マクロス-Sword-   作:星々

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ラグナロク編
01-聖剣、降り立つ


静かだ。

音もなく、風もなく

見渡せば満天の星空と、目下には豊かな惑星。

両極には光のヴェールが降りている。

実に幻想的な光景だった。

しかし、今ここを飛行している一機の可変戦闘機のパイロットは、それに興味を示さず、予定されたポイントに向かっていた。

 

「機体異常なし。コースは予定通り…」

 

淡々と機体状況を読み上げた彼女。

彼女の任務は、今乗っている機体と新型の設計図、そして彼女自身を輸送すること。

そしてその任務は、もうすぐ完了する。

はずだった

 

「……接近する機影1。ゴーストX9か…」

 

X-9

究極の戦闘機としてマクロス・コンツェルンによって開発された自律型無人機だ。

それに対し彼女は自身の機体のシステムを戦闘モードへ移行した。

その間にも、あっという間にゴーストX9は彼女に接近し、警告もなしに発砲してきた。

 

「当てにきているか」

 

ゴーストX9に背後を取られた。

マイナス45度バンクからの下方宙返り、所謂スライスバックで方向転換し反撃を試みる。

しかし、ゴーストX9はハイ・ヨー・ヨーでそれに対応してきた。

もっとも、宇宙空間では空中戦闘機動が必ずしも適用できるわけではないのだが、この場合のゴーストX9の動きは、並のパイロットならば簡単に翻弄される。

幸い彼女はその程度の腕ではなかったのだが、やはり機動性でゴーストX9に勝てる機体ではなかった。

 

「やはり機械脳は単純だな」

 

しかし、圧倒的に不利である彼女の表情に変わりはなかった。

むしろ余裕の表情と言えるかもしれない。

しかしそんなことが分かるはずもないゴーストX9は彼女を仕留めようと食らいつく。

距離が狭まり、十分に射程内に入ったその時。

彼女は機体を急転換して横滑りさせ、バトロイド形態に変形した。

EX-ギアやISC採用前の旧型では想像を絶するようなGがかかったはずだが、彼女は顔色ひとつ変えない。

 

「チェックメイト」

 

一気に速度が落ちた彼女の機体に対し、ゴーストX9は減速せずに突っ込む。

いや、減速が間に合わなかったと言うべきだろう。

彼女は右の拳にピンポイントバリアを展開、ゴーストX9に向けてピンポイントバリアパンチを繰り出した。

拳は無人機を貫き、ゴーストX9は粉砕した。

 

「こちらS.M.Sウロボロス支社所属、オーロラ1。輸送任務中に所属不明機と接触・交戦し軽微の損傷を受けた。大気圏突入に問題は無いが傷が目立つ。到着後の整備環境を整えてもらいたい」

『こちらS.M.Sソーディア支社。了解しました。合流ポイントの変更はなし。増援が来る前に合流しましょう』

「了解」

 

コールサイン"オーロラ1"は、ファイター形態に戻し機体を傾け、豊かな惑星"ソーディア"に降下する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り逃がしたか…」

 

戦闘宙域

先ほど所属不明のゴーストX9とウロボロス支社所属の可変戦闘機が交戦していた宙域だ。

 

「こちらアルタイル1、これより帰投する」

 

白い可変戦闘機が、反転して惑星ソーディアに降下していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、惑星ウロボロス

ここに駐留するウロボロス支社は現在、ユーリア群島にいる。

と言うのも、ウロボロス支社はゲフィオンというカーゴシップをそのまま拠点とし、惑星中を飛び回っているのだ。

 

「そろそろ到着した頃かしら?」

「さっきからそればっかだなアイシャ。そんなに楽しみなのか?」

 

ウロボロス支社長、アイシャ・ブランシェットとパイロットのリオン・榊が食堂で会話する。

そこに青髪の少女、ミーナ・フォルテが食事を運んできた。

 

