INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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閲覧数(全話PV)が1万を突破。読んでくれている人がいてくださって嬉しいかぎりです。


第8話:目覚めの時

ズゴンッ!!

セシリアとの試合を終え、Aピットに戻った靖人を迎えたのは、千冬の出席簿の角だった。あまりの痛みに靖人は膝を抱えて悶絶する。

「何だあの滅茶苦茶な戦い方は。これが実戦だったらどうする?敵味方関係なく攻撃して死ぬつもりか?」

「す・・・すみません・・・。」

「お前はこれから戦い方を学べ。ISは『兵器』だ。ただ敵を捻り潰すのは暴力だ。恐らくお前の母親は、ISをそんな風に使ってほしいとは思ってない。肝に命じておけ。」

千冬から(真面目に)ありがたい指導を受け、靖人は立ち上がる。そこへ、一夏たちが駆け寄ってきた。

「だ、大丈夫か?靖人。」

一夏が心配そうに聞いてくる。頭が凄く痛いが、これはもう自業自得だ。

「それにしても」と、箒が口を開く。

「普段の神谷からは想像できないような、大胆かつ無茶な戦い方だったな。」

箒の言葉にマリーが続く。

「確かに、普通ならあんな特攻思い付かないよ。何があったの?」

靖人は首をひねる。

「何だろうね・・・防戦一方になった時に、『これじゃ勝てない!』って思って、そしたら咄嗟に閃いて、そのまま実行した感じ・・・。」

正直、そこからの記憶は曖昧だ。セシリアに勝とうとは強く思っていたが、実際どんな戦い方をしていたかは明確に覚えていない・・・。

(あれ、この感じ前にも・・・。)

確か、初めて不知火を動かした時も・・・。そう考えていた時に、千冬から声をかけられる。

「神谷、不知火を整備室に回せ。第3回戦では織斑と試合だ。それまでに機体を応急措置しておけ。」

「は、はい!」

駆け足で整備室に向かおうとした靖人は、突如入り口から入ってきた誰かとぶつかりそうになる。

「うわっ!・・・って山田先生!?」

「きゃあ!あ、か、神谷君!?ごめんなさいごめんなさい!怪我は無かった!?」

先生がいつも以上に慌てていて、靖人はとりあえず「お、落ち着いて下さい!」と声をかける。何があったのだろうか。

「山田先生、来ましたか?」

千冬が山田先生に聞く。―そうか、山田先生が来たという事は・・・!

「えぇ、遂に届きました!織斑君の機体!!」

「え?」

いきなり山田先生に指差され、一夏が素っ頓狂な声をあげる。

突然、鈍い音と共にピットの搬入口が開き始めた。

「そう!これが織斑君専用のIS ―」

山田先生が嬉々として声を張り上げる。搬入口が開ききると、そこには・・・

 

 

雪のように美しい、混じりけのない『白』。

 

 

「『XX-01:白式(びゃくしき)』です!」

純白の機体が、装甲を展開しながら鎮座していた。

「これが・・・俺のIS・・・って痛っ!?」

白式の姿に見とれていた一夏が、急に千冬に腕を掴まれる。

「織斑、急いで白式を装着しろ。」

千冬の言葉に、一夏は頭に『?』を浮かべる。総当たり戦では、少なからずISが損傷するため、1試合毎に30分程インターバルを用意し、ISを応急措置する事になっている。次の試合までまだ20分はある。別に今装着しなくても良いのでは・・・。

「一夏!まだ白式は『初期化(フォーマット)』と『最適化(フィッティング)』をしてないよ!」

(フォーマットとフィッティング?確かそれって・・・。)

靖人の一言をきっかけに、一夏は1週間で何とか詰め込んだ参考書の知識を思い出す。

―専用機は操縦者の体型等のデータに合わせ、『初期化(フォーマット)』と『最適化(フィッティング)』を行い、微調整をする事で、初めてその人物専用の物になる―

(そうか!まだ白式は完全に俺の物じゃないのか!)

状況を悟った一夏は素早く白式に体を預ける。瞬間、感覚が研ぎ澄まされ、白式と自分が繋がるのを感じた。

「よし、このまましばらく大人しくしていろ。残り18分か。試合までには間に合わないな・・・!」

千冬が舌打ちする。え、試合までに最適化が終わらなかったらどうするんだ?

「織斑、間に合わない分は実戦で行う。最適化が終わるのが遅ければ・・・負けだ。」

「何だとぉぉぉぉっ!?」

一夏が悲鳴をあげる。何てこった、万全でない状態で試合に臨むかもしれないとは・・・!

(頼む白式!何とか試合までに終わらせてくれ!)

