INFINITE STRATOS ~業火の腕で掴むもの~   作:Mr. P.C.

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文字数が普段の倍ですね。途中で切ろうかと思いましたが、そのまま投稿します。


第3話:衝突

一夏の爆弾発言で荒れた2時間目も終わり、休み時間になった。一夏は授業が終わった瞬間机に突っ伏し、負のオーラを撒き散らしていた。

「あ~全然分かんねぇ~・・・。どうすりゃ良いんだよ・・・。」

いや、参考書を捨ててしまった君が悪いだろう、という台詞を飲み込み、靖人は一夏に助け船を出す。

「良かったらさ、休み時間とか教えてあげようか?なんだったら、僕の予習ノート貸しても良いけど・・・。」

「マジで!!?」

一夏ががばりと起き上がる。

靖人のノートは分かりやすくまとめられており、しかも要点をきちんと押さえているため、中学校ではかなりの評判だった。テスト前にはよく授業を寝ていた生徒がこぞって見せてもらおうとし、靖人の席に長い行列が出来ていた。・・・が、あまりにも見に来る人が多すぎてある時を境に靖人は人にノートを全く見せなくなってしまった。本人曰く「皆僕に頼ってばかりで自分から勉強しようとしていない。それじゃダメだ!」との事。お前は先生かよ。

そんな激レアな強アイテムを、自分に授けてくれるだと!

「ありがとう靖人!俺頑張って1週間で覚えるわ!」

一夏に両手をがっちりと捕まれ、キラキラした視線を向けられた靖人は若干引いていた(そして数人の生徒が「一×靖ゥゥゥゥゥゥ!!!!!」と訳の分からない奇声を発していた)。

そこへ―

 

 

「ちょっとよろしくて?」

金髪の女子が声をかけてきた。顔立ちを見る限り、西洋の出身のようだ。

「へ?」

一夏が間抜けな声をあげる。

「何か用かな?」

靖人が返答すると、彼女はわざとらしく声をあげた。

「まあ!何ですのそのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

その言葉を聞いた瞬間、一夏と靖人は彼女が『そういう』女子である事を悟った。

 

 

ISがこの世に出てから、ISを扱える女性は優遇されるようになった。一昔前は『男尊女卑』の世界だったため、この変化は社会的に良いものだったかもしれない。

しかし、ISが国家の軍事力として使用されるようになると、『ISが使える=偉い→女性=偉い』という風潮が起こってしまう。今までに男性という理由だけで奴隷のように扱う者が現れたり、トラブルがあった際落ち度の無い男性の方が悪者扱いされてしまうなどの事例があった。

こういった『女尊男卑』の考えを持つ女性は少なくない。目の前の彼女もそうなのだろう。

 

 

「悪いな。俺、君が誰だか知らないし。」

あまりにもストレートな一夏の言葉に、靖人は相手の神経を逆撫でしてしまったのではないかと肝を冷やす。しかし靖人自信も、彼女の名前はまだ覚えていなかった。・・・確か自己紹介が長ったらしくて千冬に止められていた気が・・・。

「わたくしを知らないですって?イギリスの代表候補生にして入試首席のこのわたくし、セシリア・オルコットを?」

明らかに此方を見下した雰囲気で彼女・・・セシリアが続ける。

(・・・はっきり言って入試首席はどうでもいいけど、代表候補生か・・・。かなり厄介な人に絡まれたな。)

参考書に書かれていた代表候補生についての説明を思い出しながら、靖人はセシリアを見ていた。

「なぁ、質問いいか?」

「よろしくてよ。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。」

一夏の問いにセシリアが腰に手をあてながら答える。今の言動といい、言葉使いといい、彼女はかなりの名家の出身のようだ。

「代表候補生って何だ?」

瞬間、靖人とセシリア、その他数名の女子がずっこける。

「あ・・・あなたっ、本気でおっしゃってますの!?」

「おう、知らん。」

思えば参考書を捨てて読んでないから当然か。靖人は机から一冊の教科書を取り出すと、一夏に突きつける。

「・・・37ページ13行目から、黙読。」

一夏が教科書を受け取り、靖人が指示したページを開き読み始めた。一方セシリアは頭を抱えながら、「信じられませんわ・・・。」などぶつぶつと何か言い出してた。

 

