INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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季節の変わり目ですが、皆さん体調は崩されてませんか?私は見事に風邪をひきました(笑)しかも夕べ39℃を越える熱が出て、悪寒も凄くてかなりヤバかったです。
さてさて、流石に学校には行けなかったので、する事が無いから暇だー、となりましたので、本日一気に最新話を書き上げました!しかも2話!
熱で頭がやられながら書いてるので変な所もあるかもしれませんが、どうぞ。


第23話:黒の衝撃

カウントダウンが刻まれる中、自身の周囲に幾つものターゲットが展開される。閉じていた目を静かに開き、ラウラは静かに闘志を燃やし始めた。

『3・・・2・・・1・・・スタート。』

「―っ!」

ブザーが鳴り響きタイマーが作動したのと同時に、黒い装甲を纏ったラウラが空を翔る。

ターゲットの一つへ肉薄しながら、両腕から紅いプラズマブレードを展開。擦れ違い様にそれを切り飛ばした後、即座に身を反転させながら、非固定浮游部位から6本のワイヤーブレードを射出し、周囲のターゲットを一掃する。そして右肩の巨大なレールカノンを間髪入れず放ち、射線上の目標を悉く撃ち抜いた。

ドイツ軍IS配備特殊部隊『黒ウサギ隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)』隊長の名に恥じぬ機敏で勇猛なその動きに、周りで訓練をしていた生徒たちも目が釘付けになる。

ひゅんっ―という風切り音と共に最後のターゲットが消失した。

『計測終了。結果・・・18.72秒。』

「・・・まだまだだな。」

プラズマブレードを収納しながら、ラウラは冷静に結果を判断した。

(データから考慮すれば、この程度のターゲットの量なら、15秒もかからずに全て撃破できる筈だ。つまり・・・。)

ISの装甲に包まれた、自身の両の掌に目を落とす。

「まだ『シュヴァルツェア・レーゲン』の性能を発揮できていない、という事だな。」

『黒い雨』という名を冠するこのISは、その名の通り全身の殆どが黒で塗装され、何処か近寄りがたい雰囲気を醸し出している。武装も遠・中・近距離全てに対応できる様に装備されており、強襲型としての運用を見越してスラスターや装甲にもかなり力を加えている。ドイツが威信をかけて製造した、傑作機とも言える代物だ。

「ふむ・・・通常武装に加えてアレ(・ ・)の調整も進めないとな・・・。」

第三世代機特有の特殊兵装を思い浮かべながら、ラウラはひとりごちた。

(それにしても・・・。)

地表に降下してから、シュヴァルツェア・レーゲンを一旦解除する。

(性能は申し分ない・・・だが、搭乗していると妙に引っ掛かる物を感じるのは何故だ?)

このISを受領してからと言うもの、起動させている時何とも言えない違和感がまとわりついてくる。まるで、心の中を覗かれているような・・・。

「・・・関係ないな。」

武器の性能がどうであれ、環境の良し悪しがどうであれ、与えられた条件を如何に活用できるかが兵士にとっては重要なのだ。

「もう一度だ、行くぞレーゲン。」

ラウラは愛機を再び展開し、黄昏に染まり始めた空へ飛翔した。

 

 

「・・・流石軍隊所属なだけあって、キレが段違いね。」

「えぇ・・・『躊躇いがない』と言うか、『効率的』と言うか。」

鈴とセシリアがラウラの動きを見ながら感想を述べる。

代表候補生として長く経験を積んできた2人からしても、彼女の身のこなしは一線を凌駕している物だと実感した。

「いやー、フラれちゃったラウラとまさか偶然同じアリーナを使うとはねー!格好いいな、ドイツの専用機!」

「マリー、テンションが上がりすぎてないか・・・?」

目をキラキラとさせているマリーに、若干引きぎみの箒。

そうしている間にも、ラウラは数多のターゲットを撃墜していく。

「へ~。あれドイツの新型だよね?」

男子組が遅れてアリーナに入ってきて、シャルルが感心した声を上げる。

「凄いな、あれだけの目標を一気に・・・。」

同室でありながら、彼女が実際にISを起動させている姿を見た事が無かった靖人は、改めて彼女の腕の高さを実感していた。

そんな中・・・、

「・・・・・・・・。」

いつもなら何か一言でも言いそうな一夏が、珍しく黙っていた。

ラウラの機動を、真剣な表情で追いかける。彼女がブレードでターゲットを破壊する素振りを見せた時、彼の中である確証が得られる。

(やっぱり似てる・・・千冬姉の動きと、アイツの動き・・・。)

