INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~ 作:Mr. P.C.
第1話:再会
の花びらが舞う4月。多くの学生や社会人が、新年度のスタートを切る。特に高校に入学した少年少女は、期待と緊張に胸を踊らせているだろう。そんな喜びに包まれた環境下で、一人苦悶の表情を浮かべる者がいた・・・。
(これは・・・想像以上にキツい・・・。)
IS操縦者育成施設、『IS学園』。1年1組の教室に『世界で唯一ISを使える男』こと織斑一夏はいた。ISは本来女性しか使えないため、IS学園は女子校である。そんな女子だらけの環境に男である自分がたった1人。勿論生徒たちの注目は一夏に集まる。
(ってか何で席が中央+最前列なんだ!?一番注目される席じゃないか!しかも・・・。)
先程ちらりと確認したが、一夏の後ろの席には誰も座っていないのだ。ぽっかりとスペースが空いているせいで、余計に姿が見られやすくなってしまっている。
(何で後ろの席の奴いないんだよ・・・華の高校生活初日を欠席するとか最悪のスタートじゃないか!)
自分以外のクラスメート、総勢28人の視線を背中に感じて平成を保てないせいか、謎の心配事をする一夏。
やがて教室に、眼鏡をかけた小柄な女性が入ってきた。・・・先生?だろうか。
「皆さん、おはようございます。1年1組副担任の
やや大きめの眼鏡をかけ直しながら、先生が挨拶する。しかし、生徒からは何の反応もない。うろたえる山田先生が可哀想で、反応してあげたくなった一夏だが、これ以上注目されるのを恐れて黙秘を続けた。
「え、えっと・・・じゃあ自己紹介をお願いします。その・・・出席番号順で。」
山田先生の提案で、自己紹介が始まる。そういえば『ヤマダマヤ』って回文じゃないか、と一夏はどうでもいい発見をする。
(ってか、入学初日にいきなり通常日程ってすごいよな。)
ISに関する授業が多いため、IS学園では入学式が学園長の講話(しかも数分)のみであり、続いて現在行われているSHR、その後はいきなり授業が始まる。中々思いきった事をする学校、という印象を受けた。
(流石に入学式を数分で終わらせるのは薄情かもしれないけど、中学の時みたいに退屈な話を聞くよりはましか。冬とかだと体育館冷えるし・・・。)
「・・・君。織斑一夏君!」
中学校の話好きな校長の顔を思い出していた所で、急に大声で名前を呼ばれた。思わず「は、はいっ!?」と素っ頓狂な声を上げてしまう。クスクスという笑い声が後ろから聞こえ、一夏は恥ずかしい思いをする。
「お、驚かしてごめんね!で、でも出席番号順で次自己紹介するの織斑君の番なんだよね!だから・・・!」
「わ・・・分かりました!分かりましたので落ち着いてください!」
しどろもどろになる山田先生をなだめ、一夏はクラスメートの方を向く。瞬間、クラス全員の期待のこもった目が一夏に向けられた。
(やべぇ・・・何言えば良いんだ!?前の人の自己紹介聞いておけばよかった!)
先人の言葉は大切にすべきだと、一夏は改めて認識する(何か違う気がするが)。
何故自分がこんな目にあわなくてはならないのか。事の発端を回想する。
去年発生したカンニング事件で、複数の高校の受験会場がある私立大学(監視カメラ完備)になる。
↓
そのうちの1校、『私立藍越学園』の入試を受けにいくも、大学内で迷子になる。
↓
適当に入った部屋にISが置いてあった。(後にIS学園の試験会場だった事が判明。)
↓
興味本意で触ったら何故かISが起動。
↓
なんやかんやあってIS学園に強制入学。
(・・・よし、去年カンニングした奴を末代まで恨もう・・・じゃなくて自己紹介!)
一夏は心の中で頭を抱える。もう何も浮かばない。もうこうなったら勢いに任せてしまえ!
「織斑一夏です!よろしくお願いします!」
頭を下げて、上げる。待ち受けていたのは「もっと他にないの?」という視線だった。
(だ・・・駄目か・・・!いかん、何かネタはないのか!)
窮地に立たされた一夏は窓側の席・・・偶然再会した幼馴染み、
(箒ぃぃぃぃ!?それが6年ぶりに再会した幼馴染みに対する態度かよ!)
