INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~ 作:Mr. P.C.
「・・・つまりあのアンノウンを操っていたのは、男だったという事か?」
「はい、残念ながら黒いラファールは既に姿がありませんでした。」
千冬とIS小隊がアンノウンを確保し、特務機関の本部に帰投してから20分が経過していた。千冬は梶原に事の全容を報告していた。
「アンノウンを操っていたのは、織斑一夏と同じ男子だった。」
この事実に本部は先程のスクランブルより更に騒然となり、そこかしこで職員が駆け回っている。
「神谷靖人だったか?彼は今どうしている?」
「意識不明の状態だったため現在メディカルルームにて治療を受けています。ISは技能班が詳しいデータを解析中です。」
千冬の報告に、梶原はため息をつく。予期せぬ出来事が続き、かなり参っている様子だった。
「むぅ・・・。先日の検査ではISを動かせなかった少年が、何故ISを・・・。あのアンノウンに秘密があるのか?」
梶原はしばらく考え込むが、今の段階では何の結論も出ない。
「とりあえず、ご苦労だった織斑。そしてすまないが事態が落ち着くまで暫く此方にいてくれ。また色々と頼むかもしれん。」
「了解しました。では、失礼します。」
千冬は踵を返し、メインルームを出ていく。
長い廊下を歩きながら、彼女は靖人について思案していた。
(一夏に続いて、まさか彼までISを動かすとは。だが、ISを動かせる男はもういないのは、あの検査で明らかな筈だ。彼が検査に参加していなかった訳がない。となるとやはりあのISに秘密が・・・。)
そこまで考えたところで千冬の足が止まる。あのISに何か引っ掛かる物を感じる。次の瞬間には千冬は走り出していた。
「まさか、貴女が関わっているのか?『博士』・・・。」
千冬は技能班が解析を行っている部屋に辿り着くと、勢いよく扉を開けた。
真っ暗だ。
何も見えない。
ここは何処だろうか。
見渡しても見渡しても、辺りにあるのは闇ばかり。
何もない。・・・いや、違う。
誰か・・・いる?
僕の目の前に誰かいる。
でも、暗くて誰か分からない。
君は誰?
どうしてここにいる?
「・・・・は、・・・・・・え・・。」
目を開くと、蛍光灯の光が目に入った。
眩しさに顔をしかめる。ベッドの上だろうか。靖人は起き上がろうとする。しかし体に上手く力が入らず、体を起こすことができなかった。見ると、自分の腕に点滴が打たれていた。となると、ここは病院なのだろうか。
(どうして・・・どうしてこんな所に?)
記憶を探ってみる。確か一夏と電話した後、本屋に行って新しい本を買って、帰ってた時に・・・。
そうだ。黒いISに襲われて、そして・・・。
輝きを放つ指輪。
現れた銀色の鎧。
間近に迫る雲。
真下に見える町。
迫り来る弾丸、凶刃、爆弾。
「僕は・・・ISを動かしたのか?」
そんな馬鹿な。ISを動かせる男はこの世でただ一人、一夏だけの筈。だが、自分が思い出した記憶は、自分がISに乗って敵と戦った物だった。
ふと右手を見たが、中指に指輪が無かった。どこかに落としたのだろうか、あれは大切な物なのに。
「あの指輪は現在此方が預かっている。心配するな。」
靖人が焦っていたとき、部屋の入り口から声が聞こえた。裸眼のため立っていた人物が一瞬分からなかったが、輪郭と声で見当がついた。
「千冬さん・・・!」
「学校では、弟が世話になったな。」
千冬は少し笑みを浮かべながらベッドのそばまで歩いてくる。一夏の姉で、IS操縦者。かつて日本代表としてIS操縦者の頂点を決める大会、『モンド・グロッソ』にて優勝し、『
その織斑千冬が、何でここに?
「千冬さん。ここは一体・・・。」
靖人の問に千冬が答えたとき、靖人は頭を殴られたような衝撃を受ける。
「ここは政府直属のIS特務機関の本部だ。お前は・・・、ISを動かしてここに保護された。」
真剣な眼差しで語る千冬が、嘘をついているとは思えなかった。やはりあの記憶は嘘ではなかったのだ。
「何で・・・この前の検査じゃISを動かせなかったんですよ!?」
あまりにも不可解な事実を告げられ、靖人は叫ぶ。千冬は靖人に落ち着くように諭してから、言葉を続けた。
「お前がISを起動した事は勿論想定外だったが、実はイレギュラーがもうひとつあった。あのISは、これまでの機体の中に該当機種が無かった。そこから、新たに開発されたISではないかという意見が上がった。」
「え・・・?」
更に頭がこんがらがってきた。男である自分が、ISの新機種を操縦?訳が分からない。第一、自分がISに触れる機会なんて・・・
「それで、お前のISについて調べさせてもらった。
お前がいつも身につけていた指輪をな。」
千冬の言葉を聞き、ある仮説が靖人の頭に浮かぶ。そうだ、自分とISを繋ぐたった1つの、大きなファクター。
「まだ全て解析できていないが、コア内の記録からあのISが日本のある研究所で開発されていた事が判明した。そして開発に携わった人物の名前も記されていた。」
仮説が確信に変わっていく。千冬が次に口を開いたとき、靖人の頭の中で全てのピースが一致した。
「『
忘れるはずもない。自分にあの指輪を託し、事故でこの世を去った・・・靖人の母親の名だった。
話がかなり難しくなりますね。早く楽しい雰囲気の入学後の話を出したい。
靖人のISと椿に関しては次回詳しく説明します。(できるかな?)