、一緒に肝試しをしたメンバーは帰ってこなかった。
男性はすぐに警察にことの真相を説明して、3人を襲ったナニカへの対策を要求した。
だけど調度、警察に保護されていた老婆が震える口でぽつりと一言だけ喋った。
『亡霊が現れた……』、と。
ここでこの話はお仕舞い。
ちょっぴりだけど、季節外れの納涼感を味わえれたかな?
それじゃあここで今夜のラジオは終了するね。
そして僕から最後に一言。
亡霊は案外君の近くにいるかも。
それじゃあまた明日。バイバーイ!』
☆☆☆
「ねえねえ、最近流行ってる怖い噂知ってる?」
「噂?」
平日のIS学園の1年生寮の食堂の一席ではある話題で盛り上がっていた。
「なんでも、夜中に森にいると幽霊が出るんだって!」
「幽霊? なんでまたそんなものが……」
「本当らしいんだって! 今じゃ世界中で有名な噂だよ! 知らないの!?」
華の十代。噂話は女の子の大好物なのか、女子生徒の声に熱がこもる。
「夜中に森の中を歩いて『亡霊さん亡霊さん。今貴方は何処にいるの?』って言うと、幽霊にあの世に連れていかれるっていう噂なんだよ!」
「へー」
対して話を聞いていた方の女子生徒は興味がなさそうにジュースを飲む。
「ちょっと杏奈。 もう少し興味を持ってくれてもいいんじゃない?」
ジュースを飲む女子生徒『清水杏奈』に噂話を持ちかけた女子生徒『美鈴由美』は腰に両手を当てて憤慨した。
「だって私幽霊とか信じてないし。 それに今は夏じゃないじゃん」
「はぁぁぁ……噂に季節は関係ないよ。 まあそれは置いといて、今日私は行動するよ!」
「……はぁ」
バッと立ち上がって高らかに宣言する美鈴由美にため息をはく清水杏奈。
美鈴由美が今さら諦めるとは思えないし、例え一人でも夜(正確には門限ギリギリの夕方頃)にIS学園の森(森というより林)の中に入って噂を確かめようとするだろう。
「では美鈴由美。 いっきまーす!」
清水杏奈はどうせ噂がガセであったことにしょんぼりとしながら帰ってくる親友のためにポテチでも買ってあげようと考えて席を立つ。
そして、美鈴由美は噂の検証をしに行ったきり二度と帰ってくることはなかった。
☆☆☆
「三島由香さん」
「はい」
「美鈴由美さん……美鈴由美さん?」
次の日の1年1組の教室で教卓に立つ『山田真耶』は出席を取るが、美鈴由美の返事がなかったためもう一度美鈴由美の名前を呼ぶが、やはり返事はない。
教室にいる女子生徒たちは各々に『風邪?』や『やっぱりあの噂は本当だったんだ……』とざわめき始めた。
「誰か美鈴さんから連絡を受けている人はいませんか?」
真耶が美鈴由美がいない理由を確認するが、全員互いに顔を見合わせるも誰も知らなかった。
「織斑先生……」
真耶は美鈴由美のことを心配する一方で、真剣さを帯びた眼差しで『織斑千冬』を見る。
千冬も小さく頷くと座っていた席を立ち『山田先生、あとは頼みます』と言って教室を出ていった。
明らかに真耶と千冬の反応や対応がおかしいことに1年1組の生徒たちは気付くが、真耶はそんな生徒たちにいつものように笑顔を向けて途中で止まっていた出席を再び取り始め、そのまま休憩時間となった。
「……美鈴さん、どうしたんだろうな」
心配そうな声を上げるのは1年1組のクラス代表であり、世界初の男性IS操縦者の『織斑一夏』だ。
「そうだね。 教室がいつもより静かで寂しいね」
そんな一夏に同意したのは金色の髪とアメジスト色の瞳を持つフランスの代表候補生の『シャルロット・デュノア』。
彼女自身お人好しな性格なため、いつも1年1組が騒がしい原因の美鈴由美が欠席したことを疑問に思いながら心配していた。
「この前も日本に謎の生物が現れたと言いますし、心配ですわ……」
