INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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熱がある中勢いだけで書いた作品、後半です。シリアスで行こうと思ってたんだよ。でもね、それを許さない自分がいた。


第24話:事実は小説より奇なり

力が欲しいのだろう?

 

 

「そうだ、私は強くなりたい。」

 

 

ならば、何故拒む?

 

 

「それは私が求めている強さではないからだ。」

 

 

何故だ?私の強さをお前は良く知っているだろう?

 

 

「それは私が使うべき物ではない。」

 

 

『何を言っている。これこそ私が目指していた物だ。』

 

 

「違う!ただの力は本当の強さでは―」

 

 

『私はこの力に憧れた。だから欲しい。そして・・・この力で奴を倒す。』

 

 

そうだ、私にはそれができる。

 

 

「やめろ!そんな事をして何になる!!」

 

 

『私を絶望から救ってくれた教官の顔に、泥を塗ったのは誰だ。』

 

 

「そんな事・・・私も、教官も望んでいない!」

 

 

いいや、望んでいる。お前の戦士としての本能が。圧倒的な強さを欲している。

 

 

「違う・・・。」

 

 

『私はやる。この力で、教官が成し遂げられなかった事を!そのためにも、まずは・・・!』

 

 

「やめろ・・・。」

 

 

 

 

 

 

『 この力で、織斑一夏を倒す!! 』

 

 

 

 

 

 

「もうやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そうか。まさかボーデヴィッヒがそんな事を・・・。何にせよ、互いに大きな被害が無くて良かった。」

全容を聞いた千冬が難しい顔で腕を組む。あの後ラウラを休ませるために自室へ送り、騒ぎを聞きつけた教師たちから一人一人事情聴取を受けていた。

「あの・・・織斑先生。一夏は呼ばなくて良いのですか・・・?」

一度皆が集められた時、一夏の姿が無かったのを気にして、靖人が口を開く。普通、このような場合は居合わせた者全員が出席しなければならない筈だが・・・。

「今はそっとしておいてやれ。・・・あの事(・ ・ ・)に関しては、アイツも触れられたくなかっただろうしな。」

珍しく表情を翳らせる千冬。それを聞いた靖人が我慢が出来なさそうに聞いた。

「その・・・一夏やボーデヴィッヒさんも言ってたそれって、何なんですか?もしかしてそれが今回の原因なのでは・・・。」

「・・・・・・・・。」

千冬は押し黙ってしまった。暫くの間、辺りを静寂が包む。

「・・・3年前の『第2回モンド・グロッソ』は覚えているな?」

突然千冬が切り出し、靖人は静かに頷いた。その頃にはISは世界中に浸透し、2度目のIS世界大会は前回の物を遥かに上回るほど注目されていた。当然、靖人も当時テレビに釘付けになっていた。

「勿論私も日本代表として出場した。第1回の覇者だっただけに、周りからの期待も大きかったな。」

流石は前回の優勝者なだけあって、千冬はこの大会でも次々と勝ち抜けていった。これで千冬の2連覇は確実・・・あの時誰もが皆そう思っていた。

「ですが・・・。」

靖人の残念そうな声に、千冬は自虐的な笑みを浮かべた。

「そう、私は決勝目前で辞退した。ISの整備不良でな。」

この出来事に、世界中から落胆の声が上がった。結局決勝の相手だったイタリア代表、アリーシャ・ジョセスターフが2代目ブリュンヒルデとなったが、彼女本人が「千冬との決着がついていない」と公言し、ブリュンヒルデの座から降りている。

それは周知の事実・・・だからこそ、千冬の次の言葉に靖人は驚きを隠せなかった。

「だが本当は・・・誘拐された一夏を助けるために私は決勝を辞退したんだ。」

「え・・・?」

靖人は思わず声を漏らした。千冬は絞り出すように続ける。その顔は教師としての、そして世界最強のIS操縦者としての物でもなく、ただ弟の身を案じる姉の物だった。

「決勝の直前に、開催地ドイツにまで応援に来てくれていた一夏を複数の犯人が誘拐していったという連絡が入った。私はすぐにドイツ軍に協力を要請して居場所を特定し、一夏の元へISで飛んでいった。」

当時の情景が鮮明に脳裏に浮かぶ。破壊した壁の向こうに、椅子に縛り付けられた一夏の姿があった。恐怖で満たされたその目で此方を見てきた時、無事だった事による安堵と怖い思いをさせてしまったという後悔が胸中で渦巻いていた。