最後の望みも絶たれ、まさに絶体絶命の一夏はやけになった。
「以上です!」
一夏の強引な終わり方に、クラス全体がずっこける。同時に、一夏の後頭部に(物理的な)衝撃が走った。
「いっ!!?」
一夏が頭を押さえながら振り向くと、そこに立っていたのは・・・。
「げっ!関羽!」
叫ぶと同時に再度伝わる衝撃。
「誰が三國志の英雄だ、馬鹿者。」
かつて劉備に仕えた名将のごとき威厳を放ち、一夏を二度も叩いたのは一夏の実姉、織斑千冬であった。
「あ、織斑先生。良かった、SHRに間に合いましたね。例の件は終わりましたか?」
「山田先生、遅れてすまなかった。手続きに多少不備があってな、それの対処に追われていた。」
ISに携わる者なら誰もが知っている、第1回モンド・グロッソ覇者、織斑千冬。英雄の登場にクラスが沸いた。
「キャー!本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様のためなら死ねます!」
千冬の出席簿攻撃で沈んだ一夏に、大音量の黄色い声援が追い討ちをかける。
「全く・・・毎年毎年やけに騒ぐ馬鹿者ばかり集まるな・・・。」
愚痴をこぼしながら千冬は教壇に移動し、声援を沈めるため手を叩く。
「諸君、担任の織斑千冬だ。これから1年よろしく頼む。」
(千冬姉が・・・担任?IS学園で教師をしてたなんて聞いてないぞ!)
何とか復活した一夏が突然の姉の担任宣言に驚く。千冬は言葉を続ける。
「さて、自己紹介の最中に申し訳ないが、連絡事項がある。・・・実はこの1年1組にはもう一人、君たちと共に過ごす仲間がいる。」
千冬の言葉にクラスがざわめく。その『もう一人』とは、もしかしなくても一夏の後ろの空いている席の人物だろう。
(なんだ、遅刻だったか。)
と、一夏はずれた結論を出す。
「静粛に。では、紹介しよう。・・・入れ。」
教室が静寂に包まれたと同時に、教室の扉が開く。
一夏を始め、クラスメート全員がどんな人物が入ってくるか楽しみにしていた。
・・・が、彼らの表情が一瞬で固まる。
何故なら、教室には一夏と同じIS学園の制服を着こんだ『男子』が入ってきたからだ。
そして一夏はその人物を良く知っていた。
「えっと・・・神谷靖人です。この度二人目の男性IS操縦者として、IS学園に入学しました。1年間よろしくお願いします。」
靖人が丁寧にお辞儀をする。あまりにも予想外の出来事に静まり返った1年1組だが、次の瞬間先程よりも大きな絶叫が響いた。
「ふ、二人目の男子ぃぃぃぃ!?」
「嘘っ!夢じゃないよねこれ!?」
「男子がもう一人・・・!我が世の春が来たぁぁぁぁ!!」
女子がギャアギャア叫ぶなか、突然中学の同級生が現れた事に放心する一夏。
「や・・・靖人?何でここに・・・?」
「あ・・・あはは。久しぶりだね、一夏・・・。」
女子のソニックブームに耳を押さえていた靖人は一夏に向けて乾いた笑いを向ける。未だに混乱が続く1年1組だったが、千冬の「静かにしろっ!」という叱責で静まり返る。
「織斑一夏の存在が認められた後、世界中で他の男性適合者の捜索が行われ、2人目の存在は確認されなかった事は諸君らの耳に新しいだろう。しかしこの神谷靖人は、特別な条件下においてISが使用できる事が判明し、2人目の男性適合者としてIS学園の一員となった。歓迎するように。」
千冬の言葉に全体が頷く。千冬は靖人に席に着くように促し、靖人は空いていた一夏の後ろの席に座った。
「これで1年1組が全員揃ったな。よし、自己紹介を再開しろ。」
千冬の一声で一夏の次の生徒が立ち上がる。
こうして、織斑一夏と神谷靖人、二人の男子のIS学園での生活が始まった。
女子約30人が叫んだら相等うるさいでしょうね。私の記憶では3人位でもかなりうるさかった記憶が・・・。女性の方すいません。