マクロス-Sword-   作:星々

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25-姉妹〈チルドレン〉

「レイヴンズがS.M.Sと接触した模様です」

 

薄暗い部屋の中、ある人物の背中に向かって整列する3人の内の1人がそう報告をした。

生真面目そうな声色と整えられた身だしなみが彼女の性格を表している。

 

「ほぅ……」

 

彼女らに背を向けて立つその人は深みのある笑みだけを浮かべた。

もちろん、誰もそれを見てはいない。

 

「思ってたより早かったね、野良犬が余計なちょっかい出したのかな」

「概ねそうだ、ただ現状の彼らの戦力ではすぐに行動を起こすことはしないだろう」

「どうだろうねぇ…」

 

3人の中、どこか一線を画した存在感を放つ1人が挑発気味な口調で言った。

 

「あの指揮官、アライア・シェルディは行動力と決断力のある優れた指揮官さ、今は沈黙を守っているがいつ動いてもおかしくないよ」

「まぁアタシもその指揮官のことは知ってるけど、でも自分の現状戦力の見積もりくらいちゃんとできると思うよ?」

「そうさ、見積もりは完璧と言える。だが彼女ならレイヴンズをどう見る?」

 

彼女も言葉にはどこか圧力があった。

迫力とも言える。

 

「ま、すべてはお姉さまの判断にお任せするさね」

 

お姉さまと呼ばれたその人物。

その人物こそが、3人に背を向けている人物である。

3人が彼女の言葉を待つ。

 

「まだだ」

 

鋭く冷気を帯びたような声。

 

「まだ時ではない。シュトリ、諜報作戦の指揮を執れ。ベリアルは各方面の警戒を見直しS.M.Sを封じ込めろ」

「「はっ!」」

 

その人はそう指示を出すと、視線だけを残りの1人に向けた。

 

「アンドロマリウス、お前は計画の要だ。"鳥"の守護、怠るなよ」

「わかっていますわ、全てはお父様の願いのため…」

 

直後、薄暗かった照明が明転すると、そこにいた3人は一瞬で消えた。

ホログラム映像だったようだ。

そこに残ったのは"お姉さま"と呼ばれた彼女だけ。

 

「お父様の願い………私たち姉妹(ゲーティアーチルドレン)の、ほんとうの使命…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「6番ハッチ、固定完了です!」

「22の損傷がひどい!どっちもって言ってんだ!」

「負傷者はこちらへ!」

 

騒がしく忙しく人々が走り回り声が飛び交うハンガー。

ここはS.M.Sソーディア支社の母艦、ゲフィオンⅡ。

レイヴンズの面々の受け入れで社員たちは忙しく働いていた。

 

「セルダっち……」

「ルーシア…付いて行ってあげな」

「ありがと、ミランダ」

 

機体の損傷も無視できない状態だったが、何よりもセルダの意識が未だに戻らないことが気がかりだった。

この隊の面々の平均の実力が高いため霞んで見えるが、彼の操縦技術は純粋な技術な面では飛び抜けていた。

個性やセンスといった面で秀でている傾向にあるクロス小隊の中で、彼の堅実さは支援役として非常に頼り甲斐があった。

特にルーシアは壁として自分の狙撃ポイントを守ってもらうことが多々あるため、彼女のショックは大きいことがうかがえる。

 

「やはり大変だったみたいですね」

 

ミランダの前に、指揮官と思しき制服に身を包んだ女性が現れた。

 

「あなたは?」

「私はこの中型艦グライフⅡの艦長兼S.M.Sソーディア支社長のアライア・シェルディよ。よろしく」

「そうかあなたが。新統合軍第727独立部隊VF-Xレイヴンズ、クロス小隊長、ミランダ・コズミナ・ジーナス大尉です。突然で申し訳ないのですが、私たちの母艦が沈んでしまい隊も甚大な損傷を受けてしまって、行くあてが無いんです。何か知恵を貸していただけないでしょうか」

 

指揮官、アライアは少し驚いたような顔をした。

 

「やっぱりその生真面目な思考回路はミラージュちゃん似ね」

「ミラージュ…? 私の従姉妹をご存知で?」

 

ミランダにはミラージュ・ファリーナ・ジーナスという従姉妹がいた。

ミラージュ家の流れということもあり彼女もまらパイロットをしているが、ここソーディアとはまた離れた惑星で仕事をしているため、まさかここで従姉妹の名を聞くとは思っていなかったのだ。

 

「えぇ、ミラージュ・ファリーナ・ジーナスでしょ?私の知り合いにケイオスと繋がりがある人がいてね、そこを通じて何度か関わったことがあるの。そこで、私から提案があります」

 

突然の提案。

喋り口調が4年前から少し大人びてきた印象のあるアライアだったが、この突飛さは相変わらずなようだ。

 

「知り合いの身内、つまりあなたね。そのあなたと会ったのも何かの縁だわ。どうかしら、しばらくグライフⅡ(うち)に身を置くっていうのは?」

 

ミランダにはその考えは無かった。

何せグライフⅡは民間企業の艦で、レイヴンズは新統合軍の組織だ。

民間との必要以上の接触は避けるべきだと考えたからだ。

だがこの考えは、所謂アライアの言った、生真面目な思考回路、というものに値することと言える。

実際、こんなことは言っていられないのだ。

 

「……ありがたい話ではありますが…………」

「軍隊の一部であるあなた、しかもひとつの隊を導く立場にある隊長にとっては思うところがあると思うわ。ま、ゆっくり考えるといいわ。回答を急ぐことはしないから」

 

そう言って去ろうとするアライアだったが、何か思い出したかのように止まって話を付け足した。

 