そう言ったのはシャルロットと同じ金色の髪とに綺麗な青い瞳をした名門貴族オルコット家のお嬢様でイギリスの代表候補生の『セシリア・オルコット』。
セシリアが言う謎の生物とは
3回とは微妙に少ない回数な感じがするが、全て1週間も経っていない期間に未確認の生物による襲撃という共通点があったとなれば異常である。
因みにアメリカの田舎町を
「(由美……)」
一夏とシャルロットとセシリアが会話をしている中、清水杏奈は消えた親友のことを心配していた。
美鈴由美が消える前、最期に会話をしていた相手は清水杏奈自身だ。
故に彼女が最期に何をしようとしていたのかを知っている。
『森の幽霊を見に行く』
それが美鈴由美が最期にしていたことだった。
「(まさか……本当に……)」
幽霊を見に行くと言ったその日に姿を消す。
まるで神隠しにでもあったかのような出来事に、清水杏奈はゾッとした。
その後、チャイムが鳴り教室に千冬と真耶の二人がやって来たため席を立っていた生徒たちは一斉に自分の席に戻っていく。
それでも清水杏奈の心を支配する疑惑と恐怖の感情が消え去ることはなかった。
☆☆☆
「今日からしばらくの間、寮の外に出ることを禁止する」
時間は過ぎて今日一日の授業が全て終了した時、千冬は1年1組の全生徒たちに向かってそう言った。
勿論いきなりのことに生徒たちは全員不満の声を上げるが、千冬の有無を言わせない鋭い眼光を前にして全員が畏縮したように黙った。
「外出許可が出たときには改めて報告する。 だが無断で外に出たなら反省文50枚書かせるからそのつもりでな」
そう言って締め括った千冬は出席簿を片手に真耶と一緒に教室を出ていく。
自由に行動できるようになった生徒たちはブーブーと文句を言い合いながら自分たちの寮に戻っていく。
清水杏奈も黙って自分の寮の部屋に戻っていくが、やはり心の中に残る不安感が気がかりだった。
まさか本当に幽霊がいるのか。由美は無事なのか。
まだ他にも思うことがいくつもあるが、いつの間にか自分の寮の部屋の前にまで到着していた。
扉に鍵がかかっていたためルームメイトが居ないとわかると扉の鍵を開けて部屋の中に入る。
清水杏奈は部屋の中に入るとすぐさまベッドに倒れ込む。
美鈴由美が幽霊を見に行くと言った日にいなくなり、千冬からは寮から外に出ることを禁止される。
昨日と今日で不可解なことが起こり清水杏奈は不安になるが、親友の美鈴由美が何事もなかったかのように戻ってきてくれることを願う。
清水杏奈は部屋に備え付けられているキッチンで今夜の夕食を作ろうとベッドから起き上がりキッチンに向かって歩いていく。
ベッドから起き上がって窓に背を向けたと同時に、窓の向こうに現れた異質な存在に気づかずに。
☆☆☆
美鈴由美が行方不明になってから5日が経つが、未だに美鈴由美は見つかっていない。
それよりもどうやって消えたのか、どこで消えたのかさえまだわかっていない。
清水杏奈の証言から美鈴由美がIS学園敷地内の森の中に入っていったことは確かなのだが服も、靴も、髪の毛さえも見つかっていない。
その事実が余計に清水杏奈を不安にさせてしまい、清水杏奈はストレスでまるで栄養失調にでもなったかのようにゲッソリと痩せ細ってしまった。
「清水さん、大丈夫?」
そう言って清水杏奈を心配するのはルームメイトの『アシュリー・ブラウン』。
彼女は日に日に痩せていくルームメイトの身を心配するが、清水杏奈は『大丈夫……』と弱々しい声で答えた。
明らかに全然大丈夫じゃない様子にアシュリー・ブラウンは悲しそうな顔をする。
5日間も親友が行方不明になっているなら尚更だ。
アシュリー・ブラウンは自分なりに元気付かせようと立ち上がり、閉めきったカーテンを開けて窓から写る星空を見せた。
「清水さん、大丈夫だよ。 美鈴さんは必ず見つかるから。 ほら、星が綺麗よ」
