INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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気づけば8月も終わりますね。学生の皆さん、課題はやりましたか(笑)ちなみに私は本日再試で泣かされました。微積難しい!


第7話:クラス代表決定戦

―クラス代表決定戦当日。

話題の男子IS操縦者2人と、イギリスの代表候補生の試合ともあって、会場となる第3アリーナは既に満員であった。試合は1対1、総当たり戦で行われ、最も勝ち数の多い者がクラス代表となる。尚、全員が1勝1敗で引き分けの場合は、試合の様子から1年1組のクラスメートが多数決をとって決める事になっていた。

 

 

「・・・遂に試合当日を迎えたわけですが・・・。」

第3アリーナ、Aピット。一夏が腕を組みながら呟く。何故かその表情は、どこか不機嫌であった。

「俺の記憶が正しければ、俺はこの1週間、1回もISに乗ってない気がするんですけどねぇ・・・。」

淡々と語っていた一夏が振り向く。

「ねぇ、箒さん?」

同時に、箒が一瞬身を震わせる。『ギクッ』という擬音が聞こえた気がした。

「どーゆー事だよ!ずっと剣道の稽古だったじゃねぇか!」

「う・・・うるさい!結局お前がISに乗るにはまだ未熟だったという事だ!」

「剣道と並行しながらやれば良かっただろ!剣道で強くなっても、ISで強くなんなきゃ意味がねぇよ!」

「えぇい!男ならつべこべ言わずに己の腕で勝ってみろ!」

結局2人の言い争いは、突如ピットに現れた大魔人こと千冬の出席簿が降り下ろされるまで続いた。

 

 

「え、俺の専用機がまだ来ていないのですか?」

頭に巨大なたんこぶができた一夏が、千冬に聞き返す。一夏の姿を見たマリーが、何とか笑いを堪えていた。

「そうだ、どうも倉持技研の方でもたついてるそうでな。山田先生が到着次第連絡をくれるが、正直最初の試合に間に合うとは思えん。」

「という事は・・・。」

千冬の説明を聞き、一夏同様たんこぶができてる箒が状況を理解する。第1回戦のカードは・・・。

「神谷、お前が先にオルコットとの試合を行う。ISを起動して準備しろ。」

ピットの奥のシートに座り、集中していた靖人が目を開く。普段の彼なら殆どする事がない、険しい表情をしていた。

「・・・分かりました。」

靖人が立ち上がり、ピットからアリーナに続く通路へ向かう。これから闘いに行く親友に、一夏と箒、そしてマリーは激励を送る。

「靖人、勝てよ!」

「真剣勝負だ、悔いは残すなよ。」

「やれるだけの事をやっちゃえ!」

3人の言葉を受け、背中を後押しされた靖人は、再び意識を集中させる。

心に浮かぶのは、いかなる攻撃にも耐え抜き、何人たりとも突破させない鉄壁の要塞。

「・・・不知火。」

胸にあてた右手の指輪から、光が溢れ、不知火の装甲を形成した。ハイパーセンサーに感覚がリンクしたのを確認し、靖人は目を向けずに3人の姿を見る。

「・・・じゃあ、行ってきます。」

静かな、しかし力強い言葉を残し、靖人はアリーナに飛翔した。

 

 

靖人がアリーナに降り立った瞬間、観客席が歓声をあげた。

(予想はしていたけど、やっぱりギャラリーがたくさんいるな・・・。)

