INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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専門用語が続くと、意味これであってるのか?と不安になります。わしゃカタカナが苦手なんじゃ。


プロローグ5:懐疑と判明

神谷椿(かみやつばき)

かつてISの技術開発においてその名を馳せた優秀な研究者。

ISが世に出る前はロボット工学に精通、現在産業や災害救助等多くの場で用いられる自律型ロボットの発展に貢献してきた。

ISの登場と共に、彼女は日本が設立したIS研究・開発所『倉持技研(くらもちぎけん)』に所属し、これまでの経験を生かし様々なシステムを開発。その中で最も世界に絶賛されたのが、日本が開発した量産型IS『打鉄』に搭載された『防御シールド高速修復システム』だった。

このシステムはISの拡張領域内に簡易的な修繕機構を搭載させ、外部装甲が破壊された際にその場で装甲を修復するという物で、堅牢な素材と装甲の形状と相まって打鉄の防御力を世界最高峰の物にした。

打鉄は世界2位のシェアを誇り、日本のIS開発に明るい兆しが見え始めていた。

 

しかし、3年前に悲劇が起きる。

 

倉持技研の研究者数名が、事故でこの世を去った。

ある研究チームが慰安旅行中、自動車の運転を誤り崖に転落した事によるものだった。

死亡したのは日本を代表する著名な研究者ばかり。そして、神谷椿もその中の一人あった。

 

 

「・・・・・・・・。」

自分以外誰もいないこの部屋で、靖人は考え込む。

あの後、千冬に自分とISの今後の処置が告げられた。

自分が回復し、ISの解析が終わった後、性能テストや身体検査を受けてからIS学園に入学させるとの事だった。既に自分の存在は主要国の上層部には知らされており、やはり外部影響を受けないためにもIS学園に入学すべきという声が上がったそうだ。一夏と同じ状況だ。存在の公表は、IS学園入学後に行うらしい。

(僕もISを動かした、何て言ったら一夏驚くだろうな。でも、女子校に男友達がいるってのは少し心強い。)

既に入学が決まっている一夏の事を頭に浮かべながら、靖人はくすりと笑う。まさかまた彼と学生生活を過ごすとは、思ってもいなかった。

(それにしても、まさかあの指輪がISだったなんて・・・。それも母さんが開発に携わった物・・・。)

点滴が外れないように右腕を動かす。普段指輪をはめていた中指を見ながら、母があの指輪を渡してくれた時の事を思い出す。

 

 

「ごめんね。お父さんもいないのに旅行なんて行っちゃって・・・。」

椿は靴を履きながら、自分に向かって謝罪してきた。大学教授である父、神谷晃二(かみやこうじ)は、先週急な用事が入り、今はイタリアに出張中である。その言葉を聞き、靖人は笑いながら答える。

「気にしないで。家の事なら大抵できるし、折角の機会だから羽を伸ばしてくるといいよ。」

父と母が家にいないというケースは今に始まった事ではない。だが、両親が人の為に世界中で働いている姿は、靖人にとって憧れだった。自分のせいで余計な迷惑はかけたくない。

靖人の気遣いを悟り、椿は苦笑する。

「実の息子に言われるなんてね・・・。」

その後、靖人の方を向いた椿が何かを差し出す。靖人が疑問に思いながら受けとると、銀色の指輪であった。

「これは?」

「私がいない間預かっていて。とても大切な物だから無くさないでね?」

結婚指輪だろうか。だが、母に以前見せてもらった結婚指輪とはデザインが違った。ではこれは何なのだろう・・・。

「それじゃ、行ってくるわね。」

椿がドアを開く。靖人が「行ってらっしゃい」と言うと、椿は笑いながら外へ出た。

 

―それが最後に見た母の姿だった。

 

5日後、椿の訃報が届いた。晃二が海外から急遽帰国し、親子揃って葬儀の準備に追われた。

葬儀は親族の他、椿の研究者仲間や同級生が大勢来た。遺体の損傷が激しかったらしく、棺の中は空だった。

あまりにも突然の出来事に、靖人の頭は混乱していた。何とか現実を受け止め、以前と変わらぬ生活を送れるようになったのはその年の暮れの頃だった。

 

 

この時から靖人はあの指輪をつけるようになった。母が最後に遺してくれた、銀色の指輪。それがまさか、待機形態のISだとは夢にも思わなかった。

 

 

何故母は指輪を、ISを僕に託したのか。

何故自分は襲われたのか。

何故自分はISを機動できたのか。

様々な疑問が頭の中で渦巻いている。

全然分からない。何故このような事が起こったのか。

だけど、いつか―

 

 

「分かる時がくるのかな?」

ひとしきり考え事をした後、靖人はひとりごちた。

今は眠ろう。今日は色々あった。また明日から、少しずつ知っていけばいい。

治療室のベッドの柔らかい感触に身を委ね、靖人は眠りについた。

 

 

神谷靖人を保護してから約半日後、千冬は再び本部のメインルームにいた。例のISの解析が終了したのだ。

モニターにISの詳細を表す文字列が並ぶ。

「名称、『強化外装・七一式:不知火(しらぬい)』。型式から恐らく『強化外装・六一式:打鉄』の後継機にあたると考えられます。完成時期は約3年前、第2世代後期。専属国家は日本。製造場所は倉持技研第4研究所のようです。既に神谷靖人を対象に初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)が行われています。」