「2人ともご飯できましたよ。で、到着って何がですか?」

「あれ、ミーナには言ってなかったのか。」

「ほら、ウチのパイロットの"スグミ・ドリム"っていたじゃない? あの子に新型バルキリー設計図の輸送を頼んだのよ。」

 

アイシャが美味しそうな料理を目の前にしながら概要を話す。

今回のように、勢いで行動を起こしたがために支社員に現在執行中の作戦が伝わりきっていないことがあるのが困ったところだ。

 

「なんでわざわざあの人に?」

「通信じゃ傍受されたり、乗っ取られたりするかもしれないでしょ? だから彼女の機体にデータを隠して輸送してもらったのよ。 それに彼女なら撃墜されたり奪取されたりする心配もないでしょ?」

 

アイシャが両手を合わせて食事に手をだす。

 

「アイツほど任務に忠実なやつはいないからな。旧型でよくやるぜまったく」

 

スグミ・ドリムと言われたパイロットは、それほど信用に足る存在らしい。

実際、最新鋭機を任されたリオンも、旧型を駆るスグミに模擬戦で幾度か敗北している。

 

「まぁ少しの間向こうで活動してもらうことになるかもあいれないわね。ウロボロスオーロラもそうだけど、惑星ソーディアにもソーディアフィルターって呼ばれているフォールド断層があるから往来は自由にできないのが現状なのよ。」

「YF-30じゃダメなんですか? F.(フォールド)D.(ディメンショナル)R(レゾナンス)システムがあるじゃないですか」

「現時点での最新鋭機がノコノコ行ったら元も子もないだろ? それにウロボロスの方も放っておくわけにもいかないしな」

「そのことも考えて、腕利きで信用できるパイロットの内リオン以外の誰かっていったときに、彼女が私の目に留まったってわけ」

 

非常に家庭的な雰囲気の中交わされる会話。

どうやら新統合軍やバンデットたちには気付かれて欲しくない作戦らしい。

 

「ま、社会勉強も兼ねて、期待しましょっ」

 

アイシャはそう言うと、黙々とミーナの作った料理を口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は再び移り、惑星ソーディア。

そのトパーズ大湖群に位置する、ソーディア首都"オルタンシア・シティ"

ここに鎮座するマクロス・ソードを中心としたソーディア開発拠点都市である。

S.M.Sソーディア支社もここに位置、というより、駐留している。

というのも、ウロボロス支社同様、中型カーゴシップ"グライフ"を拠点に惑星中を飛び回っているのだ。

そんなグライフは、オルタンシア・シティの南端に位置し、必要とあれば素早く発進が可能である。

 

「こちらミラージュ2。合流ポイントを確認した。これより発進する」

 

グライフの左右にあるカタパルトの左側から、今一機の可変戦闘機が飛び立った。

VF-25Fメサイア。

それが、ミラージュ2の機体だった。

 

「こ、こちらミラージュ5…! かかかカタパルト固定確認…発進しますっ!」

 

右側のカタパルトから、VF-171EXナイトメアプラスが発進した。

パイロットはまだ若く、見た所新人であろう女性だ。

VF-25FもVF-171EXも、白ベースのカラーリングに緋色のワンポイントが入っておりいる。

そして機体各部には各自のイメージカラーでS.M.S.の文字をかたどったロゴが刻まれており、ここソーディア支社所属であることを物語っている。

 

「そんな緊張しなくてもいいぞジーナ。初めての任務で緊張するのはわかるが、簡単な護衛任務だよ」

「バルトさん、そ、そんなこと言ったって…」

「ま、気楽に行こ! 僕が一緒だから、安心して」

「は、はい! 頼りになります!」

 

そんな会話を交わしながら、ソーディアの空を飛ぶ。

美しいエメラルドグリーンの湖面を滑るように低空飛行し、時折世間話をしながら目的地へと向かう2人。

この湖の色は水中に存在する植物プランクトンの色で、このプランクトンが温暖な気候を支えている。

そんな美しい湖面を背景に、ジーナの緊張もほぐれてきた。

しかし、和やかな雰囲気は、予定ポイントまで持つことはなかった。

 