 

代表候補生とは、国家代表IS操縦者の候補となる、優れたIS操縦者の事である。国家代表になるとIS操縦者にとって憧れの舞台、IS世界大会『モンド・グロッソ』に出場する事ができる。・・・まぁ簡単に言えば、将来のオリンピック候補の若手アスリートと同じようなものだ。

 

 

「ふーん、つまりIS界のエリートって事か。」

説明を一段落読んだ一夏が感心しながら頷く。

「そう!エリートなのですわ!」

一夏の一言に、先程まで呆れていたセシリアが誇らしそうな声を発する。

(この人、おだてに乗りやすいタイプだなぁ。)

冷静にセシリアの性格を分析する靖人。セシリアは二人にびしっと人差し指を向け、更に自慢を続ける。

「あなた方はとても幸運ですわ。何せ、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートであるわたくしと同じクラスなのですから。ISの事について分からない事があれば、泣いて頼んでくるなら教えてあげますわ。」

セシリアのあまりにも尊大な態度に靖人は密かに眉をひそめる。

「ん?入試ってIS動かして戦ったあれか?」

再度一夏が質問した。「それ以外に何がありますの。」とセシリアが毒づいた後に、一夏が口を開く。

「俺も教官倒したぞ?」

「「・・・え?」」

セシリアと靖人が驚きで目を見開く。IS学園の教師陣は国家が保有するIS兵たちと同等の実力を持っている。それを倒したという事は・・・。

「つっても、向こうがいきなり突っ込んできて、避けたら勝手に壁に激突して戦闘不能になっただけなんだけど。」

「いや、それ倒したって言えないよね。」

一夏が真相を語り、靖人が突っ込む。冷静に考えてみれば、ISを動かしたばかりの素人が、教官を倒せるわけないのは一目瞭然である。

苦笑を浮かべながら靖人はセシリアの方を向く。・・・怒りに身を震わせている彼女がそこにいた。

「わたくしだけと聞きましたが・・・わたくしだけではないのですか・・・?」

(あ、これ聞こえてないな。)

どうやら一夏の一言はセシリアのプライドを傷つけたようだ。何だろう、テストで良い点数をとって満足していたら、友達がもっと高い点数をとっていたのを知った時と同じ感情だろうか。

「女子の中では、ってオチなんじゃないか?」

更に追い討ちをかける一夏。

やめて、セシリアのライフはもうゼロよ。

プライドに傷をつけられたセシリアが机を思いっきり叩いた。

「あなたも教官を倒したと言うの!?」

「うん、まあ多分・・・。」

一夏の曖昧な返事に、セシリアの怒りがヒートアップする。

「『多分』!?多分とはどういう意味かしら!?それにそこのあなた!」

「ぼ、僕っ!?」

あろうことかセシリアの怒りの矛先が靖人に向いた。

「まさかあなたも、教官を倒したなどと抜かしませんよね!?」

セシリアが靖人を睨み付ける。この状況では何を言っても火に油を注ぎそうだ。というより、そもそも・・・。

「ぼ、僕は・・・入試すら受けてないからね・・・。」

IS学園の入試では、戦闘を通じてISとの適正を簡易的に測るものらしい。だが靖人は不知火以外のISは動かせないし、性能テストを通じて入試に必要な物以上のデータをとっていたため、入試を受ける必要が無かったのだ。

(まぁ入学までの訓練で小隊の人と何度か模擬戦したけれど、1回も勝てなかったな。)

その事を伝えようとした靖人だったが、それよりも早くセシリアが激昂した。

「入試を受けてないですって!?ふざけるのも大概にしなさい!」

(いや、事実なんだけど・・・。)