職員が読み上げるISの概略を聞き、千冬は腕を組む。倉持技研第4研究所は、神谷椿を始め、事故で死亡した研究者たちが当時所属していた所だ。これで彼女たちが、このIS、不知火を開発したという事実が裏付けられた。

「第4研究所所長に連絡を取れ。研究記録のデータ内にこのISの記録があるか調べさせろ。」

梶原が近くの職員に指令を下す。本来ISの開発や性能テストが行われた際、その詳細を研究所は記録として残す義務がある。その記録を見れば、このISの詳しい経緯が分かるかもしれない。

問題はこのISが3年前に開発されたのにも関わらず、存在が公開されていなかった事だ。例え開発者が全員死亡していたとしても、通常のISなら研究所が存在を認知し、政府に報告しているはずだ。それがなかったという事は・・・。予想される答えを千冬は呟く。

「機密裏に開発された機体・・・試作機である可能性が高いですね。」

ISを開発するにはISコアが必要になる。この世に存在するISコアは合計467基。多くは量産機として配備されているが、一部のコアは研究機関によって新装備や新システムを搭載した試作機として開発される。不知火も、そのうちの1つだと考えられる。

梶原がモニター全体に目を通してから口を開く。

「・・・性能を見る限り、中々の機体だな。全身装甲(フルスキン)による高い防御力と砲撃戦向けの武装。支援機としての運用が想定されているのか。」

映像でも確認したが、このISは体全体を装甲で覆うタイプの機体だった(正確には頭部は露出しているが)。本来ISには『シールドバリア』という不可視のエネルギーフィールドによって操縦者の身を守っている。更に『絶対防御』という、操縦者が死亡する事がないようにあらゆる攻撃から身を守る能力も備わっているため、操縦者の体全てを装甲で覆う必要がない。現在は肩や腰など、間接部には装甲を付けず、運動性を重視する傾向が強い。

それでもこのISに全身装甲が採用されているのは、かの打鉄の防御システムを開発した神谷博士の存在だろう。彼女は「操縦者の安全」を第一に考える人物だった。

梶原の感想に、千冬が同意する。

「ええ、性能はかなり高いようですね。特に防御力・・・これは現在の新型に匹敵、下手をすればそれを上回る物です。」

千冬はもう一度スペックを確認する。この機体には、打鉄と同じ「防御シールド高速修復システム」に加え、装甲表面にエネルギーフィールドを展開し、防御性能を底上げするシステムが搭載されているようだ。恐らくこのシステムも、神谷椿によって作られたのだろう。

「先程、既に神谷靖人で最適化されていると言ったな。何故男子である彼が操縦できたのか判明したか?」

梶原が職員にもう1つの問題を聞く。ISはパイロットの身体能力に同調し形状や装備を変化させる、所謂『最適化』と呼ばれる能力がある。(因みに量産機は特定の人物が搭乗するわけではないので、最適化システムがOFFになっている。尚、初期化は最適化を行う前の下準備である。)既に最適化が行われたという事は、不知火の操縦者は神谷靖人に固定されたとなる。では何故不知火は男である靖人を操縦者と認めたのか?

梶原の問いに対し職員は首を横に振る。

「残念ながら特に他のISと変わったような点はありませんでした。コアのシステムには何かあるかもしれませんが、そこまでくると篠ノ之博士でない限り解析不能です。」

「むぅ・・・。」

ISコアの詳細は未だに不明であり、開発、解析が可能なのはこの世でただ一人、制作者の篠ノ之束のみである。

梶原が若干悔しそうな表情を浮かべる。織斑一夏の時も、彼がISを操作できた理由は分からず仕舞いだった。

ほぼ同時期に現れた、二人の男性操縦者。何故彼らはISを動かせるのか。神のイタズラのごとき出来事に、梶原は頭を抱えた。

「・・・・・・・・。」

千冬はモニターを凝視し、不知火のデータを何度も読み返す。何かが引っ掛かる。突如現れた試作機。開発者の事故死。二人目の男性操縦者。何かこのISには、何かが隠されているかもしれない。

(本当にただの試作機なのだろうか?)

千冬の胸中に、形容しがたい不安が広がっていった。




神谷 椿(カミヤ ツバキ)
靖人の母で、優秀なIS研究者。「ISは人を守るもの」という考えを持ち、打鉄の防御システムを作り上げた。
しかし3年前に旅行中に搭乗していた自動車が崖から転落、帰らぬ人になった。享年41歳。
明るく、活発的な性格。音楽が好きで学生時代吹奏楽部に所属していた。

神谷 晃二(カミヤ コウジ)
靖人の父である大学の教授。専門はロボット工学、現在はAIによる自動制御ロボットの開発に携わっている。椿とは大学で同じ研究室であり、その頃からの付き合い。年齢は47歳。
無口で無愛想だが、家族を大事に思っている。出張が続いてしまうのを申し訳なく思っている。

お父さんは名前しか出てませんけど、出番は考えてあります。多分皆さんが忘れた頃にですけど・・・(笑)
不知火のスペックは次回。字数が大幅に増えたなぁ。
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