マクロス-Sword-   作:星々

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11-出動、S.M.S

 

スグミ・ドリムの母は、死んだ。

2059年、即ち、バジュラ戦役中。

バジュラ母星での決戦にS.M.S連合軍の一員として参加したが、そこで消息を絶った。

当時、戦場で出会ったとあるバルキリーパイロットは言った。

惜しいバルキリー乗りを亡くした、と。

VF-19EF/Aに乗る彼と、VF-19Fに乗る彼女。

2人は、戦場ではじめて出会ったとは思えない連携を見せたという。

当時まだ学生だった娘は、親の知り合いだという、アイシャ・ブランシェットの元へ預けられた。

そして、現在に至る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ANUNS最高司令ロボルはあの洞窟を訪れていた。

あの、惑星生物研究所の跡地だ。

靴音が反響し、天井から落ちる雫が怪しい音色を奏でる。

そんな場所に、黒コートは1人でやってきた。

 

「我が親友、藤堂……お前が叶えられなかった夢、形は違えども、私が叶えてみせるよ」

 

ロボルは洞窟の奥地でそう呟き、手を掲げた。

目の先には、不気味な"顔"が。

 

「鍵と箱は揃った。あとはその蓋を開くのみ………」

 

ロボルがそう言い、手を握る。

するとその瞬間、辺りの壁が崩壊し、土煙の中からバルキリーが姿を現した。

VF-27γ、サテルとアリエだ。

2機は、剥き出しになった()()、サイコ・バードを掴み、上昇していった。

上空には部下たち待機しており、ワイヤーをサイコ・バードに固定すると、合計6機でその巨鳥を浮かす。

 

「さぁ、仮初めの平和を始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然現れた巨鳥は、ソーディア全土を震撼させた。

禍々しいその容姿に、誰もが本能的に怯え、すくんだ。

新統合軍内でも一握りの人間しか知り得なかったサイコ・バードが、全星民にその姿を晒した。

その知らせは勿論、S.M.Sの元へも入った。

 

「総員ブリッジに集合! いいわね、急いで!」

 

そんなアライアの声が全艦に響いた数分後、S.M.Sソーディア支社の主要メンバーブリッジに集合した。

その中には、スグミの姿もあった。

怪我は完治したようで、今はもう1人で立っていられている。

その傍にはエレメント・ラプトルのメンバー、即ちバルトとジーナが。

 

「とりあえず集まったわね」

 

厳しい表情のアライアに、一同は緊張感を高める。

 

「もう知っていると思うけど、クローバー大湿地に突如出現した何かによって、民衆も軍も混乱状態だわ。物体は正体不明のエネルギーフィールドを展開しながらグラナダ山脈方面へ移動中よ」

「その進路は…目的地はラフレシア山といったところか。このまま行けば最大のオフィス街、ヴィンデー・シティを突っ切るな…」

 

モニターに表示された進路予想図を見て、パイロット最年長エドワードが指摘した。

正に彼の言うとおりで、惑星ソーディア最大のオフィス街であるヴィンデー・シティをエネルギーフィールドを展開したまま通過した場合、高層ビルは地上3階分ほどを残してほぼ全てが消失するだろう。

そうなれば人だけではなく、惑星ソーディア全体の経済に大打撃が加わることになる。

 

「それだけは、避けなければいけないわ。偵察班の情報によると、付近にはANUNSのバルキリーがいるらしいわ。ANUNSの所有物と見て間違いないわね」

「アライア。進路をもう少し北にずらせれば、都市主要部への直撃は避けられるのか」

 

スグミが挙手して質問した。

ざわついていたブリッジも、水を打ったように静まり返った。

 

「可能性はゼロではないわ」

「ならばやるしかないだろう」

 

再びブリッジがざわついた。

 

「そう言うと思ったわよ、あなたなら」

 

アライアは手を打ち、大きく天井へ指差した。

 

「我々S.M.Sは、惑星ソーディアに住む多くの市民の命のため、只今より進路妨害作戦を発動する! 作戦コード、"禁断のエリクシア"‼︎」

『『『 了解‼︎ 』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

S.M.Sソーディア支社の、作戦コード"禁断のエリクシア"が発動されてから間もなく、惑星ソーディア主要都市圏全域のテレビ回線がジャックされた。

強固なプロテクトが施された軍施設内の通信モニターでさえ、その画面の主導権が何者かに奪われた。

その主犯は、言わずもがなANUNSであった。

 

『惑星ソーディアに住む全ての皆様に御報告させていただきます』

 

そう始められた言葉は、ANUNS総司令ロボル・ウィロウの言葉だ。

あいも変わらず言葉だけは丁寧で、その奥には狂気が見え隠れしていた。

 

『クローバー大湿地にて出現した巨鳥…それは新統合軍が研究を進めてした古の遺産。軍はこれを兵器運用しようと目論んだ……彼女たちを使って』

 

ロボルが腕を広げると、その背後にスポットライトが落とされた。

そこには2人の少女の姿。

顔や身体、その全てが瓜二つの少女。

 

『彼女らは、ヒトではない…はたまたゼントラーディでも。彼女らは人の手によって創り出された生体兵器ゲーティアー』

 

次第に声に熱がこもっていく。

ただ立たされる2人はなにもせず、ロボルの言葉を聞いていた。

一方は泣きながら、一方は不気味な笑みを浮かべながら。

 

『軍はこれでなにをしようと企んでいたかは知りえませんしかし、自然界の摂理から脚を踏み外し、まるでプロトカルチャーを超えたとでも言いたげな態度で彼女らを創った。これがどれだけ愚かな事かは火を見るより明らかであります』

 

