INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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1週間のご無沙汰です。やはり書き置きが無いのと、原作が無いのがとても辛いです。纏めきれず、文字数がかなり増えております。


第21話:騒動

「ったく、昨日の電話には驚かされたわよ。まさか靖人があんな事言うなんてさー。変態になったのかと思った。」

「鈴さんやめて傷口抉らないで。」

バスを降りて歩き始めた矢先、鈴に突然話を振られ、靖人は吐血しかけた。昨日電話をかけた時、ラウラの格好を見て思わず「パンツ」と大声で叫んでしまったのを思い出す。

(『変態』って言われた・・・。)

想いを寄せてる子からのキツい言葉に、靖人の心は小笠原海溝並みに沈んでいく。

『しかし良かったのか?わざわざ私の用事に着いてくるなんて・・・。』

2人のやや後方を歩くラウラから鈴にISの秘匿回線(プライベート・チャネル)が届き、申し訳なさそうな声が頭に響いた。それを聞いた鈴が振り返らずに応える。

『別に良いわよ。むしろアンタ服とか選んだ事無いんでしょ?着いてこない方が不安だわ。それに―これは靖人の護衛も兼ねてるんだからね。何かあったらすぐ言いなさいよ。』

『了解。』

ラウラの短い返事と共に通信が切れる。それを確認した鈴は、隣を歩く靖人に声をかけた。

「今の所は大丈夫よ。ってアンタいつまでへこんでるのよ。」

「あぁ、分かった。ありがとうね・・・。」

鈴にお礼を言いながら、靖人は帽子を深く被り直す。

現在靖人と鈴は私服姿で街を歩いていた。というのも男でISを動かせる靖人の存在は既に全世界に知られており、顔を見られると騒動が起きてしまうのは火を見るより明らかだからだ。只でさえ目立つIS学園の制服は脱いで、ごく普通の一般人に成り済ます。対してラウラは外出用の服が制服しか無かったため、靖人に注目の目が行かないように少し離れてもらっているのだった。

「折角外出禁止じゃ無くなったっていうのにこれだもの・・・。アンタ大変ね。」

鈴が伸びをする。薄い黄色の上着の下に花柄のノースリーブを着ていたため、腕を上げると脇やへそがちらついた。

「まぁしょうがないよ。でもこれでやっと本屋とかにも行けるしね。」

つい鈴の体を注視してしまい、自らの腰を強くつねりながら靖人は笑みを返した。

『神谷、現在周囲に怪しい人物はいない。引き続き警戒を続ける。』

ラウラからの定期連絡が靖人に届く。ちらりと後ろを見ると20m程後ろでラウラが周囲に目を配りながら歩いていた。銀髪に眼帯、IS学園の制服・・・と、とにかく目立つ彼女の姿に通行人はすれ違い様に振り返っていた。

「ま、何かあったら任せなさいよ。代表候補生の名に懸けて、ちゃんと助けてやるわ。」

パシッ、と鈴が右の拳を左の掌で受け止める。従来兵器の大部隊に匹敵する力を持つ護衛2人に守られながら、靖人は駅前のショッピングモール『レゾナンス』に足を踏み入れた。

 

 

「一夏、いくら白式の加速性能が高いからって、ただ闇雲に瞬時加速を使っても勝てないよ?」

専用機『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』―通常のラファールと違い、背部や左腕部のユニットが換装され、機体色はオレンジ色になった機体―を纏ったシャルルが、先程の一夏とセシリアとの勝負の感想を述べる。彼の言葉通り一夏の突撃はことごとくかわされ、雪平弐型の刃はセシリアには届かなかった。

「うーん・・・、どうしてあんな速い動きなのに読まれてるんだ?」

「一夏はセシリアの攻撃を回避する時、少し大きく動きすぎてたから、それでセシリアに次の行動を予測する時間をあげちゃったんだと思う。」

シャルルは言葉を続ける。

「例外もあるけど、射撃武器というのは基本、弾は砲口から真っ直ぐにしか飛ばない。つまり、前もって相手の射軸が分かっちゃえば必要最小限の動きで攻撃を回避できるんだ。それに慣れれば動作が小さくなって、相手に行動を予測、制限されにくくなるよ。」