自分に向かってかけられる声援の多さに、少し気恥ずかしくなった靖人だったが、観客が更に沸いたのを気に再び真剣な表情になる。

靖人の向かい、Bピットの方から、青いISを装備したセシリアが舞い降りる。

背中の4枚のフィンアーマーから、砲口が見える。恐らくあれも武器なのだろう。

手持ちの武装は確認されない。恐らく、まだ展開されていない。

「どうですか?わたくしが操るこの『ブルー・ティアーズ』は。美しい機体でしょう?」

腕を組み、仁王立ちをしながらセシリアが声を発する。まるで王国騎士のような毅然とした姿に、敵ながら感心する。

「そうだね、澄みきった空のように綺麗な機体だ。」

靖人はわざと彼女の言葉に乗る。

「あら、お世辞が上手ですわね。・・・最も、あなたのその鈍重そうな機体では、わたくしに傷1つつけられないでしょうけど。」

「それでも、やってみせるよ。」

セシリアが目を閉じ、腕を下ろす。

「でしたら―」

来る!靖人は直感的に彼女の殺気を察知した。

「まずはその減らず口をきけなくしてあげますわ!」

セシリアが右腕を構えると同時に長大なライフル『スターライトMk-Ⅲ』が展開され、銃口から閃光が撃ち出される。

咄嗟に靖人は左腕の盾、『天城(あまぎ)』を構え、自分の胴体を狙ったレーザーを防ぐ。

「初撃を防ぐとはやりますわね!なら、これならどうでしょう?」

セシリアがスターライトMk-Ⅲを連射する。靖人は右へと回避しながら、左腕のガトリング砲、『針雨(しんう)』をセシリアに向けて撃つ。しかしセシリアは攻撃の手を緩めずにあっさりと靖人の弾幕を避けてしまう。

セシリアの放ったレーザーが、何発か靖人に直撃した。スターライトMk-Ⅲのレーザーは、ISの装甲を軽く抉る程威力が高い。セシリアは薄く笑みを浮かべた・・・が、次の瞬間目を見開いた。

レーザーが直撃した筈なのに、不知火の装甲には殆ど傷が無かったのだ。尚も突進してくる靖人に向けてレーザーを撃つも、不知火の装甲によって弾かれてしまう。予想外の出来事に、セシリアが舌打ちする。

(防御力の高さが尋常じゃありませんわ!あのIS・・・一体・・・!?)

 

 

摩利支天(まりしてん)』・・・仏教の守護神である天部の一柱にして、日天の眷属の名を冠するこのシステムこそ、不知火の防御力の秘密であった。装甲表面に薄いエネルギーフィールドを張り巡らせる事で、相手のエネルギー系の攻撃を相殺し、本体へのダメージを減らす。神格化された陽炎こと摩利支天は、実体がないので焼けず、濡らせず、傷付かない。神谷椿が操縦者を守るために作り上げた、至高のシステムであった。

 

 

(オルコットさんの武装がレーザー兵器だったおかげで、今のところダメージは最小限に抑えられている。でも・・・!)

針雨をセシリアに向けて放つも、セシリアは簡単に弾丸を避けていく。相手の回避先を予測して撃ってみても、彼女は瞬時に回避先を変更し、弾は何もない空を切る。

(こっちの攻撃が当たらなければ意味がない!)

焦燥に駆られながらセシリアにガトリングを向ける。しかし彼女の次の行動で、靖人は攻撃の手を止めざるを得なくなった。

「行きなさい、『ティアーズ』!」

彼女の命令と同時に、背中のフィンアーマーが分離し、此方に向かって飛翔してきた。

それらは独立した動きで靖人を包囲し、砲口からレーザーを撃ち込んできた。

「移動砲台!?厄介な武装を・・・!」

四方八方からの攻撃に、思わず防御の体勢をとってしまう。ティアーズの攻撃も摩利支天によって弾かれるためまだダメージが少ないが、靖人は内心焦っていた。

「いくらあなたのISが固くても、攻撃を当て続ければいつかは倒れますわ!このまま何もしないのであれば、じわじわとあなたのシールドエネルギーを削ってあげましょう!」

セシリアの言葉に、靖人は唇を噛む。その通りだ。今こうしている間にも、ティアーズの波状攻撃によって確実に自分のシールドエネルギー・・・HPが削られている。

そして、摩利支天も永久に続くわけでもない。攻撃を受け続ければその分エネルギーを食い、底をつきればシステムが停止する。そうなれば不知火の防御力は大幅に下がり、集中砲火によって落とされるだろう。

「さぁ、いつまで持つのかしら!?」

セシリアが勝ち誇ったように笑みを浮かべる。

このまま守っていては勝てない。

時間がかかりすぎては勝てない。

だったら―

 

 

靖人が唐突に不気味な笑みを浮かべる。

 

 

「―ちょっと位、無茶しないとねぇ!!」

叫ぶと同時に、靖人が不知火のある武装を呼び出す。不知火の全身の至る所に展開されたのは―

「み・・・ミサイルポッド!?」

セシリアが驚愕の声をあげる。

1基につき3門の発射口が搭載されたミサイルポッドが計20基・・・合計60門の砲口が一斉に開く。セシリアの一瞬の動揺によってティアーズの攻撃が停止したのを機に、靖人がセシリアに向かって飛翔する。

「あ・・・あなたまさか!?」

「大人しくやられるのは嫌なんでね!」

照準を敢えてセシリアに合わせず、セシリアの辺り一面に一切の隙間なく配置する。この距離なら逃げ場はない!

