INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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2巻が無いせいで下書きを書くスピードが大幅に低下。このままだと3章前半辺りでストックが切れそうです。


第16話:クラス対抗戦

5月。新学期特有の緊張感もほぐれ、1年生たちも学園での生活に慣れ始めた頃。遂に今年第1回目のクラス対抗戦が幕を開けた。

最初の試合の組み合わせは、1組代表の織斑一夏と2組代表の凰鈴音。世界初の男性IS操縦者と中国の代表候補生との試合という理由もあって、アリーナの熱気は既に最高潮。ピットのリアルタイムモニター越しにもひしひしと伝わってくる。

「先月の試合も凄かったが、今回はそれを越える盛り上り様だな。」

箒が率直に感想を述べる。

「それほど、クラス対抗戦というのは学校の皆さんが注目するという事ですわ。」

セシリアも映像を見ながら口元を押さえて笑う。モニターに一夏の全身が映り、セシリアがおもむろに口を開く。

「是非とも勝ってほしいですわね、一夏さん。」

当たり前だ、と箒が続ける。

「あいつは私たちの代表だ。情けない姿を晒してほしくはないな。―私たちにとっても、あいつ自身にとっても。」

ちょうど言い終わった所で突然ピットの入り口が開き、2人は振り返る。入ってきたのはマリーだった。

「ねぇねぇ靖人見なかった?一緒に試合観ようと思ったらいなくてさ。」

「?見ていないが。」

箒が首を傾げる。そういえば今朝教室で見かけたきり姿を見ていない。

「待っていればここに来るのでは?靖人さんも一夏さんの応援に来るでしょうし。」

セシリアも不思議そうな顔をしていた。「そうかなぁ・・・。」とマリーが呟く。

「残念だが神谷は今頃観客席だ。友人の試合を直に観たいのだと。」

「「「織斑先生!」」」

マリーの後ろから千冬が顔を出し、3人が驚く。特に背後に立たれたマリーは驚きのあまり飛び上がっていた。

「おいおい、私が来るのは言ってあっただろ。」

「音も無く現れたら流石にビビりますよ・・・。」

マリーが動悸が激しくなった胸を押さえる。

「ほう・・・私を幽霊扱いか?」

「すいませんでした!」

千冬の殺気を感じ取ったマリーが高速で頭を下げる。千冬の怒りを買って変な罰は受けたくない。

「まぁまぁ織斑先生・・・。」

同じくピットにやって来た山田先生が千冬を落ち着かせ、言葉を続けた。

「神谷君は皆さんと特訓した後、凰さんとも特訓してましたから。織斑君だけ応援するという事ができなかったんじゃないですか?」

「何ですってっ!?」

山田先生が告げた事実に、セシリアが驚きの声を上げる。

「あいつ、私たちに黙って・・・!一夏が負けても良いのか!」

箒が怒り気味に叫ぶ。山田先生が慌てながら箒をなだめる。

「そ、そんな事を神谷君は考えていないと思いますよ!」

「そうだな、むしろあれは凰に上手く利用されていた気がしたがな。」

千冬が少しにやつきながら補足する。その真意が読み取れず、箒たちは不気味な印象を受けた。

「あー、どーりで靖人が部屋に戻ってくるのが遅かったのかー・・・。」

ここ数日、何をしていたのか聞いても答えてくれなかった靖人を思いだし、マリーはため息をついた。

 

 

「かみかみ~、こっちこっち~。」

観客席でのほほんさんがブンブン手を振っていた。周りの人に迷惑でないか心配した靖人は、指定された席に座った。

「ありがとうね布仏さん。・・・本当に良い席をとってくれたね。」

靖人が座った位置は、応援席の最前列。そしてアリーナのほぼ真ん中で、右手に一夏、左手に鈴が見える。2人の試合を間近で見れる、所謂特等席だ。

「結構無茶な頼みだと思っていたんだけど、一体どうやってこの席を?」

恐らく倍率が高いこの席を、彼女が如何にして予約したのか気になった。

「え~っとね、ちょっとしたツテだよ~。あまり気にしなさんな~。」

にへへ~と笑いながらのほほんさんが応える。ツテが何なのか気にはなったが、あまり深く詮索するのはやめておこう。

(さてと・・・。)

ステージに視線を向け直す。ISを纏った2人は試合開始の合図を静かに待っていた。

(・・・見させてもらうよ2人共。)

かつての旧友たちに向けて靖人は期待を込めた眼差しを送った。

 

