INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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やっとこさIS10巻買いました。ウキウキして読んでいたんですが・・・読み終わって「やっちまった」って思いました。今は語りません。後々分かっていくと思います。


第2話:安堵と失態

「いやー驚いたな。まさかこんな所で靖人に会うなんて。」

「僕もだよ。一夏に続いてIS学園に入学するなんて夢にも思わなかった。」

1時間目の『IS基礎理論』の授業が終わった後の休み時間。約1ヶ月半ぶりに再会した二人は喜びを分かち合っていた。

「本当に嬉しいぜ。このまま俺だけでここで3年間過ごすとか、俺の身が持たねぇって思ってたからさ~。」

一夏が大きく息をはく。

「そうだね。僕も一夏がいると心強いよ。でも・・・。」

靖人がちらりと周りを見る。二人の周りには、此方の事を興味深そうに伺う女子たちがある程度の距離を取りながら包囲網を作っていた。更に廊下には、男子生徒の噂を聞きつけた他のクラスの女子たちが教室を覗き込んでいた。

「・・・やっぱり落ち着けないね。」

靖人が一夏の方に向き直して苦笑する。

「確かにな・・・。俺たちは見せ物かよ・・・。」

ウーパールーパーじゃあるまいし、と一夏が続ける。女子たちの方からは、

「あんた話しかけてきなさいよ。」

「えぇっ、恥ずかしいよぉっ。」

「あの二人、仲良く話してるけど友達なのかな?」

「どっちが責めでどっちが受けかな?グヘヘ」

・・・など、二人に話しかけるかかけまいか相談している声や二人を観察する声が聞こえた(中には謎の黒いオーラを纏った言葉も含まれていた)。そんな女子たちの状況を見て、二人揃ってため息をついた時だった。

「ちょっといいか?」

「「え?」」

突然話しかけられた。周りの女子たちがざわめいている。

話しかけてきたのは、ポニーテールの長身の女子だった。靖人は面識が無かったが、一夏は彼女の事を良く知っていたようだ。

「箒・・・。」

一夏がポツリと呟く。靖人は以前一夏には箒という名の幼馴染みがいた事を話していたのを思い出した。

(そうか、篠ノ之さんが一夏の幼馴染みだったのか。)

靖人が納得する。自己紹介の時、『篠ノ之箒』という彼女の名前が珍しくて記憶に残っていた。・・・まぁ、『篠ノ之』という名字が、ある意味大きかったのだが。

「神谷、だったか?一夏を借りたいのだが。」

箒が靖人に問いかける。一夏が「大丈夫か?」という目線を送ってきた。

「構わないよ篠ノ之さん。一夏、行ってあげなよ。」

靖人は二人に笑いかける。箒は「すまない。」と軽く一礼して、すたすたと廊下に歩いていった。一夏も「悪いな。」とジェスチャーを送って、箒の後を追った。

一瞬箒が怪訝そうな顔をしたが、気のせいだろうか?

(・・・さて。)

一夏が退室し、教室内の男子は靖人ただ一人。先程箒が思い切って一夏を連れ出したため、後に続けと言わんばかりに女子たちの作戦会議が活発になる。靖人は背中がむず痒くなる。

(やっぱり落ち着かないな、この環境・・・。)

気を紛らわすために、靖人は机から本を取り出す。先日買った小説の新刊だ(あの襲撃の時に一度紛失したが、それを聞いた機関の方が発注してプレゼントしてくれた)。こういった時は、何かに集中した方が良い。

先程の何処か落ち着かない素振りから一変、真剣な表情で読書をする靖人の姿を見て、女子たちは話しかけるのを躊躇ってしまう。

「・・・靖人君ってさぁ、結構頭良さそうだよね…。」

「眼鏡掛けてるしね・・・。何か本読んでる姿が様になってる・・・。」

「ただのおとなしいタイプかと思ったらインテリ属性も備えてたか・・・。今年の夏コミのネタに使えるかも・・・。」

女子たちの内緒話は、もう靖人の耳には届いてなかった。

 

「ここなら良いだろう。」

一階の廊下を曲がった所で、箒は立ち止まった。教室の近くだと周りの目線が気になってしまうのだろう。今一夏と箒の周りには誰もいない。

(・・・いや、多分廊下の角で聞き耳立ててるんだろうな皆。)

一夏は何となく感じる人の気配から予想する。

「・・・一夏。」

ぼそり、と箒が俯きながら呟く。

「その・・・だな・・・。」

何だか箒の歯切れが悪い。自分が何かしただろうか?一夏は疑問に思った。それより、一体何の用だろう。

「ひ・・・久しぶり・・・だな。」

箒が顔を上げて言う。何だ、再開の挨拶か。一夏が箒の顔を見て返す。

「おう、久しぶり。6年ぶりだな。」

その言葉を聞き、箒がやっと微笑む。良かった、全然笑わないからてっきり不機嫌なのかと思っていた。

「にしても箒に会えるとはな。靖人の件もあったし、世間は狭いなぁ。」

一夏が感慨に耽っていると、箒がそうだ、と声をあげた。

「あの男とは面識があるのか?やけに親しく話していたが。」

箒が靖人の事について聞いてきた。そういえば箒は靖人の事を知らなかったな、と一夏は思い出す。

「中学の頃の友達だよ。まさかアイツもIS学園に来るとは思ってなかったんだ。」

「ほう・・・。」

面識のある人物がいるというのはとても嬉しい。この学校には理不尽な理由で来たのであまり乗り気では無かったが、結果的に友人に会えたのだ。こんなに嬉しい事はない。

「顔見知りがいるってのは気が楽になるな。・・・これからよろしくな、箒。」

そう言って箒に笑いかけると、箒は「う・・・うむ。」と小さく返してまた俯いてしまった。あれ?