シャルルの詳しい説明に一夏は納得するが、すぐさま疑問を口に出す。

「じゃあさ、追尾してくるミサイルはどうなんだ?あれは真っ直ぐ飛ばないだろ?」

「そうだねぇ・・・普通なら射撃で撃ち落とすのがセオリーだけど、白式の場合は・・・。弾数が多いなら、距離を離す事でミサイル同士の軌道を狭くさせて激突させるって手もあるけど・・・。」

シャルルが思案していたところで、チャイムが鳴った。

「あ、もうアリーナ閉まっちゃうな。皆、今日もありがとうな。」

白式を解除しながら一夏は箒、セシリア、マリーに声をかけた。シャルルたちもISから降りる。

「それにしても、靖人と鈴は今頃ショッピングか。」

箒が額の汗を拭いながら口を開く。

「たしか、ボーデヴィッヒさんも一緒でしたよね?何があってあの組み合わせになったのでしょうか・・・。」

セシリアは靖人が今朝、疲れきった顔をしていたのを思い出す。

「さーねー。にしても美少女2人とデートかー、両手に花だね。」

箒との手合わせを終えたマリーがにししと笑う。

「おいおい、アイツはデートとかそんな事考えるような奴じゃないだろ。」

と、一夏は笑うが、何故か箒とセシリアに睨まれて表情を固くする。

(え、俺何か変な事言ったか?)

ここ最近、何故か鈴を含めた3人に文句ありげな視線を送られる事が多くなったのを思い出す。

「ま、まぁとにかくお疲れ!いやー腹減ったなぁ!」

一夏がわざとらしく大声を上げると、セシリアが反応した。

「そ、それでしたらわたくし、今日サンドイッチを作って来ましたわ!よかったらその・・・一夏さん、召し上がります?」

「お!マジで!?」

一夏が満面の笑みを返してきて、セシリアは顔から火が出そうになる。それを見た箒がつまらなそうな顔をした。

「え、えぇ!それでは持ってきますので、食堂で待っていてください!あ、たくさんありますので良ければ皆さんも!」

セシリアはウキウキした顔で、一足先にアリーナを後にしていった。

 

 

「ふむ、これとかはどうだ?」

「んー、アンタが気に入ったなら良いけどさぁ・・・。折角だしもう少し可愛いのとかにしてみたら?」

「派手すぎる色は敵に見つかりやすい。潜入時、戦闘時は黒一色に限る。」

「いや、部屋着をそういう観点で決めないでよ・・・。」

洋服コーナーで2人が服をとっかえひっかえしているのを、少し離れた所で靖人は傍観していた。予想通りラウラはオシャレに疎く、年頃の女の子らしからぬ地味な服ばかり選んでおり、鈴はかなり苦戦しているようだ。もうかれこれ10分はあそこに居続けているだろうか。

「靖人ー。同室なんだし、アンタからリクエストとかあるー?」

助けを求めるように鈴が声をかけてきたが、男である靖人にもどういう服を選ぶべきなのかは分からなかった。

「・・・目を背けずにすむ服装なら何でも。」

「ですよね。」

靖人の苦し紛れの希望に鈴がため息をついた。正直、露出が少なければ何でも良い。

結局ラウラの希望通りの黒のTシャツを持って、2人が試着室に向かおうとする。1人で行動する訳にもいかない靖人が着いていこうとした時だった。

「何してるのよ、アンタ。」

と、見知らぬ女性に声をかけられた。きつい視線を浴びせられた瞬間、靖人は面倒な事態になったのを直感する。

「何でしょうか?」

感情を表に出さないまま、靖人が女性に向き合う。

「あんた試着室の方に行こうとしたでしょ。しかも帽子なんか被って。良くもまぁこんな時間に堂々と覗きができるわね。」

思い込みも甚だしい、という言葉を靖人は飲み込む。こういう『女尊男卑』系の人物を相手にする時、言葉を間違えると無実の罪でこちらが悪くなるケースが多い。ISが作り出した社会現象が、悪影響を及ぼしたケースだ。