若干ベタで下手な励まし方で自分を励まそうとしてくれているルームメイトの優しさから清水杏奈は少し微笑むと、アシュリー・ブラウンの所に行って一緒に星空を見ようと立ち上がる。
立ち上がってアシュリー・ブラウンの側に行くために1歩進んだ瞬間、窓ガラスを突き破って鋭い爪が生えた手がアシュリー・ブラウンの顔を掴んだ。
ガラスが割れる音が部屋に響き、鋭い爪がアシュリー・ブラウンの首の動脈に突き刺さり、血が噴水のように吹き出して部屋と窓ガラスを真っ赤に染め上げる。
アシュリー・ブラウンは訳がわからないといった表情を浮かべたまま首から大量の血を噴き出させる。
窓ガラスから伸びた手は、アシュリー・ブラウンの顔を掴んだまま力一杯後ろに引き、そのせいでアシュリー・ブラウンの首がゴキッ!という音を立てながらへし折れた。
そしてアシュリー・ブラウンを殺した手は窓ガラスを割ってアシュリー・ブラウンの死体を夜の暗闇に引きずり込んだ。
一瞬で地獄のような惨劇が目の前で起こり、今は不気味なほど静まり返った部屋の中に清水杏奈の悲鳴が響き渡った。
☆☆☆
1年生寮の廊下を、一夏は歩いていた。
その横には美しい銀色の髪と燃えるような赤い瞳を持った小柄な少女が並んで歩いていた。
少女の名前は『ラウラ・ボーデヴィッヒ』。
ドイツ軍
そして、
「嫁よ、そんな暗い顔をしてどうしたのだ」
ちょっと間違った日本文化を吹き込まれた痛い子でもあるが、ラウラは暗い顔をしていた一夏を心配する。
「ああ。 最近行方不明になる人たちが多くてな、ちょっと心配で」
実を言うと行方不明になった人間は美鈴由美だけではない。
IS学園の1~3年生の何人かが同じように忽然と姿を消している。
消えた生徒たちが最期に目撃された場所はIS学園のグラウンドの外やモノレールの駅、寮の外などとバラバラ。
だが、5日経ったことでやっと共通点が見つかった。
どの生徒も夕方頃に行方不明になっているのだ。
「IS学園に堂々と侵入して生徒を誘拐する……まさか
ラウラはぽつりと呟いた。
戦力、行動目的、存在理由などがはっきりしない組織で、50年以上前から世界の裏世界に存在する秘密結社とされている。
現にこのIS学園にも学園祭の時と高速バトルレース『キャノンボール・ファスト』の最中に
「これ以上
一夏は勝手な思い込みで行方不明生徒たちの誘拐が
最も、今回の誘拐事件は1体の
一夏が
「っ、悲鳴!?」
「この先の部屋からだ!」
突如聞こえた悲鳴に一夏は動揺したが、ラウラが瞬時に悲鳴が聞こえた部屋を割り出し、駆け出していく。
一夏もラウラに続くように走り、ラウラは一つの部屋の前に立ち止まるとその部屋の扉を蹴破った。
「こ、これは!?」
入った瞬間に、ラウラは目の前の光景に思わず目を見開いた。
充満する鉄臭い血の臭い。
窓ガラスが割れ、その一角を大量の赤い血が壁や床を真っ赤に染め上げている。
「うっ!?」
遅れて入ってきた一夏は血の臭いと血で汚れる壁や床を見て、手で口元を押さえて顔をしかめた。
「おい! ここで何があった!?」
ラウラはベッドの隅で体を縮め、顔を真っ青にしながらガタガタと震える少女、清水杏奈を見つけるとその側に駆け寄り事情を訊いた。
だが清水杏奈はブツブツと呟くだけでラウラの言葉に全く反応しなかった。
ただ小さく『死にたくない……』という言葉を連呼するだけだった。
「一夏、教官に連絡してくれ」
「あ、ああわかった」
ラウラは一夏に教官、もとい織斑千冬にこの部屋の惨劇について連絡するよう指示し、壁や床にベッタリと付着した大量の血の所に近づいた。
そしてその場にしゃがみ込み、指でその血を拭った。
「(まだ温かい……それに固まっているような所はない。 この血が付着してからまだ1分も経っていないようだな……)」
