INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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やっとクラス代表決定戦編に終わりが見えてきました・・・!えらく長くなってしまった・・・。


第10話:ライバル

スパァン!!

セシリアとの試合を終え、Aピットに戻った一夏を迎えたのは、千冬の出席簿だった。あまりの痛みに一夏は頭を抱えて悶絶する。

「よくもあそこまで持ち上げておいて無様に負けてくれたな。私の顔に泥を塗るつもりか。」

「す・・・すみません・・・。」

「お前は白式の特性を把握しておけ。自分のISの事が分からないのなら、この先強くはなれんぞ。」

(((あれ、何か既視感(デジャブ)が・・・。)))

箒、靖人、マリーの3人が同じ事を考える。まぁ靖人の時とは違い、一夏は角で叩かれていなかっただけましなのだろう。それ位、自分は馬鹿な事をしてしまったのだと、靖人は再認識する。

「さて神谷、次はお前と織斑の試合だ。Bピットに向かえ。そろそろ不知火も修理が終わっているだろう。」

「はい、分かりました。」

千冬に一礼し、靖人はAピットから出ようとする。

既にセシリアが2勝しているため、クラス代表はセシリアで決定なのだが、一次移行が完了した白式の詳しいデータをとるために一夏と靖人は試合を行う事になっていた。

「あ、じゃあ私もー。」

「では、私がBピットに案内しますね。」

マリーと山田先生が靖人についてくる。そうだ、その前に―

(一夏に声をかけていこう。)

靖人は次の対戦相手となる友人の方を向く。

「この負け犬。」

「うぐっ!」

落ち込む一夏に、箒が追い討ちをかけていた。

(・・・やめよう。今、何か言うタイミングじゃないな・・・。)

一夏に哀れみの視線を送り、靖人はピットの扉を開けた。

 

 

一夏との試合を終え、ISスーツから制服に着替えたセシリアは、第3アリーナの観客席に来ていた。これから始まる試合・・・織斑一夏と神谷靖人による、男子IS操縦者同士の対決に、観客のボルテージが上がっていくのを肌で感じた。

(わたくしも・・・楽しみですわ。)

代表候補生である自分に怖じけず、堂々と向かってきた2人の男。彼らの存在が、自分の狭まった思考を変えてくれた。

「見させてもらいますわ、あなた方の勇姿を。」

セシリアの微笑みと同時に、周りの観客が歓声を上げた・・・。

 

 

Aピットから白式が白い翼を広げて降り立った。続いてBピットから不知火が銀色の装甲を煌めかせながら降り立つ。2人の登場に、観客が黄色い声援を送る。

「すげーな、これ・・・俺たちはアイドルかっての・・・。」

「似たような物じゃない?ISが使える男子同士の戦いに皆興味があるんだよ、きっと。」

一夏と靖人が声援を受け、恥ずかしさから苦笑する。だが2人は顔を引き締め、互いに向き合う。

「さて・・・負けないよ、一夏。」

靖人が針雨の弾薬を装填する。

「俺もだよ、靖人。先に言っとくが、自爆は無しだぜ?」

一夏が雪片弐型を正面に構える。その顔は真剣その物だった。対する靖人も、一夏の皮肉にピクリとも反応しないほど、集中していた。

観客も2人の雰囲気に飲まれ、シンと静まり返る。

 

 

そして―試合開始のブザーが鳴る。

先に動いたのは靖人だった。一夏に向けて、針雨から弾丸をばらまく。一夏は上空へと飛び、3次元の動きで靖人を翻弄する。靖人の弾幕の壁を越え、一夏は雪片弐型を握りしめて靖人に突っ込む。