発射(ファイア)!」

靖人の掛け声と共にミサイルを全門斉射。セシリアが青ざめた顔をして回避行動をとるが、もう遅い。

60発のミサイルが一斉に起爆し、アリーナ全体が閃光に包まれた。

 

 

「キャアアアアアッ!!!」

爆風に全身を激しく揺さぶられ、セシリアは思わず悲鳴をあげた。あまりの威力にブルー・ティアーズの『絶対防御』が発動し、シールドエネルギーが大幅に削られる。ISの装甲も至る所が損傷し、ビットたちも次々と『信号消滅(シグナル・ロスト)』・・・撃墜されていく。

(まさかあんな・・・自爆覚悟で攻撃してくるなんて!)

普段の彼から考えられない、無茶苦茶な攻撃。完全に相手の力量を見誤っていた。

何とか姿勢制御を行い体勢を立て直すが、その直後に目の前の爆風から高速で何かが接近してきた。

「はぁぁぁぁぁっ!!」

雄叫びをあげながら、靖人が肉薄してきた。あの爆撃に巻き込まれていながら、不知火のダメージは装甲表面が焦げる程度に留められている。化け物じみた防御性能に、セシリアは戦慄した。その一瞬の隙をつかれ、靖人に懐に入られてしまった。靖人の右腕には、先端が両刃になっている日本刀―『(こがらし)』が握られていた。

靖人が突きを繰り出し、セシリアの胴を捉える。再び『絶対防御』が発動し、セシリアは苦悶の声を漏らした。続く2撃目でブルー・ティアーズの左腰の装甲が砕ける。

「くっ・・・これ以上させませんわ!」靖人が3度目の突きの構えをとった時、セシリアが爆風の中唯一生き残っていた( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )ビットで靖人を撃ち抜く。不知火の背中の装甲が砕け、靖人は体勢を崩した。先程の爆発で、摩利支天のエネルギーが切れたのだ。

攻撃が通用するのを知ったセシリアは距離をとり、スターライトMk-Ⅲを連射する。不知火の装甲各所にヒビが入っていく。

「っ・・・このぉっ!」

靖人が針雨を放ち、スターライトMk-Ⅲに穴を開けていく。破損箇所から火花があがったのを見て―セシリアが笑った。

使えなくなったライフルを靖人の目の前へ放棄する。靖人の前方でスターライトMk-Ⅲが爆発した。―これで目眩ましになった。

「ミサイルとは、こうやって使うのですわ!」

爆煙の向こうの不知火に向けて、最後まで温存していた腰のビットからミサイルを放つ。今の相手に、あのミサイルは耐えきれない・・・!

「わたくしの勝ちですわ!」

爆発と同時にセシリアが勝利を宣言した―

 

 

 

 

が、次の瞬間足に衝撃が走り、大きく体勢を崩した。

「っ!?今度は何ですの!?」

見ると、左足の装甲にあの日本刀が突き刺さっていた。あの爆発の直前に靖人が投げつけたのだろう。スラスターが死に、飛行が困難になった。

「くうっ!」

右足のスラスターとPICをフルに活用し、地表へ不時着する。それと同時に、左足に刺さっていた凩が光の粒子となって消えた。『具現維持限界(リミット・ダウン)』だ。つまり―エネルギー切れ。

『試合終了。勝者―セシリア・オルコット』

決着を告げるブザーが鳴る。シールドエネルギーが底をついた不知火が着陸し、装甲が解除される。疲労からか、靖人が片膝をついた。

靖人との試合に勝った。だが、セシリアの心中は決して穏やかではなかった。

(追い詰められた・・・このわたくしが・・・ISを動かして間もない男に・・・!)

格下だと思っていた男に、撃墜寸前まで追い込まれた。その事実にセシリアは平静を保っていられなかった。

ブルー・ティアーズを解除し、足早にピットへと向かう

彼女の目には、僅かに涙が浮かんでいた。




やっとちゃんとした試合の描写が書けましたが、やはり難しい。まだまだ精進が必要ですね。
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