ラウラは次に割れた窓ガラスに視線を向ける。
よく見れば窓ガラスの破片が部屋の中には少ししかないのに、ベランダには大量の破片が落ちている。
つまり、外から何かが突き破ってきて、中にあった何かを外に連れ出したということになる。
ラウラは血の上を歩きながらベランダに出て外を見渡す。
勿論警戒は怠っていない。
見渡す先には月明かりでキラキラと輝く海と暗い林しか写らず、特に怪しい人影は見つからない――
「っ!」
ラウラは瞬時に自身の
「一夏! 早くそいつを連れてここから出ろ!」
砲弾を次々と発射しながらラウラは一夏に清水杏奈を連れて部屋から出るように言った。
いつも冷静な彼女がこうも慌てている様子を見て一夏はただ事ではないとさすがに理解し、清水杏奈を抱き抱えると部屋を出た。
一夏の姿が見えなくなったことをハイパーセンサーによる後方視覚補助で確認したラウラはベランダから飛び立ち暗い林の上に陣取った。
ISのハイパーセンサー、熱源感知等を使って林の中に潜むナニカを探すラウラ。
程なくしてシュヴァルツェア・レーゲンが林の中に潜むナニカの位置をラウラに教え、その場所に向けてラウラは砲弾を放つ。
砲弾は高速で真っ直ぐ飛んでいき、林の中に着弾すると木々を吹き飛ばしながら爆煙を上げた。
「くっ、外したか!」
だが残念なことに放たれた砲弾は林の中にいるナニカには命中することはなかった。
ラウラはすぐさまハイパーセンサーを使ってナニカの位置を探ろうとするが、ナニカはまるで忽然と消えたかのように全く反応がなかった。
「どこにいった!?」
ラウラは辺りを見渡してナニカの姿を探す。
そして調度その時、後ろから強い衝撃を受け空中で体勢を崩した。
それでもラウラは反撃するように左腕のプラズマ手刀を展開して後ろを斬った。
だがその攻撃も自身を襲ったナニカに当たることはなかったが、ナニカの体の一部は見ることができた。
巨大な鎌。
一言で言うならこの言葉しかあり得ないというほどの鎌がラウラの右目の視界に写り込んだが、その鎌は一瞬で視界から消えた。
代わりに白い粒子のような白線が空中に残り、それが林の中に続いていた。
ラウラは体勢を立て直して襲撃してきたナニカの位置を探るが、シュヴァルツェア・レーゲンが送ってくるナニカの位置情報は断片的で、まるでハイパーセンサーから反応が消えているかのようだった。
不確定なナニカの位置情報に困惑するラウラだったが、断片的に送られてくるナニカの位置情報を元にナニカの移動先を先読みしてリボルバー・カノンの銃口を先読みした場所に向けて砲弾を放つ。
だがそれもナニカにはわかっていたらしく、砲弾が当たるその前にナニカは身を捻らせて必要最低限の動きで回避していく。
そして、ナニカはリボルバー・カノンに砲弾が装填される時間を狙ってラウラに向かって林から飛び出した。
この時にやっとラウラはナニカの姿をはっきりと見ることができた。
まず目につくものは両肩から伸びた巨大な鎌が生えた腕。
両腕は細くて長く、両手の8本の爪からは鋭い爪が伸びている。
体はまるで女性のように細くスラッとした体をしており、両脚は退化したのか指や爪が一切ない触手のような脚をしている。
そして頭部には目や鼻といった器官は見当たらず、まるでドーム状のフードを被ったような造形をしている。
下顎は二又に分かれ、上顎と下顎からは鋭い牙が並んで生えている。
世間からは『幽霊』や『亡霊』などと呼ばれている『
その姿はさながら人の魂を刈る亡霊のようだったが、ラウラのプラズマ手刀を展開して振り下ろされる鎌を受け止めた。
かなりの熱量を持つプラズマ手刀でも
シールドバリアのお陰で直接首を締め付けられ傷を負うことはなくとも首を締め付けられていることに代わりはなく、ラウラは苦しそうに顔を歪める。