靖人も右腕に凩を展開し、雪片弐型を受け止める。

2本の刀が何度もぶつかり、その度に火花と金属音が鳴り響く。しばらく拮抗していた両者だったが―遂にその均衡が崩れる時が来る。

唾競り合いから一夏が靖人の刀を弾く。そこから放った横凪ぎの一閃が不知火の右腰を捉えた。

が、不知火の全身装甲によって雪片弐型が弾かれる。バランスを崩した所に、靖人が突きを繰り出してきた。太刀筋を読み、後ろに退避するも間に合わず、右肩に刀を受ける。

「中々やるな、靖人!」

「そっちもね、一夏!」

2人は再び刀を交える。繰り広げられる熱戦に、観客が再び歓声を上げた。

 

 

「はぁ~、凄いですね2人共・・・。とてもISを動かしたばかりとは思えませんね・・・!」

Bピットで山田先生が感心そうに声を上げる。それを聞いてマリーが賛同する。

「そうですね!靖人も一夏、凄い熱い戦いをしてますね!でも・・・。」

マリーが一呼吸置いて、口を開く。

「このままだと勝つのは、靖人ですね。」

 

 

「不知火の強さはあの高い防御力だ。加えて、白式には雪片弐型しか装備されていない。不知火の砲撃を避けつつ、摩利支天を突破しなければ、織斑に勝ち目はない。」

千冬が冷静に状況を解説する。彼女の言う通り一夏はだんだん靖人に追い込まれていた。距離を放されると同時に、ガトリングとミサイルに晒される。その弾幕を突破し切りつけても、厚い装甲と摩利支天によって決定打を与えられない。試合が進むにつれ、徐々に2人のシールドエネルギーの差が広くなる。

「一夏っ・・・織斑先生、一夏に勝機は無いのですか!?」

箒が悲痛な声を上げる。「まぁ、慌てるな」と千冬がなだめ、続けた。

「だが、雪片弐型を使いこなせれば、奴にも勝ち目はある。・・・あいつならやれるさ、私の弟だからな。」

千冬が笑う。そして今苦戦を強いられている弟へ、静かに呟く。

「これ以上私に恥をかかせるなよ、一夏・・・。」

 

 

試合開始から5分程経過していた。何度目か分からない対峙の最中、靖人は信念を固めていた。

(近接戦闘は剣道をやっていた一夏が上。でも、機体の相性的に此方が優勢だ。正直、性能差で勝つのは気がひけるけど・・・。)

しかし、再び肉薄する一夏の目を見て、その考えは間違いだと確信する。

(だからって手加減されるのはもっと嫌だよね、一夏。)

肩からマイクロミサイルを発射する。

(僕は君に負けたくない!)

中学の頃共に過ごした、親友。その真っ直ぐな性格は、自分にとって憧れだった。

だからこそ、『あの人』も・・・。

(・・・いや、もう『あの事』は関係ない。)

中学の頃に体験した、苦い思い出を押し殺し、靖人は一夏に針雨を撃った。

 

 

放たれた弾丸をかわしながら、一夏も思案する。

(射撃武器の有無はでかいな。それに、予想以上に靖人のISが固い!)

既にシールドエネルギーの差は100を越えている。それでも―

(まだまだ逆転できる時間はある!)

靖人に向かって加速する。

(情けは無用だぜ、靖人!)

学生時代を共に過ごした仲間。優等生だった彼を、自分は尊敬していた。

だからこそ、あの秋・・・。

(あんなに悲しい顔をしていたお前を見るのは辛かった。)

母親を亡くした時の靖人の表情を思い出し、今は試合中だと思わず首を振った。

 

 

(君と僕は。)

(親友だ。)

(だからこそ君には!)

(一緒に過ごしたお前には!)