「お言葉ですが、僕は―」

「ちょっと、あたしたちの連れに何の用?」

靖人の言葉を遮り、鈴が戻ってきた。ずかずかと靖人と女性の間に割り込む。

「何、あんたの男?まったく、男をこんな所に野放しにしないでよね。」

女性の言葉に靖人が心配になった鈴がチラリと後ろを見るが、靖人は怒りもせず、ただ残念そうな目をしていた。その後女性は男への愚痴を漏らし続ける。

「ったく男なんて・・・!鬱陶しいし、がさつだし、不潔だし・・・ISにすら乗れないじゃない。」

「ほう?ならお前はISに乗れるのか?見るからに訓練すら受けていなさそうなお前が?」

遠巻きに事を見ていたラウラが女性に近づいてきた。IS学園の制服を目にした女性の口が止まる。

「『虎の威を借る狐』・・・日本にはこういう言葉があるらしいな。正にお前はISの力を自分の物と勘違いしているおめでたい奴だな。」

「何よ!?生意気言って―」

女性が怒りを顕にするが、ラウラの氷の如き睨みに再び言葉を詰まらせた。

「―ISをろくに操れない者が、気安くISの名を出すな。」

完全に相手を見下した、冷たい視線を女性に叩きつける。返す言葉が見つからない女性は、クルリと踵を返し早足でその場を去っていった。

「・・・神谷、すまなかったな。」

ラウラの声色が普段通りの物に戻り、緊迫していた空気が霧散する。

「いや、助かったよ。ありがとうね。」

靖人が少々戸惑いながらも礼を述べる。

「つーかアンタ・・・流石に言い過ぎじゃない?ってか怖かったんだけど・・・。」

鈴が飽きれた様子を見せるが、それに対しラウラはまた少し真剣な顔をした。

「・・・私はISを軽んじる奴らが嫌いなだけだ。」

そう小さく呟いてから、ラウラは試着室の方へ歩いていった。

「さて行くぞ。余計な時間を食った。」

「ちょ、待ちなさいよ!」

鈴が慌ててラウラの後を追うが、「あ、そうだ」と靖人に振り返った。

「今度はあまりあたしたちから離れないでよ。またトラブったらやだし。」

そう言って、徐に靖人の手を引っ張った。

「え・・・。」

突然の出来事に靖人は困惑するが、それを顔に出さないように努力する。それでも手を包む柔らかい感触に、靖人の頬は次第に赤らんでいった。

 

 

結局ラウラはTシャツにハーフパンツ、しかも上下共に黒という女の子らしさ皆無のチョイスをし(しかも2セット共に・・・)、鈴と靖人は呆れながらレゾナンスを後にした。行きと同様バスに乗り、IS学園に帰ってきたのは午後7:00近くだった。そして彼らを迎えたのは―

「あ、皆さん良いところに!」

にこやかに笑うセシリアだった。バスケットを持って寮の食堂の一席に上品に座っている。

「アンタそれ、何を持ってるの?」

中身が気になった鈴がセシリアに聞くと、「えぇ、実はですね・・・。」と嬉しそうにバスケットを開く。

「わたくし、今日初めてサンドイッチを作ってみましたの!」

中を覗き込んだ3人はおぉ・・・と感嘆の声を上げた。目の前にあるサンドイッチはとても丁寧に作られており、売り物にもできるのではないかと思える程の完成度だ。

「ふむ、軍の配給で何度か出た事はあるが、ここまで綺麗な物は無かったな。」

ラウラがじっくりと観察しながら感想を述べ、

「・・・なんか負けた気がする。」

と鈴がぼそりと呟いた。

(あぁ・・・鈴は不器用だからなぁ・・・。)

彼女が作る料理の野菜や肉の形が不恰好なのを靖人は思い出す。美味しいから問題は無いと思うのだが。

「でも、何個か食べられてる形跡があるよね?一夏たちにあげたの?」

靖人がバスケットの空いてるスペースを指差しながらセシリアに聞く。

「えぇ、訓練が終わった後皆さんに振る舞ったのですが・・・どうやら1個でお腹いっぱいになったそうでして、つい先程席を外されました。」

「・・・そっか。」

サンドイッチ1つで満腹になるか?と靖人は疑問に思ったが、食事を前に難しい事を考えるのはやめた。

「では皆さんも、どうぞ召し上がってください!ボーデヴィッヒさんには歓迎の意味も込めて!」

セシリアに促され、3人は1つずつサンドイッチを手に取る。

「じゃ、いただきまーす!」

鈴の声に合わせて同時に方張り―

 

 

「っ!!!??」

靖人の体に衝撃が走った。

(か・・・辛い!?な、なんで!?玉子サンドなのに!?)