ラウラは苦しむ中ワイヤーブレードを射出して
だがその攻撃を邪魔するかのように
突然襲った痛みに
「ッ!? ジュアアアアアアア!!」
折角のチャンスを邪魔されて、
その先には白い鎧『白式・雪羅』を纏った一夏が左手をじゃんけんのパーのように5本の指を広げて、手の平にある荷電粒子砲の砲口を
「ラウラ! 大丈夫か!?」
「すまない、助かった」
切られそうになったラウラを心配して一夏はラウラに声をかけ、ラウラは助けに来てくれた一夏にお礼を言う。
2対1ではさすがに分が悪いと判断した
だが
AIC。正式名を『
ISに搭載されている『PIC』(正式名は『
2メートル以上の体を持つ
「一夏、今だ!」
「うおおおおおお!!」
動きを止めたことで今が最大のチャンスだと判断したラウラは一夏に攻撃の指示を出した。
一夏は右手に持った白い近接ブレード『雪片弐型』を構えると雪片弐型の刀身が割れて、そこから青白いエネルギー刃が現れる。
白式の
一夏は雪片弐型を振り上げ、上段から勢いよく
「なっ!?」
だが
その眩しさに一夏とラウラは腕を顔の前に出して腕で光を遮る。
林から飛び出した
自分の体からもう一体の自分を作り出して、その囮に攻撃を行わせる。
これが
作り出した分身は質量があり、攻撃パターンなどは本体に比べて単調ではあるのだが実を言うと本体よりも攻撃力が高い。
しかも囮使用時の本体は体を透明化させることができ、目視がまず難しい・レーダーに写らない・他の生物に姿を悟られることがない・足跡が残らないと透明化した本体を見つけることが難しい。
透明化した本体に攻撃を加えれば0.5秒間の間だけ可視化することができるがそれはあくまで透明化した本体の場所がある程度わかり、そこにいる本体に攻撃を加えればの話だし、分身に攻撃を加えれば分身の体が一瞬だけ光るというのを一夏とラウラは知らない。
今回の一夏やラウラのように分身が本体の
そして本体側の
爆風をモロに食らった一夏とラウラは吹き飛ばされ、さらに追い討ちをかけるように
朱いオーラを纏いながら前方に飛び出し、周囲を爆発させるこの能力も
だがこれも、囮よりも厄介と言う訳ではないが
飛び出す軌道を調節することができる上に周囲を爆発させるため攻撃範囲が意外と広く、威力も高い。
しかも攻撃の他に逃走する時にも使え、移動距離が30メートルと長く、ワープを行っている途中で衝撃波を挟めばワープに使用するスタミナを1回分だけ温存できる。
逃げにも攻撃にも使える衝撃波だが、さらに衝撃波を使ってから次の衝撃波が使えるまでのエネルギーが溜まる時間が本来約20秒ほどあるのだが、戦闘時には感情が高ぶり興奮していることもあってか約8秒と大幅に短縮される。
そんな衝撃波を食らい、さらには
あの細い体から繰り出された重い一撃に一夏とラウラは小さく呻きながら身を起こし空を見上げると、
すぐさま二人は飛び上がって
後ろを振り向いた二人はISのハイパーセンサーによる遠方視覚補正で音の出所を見る。
そこにはガラスを突き破って寮の中に侵入する
☆☆☆
血。血。血。血。血。
寮の廊下を彩る温かな赤い血が、壁や床に垂れて血の水溜まりを作る。
その傍らには白いIS学園の制服を着た女子生徒が体に大きな裂傷をつけた状態で倒れていた。
その上に
どうやって口を直接つけずに血や肉を体内に摂取しているのか定かではないが、これが
血や肉を吸い取られた女子生徒の体は血溜まりを残して骨だけになった。
その衝撃で頭から足まで綺麗に揃っていた女子生徒の骨がバラバラに吹き飛んで廊下に散乱する。
「ずいぶんと好き勝手やってくれたわね」
「ジュアアアアアアア! ジャアアアアアアア!」
楯無は自身のIS『ミステリアス・レイディ』を展開。
