INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~ 作:Mr. P.C.
ズゴンッ!!
セシリアとの試合を終え、Aピットに戻った靖人を迎えたのは、千冬の出席簿の角だった。あまりの痛みに靖人は膝を抱えて悶絶する。
「何だあの滅茶苦茶な戦い方は。これが実戦だったらどうする?敵味方関係なく攻撃して死ぬつもりか?」
「す・・・すみません・・・。」
「お前はこれから戦い方を学べ。ISは『兵器』だ。ただ敵を捻り潰すのは暴力だ。恐らくお前の母親は、ISをそんな風に使ってほしいとは思ってない。肝に命じておけ。」
千冬から(真面目に)ありがたい指導を受け、靖人は立ち上がる。そこへ、一夏たちが駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫か?靖人。」
一夏が心配そうに聞いてくる。頭が凄く痛いが、これはもう自業自得だ。
「それにしても」と、箒が口を開く。
「普段の神谷からは想像できないような、大胆かつ無茶な戦い方だったな。」
箒の言葉にマリーが続く。
「確かに、普通ならあんな特攻思い付かないよ。何があったの?」
靖人は首をひねる。
「何だろうね・・・防戦一方になった時に、『これじゃ勝てない!』って思って、そしたら咄嗟に閃いて、そのまま実行した感じ・・・。」
正直、そこからの記憶は曖昧だ。セシリアに勝とうとは強く思っていたが、実際どんな戦い方をしていたかは明確に覚えていない・・・。
(あれ、この感じ前にも・・・。)
確か、初めて不知火を動かした時も・・・。そう考えていた時に、千冬から声をかけられる。
「神谷、不知火を整備室に回せ。第3回戦では織斑と試合だ。それまでに機体を応急措置しておけ。」
「は、はい!」
駆け足で整備室に向かおうとした靖人は、突如入り口から入ってきた誰かとぶつかりそうになる。
「うわっ!・・・って山田先生!?」
「きゃあ!あ、か、神谷君!?ごめんなさいごめんなさい!怪我は無かった!?」
先生がいつも以上に慌てていて、靖人はとりあえず「お、落ち着いて下さい!」と声をかける。何があったのだろうか。
「山田先生、来ましたか?」
千冬が山田先生に聞く。―そうか、山田先生が来たという事は・・・!
「えぇ、遂に届きました!織斑君の機体!!」
「え?」
いきなり山田先生に指差され、一夏が素っ頓狂な声をあげる。
突然、鈍い音と共にピットの搬入口が開き始めた。
「そう!これが織斑君専用のIS ―」
山田先生が嬉々として声を張り上げる。搬入口が開ききると、そこには・・・
雪のように美しい、混じりけのない『白』。
「『XX-01:
純白の機体が、装甲を展開しながら鎮座していた。
「これが・・・俺のIS・・・って痛っ!?」
白式の姿に見とれていた一夏が、急に千冬に腕を掴まれる。
「織斑、急いで白式を装着しろ。」
千冬の言葉に、一夏は頭に『?』を浮かべる。総当たり戦では、少なからずISが損傷するため、1試合毎に30分程インターバルを用意し、ISを応急措置する事になっている。次の試合までまだ20分はある。別に今装着しなくても良いのでは・・・。
「一夏!まだ白式は『
(フォーマットとフィッティング?確かそれって・・・。)
靖人の一言をきっかけに、一夏は1週間で何とか詰め込んだ参考書の知識を思い出す。
―専用機は操縦者の体型等のデータに合わせ、『
(そうか!まだ白式は完全に俺の物じゃないのか!)
状況を悟った一夏は素早く白式に体を預ける。瞬間、感覚が研ぎ澄まされ、白式と自分が繋がるのを感じた。
「よし、このまましばらく大人しくしていろ。残り18分か。試合までには間に合わないな・・・!」
千冬が舌打ちする。え、試合までに最適化が終わらなかったらどうするんだ?
「織斑、間に合わない分は実戦で行う。最適化が終わるのが遅ければ・・・負けだ。」
「何だとぉぉぉぉっ!?」
一夏が悲鳴をあげる。何てこった、万全でない状態で試合に臨むかもしれないとは・・・!
(頼む白式!何とか試合までに終わらせてくれ!)