一旦目視で確認する。見た目は美味しそうな玉子サンドだ。だが口の中に残る味は、卵には無い筈の辛さだ。しかもそれの裏側に意味不明な甘さもある。

(こ、これは・・・はっきり言って・・・。)

「皆さん、どうでしょうか?」

セシリアがにっこりとしながら聞いてくる。

「・・・アンタねぇ・・・!」

鈴の肩が小刻みに揺れていた。がばりとありったけの抗議の視線をぶつけながら、セシリアに食って掛かった。

「何よコレ!?なんでこのツナ滅茶苦茶甘いのよ!?見た目芸術品なのに不味いわ!」

「な、何ですって!?鈴さん、あなた舌がおかしいのではなくて!?」

「いやどう考えてもこれは不味いわよ!」

ギャーギャーと口喧嘩が始まってしまった。どうやら鈴の食べた物も不可思議な味がしたらしい。

「靖人さん!鈴さんの言ってる事はデタラメですわよね!?」

セシリアが涙目で此方を向いてきた。凄く可哀想なんだが、これは・・・。

「・・・あの、ごめん、ね・・・?」

不味いとストレートに言えず、とりあえず謝ってしまった。それでもセシリアには此方の言いたい事が伝わったらしい。

「うううう!!2人共酷いです!ボーデヴィッヒさんを見てください!ちゃんと食べてらっしゃるではないですか!」

セシリアが指差した先には、ポテトサラダサンドを黙々と咀嚼するラウラの姿があった。まさか彼女のは普通―

「サバイバルの訓練で食わされた得体の知れない肉とかに比べたらましだな。一瞬毒が入っているのかと思ったが、どうやらその心配は無いようだ。」

じゃなかった。最後の砦が崩れ、セシリアが静かに膝から崩れた。

「・・・ねぇ、セシリアはこれ味見したの?」

おずおずと靖人が聞いてみるとセシリアが首を横に振った。

「まさか・・・あってたまる物ですか!このわたくし、セシリア・オルコットが作った料理が不味いなど!!」

セシリアは憤怒の表情で自らジャムサンドを鷲掴みして、口に含んだ。

そして顔を青くして後ろに倒れ込んでしまった。

「えぇぇぇぇぇセシリア!?」

「何自爆してんのよもう!」

「何だ?やはり毒入りだったか?」

もうてんやわんやで収拾がつかなくなり、靖人たちは慌てる。

「あ、皆!!帰って来てたのか!ってセシリアどうしたんだ!?」

そこへ一夏が食堂の入り口から駆け寄ってきた。若干顔色が悪いのは、一夏もこの毒劇物(サンドイッチ)を食べたからだろうか。

「いや、セシリアが自分のサンドイッチを食べて、そしたら―。」

頭がパニクってる中、靖人が目の前で起きた事を説明する。それを聞いた一夏が合掌した。

「毒を以て毒にやられたか・・・南無三!」

「いやその前にコイツを保健室へ運ぶわよ!」

「あ、あぁそうだな!」

鈴の一言で一夏も動き出し、2人でセシリアを両脇から支えながらその場を後にする。

突然の事すぎて靖人は茫然とする。

「な、何かとんでもない事になっちゃったね・・・。」

隣にいたラウラにそう声をかけようとしたが、靖人の言葉は途中で消えていってしまった。

「・・・・・・・・。」

ラウラの目に明らかに怒りの色が見える。その視線の先にいるのはセシリアたち3人。

「・・・ボーデヴィッヒ、さん?」

靖人が何とか口を開くと、ラウラが発していた肌に刺さるような緊張感が消える。

「む、何だ?」

何かあったか?と言いたげにラウラが聞き返してくる。

「・・・ごめん、何でもない。」

靖人は笑ってごまかしたが、内心は言い表せない不安が渦巻いていた。

(昨日の朝も、同じような目をしてた。・・・一夏と何が?)

ラウラの異変が、何故か靖人の心に引っ掛かっていた。

 

 

翌日判明したが、箒、マリー、シャルルもやはりセシリアのサンドイッチの餌食になっていた。そして容疑者であり最大の被害者であるセシリア自身は、保健室のベッドでうんうんとうなされていたらしい。

この出来事はすぐに周りにも伝わり、「セシリアに単独で料理を作らせてはならない」という戒めがIS学園全体に広がったのである。




コンビニのサンドイッチを定期的に買ってしまいます。ちなみに好きなのはBLTサンドです。
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