 

「・・・準備は良いよな?鈴。」

雪平弐型を展開した一夏は、目の前の鈴に意識を集中させる。

「とっくの昔にできているわよ。アンタこそ、この『甲龍(シェンロン)』に遅れをとらないでよ。」

「甲龍・・・。」

一夏が鈴が発したISの名を反芻する。非固定浮遊部位の棘や、脚部の爪などから攻撃的な印象を受ける。呼び出すのに不思議な石が7つ必要なのだろうか。現れたら願いを1つだけ叶えてくれるのだろうか。

「・・・アンタ今馬鹿な事を考えていたでしょ。」

「いや別に。」

慌てて変な憶測を捨て去り、深呼吸をする。試合はもうすぐ始まる。ここで油断していたら一気に負けてしまう。

(この試合に勝ったら約束の件を教えるって言っていたけど、今はそれを気にしていられないな。)

鈴の目は本気だ。約束云々関係なしに、迷い無く攻撃を仕掛けてくるだろう。

試合開始のブザーがアリーナ中に鳴り響く。

「うぉぉぉぉっ!!」

「はぁぁぁぁっ!!」

雄叫びと同時に2人が一直線に突っ込み、アリーナ中央で双方の獲物が衝突する。

もう一撃と考えていた一夏だったが、真横から振り抜かれるもう1つの刃に気付き後退する。

「へぇ、私の攻撃をかわすなんてやるじゃない。」

鈴が『双天牙月(そうてんがげつ)』―柄の両端に刃がついた巨大な青竜刀―をクルクル回して正面に構え直した。扱いづらいであろう武装を難なく使いこなしている辺り、鈴の腕は相当な物だろう。彼女が代表候補生になっていた事を改めて痛感し、一夏は舌を巻く。

「そう簡単にはやられねぇよ!」

実力の差から一瞬弱気になった自分に一喝して、一夏は再び鈴に突撃する。鈴は双天牙月の片方の刃で一夏の攻撃を防ぎ、もう1つの刃で反撃をしてくる。高速で繰り広げられる剣戟の音が暫くアリーナに響き渡る。

(くそっ、手数が多い!)

焦燥に駆られた一夏の顔を見て、鈴が静かに笑った。

「隙あり。」

鈴の一言が耳に届くと同時に、一夏は何か(・ ・)に殴られる。一瞬意識が遠退き体勢が崩される。

(何だ今のは・・・何も見えなかったぞ!?)

ちらりと鈴の方を見直すと、甲龍の肩の装甲が開き、その中央から光が漏れていた。

「今のはジャブよ・・・本命はこっち!」

鈴の言葉に続き、肩部の光が増す。危険を感じ取った一夏はすぐに身を離そうとしたが、もう遅かった。

「ぐあぁっ!」

先程よりも強い衝撃が一夏を襲う。シールドエネルギーが削られ、白式が大きく吹き飛ばされた。

 

 

「何だ、あの攻撃は・・・?」

鈴が全く触れずに一夏を吹き飛ばしたのを見て、箒が困惑した声を上げた。

「へぇ・・・あのIS、厄介な武器を持ってるね。」

対してマリーは落ち着いた表情で試合を眺めていた。彼女もあの武装の事を知っているのだろう。そう考えたセシリアが言葉を続けた。

「そうですわね、恐らくあれはわたくしのブルーティアーズと同じ第3世代兵器。通称―」

 

 

「しょーげきほー?」

靖人が発した単語を本音は棒読みで繰り返す。

「そう、『衝撃砲』。空間に圧力をかけて砲身を作り上げて、そこから衝撃その物を撃ち出す不可視の攻撃。」

甲龍の特殊な装備の概要を靖人は大まかに説明した。正直自分でも原理は詳しく分かっていないが、そこはチート兵器であるISなので深くは気にしない。

「へ~かみかみ詳しいね~。何で知ってるの~?」

本音からの満面の笑顔と質問を受けて、靖人は言葉を濁した。

「うん・・・僕も実際に食らったからね、あれ。」

繰り広げられる激戦を傍観しながら、靖人は数日前の事を思い出した。

 

 

「あたしのISの装備の感覚が掴めてないのよ。アンタ手伝って!」

約束通りマリーたちとの特訓を終えた後、第1アリーナで待っていたのは甲龍を纏った鈴だった。ISスーツによって彼女の華奢な体格が目立つ。鈴にばれないように背中をつねり、靖人は痛みによって雑念を吹き飛ばした。

