悪運×馬鹿   作:生雀

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1・悪運とは

 

ブブーッ

 

改札は、ICカードをスキャンし通り抜けようとした俺を短い電子音と共に阻む。

 

急いでいるときに限って、いつもこうだ。

 

「はぁ…。」

 

ため息混じりに改札口の小さな画面に目をやれば、チャージ切れ、残金不足の文字。

 

なんだかもう、急いでいる時にこうアクシデントが起こると本当に苛つく。

 

 

のだが、今はむしろ苛立ちを通り越して、落胆の意のため息しか出ない。

 

なんせ、昔からずっとこうなのだ。

 

急ぐとろくなめに遇わなかった。

 

←←6年前←←

       ミオ

幼馴染みの、美桜が親の離婚を機に引っ越すことになり、彼女が発つ日の、その見送りの時のことだった。

 

『あ、もしもし!?今どこよ望田』

 

「あぁ……もしもし、うん今…?今タクシーでそっち向かってる」

 

俺はその日の朝、寝坊した。

 

『っまだ着いてないの!?だってもう、もう美桜…そろそろ搭乗手続きしちゃうよ?』

 

目覚まし時計が、壊れていたわけではない。

 

むしろそれはきちんと仕事をしていた。

 

いつも大学に行く時間ピッタリ、11時に。

「っ…わかってるよ…ねぇ、運転手さん!もうちょいとばせない!?」

 

つまりは、セットし直すのを忘れていたというただの馬鹿だ。

 

目覚ましにより起こされたのが11時20分。

 

(ちなみに設定時刻より20分ラグがあるのは、いつものくせで二度寝したせい)

 

彼女が羽田空港より発つのは12時丁度。

 

ここから最速で見積もっても、羽田まで30分はかかる。

 

支度もろくにせず、飯も食わず、ダッシュでこのタクシーを捕まえるまで、起床よりやく10分。

 

つまりは、そう

 

<おっ、なんだいそんな必死な顔して…逢い引きでもすんのかい?>

 

「っは?いやちが…」

 

ギリギリなのだ。

 

<ったく、じゃあもうちょいとばしてくよ!>

 

『とにかく、すぐ!すぐ来て!早く来て!今すぐ来て!いい!?』

 

俺は、そうとう待ち合わせ、および制限時間という概念に嫌われているようだった。

 

「だっから、わーかったってばっ!!もう切るよ!」

 

ちなみに今の電話相手は、同じく俺と美桜の幼馴染みの、優という口煩い女だ。

 

なんだかんだ言って、小さい頃から俺と美桜の姉のような存在だった。

 

『プツン』

 

「はぁ…。間に合う、かな…」

 

言っても、実際の搭乗時間と搭乗開始時間は多少の違いが生じるため、意外とギリギリ間に合うかもしれない。

そんなことを考えながら、少しスピードアップしたタクシーに揺られていった。

 

↑ ↓ ↑

 

道行く人に時々ぶつかりながらも、俺は空港を搭乗口に向かって走った。

 

 

やっとのことで彼女が乗る飛行機の搭乗口を見つけ、駆け寄る。

 

どうにかギリギリ彼女の搭乗前には間に合ったようで、彼女は搭乗のため列に並ぼうとしている所だった。

 

人のことを言えたものではないのだが、彼女もそうとうなのんびり屋だった。

 

「っはぁ、はぁ……美桜っ!!」

 

そのおかげもあり、俺が呼びかけると彼女はパッと笑顔になり、こちらへ駆けてきた。

 

「八慧くん、遅かったじゃん!もう来ないのかと思ったよ…」

 

困ったような、安心したような顔の彼女になんだか申し訳なくなってしまった。

 

「あはは…ごめん、ちょっと寝坊しちゃって」

 

そう頭を軽くかくと、彼女は2、3度瞬きして、もう…、と破顔した。

 

「何それ、八慧くんらしいねっ」

 

言って彼女は、いっそう笑った。

 

その笑顔に、俺はいつも見とれていた。

 

 

今なら、想いを口に出せる気がした。

 

彼女が遠くに、行ってしまう前に。

 

 

 

意を決し、口を開く。

「……あのさ、」

 

ブーッブーッ

 

「____便____行き、間もなく搭乗受付を終了します。まだ手続きをすませていないかたは、7番搭乗口までお急ぎください。」

 

「あ……私もう行かなきゃ!ごめん八慧くん、また連絡するね!」

 

「あ、あぁ…」

 

彼女は急ぎ足に、搭乗口へと歩いて行く。

 

俺は、その背中をただぼうっと見届けることしか出来なかった。

 

→→現在→→

 

まぁ…今のは例に挙げたものが悪かった。

 

が、つまり急ぐとろくなことがおこらないうえに、結果伝えたいことも伝えられずに……

 

まぁ、ああなる。

 

とりあえず今俺がすべきことは、美桜との約束になるべく遅れないようにすることだ。

 

彼女は優とは違っておっとりまったり、自分に優しく他人に優しい奴なので少しくらいなら……

 

遅れても大丈…夫。多分。

 

「……チッ」

 

そう思いながらも、俺は性懲りもなく格好つけのため急ぎ走るのだった。

 

 

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