「っと、そろそろ授業だな。戻ろうぜ。」

「わ、分かっている!」

一夏が教室に戻るよう促すと、箒は速足で歩き出してしまった。

(あれ?箒また不機嫌になったのか?何で?)

箒の後に続く一夏は、彼女の顔が赤らんでいた事に気づかなかった。

 

「・・・であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ・・・。」

2時間目の授業。山田先生がすらすらと教科書を読んでいる。千冬は教室の入口付近で授業の様子を眺めていた。靖人は彼女の発言と教科書の内容から要点をまとめ、ノートに記していく。

(この範囲は事前学習で使った参考書にも書いてあったな。やっぱり予習をしておくと頭に入りやすい。)

ノートへの記述が済み、一度ペンを置く。視線を上げた靖人は、前に座る友人の異変に気づく。

一夏が頭を抱えているのだ。顔が見えないため確証は無いが、恐らく先生の説明を理解していないのだろう。

(・・・?一夏もIS学園に入学が決まった時に、この参考書を貰ったんじゃ?もしかして、事前学習をやってこなかったのかな・・・。)

少なくとも中学時代の一夏は、ちゃんと勉強ができる方だった筈だ。入学までの期間も加味して考えても、いくら遅くても今回の範囲位は予習できると思うが・・・。

山田先生も一夏の異変に気づいたようで、一夏に声をかける。

「織斑君、何か分からない所がありますか?」

一夏が「いや、その・・・。」と口ごもる。

「分からない事があったら遠慮せずに聞いてくださいね?私は先生ですから!」

山田先生がやる気に満ちた声で言う。

(山田先生ってSHRの時はオドオドしてたけど、授業の時はしっかりしてるなぁ・・・。)

靖人は山田先生の頼れる姿に感嘆した。一夏も先生の言葉を聞いて安心したのだろう。びしっと手を挙げて質問を始めた。

「先生!」

「はい、織斑君!」

 

 

「ほとんど何も分かりません!」

 

 

・・・え?

一夏の発言にクラスの空気が凍る。

「ぜ・・・全部ですか・・・?」

山田先生が弱々しく聞き返す。先程の頼れる先生の姿は消え去っていた。

(一夏・・・?本当に事前学習しなかったの・・・?)

あれだろうか、これから始まる高校生活に浮かれて遊び呆けていたのか?いや、世間を騒がしてる彼にはそんな事できる筈が無いが・・・。

靖人を含め、全員の頭が混乱している中、千冬が一夏に聞いた。

「織斑、入学前の参考書はどうした?」

「え・・・えっとですね・・・。」

千冬の言葉に焦りを見せる一夏。何かあったに違いない。

「参考書はどうした?」

もう一度千冬が聞く。次の瞬間、一夏の口から衝撃の事実が告げられた。

 

 

「・・・古い電話帳と間違えて捨ててしまいました。」

一夏が言い終わるや否や千冬が出席簿で一夏の頭を叩いた。実の弟だからだろうか、容赦がない。

(でも先生、下手すると体罰問題になりますよこれ・・・。)

靖人は少し前に教師の生徒に対する体罰問題がニュースで報じられていたのを思い出す。

「後で再発行してやるから1週間以内に覚えろ。いいな?」

千冬が極刑を下した。

「え、あの・・・あの分厚さで1週間は・・・。」

一夏がひきつった笑いを浮かべる。確かにあの参考書を1週間で覚えるのは至難の技だ。クラスの誰もがそう思っていた。

「神谷は1週間もしないうちに参考書の内容を全て理解したぞ。」

千冬が殺し文句を言ってきた。

(って先生。どうして僕の名前を出すんですか。)

確かに5日位で全ページの内容覚えましたけど。その後は暇潰しに何度も読み直したりしましたけど。

千冬の発言に教室がざわめく。一夏が「ちょっと待ってくれ!」と立ち上がって反論する。

「靖人の頭の良さは知ってるだろ千冬姉!こいつは『明心高校』に合格するほどの」

「織斑先生と呼べ。」

一夏が言い終わる前に千冬のフルスイングの出席簿攻撃が一夏の頭を捉えた。乾いた音が教室に木霊する。威力はかなりの物のようだ。

(って一夏も余計な事言わないで。)

日本の高校生で日本トップクラスの進学校、明心高校の名を知らない者はいない。クラスメートがひそひそ話す声(恐らく声の主は日本出身の生徒たち)がより大きくなったのを感じた。

「神谷も貴様と同じ人間だ。不可能ではない。やれ。」

千冬の目に慈悲は無かった。冷徹な、強者の目。靖人にとってこの光景はまるで我が子を千尋の谷に突き落とす獅子のように見えた。

「はい・・・先生・・・。」

激痛で机に突っ伏す一夏から、情けない声が漏れる。

(放課後とか空いてる時間に、一夏に要点を教えてあげよう・・・。)

目の前の可哀想な友人に靖人は同情の視線を送った。




靖人頭良くし過ぎたな・・・。もう少し現実的な頭にするべきでした。まぁでも、あまり使わない設定だから良いか・・・な?
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