自分に合わせて外装を変化させてる相棒(正確にはまだ違う)に、早速懇願する一夏であった。
第3アリーナ・Bピット
整備室にブルー・ティアーズを預けたセシリアは、一人膝を抱えていた。頭の中を占めるのは、先程の神谷靖人との試合。彼はセオリーを無視した戦い方で、此方を撃墜寸前まで追い詰めてきた。
辛くも勝利したが、胸の中を渦巻くのは勝利の喜びではなく、プライドを傷つけられた事による絶望だった。
(男に・・・負けそうになった・・・。・・・あの『父』と同じ男に・・・。)
母の顔色を伺っていた、情けない父の顔を思い出す。あの父の存在が鬱陶しく、強い母に憧れるようになった。所詮男なんて、意気地のない弱者だと思っていた。
だが、先程の少年の目は本気だった。本気で・・・自分を倒そうとしていた。その目が恐ろしくて、頭から離れない。
(あんな目をする男がいたなんて・・・。あんな、力の差に屈せず、此方に歯向かってくる目・・・。)
男に負ける訳にはいかない。情けない男にも、立ち向かってくる男にも。
『第2回戦開始まで、残り10分です。』
試合の時が近づいたのを報せるアナウンスが流れる。セシリアは顔をあげ、目尻に浮かんだ涙を拭う。
「もう油断はしません・・・。今は全力であなたを倒しますわ!織斑一夏!!」
アリーナへ鋭い眼差しを向けてから、セシリアは整備室へと向かった。
「限界だな・・・。織斑、残りは試合で行え!出撃の準備をしろ!」
試合まで残り3分、千冬が一夏に命じた。白式の最適化は、まだ終わっていない。
(くっそぉぉぉぉ!白式このやろぉぉぉぉ!)
内心最適化が間に合わなかった白式に毒づきながら、一夏はアリーナの入り口へ移動する。
「一夏・・・!」
箒が心配そうな声をあげた。・・・万全じゃない状態で行くのだ、当然だろう。
「心配するなよ箒、・・・行ってくる。」
優しく箒に声をかける。少しだけ、箒の表情が明るくなったのが分かった。
「一夏、オルコットさんは強い。無理をしないで。」
今度は靖人が忠告してきた。それを聞いて一夏は笑った。
「無理するなって・・・自爆覚悟で攻撃した奴が言うなよ。」
「うっ!!」
痛い所を突かれて、靖人が固まる。
(なんつーか、靖人がああいう失敗するのは珍しいからな。良いもの見れた。)
中学の頃優等生だった彼が
「一夏頑張れー!君ならできるよー!」
マリーが笑顔で応援してくれる。彼女の応援は聞いててとても元気になる。
「おう、行ってくる!」
3人にサムズアップを送り、アリーナへ飛び立とうとした、その時だった。
「一夏。」
突然千冬が、名前で呼んできた。驚きのあまり一夏が振り向く。
「・・・行ってこい。」
唯一の肉親から送られた短いエール。それでも、一夏の背中を押すには充分だった。
「・・・あぁ!」
白式を纏った一夏が、アリーナに向かって翔んだ―。
歓声に迎えられ、一夏がアリーナに降りる。既にセシリアが、ブルー・ティアーズを纏って先に待っていた。
だが、何かがおかしい。
いつものセシリアなら、偉そうなポーズをとって高飛車な台詞を言うだろうに、目の前の彼女は静かに目を閉じている。
「・・・一夏さん。」
突然名前を呼ばれた。そういえばセシリアから名前を呼ばれたのは初めてな気がする。
「な・・・何だよ・・・?」
やはり変だ。いつものセシリアらしくない。
疑問が一夏の頭をよぎるが、次の彼女の言葉で一夏の頭は停止した。
「・・・先に謝らせてもらいますわ。」
・・・え?
今、「謝る」って言ったのか・・・?
「わたくしは、『男』だという理由だけで、あなた方を軽く見ていました。」
何だこれは、動揺を誘う作戦なのか?
「ですが、先程の靖人さんの目を見て気付きました。・・・あなた方は、本気でわたくしを倒しに来ているのだと。」
セシリアが目を開く。―その目は嘘をついているとは思えない、真っ直ぐな物だった。
「決闘とは本来、
セシリアが右手の人差し指を突き出した。
「このセシリア・オルコットは同じIS操縦者である織斑一夏に、決闘を申し込みます!」
セシリアが高らかに宣言した。先程の試合で、セシリアに何の変化が起きたのかは分からない。
だが、1つだけ分かった。セシリアはきっと―
「―いいぜ。正々堂々、全力で勝負だ!」
本気で戦う事を望んでいる!
一夏の言葉に、セシリアが笑う。
試合開始のブザーが鳴り、2人の『決闘』が始まった。
そろそろ書き置きした分が尽きそう・・・なのですが新しい話を思いついて下書きを繰り返して、結局書き置きを消費しきれません。勢いは大事ですね。