「一夏・・・そんな事があったなんて・・・。」

靖人は3年前の事を思い出す。夏休み明けにあった一夏は、そんな様子を微塵も見せなかった。だが、実際にはそんな事件に巻き込まれていたなんて・・・。

だが靖人の頭の中で、先程の千冬の言葉が引っ掛かる。

「先生、ドイツ軍が絡んできたと言う事は・・・。」

靖人の質問の意図を察し、千冬が「そうだ」と答える。

「その一件で、ドイツ軍に借りができてな。代償として私は1年間ドイツのIS部隊を指導する事になった。・・・ラウラとはそこで出会った。」

適合手術に失敗し、落ちこぼれの烙印を押された少女・・・当時の千冬には、一夏と同様の幼い子供にしか見えなかった。

「アイツはその時自信を無くしていたのだが、私が指導したらすぐに調子を取り戻したよ。それが、アイツにとっては嬉しかったんだろうな。」

休憩の時間に目を輝かせながら話しかけて来る事も多かった。日本に帰国する時には、普段泣く事が無いくせに号泣していて、少し驚いた。

「少なくとも、ラウラの中で私の存在はとても大きな物になっていたのだろうな。だが・・・。」

千冬の表情に険しさが戻る。

「どうしても私には、モンド・グロッソの件でラウラが一夏を恨んでいたとは思えない。奴に一夏の話をしたら、『是非とも会ってみたい』って言っていた位だからな。」

あの時浮かべていたはにかんだ笑顔が、千冬にとって偽りの物とは思えなかった。だが、IS学園に転入してからラウラが一夏に向ける視線は、怒りが込められた物にしか見えないのは事実だ。千冬が見ていない間に、彼女に何があったのだろうか。

それきり、千冬はまた黙り込んでしまった。話を聞いていた靖人も、神妙な顔つきをしている。

「・・・この話は誰にも言うなよ。」

いつもの落ち着いた声で、千冬が釘を刺した。無論、この話題を他の誰かに話そうなんて気は全く無かったが。

「それで・・・凰がボーデヴィッヒの様子が神谷の時と似ていたと言っていたそうだな?」

鈴たち曰く、『目付きや表情などの雰囲気が似ている』『襲撃時に正気を失っている』『ある目標を重点的に狙う』・・・などの類似点が挙げられるそうだ。何の接点が無かった靖人とラウラだが、似たようなケースが続けざまに起きているので、何か関係があるのかもしれない。

「えぇ・・・と言っても僕はその事を全く覚えていないのですけど・・・。」

事件から暫く経つが、当時の様子は未だに思い出す事が出来ない。やはり鈴の倒れている姿の所で、記憶は途切れている。

「お前の場合、少なからず原因は不知火にあると考えられる。あの兵装を考慮するとな。」

映像で確認した、リストに登録されていないあの危険な右腕の事だろう。確かに記憶が無い時にアレを使っていたのだから、何か関係がある筈だ。だがその後の検査では、不知火に何の異常もない事が証明されている。真相は闇に包まれたままだ。

「もしボーデヴィッヒもお前と同じなら、原因はISにあるのか・・・?それとも、違う理由か?」

千冬はうぅむ・・・と唸りながら考え事を始めた。

「とにかく、ボーデヴィッヒからは後日事情を聞かせてもらう。ご苦労だったな。」

千冬が椅子から立ち上がり、靖人も腰を上げる。ドアノブに手をかけた千冬が「あぁそうだ」と振り返ってきた。

「お前が別に構わないのなら、ボーデヴィッヒの事気にかけてやってくれないか?アイツはまだまだ未熟だからな。」

同室のよしみでな、と付け加え千冬が笑う。あまり見る事の無い千冬の笑顔に、思わず靖人も釣られて笑った。

「分かりました。」

それを聞いた千冬は、どこか満足気だった。

 

 

「ん・・・。」

辺りが暗闇に包まれている中、一夏は目を覚ました。ベッドから体を起こし、時計を確認すると10時を回っていた。

「そっか、あの後・・・。」

アリーナでラウラに攻撃されて、モンド・グロッソでの一件で一方的に恨まれていたのに怒って、そのまま部屋に戻ってきたのだった。

「・・・あぁもう。」

頭をがしがしとかきむしる。流石に頭に血が昇りすぎたか。だが、自分にとっても思い出したくない出来事で恨まれるのは気分の良い物では無かった。ラウラの顔を思い浮かべると、未だに怒りが込み上げてくる。

「・・・やめよう。シャワーでも浴びるか。」

嫌な事は水に流したい。そう思いながらシャワールームを目指した。

「ん?」

シャワールームから光が漏れている。つまりシャルルが戻ってきて先に入っている、という事だ。

そういえば、あの後何かあったのだろうか。一応専用機持ち6人を含む計8人がいきなりガチバトルをしたから教師側から何か言われてそうだ。

シャワールームの入り口を開けて、磨りガラス戸の向こうにいるシャルルに声をかける。

「おーい、シャルルー。俺が寝てる間に何かあったか?」

「ふぇ!?い、一夏っ!?」

かなり驚いたような声が扉越しに返ってきた。

(うーん、一応俺が部屋にいるのは認識してるよな?)