筋が通っていないわけでは無い。

むしろ言っていることは正しい。

それ故に、彼のこの言葉は民衆を混乱させ、新統合軍への信用を低迷させるには十分すぎる効力を発揮した。

一方の軍内でも、この事実を知るほんの一部の者も、それを知らない大多数の者も、軍としての機能を阻害するほどに混乱した。

ロボルの狙いはこれだった。

勿論、新統合軍が行っていた非道な計画を暴露しANUNSの掲げる新統合政府からの惑星解放の妥当性を示すことも少なからず狙っていた。

しかし、惑星全体の大混乱こそ、ロボルの計画には必要不可欠だった。

 

『もう一度見直しましょう。私たちがこの惑星(ほし)で、どう生きるべきかを』

 

この言葉で、映像は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

「これで軍の機能は著しい弱体化に陥る」

「あとは私たちの歌でラグナロクを起こして、ぜんぶぶっ壊せば終わりってこと?」

 

呟いたロボルに対し、イオナが言った。

それに対しロボルは何も言わず、ニタリと笑うだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しいエメラルドグリーンの湖面上を、6機のバルキリーが疾走していた。

 

「間も無くコンタクト予定ポイントだ。総員、気を引き締めていけ!」

 

先頭を行くVF-25S。

トルネードパックを纏ったその機体を駆るのは、小隊長エドワード・ブレインズ。

 

「締まっていくわよ‼︎」

「あったりまえだよ‼︎」

 

その後ろに並走する2機のVF-27β。

そのパイロットは、姉セシル・クレイアと弟リュド・クレイア。

 

「エレメント・ラプトル、か、各機異常ありませんっ!」

 

もう一つのデルタを組む3機の戦闘、アーマードパックを纏ったVF-25A。

そのパイロット、ジーナ・フォルティ。

 

「慣れない機体だろうが、大丈夫かスグミ?」

 

右翼を固めるのは、VF-25F。

搭乗者、バルト・バルド。

 

「問題ない。私を誰だと思っている」

 

そして左翼に陣取る、VF-11C。

パイロット、スグミ・ドリム。

使用不能状態のVF-19ASの代わりとして予備のVF-11Cに搭乗している。

VF-19系に比べれば素直な性能をしている機体であると同時に、VF-19系よりも以前にロールアウトした旧型である。

スグミの操縦技術なら下手なVF-25系よりもいい飛び方ができるだろうが、勿論限界は存在する。

それを心配してのバルトの言葉だったが、スグミは普段と変わらぬ自信を含んだ声で答えた。

 

「各機、フォーメーションを崩さずに臨戦態勢だ。相手の射程距離は未知数である以上、気を抜くんじゃないぞ」

 

エドワードの言葉。

目標が視界に入る直前だった。

無数の赤い光線が、6機に向かって伸びてきた。

目標の進行方向に対して右側から接近していた小隊は、10時方向からの弾幕を素早く避けつつ反撃に出た。

 

「「うおりゃあぁぁぁあああ‼︎」」

 

双子のVF-27βが突出した。

サイコ・バードを取り囲んでいたANUNSのVF-171が迎撃に出てくる。

系3機の迎撃隊は双子を上下から挟みこもうと展開してくる。

だがこの2機は囮。

目を引いている隙にエドワードのVF-25Sがバトロイドで着地、スナイパーライフルを構える。

 

「あんまりガキどもに負担をかけたくはないんでね…一瞬で決めるぜ……!」

 

エドワードがトリガーを引く。

すると、スナイパーライフルと背部の旋回式連装ビーム砲が同時に光弾を放つ。

それは吸い込まれるように3機のVF-171にそれぞれ命中、VF-27βを取り囲んだ3機は呆気なく弾丸に貫かれた。

 

「スイッチ!」

「「よろしく先輩!」」

「任せておけ」

「わ、私が上空から、し、指示を出します!」

 

2機のVF-27βを追い越す形で、VF-25FとVF-11Cが突撃する。

ジーナのVF-25Aは高度を取り、戦場を広く見渡す位置取りをし、VF-27βはジーナを護る壁となった。

 

「先行する! スグミはフォローを!」

「了解した」

 

バルトが錐揉み回転しながら敵団の正面を撃つ。

新たに迎撃してきた3機のVF-171を正面に起き、ガウォークに変形してガンポッドを撃ち鳴らす。

数で勝る3機のVF-171が同時にミサイルを放つと、バルトは冷静にそれらを撃ち落としていく。

爆煙が辺りを包む。

そして、それを貫いて飛び出したのは、VF-11C。

雷鳴の如く一瞬の煌めきで1機のVF-171の主翼を破壊した。

本当に一瞬の出来事だった。

ファイターで急接近したかと思えば、すれ違い際に腕を伸ばしナイフを捻じ込んだ。

そう、たったこれだけ。

 

「1機撃破」

「す、スグミさん! 11時の方向に新たな敵影です!」

 

煙を上げて失墜していくVF-171を見ていると、新たな敵性反応を知らせる電子音が鳴った。

レーダーの示す方向に目をやると、巨鳥の陰から現れた白いVF-27γが。

 

「あの男か…!」

 

スグミは機体をVF-27γの方へ向ける。

 

「私が相手をする」

「そんな、サンダーボルト1機でルシファーに対抗しようっていうのか!?」

「どうやら敵もそれを望んでいるようだからな」

 

スグミは気付いていた。

敵の配置が、スグミだけをVF-27γの方へ誘導する位置取りになっていたことに。

だからあえてそれに乗った。

スグミらしいと言えばそうだが、VF-11Cでどこまでやれるかは分からない。

それでもスグミは、涼しい顔でサンダーボルトを疾走させる。




どうも星々です!

大変長らくお待たせいたしました
ようやく活動再開ですよ、ホント、忙しい

さて、ANUNSとの戦いも大きく動き出しました
次回、再びスグミとサテルの戦闘です!
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