「あと、明日の昼頃、落ち着いてからでいいわ、ゆっくり話をしましょう。情報交換をしたいわ」

「あ、えぇ、それはこちらとしても望んでいました。了解です、場所はブリーフィングルームか何かで?」

「そうね、そうしましょう。一応うちのジーナに艦内を案内させるわ。それじゃ、さっきの件も考えておいてね」

 

ミランダに考えておくよう伝えると、アライアは背中を向けて去って行った。

隣で話を聞いていたブレイブローアは彼女の肩に軽く手を置き、ひとまず休もうと促した。

 

「一回頭を整理した方がいい。疲れたろ、まずは向こうの食堂に案内してくれるみたいだから、ここは休ませてもらおうぜ」

「俺も同感っス」

「うん、そうね…」

 

仕事モードが少し抜け、無意識に強張っていた肩の力が抜けた。

一気に疲れを感じるような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思っていたよりも対応が迅速だな…場合によってはすぐに次の行動を起こすかもしれないか」

 

何処とも知れない切り立った崖の先端で風にあたりながらそう呟いたのは、ソロモンのシュトリ。

彼女は組織内での情報の統括を担当しており、また諜報部隊の指揮権を持っている。

そのためある程度離れていても目標の行動そのものを掴む事自体は容易にできた。

言うまでもなく、レイヴンズの動きを。

 

「マルチスパイドローンを回収し基地へ戻る。お前たちも早めに退け。どうやら()()()()()がいるらしいからな」

 

彼女は網膜投影式総合情報デバイスを兼ねる眼鏡に手を当て、部下にそう伝えると、沈みかかった夕陽に紛れて姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュトリの判断力と分析能力は見事なものだった。

素早い判断で的確な指示を出したのは間違いない。

ただ、それ以上に素早く、敏感に、彼女の言う"風を読む者"は不穏な風を感じ取っていた。

 

「どうしたのさっきから。周りを気にしてるようだけど?」

 

食堂の椅子に腰を下ろしてひとまずの休憩をとっていたミランダ、ブレイブローア、チャーリーだったが、ひとり様子がおかしいのをミランダは見抜いていた。

周りから見れば十分リラックスしているように見えるが、隊員のちょっとした素振りを見逃さないのがミランダの優れたところだった。

 

「ん、あ、あぁ、何でもないよ。慣れない土地だからか妙にそわそわしちゃってな。抑えてたんだけどお前には隠せなかったか」

 

少々大袈裟な(それが彼らしさでもあるのだが)笑顔で答えたのはブレイブローアだった。

もちろん、嫌な風、と言いたいところをごまかして言っているのはあえて指摘するまでもないだろう。

ただまだ確証の域に達していないため、こう振る舞うのが妥当だった。

 

「ところで、どうしてあんなタイミングよく現れたんだあんたら?まるでどっかから見てたみたいだったけど」

 

話を逸らすように疑問をぶつけるブレイブローア。

だが確かにこれは気になるところだった。

 

「あーえっと、それは…」

「それはあの一帯の治安が最近悪化してきて、僕がそこの哨戒を強化するようにローテを組んだからだよ。まぁ言うなれば偶然だね」

 

1人の若い男が話に入ってきた。

 

「あなたは?」

「僕はバルト・バルド。一応この隊を仕切ってる。よろしく」

「ということは、隊長さんってことっスか?」

 

彼、バルトは何故か訳ありげな笑みを浮かべてすぐには返事をしなかった。

どこか悲しい目をしているようにも見えた。

 

「んー、まぁ臨時なんだけどね、一応」

 

その臨時という言葉が何を意味しているかはあまり詮索はしなかったが、何かの理由で本来の隊長が不在なのだろう。

あまり触れない方がよさそうな雰囲気だったので深く踏み込むことはしなかったが、どうやらS.M.Sも首尾は穏やかではないらしい。

 

「とにかく今はゆっくりして。またあとで情報交換はするんだし」

「そうだな、セルダのことも気がかりだが、あいつはルーシアに任せておいても大丈夫だろうし」

「お言葉に甘えさせてもらおうかな。なにか温かい飲み物とかありますか?」

 

そうバルトに聞いたミランダだったが、その言葉を待っていたかのように、ちょうどジーナがホットコーヒーを運んできた。

 

「おぉ、ありがとう。気が利きますね」

「そんな、褒められるようなことでもないですよ。それと、敬語はいいですよ、フレンドリーにしましょう」

 

予想以上にいい待遇に少し驚きを持ちつつも、疑う必要はないと判断したミランダは笑みを浮かべた。

 

「そうだな。少し厄介になるかもしれないし、よろしく頼むよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"お姉さま"と呼ばれていた女。

彼女は相変わらず薄暗い部屋に1人、静かに立っていた。

目を閉じているが、そのまぶたの裏には多くの情報が映像としてよぎっている。

 

「駒は揃ったか…あとはチェックメイトまで事を上手く運ぶだけ…………妹たち、今こそ我らの使命を果たす時だ……」

 

空色の髪がなびいた。




大変お待たせいたしましたどうも星々です!!

時間が空いた事に関してはあまり触れずにいきましょうはい


マクロスΔも放送が終了し、今月20日にはマクロスΔスクランブル発売ですね
私はもちろんルンピカサウンドエディションをアニメイトで予約しましたよ

さて、みなさん、マクロスΔ最終回はご覧になったでしょうか
胸熱展開でしたね!キースのイケメンっぷりには胸を打たれました!
かっこよかったですよね、最後のあの剣をバルキリーが奮ってる感じ!そう、剣を!←
どっかで見た事あるんだよなぁ……


あと、ひとつちょっとした設定ミスに気付いたので報告させていただきます
ミランダという名前ですが、ジーナス家にはすでにミランダという名前のキャラが存在していましたね(にわかがバレた)
まぁ変えるのもなんなのでこのままいかせてもらいます
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