「速度を落としてジーナ。何か様子がおかしい」

「ふぇ!? て、敵ですか!?」

「落ち着いて…まずは状況をしっかり確認するんだ……」

 

ガウォーク形態に変形して様子を伺う。

ゆっくりと予定ポイントへ近づいて行くにつれ、戦闘音が聞こえ始めた。

 

「戦闘だ…! ウロボロス支社から来た人かもしれない、行くぞ!」

「は、はい!」

 

五機の深緑のVF-171EXが、黒い機体を取り囲んでいた。

バトロイド形態でガンポッドを構えるその機体は、スーパーノヴァ計画に基づき、新星インダストリーが開発した可変戦闘機、VF-19エクスカリバーだった。

そのA型で、黒いボディに青いワンポイントが印象的なカスタム機らしいことがうかがえた。

A型は最初期に就役した型式で、YF-19譲りのピーキーな性能を持ち合わせているが最初期の機体であることは変わらず、VF-171EXを多数相手取るのは無理がある。

 

「IFFは…S.M.Sウロボロス支社所属! やっぱりそうだ!」

 

ミラージュ2、バルトと呼ばれた男が助太刀に入ろうとする。

しかし、返ってきたのは意外な言葉だった。

 

「足手まといだ。邪魔はしないでほしい」

 

突き放すような女性の声だ。

しかしバルトはそんなこと気にせず、VF-171EXの輪の中に突入した。

 

「余計なことを…」

「いくらなんでも無茶ですよ」

 

VF-19AとVF-25Fが背中合わせになる。

VF-171EXの輪で先に動いたにはVF-19Aだった。

バトロイドで特注の銃剣付きガンポッドを掃射しながら急接近し、迎撃をかわしながらコックピット部分にガンポッドを突き刺す。

そのままVF-171EXを持ち上げて、横のもう一機に投げつけると、ピンポイントバリアを足に集中させて二機を貫く。

その反動で逆側に飛びながらガウォークへ変形、突貫しながらミサイルの雨を放つ。

 

「す、すごい…」

 

鮮やかで無駄のない、そして凶暴的なその一連の動きに、ジーナは唖然とした。

 

「そこの171、突っ立ているだけなら退がっていてくれ。ヒヨッコを庇うつもりはないからな」

 

こういうのを"毒舌"というのか、とバルトは実感した。

ショックだったのか、ジーナは今にも泣き出しそうな目で通信画面に映っている。

そんなことも気にせず、VF-19Aは次々とVF-171EXを喰らっていく。

聖剣の名を持つ可変戦闘機(バルキリー)には似合わない姿だった。

 

「旧型でよくやるよ…ホント、すげぇや」

 

数分後、彼女が黙々と撃破していったVF-171EXは全滅し、その残骸の中央に佇む黒と青の機体は、どこか恐怖を感じさせるような冷たさを帯びていた。

 

「こちらオーロラ1。ウロボロス支社より輸送任務のため参上した。合流を完了したため、そちらの本拠地でデータの譲渡を行いたい」

 

先ほどまで戦闘があったということを忘れたかのような口調でそう言うと、バルトのVF-25Fに向き直る。

 

「確認した。こちらミラージュ2。ミラージュ5と共に先導する」

「了解」

 

ファイターに変形した三機は、エメラルドグリーンの湖を滑りながら"グライフ"へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一連の戦闘を傍観していた可変戦闘機がいた。

白いVF-27γ。

サイバーグラントによって操縦されるBDIシステムの改良型を搭載した高性能機である。

特にγ型はエンジン出力や各種アビオニクス性能を設計限界まで高めたスペシャル仕様で、乗っているのが只者ではないということがわかる。

 

「あのパイロット、旧型で中々やる。俺が直々に相手をするようか……」

 

抑揚の薄い声でそう言い放つと、不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも星々です!


マクロスを扱った作品ですね
日々挑戦の毎日ですが、この作品もちょっとした挑戦も兼ねているんで、生暖かい目で見守ってやってください
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