「ちょっ、一夏!絶対入ってこないでよ!?」

大慌てでシャルルが大声を出す。ぼやけた全体像からでも、此方に手を向けてぶんぶん振っているのが分かった。

(そーいえば・・・。)

シャルルのこれまでの行動を思い出す。

 

 

ある日の実習前、ロッカールーム

「なぁ、シャルルって着替え早いよな。どうやってるんだ?」

「え!?そ、そうかなぁ?普通だと思うよ?」

「いやどう考えても普通じゃねぇぞ・・・?しかも、いっつも向こう向いてるよな。」

「だ、だって着替えてるの見るのも見られるのも恥ずかしいじゃん!」

「いや別に男同士だし気にすんなよ。」

「僕は気にするの!」

 

 

また別のある日、自室

「朗報だシャルル!遂に俺たちにも大浴場が使える日が来るそうだぞ!」

「へ、へぇ~。」

「な、何だよ乗り気じゃねぇな・・・。折角靖人と3人で一緒に入ろうぜって思ってたのに。」

「え゛っ!?そそそそそれはちょっと僕困っちゃうな!?」

「えー何でだよー。シャルル風呂嫌いかー?」

「そうじゃないけど・・・その・・・皆と入るのは・・・。」

「え、何か言ったか?」

「な、何でもない!」

 

 

(なーんかシャルルって、恥ずかしがり屋っぽいよなぁ。)

現に今も入ってくるなと慌てている。だが、人間はやめろと言われるとむしろやりたくなってしまう生き物なのだ!

(驚かせてやれ!)

子供のように無邪気な笑顔(ゲス顔)を浮かべながら、一夏は磨りガラス戸を掴んだ。

「何だよー良いじゃねーか。何女子みたいな事言ってんだよ。」

と言いながらガラリと扉を開いて・・・

 

 

一夏の頭はフリーズした。何故なら目の前に・・・金髪の少女がいたからだ。しかも全裸で(当然か)。

「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」

沈黙が続く。最早事態が掴めていない一夏はゆっくりと戸を閉めようとした。

が、

「一夏のスケベぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

音速の勢いで振りかざされた洗面器によって頭部を強打され、あえなく撃沈した。

 

 

事情聴取も終わり、靖人は寮の廊下を歩いていた。時刻は既に10:30を過ぎており、もうすぐ消灯の時間になる。

(ボーデヴィッヒさん、大丈夫かな・・・。)

先に休ませたラウラの身を案じながら、自室の鍵を弄っていた。

そして1014室の扉の前に着いた時―

「──────。──────。」

部屋から何か音が聞こえるのが分かった。不思議に思った靖人はすぐさま扉を開いた。そして、その音の正体が判明した。

「やめろっ、やめ・・・ろぉっ!!来るなぁ!わ、私は!私はぁ!!」

「ボーデヴィッヒさん!?」

ラウラの苦しそうな声を聞いて靖人が駆け出す。ベッドの上でラウラは苦悶の表情を浮かべ、額には寝汗をびっしりかいてうなされていた。

「しっかりしてよボーデヴィッヒさん!!」

靖人が必死で声をかけるも、ラウラは手足をばたつかせて暴れ続ける。

「嫌だ!いやっ!そんな物・・・いらな・・・い!」

顔や体を叩かれながらも、靖人は何とかしようと必死で頭を回転させた。

『お前が別に構わないのなら、ボーデヴィッヒの事気にかけてやってくれないか?』

ついさっき千冬にかけられた言葉を思い出す。その瞬間、靖人の体が自然に動き出していた。

「大丈夫!大丈夫だから!」

小柄な彼女の体を引き寄せ、きつく抱き締める。それでもラウラの慟哭はまだ止まらなかった。

「一人で抱え込まなくても良いから!僕で良かったら力になる!」

痛みに耐えながらも、靖人は叫び続けた。

「ラウラさん!」

 

 

 

 

 

 

どれ程の時間、言葉をかけ続けていただろうか。気づけば腕の中にいる少女はもう暴れていなかった。

「・・・ボーデヴィッヒさん?」

靖人の問いかけに反応したのか、ラウラがゆっくりと目を開く。紅と金のオッドアイが、靖人の顔を捉えた。

「か、神谷・・・?」

その表情がいつもと変わらぬ物だったので、靖人は安堵し、気が抜けたように息をはいた。

「よ、良かった・・・ボーデヴィッヒさ」

「何故私を抱き締めているのだ?」

靖人の一言を、ラウラが質問で遮る。そして現状を理解した靖人が

「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ごめんなさい゛ぃ゛っ!!?」

顔を真っ赤にしながら身を離した勢いでバランスを崩し、ベッドの角に頭をぶつけた。




シリアス~からのネタ、そしてシリアス最後にまたネタ。うんテンションの起伏が激しいですね今回は。さっき熱計ったらまた39℃越えてました。寝ます。
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