「で、僕は一体何をすればいいの?」

気を引き締めて鈴に質問する。その言葉に彼女は眩しい笑顔を返してきた。

「ちょっとあたしと戦って!アンタのIS、固いんでしょ?」

「分かった。」

好きな子からの頼み事に若干ウキウキしながら不知火を展開する。

(・・・ん?『ISが固い?』)

何故鈴はそのような事を聞いてきたのだろうか。嫌な予感がする。

「よーし、初っぱなから全力で行くわよ!『龍砲(りゅうほう)』!」

「えちょっと待うぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

突如見えない衝撃にタコ殴りにされ、靖人は危うく意識が飛びそうになった。

 

 

(あれから毎日衝撃砲に晒されて来たからなぁ・・・。全く、鈴も人使いが荒いんだから・・・。)

だが彼女はちゃんと此方の安全を考えて攻撃してきた(らしい)し、普通に自分の特訓を見てくれた。あまりの猛攻に自分がダウンした際には、

「ご、ごめん!大丈夫?」

と本気で心配してくれた。あの時の不安そうな顔の可愛さはもう反則級だった。そんな不器用な所がまた彼女の魅力とも思え、どうしても本気で怒るまでには至らなかった。

(ってコレDVによく見られる手段じゃない?)

急に事を冷静に考えてしまった靖人は頭を抱える。相手を痛めつけるだけ痛みつけた後、態度を180゚切り換えて身を案じたり、謝罪を繰り返していく。こうする事で被害者側は「この人には悪気はない」「この人には私がいなくちゃ」と考え込み、被害が更に悪化してしまうのだ。

「どうしたのかみかみ?」

本音が落胆した靖人を心配してきた。

「いや、結局DVはどちらにも非があるって事だよね。」

相手に暴力を振られたらちゃんと相談しよう。そう決心した靖人の横で、本音が首を傾げていた。

「ってそんな事より試合試合。」

我に返った靖人がアリーナ中央、対決している一夏と鈴に注目する。試合開始から4分ほど、優勢なのは鈴だった。

 

 

(見えない攻撃ってのは面倒だな・・・!このままじゃ負ける!)

鈴の放つ攻撃に一夏は防戦一方だった。見ることが出来ず、更に全方位へ攻撃可能な衝撃砲によって、迂闊に鈴に近寄れない。一応ハイパーセンサーによる圧力の変化と鈴の視線から弾道を予測し、回避や防御をとれるようにはなってきたが、このままでは撃墜されるのも時間の問題だ。

(シールドエネルギーもかなり削られてる・・・零落白夜の分を考えると、これ以上後手に回るのはまずいな。)

雪平弐型を握り直す。どうやらとっておき(・ ・ ・ ・ ・)を使うタイミングが来たようだ。

「ほらほら、まだ行くわよ一夏!」

鈴が双天牙月を分割しながら龍砲を放つ素振りを見せた。砲撃と斬撃の連続技でけりをつけてくるつもりだろう。それでも一夏は動じず、冷静にタイミングを伺っていた。

(・・・ここだ!)

龍砲が放たれた瞬間、鈴の動きが一時的に鈍くなる。その瞬間を狙って一夏はこの日のために身につけた技を披露しようとする。

瞬時加速(イグニッション・ブースト)

スラスターから発生したエネルギーを一度取り込み、内部で圧縮させてから再び放出する事で爆発的な推進力を得る技。代表候補生である鈴に奇襲を仕掛けるために、セシリアから教わった物だった。

スラスターでの圧縮が終了する。後は鈴に向かって全速力で突っ込むだけ―!

 

 

だが、突如降り注いだビームによって一夏の動きは遮られた。

(何だ!?)

鈴の更なる隠し技かと疑うが、センサーに新たな反応をキャッチしたためにその考えを捨てた。

「一夏!?」

鈴が回線越しに心配そうな声を上げる。やはりこの状況は鈴にも想定外だったようだ。

「こっちは大丈夫だ。それより・・・。」

着弾地点から昇る煙が晴れ、それは姿を現した。

巨大な腕を持った灰色の異形。全身が装甲で覆われている事もあり、不気味な雰囲気を醸し出していた。

「・・・お前、誰だよ。」

突如乱入してきた謎のISが一夏の言葉に反応して、目のようなセンサーレンズが赤く光らせた。




段々とこのSS特有のネタを出せる頃になってきました。
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