かつて姉に隠れてこっそり見ていた、第1回モンド・グロッソの映像・・・そこに映っていた千冬の姿と、目の前のラウラの姿が一夏の中で重なった。

 

 

(まだだ・・・違う!これではまだ遅い!)

ターゲットを次々と破壊しながら、ラウラは舌打ちをする。まだまだ、理想の動きにはほど遠い。

(教官に教わった事を思い出せ・・・。あの特訓を、あの苦しみを!)

千冬に叩き込まれた戦闘の術を、フルに活用して武器を振るう。少しずつ、だが確実に無駄な動きが削られていく。

集中を切らさないように短く息を吐いた、丁度その時だった。

「・・・!」

ハイパーセンサーによって全方位に広げられた視界の隅に、此方を見ている者たちの姿が映った。

その中に、織斑一夏がいた。

別段興味の無い風景の中で、彼だけは鮮明に目に焼き付いた。

(ダメだ、今は余計な物に意識を向けている場合ではない・・・。)

そう、自分に言い聞かせた。

 

 

『・・・アイツが。』

 

 

寒気がした。

 

 

『アイツが教官の顔に泥を塗った。』

 

 

頭に鈍痛が走った。

 

 

『私はお前を許さない。認めない。』

 

 

シュバルツェア・レーゲンが徐々に失速し、やがて停止する。

 

 

『だから・・・倒す。』

 

 

「織斑・・・一夏!」

ラウラの瞳に冷徹な光が宿った。

 

 

それまでの高速機動が嘘のように、ラウラが動きを止めた。まだタイムアタックは続いている筈だ。彼女の行動の真意が読めず、周りにいた者が首を捻る。

「あれ、アイツどうし―」

一夏の疑問の声は、突如鳴り響いた警告音によって遮られた。それは、白式がロックオンされた事を告げる物だった。

「なぁっ!?」

刹那、シュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンが轟音と共に火を吹く。大口径の弾丸が炎を纏いながら一夏に強襲し―

「一夏っ!!」

いち早くリヴァイブを飛翔させたシャルルが大型シールドでそれを受け止めた。

「シャ、シャルル!?わりぃ、助かった!」

「無事だね?良かった・・・。」

シャルルが振り向いて安堵の表情を浮かべるが、事態はそうゆっくりとしていられなかった。

猛スピードでラウラが此方に突撃してきた。両腕からは灼熱の凶刃が既に展開されていた。

「ちょっとアンタ!いきなり何よ!」

「・・・・・・・・。」

鈴が甲龍と共にラウラを止めに入るが、それには全く意を介さぬと言った感じでラウラは一夏目掛けて突っ込んでいった。

「あぁもう!コイツ・・・皆!」

鈴の合図と同時に靖人、セシリア、マリーの銃火器が一斉に火を吹く。そして鈴もラウラ目掛けて龍砲を撃ち込んだ。

だが四方位からの射撃を、ラウラは速度を緩める事なく全て回避した。

「速っ・・・さっきのよりスピード上がってない!?」

「どうもその様だね!」

「くっ・・・!」

マリーが驚愕のあまり声を上げる。靖人は針雨を撃ち続け、シャルルもシールドの代わりにアサルトライフル『ヴェント』を両手に構え、フルオートで発射する。

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

気合の入った叫びと共に箒が葵を構えながら突進するが、それよりも早く展開されたワイヤーブレードによって思うように近づけなくなった。

そして遂に―

「ぐぅっ・・・な、何のつもりだ!?」

「・・・・・・・・。」

白式の雪平弐型とシュヴァルツェア・レーゲンのプラズマブレードがぶつかり、激しいスパークを散らした。

「いきなり襲ってくるとか、何考えているんだよ!」

「・・・・・・・・。」

「黙ってんなよ!答えろ、ラウラぁっ!!」

必死の問いかけにうんともすんとも答えないラウラに、一夏は声をさらに荒げる。

「・・・・・・許さない。」

遂にラウラが口を開いた。しかしその口調は、何処か機械的で抑揚の無い物だった。

「私はお前を許さない。」

感情が抜け落ちたかのような、ビー玉のような紅い瞳を、此方に向けてくる。

「お前のせいで教官はその手に栄光を掴めなかった。」

「っ!」

ラウラの言葉を聞いて一夏が歯軋りをする。まさか、本当にあの事件(・ ・ ・ ・)が絡んでいたとは!