自分に合わせて外装を変化させてる相棒(正確にはまだ違う)に、早速懇願する一夏であった。

 

 

第3アリーナ・Bピット

整備室にブルー・ティアーズを預けたセシリアは、一人膝を抱えていた。頭の中を占めるのは、先程の神谷靖人との試合。彼はセオリーを無視した戦い方で、此方を撃墜寸前まで追い詰めてきた。

辛くも勝利したが、胸の中を渦巻くのは勝利の喜びではなく、プライドを傷つけられた事による絶望だった。

(男に・・・負けそうになった・・・。・・・あの『父』と同じ男に・・・。)

母の顔色を伺っていた、情けない父の顔を思い出す。あの父の存在が鬱陶しく、強い母に憧れるようになった。所詮男なんて、意気地のない弱者だと思っていた。

だが、先程の少年の目は本気だった。本気で・・・自分を倒そうとしていた。その目が恐ろしくて、頭から離れない。

(あんな目をする男がいたなんて・・・。あんな、力の差に屈せず、此方に歯向かってくる目・・・。)

男に負ける訳にはいかない。情けない男にも、立ち向かってくる男にも。

『第2回戦開始まで、残り10分です。』

試合の時が近づいたのを報せるアナウンスが流れる。セシリアは顔をあげ、目尻に浮かんだ涙を拭う。

「もう油断はしません・・・。今は全力であなたを倒しますわ!織斑一夏!!」

アリーナへ鋭い眼差しを向けてから、セシリアは整備室へと向かった。

 

 

「限界だな・・・。織斑、残りは試合で行え!出撃の準備をしろ!」

試合まで残り3分、千冬が一夏に命じた。白式の最適化は、まだ終わっていない。

(くっそぉぉぉぉ!白式このやろぉぉぉぉ!)

内心最適化が間に合わなかった白式に毒づきながら、一夏はアリーナの入り口へ移動する。

「一夏・・・!」

箒が心配そうな声をあげた。・・・万全じゃない状態で行くのだ、当然だろう。

「心配するなよ箒、・・・行ってくる。」

優しく箒に声をかける。少しだけ、箒の表情が明るくなったのが分かった。

「一夏、オルコットさんは強い。無理をしないで。」

今度は靖人が忠告してきた。それを聞いて一夏は笑った。

「無理するなって・・・自爆覚悟で攻撃した奴が言うなよ。」

「うっ!!」

痛い所を突かれて、靖人が固まる。

(なんつーか、靖人がああいう失敗するのは珍しいからな。良いもの見れた。)

中学の頃優等生だった彼が教師(千冬)に怒られている姿を思いだし、更に笑う。

「一夏頑張れー!君ならできるよー!」

マリーが笑顔で応援してくれる。彼女の応援は聞いててとても元気になる。

「おう、行ってくる!」

3人にサムズアップを送り、アリーナへ飛び立とうとした、その時だった。

「一夏。」

突然千冬が、名前で呼んできた。驚きのあまり一夏が振り向く。

「・・・行ってこい。」

唯一の肉親から送られた短いエール。それでも、一夏の背中を押すには充分だった。

「・・・あぁ!」

白式を纏った一夏が、アリーナに向かって翔んだ―。

 

 

歓声に迎えられ、一夏がアリーナに降りる。既にセシリアが、ブルー・ティアーズを纏って先に待っていた。

だが、何かがおかしい。

いつものセシリアなら、偉そうなポーズをとって高飛車な台詞を言うだろうに、目の前の彼女は静かに目を閉じている。

「・・・一夏さん。」

突然名前を呼ばれた。そういえばセシリアから名前を呼ばれたのは初めてな気がする。

「な・・・何だよ・・・?」

やはり変だ。いつものセシリアらしくない。

疑問が一夏の頭をよぎるが、次の彼女の言葉で一夏の頭は停止した。

 

 

「・・・先に謝らせてもらいますわ。」

 

 

・・・え? 

今、「謝る」って言ったのか・・・?

「わたくしは、『男』だという理由だけで、あなた方を軽く見ていました。」

何だこれは、動揺を誘う作戦なのか?

「ですが、先程の靖人さんの目を見て気付きました。・・・あなた方は、本気でわたくしを倒しに来ているのだと。」

セシリアが目を開く。―その目は嘘をついているとは思えない、真っ直ぐな物だった。

「決闘とは本来、同じ階級の者同士(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)が命を賭けて行うもの・・・。」

セシリアが右手の人差し指を突き出した。

「このセシリア・オルコットは同じIS操縦者である織斑一夏に、決闘を申し込みます!」

セシリアが高らかに宣言した。先程の試合で、セシリアに何の変化が起きたのかは分からない。

だが、1つだけ分かった。セシリアはきっと―

「―いいぜ。正々堂々、全力で勝負だ!」

本気で戦う事を望んでいる!

一夏の言葉に、セシリアが笑う。

試合開始のブザーが鳴り、2人の『決闘』が始まった。




そろそろ書き置きした分が尽きそう・・・なのですが新しい話を思いついて下書きを繰り返して、結局書き置きを消費しきれません。勢いは大事ですね。
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