楯無は蒼流旋を前方に構えて蒼流旋に内蔵されている4門ガトリング砲を
先に動いたのは
楯無はPICで浮遊しながら4門ガトリング砲から無数の弾丸を吐き出させながら後ろに下がる。
分身は全ての弾丸を受けながらもワープを使って楯無に接近して両肩の鎌で切り裂こうとする。
分身であるが故に痛みを一切感じないため怯むことなく分身は楯無に接近する。
しかし弾丸を受け続けているため分身の動きは普段の時より鈍く、さらにミステリアス・レイディは通常のISよりも比較的小型でやや狭い寮の廊下を滑らかな動きで後退していく。
そして
「っ!どこに行ったの!?」
はずなのだが本体側の
楯無はすぐに
楯無と
「今よ箒ちゃん、鈴ちゃん!」
楯無がそう叫ぶと、階段の上の方から複数の爆音が轟き、階段が吹き飛んだ。
そして、爆煙の中から
「ジュアアアアアアアアアアアア!!!」
赤い機体『紅椿』を纏った少女は『篠ノ之箒』。
そして、赤紫色の機体『
「シャアアアアア……!」
「一体なんなのよコイツは!?」
鈴音は見たこともない生物である
楯無と箒と鈴音の3人と3機のISに囲まれた
1人でいる楯無と戦闘して逃げるか?
いや、戦闘前に見せたあの殺気から実力者であることは必然であり、今の状態ではまず勝てない。
なら箒と鈴音と戦闘するか?
しかし、戦闘といっても一回だけしか攻撃されていないためそれが二人の実力とは言えない。
だが楯無よりかは勝てる可能性が少しでもあるならそっちを取った方がいい。
そう判断するなら否や
箒と鈴音は
楯無は囮の厄介さを全てとまではいかないが知っているため、アクア・ナノマシンを操作して水で分身と本体を捕まえようとするが、残念なことに分身にはワープで避けられ本体がいるはずの場所には本体がいなかった。
分身はワープをもう一回、さらにもう一回使って鈴音の前にまで一気に近づくと両肩の鎌を下から上に振り上げた。
鈴音は
分身は振り上げたことで刃の部分が上を向いた鎌を反転させ、刃の部分を下に変えて鈴音へと振り下ろした。
楯無は蒼流旋の4門ガトリング砲を分身に向けて引き金を引こうとするが、分身の鎌が鈴音に届く前に分身は光の粒子に変化した。
代わりに透明化が解除された本体の
「っ! このぉ!」
箒は
そして
ゴシャンッ!という大きな音を立てながら箒と鈴音は後ろに吹き飛び、楯無はそんな二人をアクア・ナノマシンを使って操作した水で受け止めた。
しかし威力が足らなかったのか、完全に1階の天井と2階の床が繋がる穴が空かなかったため
鎌を突き立てる度に天井が崩れていき、空中に浮かぶ
「待ちなさい!」
楯無は穴の中に消えていく
銃弾が
天井が崩れて天井の粉塵が
体勢を立て直した箒と鈴音も攻撃に参加して雨月に刺突攻撃によるレーザー掃射と
数秒間
粉塵が舞う廊下を楯無と箒と鈴音はゆっくりと
粉塵が舞っているせいで少し見えにくいが、灰色の粉塵の中に薄い光が見えた。
その光を見た楯無たちは急いでその穴の中に入っていった。
まんまと
そして誰もいなくなった寮の1階の廊下に、粉塵からひょこりと現れた
なぜ天井の穴から2階に上がったはずの
楯無たちを振り切った
外に出た時、夜空に白い機体が見えたが
☆☆☆
「皆さーん! 落ち着いて行動してくださーい!」
寮の外で『山田真耶』は多くの女子生徒たちを誘導しながら行動していた。
女子生徒たちは皆ざわざわとしながらIS学園敷地内にある一般生徒たちを収容するための保護区画に移動していた。
移動する理由は勿論
だが女子生徒たちの大半はなぜIS学園の保護区画に移動しているのか理解していない。
それでも何人かの女子生徒はその理由を知っており、複数の教師に支えられて保護区画に移動していた。
その集団から少し離れたところに、千冬が打鉄を纏った状態で警戒していた。