「「負けたくない!!」」

靖人と一夏の叫びが重なると同時に、一夏が雪片弐型を不知火の右肩の装甲に突き立てる。摩利支天のエネルギーがスパークを生み出し、辺りを照らす。

「無駄だよ一夏。その程度じゃ、この不知火の防御を突破できない!」

「やってみないと分かんないだろ!」

一夏が吼える。

「稽古つけてくれた箒のためにも!期待してくれた千冬姉のためにも!俺は!!お前に勝つ!!」

一夏の叫びに応えたのか・・・雪片弐型の刀身が開き、閃光が溢れる。

すると、信じがたい現象が起きた―不知火の装甲が、雪片弐型に切り裂かれた。

「なっ!?うあぁぁぁぁ!!」

降り下ろした雪片弐型が不知火の右肩から左腰の装甲を抉る。絶対防御が発動したが衝撃は抑えられず、靖人は吹き飛ばされた。

突然の出来事に最も驚いたのは、攻撃をした一夏だ。何故今までに通じなかった斬撃が通用したのか?それも、絶対防御が発動するほどの高威力で。混乱した一夏は、白式からの情報に気になる表示を見つけた。

 

 

[単一仕様(ワンオフ・アビリティー):『零落白夜(れいらくびゃくや)』発動。シールドエネルギー残量:257]

 

 

(もしかして、これが・・・?)

『単一仕様』・・・1部のISが持つ、特殊な能力・・・だった筈。参考書に書いてあったのをうろ覚えだが思い出す。恐らくこの零落白夜・・・雪片弐型から溢れる光が、不知火の鉄壁の防御を撃ち破ったのだろう。

(ん・・・残量?)

何か嫌な表示を見た気がした。もう一度注視する。

 

 

[シールドエネルギー残量:249]

 

 

あれ?

「シールドエネルギーが減ってる!?」

一夏が驚愕する。何と言う事だ。靖人に攻撃はされていない。つまり、零落白夜がシールドエネルギーを消費しているのか!?

自分の命を削る代わりに、驚異的な力を得る。それが零落白夜の正体だろう。それなら、セシリア戦の時の突然の敗退も納得できる。

一夏が頭の中である程度理解できた時、此方に弾丸が飛んできた。靖人のガトリングだ。

(とにかく、シールドエネルギーが切れる前にけりをつける!)

靖人めがけて一夏が翔ぶ。靖人は大ダメージで冷静さを欠いているのか、先程より砲撃が甘かった。弾幕が薄い場所に飛び込み、さらに靖人に接近する。―間合いに入った!

「やらせるかっ!」

靖人が凩を構え、突きの体勢をとる。

(靖人、お前はまだ気づいてないようだな。)

『鋒両刃造』の凩は、『突き』に特化した刀だ。靖人は武器の特性をよく理解している。彼がしようとしている『突き』は、真剣における戦いでは相手の急所を一瞬で仕留める必殺剣になり得る。だが―

「避けられたら致命的な隙を生む、捨て身の業なんだよ。」

靖人の渾身の突きを、一夏は最小限の動きでかわす。これ程箒との剣道の稽古が役に立った事はない。

左下から逆袈裟斬りを放つ。先程の装甲の傷をなぞるように斬撃があたり、不知火の絶対防御が発動した。

 

 

暫くの沈黙が流れる。静寂を破ったのは、試合終了を報せるアナウンスだった。

 

 

『試合終了。勝者―織斑一夏。』

観客席が大いに沸いた。それを聞いた一夏と靖人はISを解除する。

「あはは、負けちゃったよ。一夏相手に近接戦は無謀だったかな。」

「お前、こっちの攻撃が通った時凄い慌てていただろ。まぁ、零落白夜が無ければ俺は負けていただろうな。」

靖人と一夏は笑って、固く握手をする。2人の健闘を讃える拍手が、第3アリーナに響いた。

 

 

1年1組代表決定戦、結果

 

織斑一夏:1勝1敗

神谷靖人:0勝2敗

セシリア・オルコット:2勝0敗

 

以上の結果より、クラス代表は、セシリア・オルコットに決定―




靖人負けっぱなしです。彼自身は特に最強、という訳ではありません。今後彼がどのようになっていくか、楽しみにしていてください。
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