INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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「次回から投稿が遅れる」とか言いながら、その日のうちに書き終わってしまった。昼寝すると頭が冴えますね。


第3章《増えていく懸念》
第19話:新たな火種


携帯のアラーム音で靖人は目を覚ました。ゆっくりと体を起こし、小さく欠伸をする。枕元を手で探って眼鏡を見つけ、それをかけると部屋全体がくっきり見えるようになった。隣のベッドは使用された形跡が無く、シーツが綺麗に敷かれていた。

(・・・もう1週間位経つのかな。)

突然マリーに部屋を引っ越すようにと山田先生から告げられたのは先週の事だった。寮の部屋割りの変更がやっと終わったらしく、既に箒もクラス対抗戦の夜に一夏と別の部屋になっていた。

「私と離れるのが寂しいかい靖人?何だったら私の部屋に遊びに来てもいいからね?夜中でも歓迎だよ。」

と、マリーは言い残して『今日の日はさようなら』を元気に歌いながら部屋を後にしていった。いや、夜はちゃんと寝ます。それと日本の歌もかなり上手いですね。

とにかく、これで女子と同室という緊張感のある生活を送らないで済むのは嬉しかった。しかし、ある疑問が靖人の脳裏をよぎる。

何故一夏と同じ部屋ではなく、それぞれ1人ずつに部屋が割り当てられたのか。それも1人部屋ではなく2人部屋。どうも変だなと靖人は今でも首を傾げる。相変わらずIS学園の部屋割りは不思議だ。

靖人はベッドから降りて身支度を済ませる。制服に着替えている間靖人の頭の中を支配していたのは、先程とは違う悩みだった。

袖を通した右手に視線を送る。中指の指輪を眺めながら、靖人は再び思考を巡らせていた。

数日前にクラス対抗戦の映像を千冬に見せてもらった。乱入してきたISを、見た事もない装備で蹂躙する自分の姿が映っていた。やはり自分にはそのような記憶は無いし、この映像は作り物ではないかと疑った程だ。しかし鈴を始め、一夏や千冬など多くの人がこの惨状を目撃していたと言う。

不知火に自分が操られていたのか?そうとすら思えてきてしまう。

あの一件から、不知火の事が得体の知れない何かに思えてきて、展開するのも少し躊躇ってしまうようになった。

(・・・母さんは、どうして・・・。)

在りし日の母の笑顔を思い出す。何故母はこれをを作ったのか。何故母はこれを自分に託したのか。偉大な研究者として尊敬していた彼女の事が分からなくなってきた。

(母さんは、人を守るためにIS を作ったんじゃないの?)

以前見た不知火はただの殺人兵器だった。こんな物に母が携わっていたなんて信じられない。信じたくない。

「靖人ー。いるー?」

一人きりの部屋で悩み込んでいた靖人は、ノックと共に聞こえたマリーの声によって現実に戻る。部屋が変わった今でも、彼女はしょっちゅう自分を訪ねてくる。

「何だいマリー、朝御飯のお誘い?」

胸の中の靄をしまい、ドアに向けて出来る限り元気な声を向ける。「そーだよー」といういつもの呑気な声が返ってきた。

教科書等が入った鞄を引っ提げ、ドアを開く―そして、少し意外な景色に思わず足を止めてしまった。

「み、皆・・・?」

廊下にいたのはマリーだけではなく、一夏と鈴、さらに箒やセシリアもいた。この面子とは朝食堂で相席になる事は多いが、わざわざ部屋に迎えに来た事は今まで無かった。

「よっ、部屋を出たらたまたまマリーに出くわしてな。折角だから俺たちも来る事にしたんだ。」

一夏が片腕をあげながら爽やかに笑う。

「私は一夏に用があってな・・・一夏が靖人の部屋に行くと言うから、私も同伴したんだ。」

箒が柔和な顔で口を開く。初対面という蟠りが解けたのか、つい先日から箒は靖人の事を名前で呼ぶようになった。

「わたくしもですわ。普段仲良くしてくださる靖人さんを、ないがしろにはしませんわ。」

セシリアがいつもの腰に手を当てるポーズを取る。箒と同様に前に比べて俄然仲が良くなり、靖人は彼女の事も名前で呼べるようになった。

「あたしはちゃんと靖人も呼ぼうとしたわよ。友達だし・・・。」

鈴が腕を組みながら胸を張る。だが、どこか見得を張っている様子なのは友人である靖人にはお見通しだった。

「そんな事言ってー。本当は一夏とふた」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「のぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

マリーがにやけながら発した言葉を、3人が絶叫で掻き消す。

「お、おいお前ら!大声出すなよ、近所迷惑だろうが!」

耳を塞ぎながら一夏が嗜めるが、当の3人はムスッとした顔で一夏を睨んだ。

そんないつものやり取りを靖人は微笑みながら眺めていた。―内心、何とも言えない感情が鎌首を持ち上げていたが。

(鈴・・・。)