「ふざけんなこの野郎っ!」

激昂した一夏が力任せにプラズマブレードを弾く。ラウラが軽くバランスを崩したのを、全員は見逃さなかった。

「貰いましたわ!」

最も早く動いたのはセシリアだった。予め周囲に展開させていたティアーズから一斉にレーザーを撃ち込む。それでもラウラは驚異的な反射神経で回避行動を取るが、1発のレーザーが彼女の左足を捉えた。

「今です!」

「おりゃぁっ!!」

セシリアの叫びと同時に鈴が龍砲を最大出力でラウラにぶつけた。シュヴァルツェア・レーゲンが大きく吹っ飛ばされ、ドンッ、という重い音と共にアリーナの壁に激突した。

そのままぐったりとして動かなくなったラウラの姿を見て、一同はそれぞれの得物を下ろした。襲われたとはいえ彼女の身が心配になり、靖人がラウラに近付く。周りから止めようとする声が上がったが、靖人はそんな事は気にしなかった。

「ボーデヴィッヒさん、しっかり・・・。」

軽く肩を揺すると、すぐに彼女の目が開いた。その光は、先程のような冷たい物ではない。

「あ・・・。わ、私は・・・?」

良かった―そう靖人が安堵したのも束の間、一夏がずんずんと近づきながら怒声を上げた。

「てめぇ!一体何の真似だ!何でいきなり攻撃してきた!!」

鋭い声にラウラがビクッと身を強ばらせたのが分かった。その姿はいつもの彼女が決して見せる事の無い、怯えた子供のような物だった。

「一夏落ち着いて!無闇に怒っても事態がややこしく―」

「黙ってろ靖人!」

突如向けられた一夏の怒りを受け、靖人も口を閉ざしてしまう。

視線をラウラに戻した一夏は、物凄い形相でラウラを睨み付けた。

「お前に何が分かる!!あの時千冬姉は世界最強の栄光より、俺の命を優先してくれたんだ!」

一夏の吐き出す激情を、ラウラを始め周囲にいた者全員が黙って聞いていた。

「それを許せないだと!?お前は人命よりも名ばかりの実績の方が大事なのかよ!!」

ラウラは何も答えない。一夏はそのままクルリと身を翻し、ピットへ向かっていった。心配になった箒が後を追いかけようとするが、セシリアがそれを制した。あそこまで怒りがこみ上げていたら、何を言っても冷静に話せないだろう。

「・・・分からない。」

か細い声で、ラウラが呟く。だが続く言葉に、皆は唖然とする。

「分からないんだ・・・、どうしてお前たちに攻撃したのか・・・。」

そう言ってラウラは頭を抱えてしまった。鈴が少々怒りを露にした。

「アンタ・・・分からないなんてそんな無責任・・・な・・・。」

が、その言葉は失速し、鈴は目を見開いていった。

「・・・似てる。」

「え?」

鈴の呟きにシャルルが不思議そうに首を傾げるが、それを聞いた箒たちは鈴の言葉が何をさしているのか理解した。

「靖人。」

シャルルと同じく呆然としていた靖人に向け、鈴が口を開く。

「似てるのよ。さっきのラウラ―

 

 

―クラス対抗戦の時のアンタと。」

「え・・・?」

クラス対抗戦・・・突如謎のISが襲来し、それを見た事がない武装を装備した靖人が撃退した、あの事件。

自分にとっても不可解な出来事が何故かここで再び浮上してきた。

日が地平線に隠れかけ、空が不気味に暗くなり始めていた。

 




書いてて思いました。これ3章めっちゃ長くなるなって。
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