事情は愛しい弟の一夏から聞いており、ラウラや楯無からも襲撃者の姿を伝えられている。
だが姿形はこの際どうでもいい。問題なのは能力だ。
ハイパーセンサーにも写らない。周囲を爆破させる衝撃波に、分身を出して本体が透明化する囮。
攻撃手段がしっかりしている上に攻撃と逃走が同時にできる技。
さらにIS操縦者のほとんどがISのハイパーセンサーによる視覚補正に頼っているというのにハイパーセンサーに写らないため、完全な目視による相手の補足が必要になる。
今この場には千冬以外にも何人かの女教師たちが打鉄やフランス製第2世代機の『ラファール・リヴァイブ』を纏っている。
戦力は充分にあるのだろうが、油断など一切できない。
『千冬姉!』
その時、千冬の打鉄に一夏の切羽詰まった声が届く。
「どうした」
普段ならここで『織斑先生だ』と訂正を入れるのだが、さすがにこの状況でそんなことを言っていられないと千冬は判断して一夏の言葉を待った。
『今そっちにアイツが!』
「ジュアアアアアアア!!」
「っ!」
一夏が叫ぶように連絡を伝えたと同時に、林の中から
千冬は弾かれるように飛び出し、葵を
突如姿を現した
途中で転倒した女子生徒を助け起こすなど全くせず全員が転倒した女子生徒を踏みつけていく。
だが千冬は頭上を過ぎていく
外皮を斬りつけられ、体中の筋肉組織にまで傷を負わされた
「すごい……」
「さすが千冬様!」
逃げていた女子生徒たちも千冬がたった1回の攻撃で
中には恍惚の眼差しで千冬を見つめていた女子生徒もいたが、千冬は激痛で苦しむ
遅れて一夏とラウラ、楯無、箒、鈴音が
さらに女子生徒たちの保護区画への移動の護衛をしていたセシリア、シャルロット、簪、他の女性教師たちもやって来て
「シャアアアアア……ジュアアアアアアアアアアアア!!」
だが
黒い穴を空中に開いた
だがその中で千冬だけは険しい顔をしていた。
「(あの化け物がそう簡単にここを見逃すとは思えん……。 それに、アレが最後に見せたあの顔……)」
だが千冬の思いとは裏腹に、勝利の余韻を味わっていた者たちの歓声が夜闇を支配していた。
☆☆☆
「シャアアアア……!」
どこの国の森かもわからない場所に開いた黒い穴から現れた
痛むのは千冬に負わされた大きな裂傷跡。
「ウオオオオオ!」
そんな
だが
熊は痛そうに悲鳴を上げ軽い脳震盪を起こし、フラフラしながら背を向けて逃げ出そうとする。
縄張りを守るために侵入者を排除しようとした熊だったが、完全に相手の力量を誤った。
怪我をしているため弱っていると思っていたことも手痛い反撃を受けた理由でもあるが、熊はこのままでは殺されると判断して逃げる。
しかし、
脚を怪我しながらも熊は必死に体を動かして
1度ではなく何度も、熊の体を切り裂き、傷口に爪を突き刺し、肉を掴んで引き千切り、肋骨を折り、内臓を引きずり出し、背骨を砕き、頭蓋を叩き割った。
すでに絶命している熊に、まるで八つ当たりをするかのように執拗に攻撃を加え続け、辺りに『ズチャッズチュッグチュッ!』と生々しい音が響く。
「……ジュアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
そして攻撃を加え続けることをやめ、
暗い森の中に、敗北者の咆哮が虚しく響き渡った。
書いてて結構大変でしたが、中々に自分でも満足しています。
でも
さて、
でも今度の
それでは今回の
<モンスター>
<スキン>
デフォルト
<技ポイント振り>
衝撃波 ☆
囮 ☆☆
<パーク>
移動速度up ☆☆☆
最高速度が25%上昇する。
<モンスターバフ>
なし
<マップエフェクト>
時空の亀裂
今回から新しくマップエフェクトも掲載することにしました。
あと
感想やアドバイス、誤字報告など待ってまーす。