やはり一夏の隣が良いのか。分かりきっている事なのに、改めてその現実を突き付けられると、胸が締め付けられる。

「朝から元気なのは良い事だけど、いつまでもここで騒いでたら織斑先生に怒られるよ?」

笑みを崩さずに、靖人は5人に告げる。わいわい騒いでいた一同が一瞬で凍り付く。こういう時、あの鬼軍曹の名前は役に立つ。

「よ・・・よし、皆行こうか。」

一夏の問いかけに、「お、おー。」という声が重なる。若干声が震えていたのは気のせいではないだろう。

「やれやれ・・・。」

小さく笑いながら、靖人は歩き出す。IS学園での刺激的で愉快な生活が、今日もまた始まろうとしていた。

 

 

「皆さんおはようございます。さて、今日はビックニュースがありますよ!」

SHR開始早々、教壇に立った山田先生がウキウキした様子で口を開く。彼女のテンションの高さに1組全員が首を捻っていたが・・・、

「何と!1組に転校生がやって来ました!それも2人です!」

続く山田先生の言葉に驚きの声が上がる。どのような人物なのかあちこちで下馬評が上る中、一夏はとある疑問を靖人にぶつけた。

「転校生って・・・前に鈴も来たのにまたか?流石に多くないか?」

中国の代表候補生である鈴がIS学園に転校してきてからまだ1ヶ月しか経っていない。6月前に既に転校生が3人もいる、というのは普通に考えたらおかしなペースだ。

その答えを、靖人は何となく察しがついていた。

「・・・僕たちが原因じゃないかな、きっと。」

ISを操縦できる男。世界に2人しかいない特異ケースをまとめて保有しているIS学園へ、世界の各地から詮索の手が伸びているのだろう。―自国の少女をIS学園の生徒として潜入させ、データを得るとか。

(考えすぎかな。)

頭に浮かんだ深読みを一旦捨てる。

「やっぱり俺たち、そうとう世間を騒がしてるんだな・・・。」

自らの境遇を改めて実感した一夏が、納得した顔で前を向く。「静粛に。」と教室の入り口付近に立っていた千冬が手を叩いた。

「では2人とも、中に入ってくださーい!」

山田先生の掛け声と同時に扉が開く。そして、クラスメイト全員が一瞬で固まった。何故なら―

 

 

「フランスから来ました、シャルル・デュノアです。織斑君や神谷君と同じ、ISを動かせる男子として此方に編入させていただきました。」

靖人たちと同じ男子用の制服に身を包んだ金髪の美少年が、ペコリとお辞儀した。

(あ、これ来るな。)

いち早く危険を察知した一夏と靖人が耳を塞いだのと同タイミングで教室が、いやIS学園が揺れた。

「さ、3人目ぇぇぇぇぇぇっ!!?」

「しかも今度はブロンドの王子様!」

「皆の者!理想郷(ユートピア)はここにあったぁぁぁぁっ!」

「今度の作品はNTRか!いや、もういっそのこと3(ピー)!?」

・・・と、乙女たちの叫びは五月蝿いなんて物を通り越して最早阿鼻叫喚だった。加速する彼女たちの衝動は、もう誰にも止められ―

「静かにしろ!」

た。千冬の一喝で喧騒がピタリと止む。静まり返った雰囲気の中、もう1人の転校生が1歩前に出た。

「ドイツ軍IS配備特殊部隊『黒ウサギ隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)』隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。よろしく頼む。」

長い銀髪に左目の眼帯、スカートではなくズボン着用という、これまた特徴的な格好の彼女は毅然とした態度で言い放つ。自分たちと同い年、見た目的には更に下に見えるような小柄な少女が軍隊に所属しているという事に、あちこちでどよめきが起こる。

「と言う訳で、今日からデュノア君とボーデヴィッヒさんが新たに1組の仲間になります。」

「2人共、空いている席に着け。これよりSHRを始める。」

山田先生と千冬が締めて、転校生の2人が席に向かって歩いていく。―そして冷たく光るラウラの赤い瞳が、一夏を捉える。

「織斑・・・一夏・・・!」

そして彼女の右腕がゆっくりと上がっていき・・・。

「何をしているボーデヴィッヒ。」

千冬の一言でラウラの動きが停止した。

「っ!?・・・申し訳ありません、教官。」

ハッとした様子でラウラが頭を下げる。

「ここでは私を教官と呼ぶな、先生と呼べ。分かったら席に着け。」

「分かりました・・・すまなかった、織斑一夏。」

ラウラは一夏にも軽く一礼した後、早足で自分の席に向かっていく。彼女の不可解な行動に一夏は首を傾げていた。




原作に比べてラウラを丸くさせてあります。伏せきれてないよね、仕方ないね。
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