怒り狂うセシリアに一夏が「お・・・落ち着けよ・・・。」となだめるが、セシリアは聞く耳を持っていなかった。

「これが落ち着いていられますか!第一・・・」

と、セシリアが言いかけた所で3時間目の授業開始のチャイムが鳴った。

「っ・・・!また後で来ますわ!逃げたら承知しませんわ!」

そう言い残しセシリアが席に戻る。嵐が去り、二人は大きなため息をついた。

 

 

「今回は実践で使用する各種装備の特性について説明する。・・・が、その前に君たちの中からクラス代表者を1人決めたい。」

教卓に立った千冬が教室を見回す。一人の生徒が、千冬にクラス代表者とは何なのか質問をした。

「クラス代表者とは、俗に言う委員長の事だな。生徒会が開く会議や委員会に出席してもらい、行事の際はリーダーとしてクラスをまとめてもらう。だが・・・。」

千冬が教卓の端末を操作すると、教室前方に空中ディスプレイが出現する。そして、IS学園の生徒がISを装着し対戦する様子が映像で流れた。

「このように、代表者には年に何度か行われる『クラス対抗戦』に参加し、他のクラスの代表者と試合をしてもらう。」

千冬の説明が終わるとクラス全体がざわざわと色めき立つ。さすがはIS操縦者育成機関だな、と靖人は納得する。

「さて、誰か立候補する者はいないか?もしくは他者を推薦してくれても構わないが。」

千冬の問いかけに数人の生徒が勢いよく手を挙げる。その意欲的な姿に、一夏は感心していた・・・が、違った。

「はいっ!織斑君を推薦します!」

「私も!」

「お、俺っ!?」

いきなり推薦された一夏が思わず立ち上がる。しかし、事態は更に面倒な方向に進んでいった。

「私は神谷君に1票!」

「同じく!」

「えぇっ!?」

靖人も推薦され、驚愕の声をあげつつ一夏同様に立ち上がった。男子のIS操縦者であるからだろうか、2人はクラスメートから謎の期待を背負わされてしまった。

「2人とも邪魔だ、座れ。他薦された以上拒否は許さん。」

千冬が二人を注意する。それでも反論しようとした一夏を靖人が制し、着席する。

「さて、他に誰かいるか?いないのならこの2人のどちらかに代表になってもらう。」

肯定の意を表しているのだろうか、クラスの誰も口を開かなかった。

たった1人を除いて・・・。

「納得がいきませんわ!!」

勢いよく立ち上がりながら大声で異議を唱えたのはセシリアだった。

「クラス代表になるためには、それ相応の実力が必要でしょう!?ならば、このわたくしがクラス代表になるのは必然でしょう!」

言い方に難があるが、靖人は彼女の言い分を理解できた。確かにクラスを代表して試合を行うのなら、クラスで一番強い者が代表になるべきだ。とすれば、ISを動かして間もない靖人たちより、代表候補生でもあるセシリアがクラス代表になるべきだろう。

しかし続く彼女の言葉に、靖人は考えを改める事になる。

「それを、ただ物珍しいという理由で極東の猿にされては困ります!このセシリア・オルコットに屈辱を味わえとおっしゃるのですか!?」

此方の事を猿呼ばわり。傲慢な態度をとる彼女に対し、靖人は眉をつり上げた。彼女の暴言ともいえる発言はまだ続いた。

「わたくしはISの修練のためにこのような島国に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ありませんわ!大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはならない事自体、わたくしにとっては―」

「・・・イギリスだって大してお国自慢無いだろ。世界一不味い料理で何年覇者だよ。」

一夏の呟きがセシリアの言葉を遮る。靖人には、それを聞いたセシリアの顔が怒りでみるみる紅潮していくのが見えた。

「あ、あなたねぇ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」

セシリアが机を叩く。

「うるせぇ!さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって!」

一夏が更に強く机を叩き立ち上がる。教室内を険悪な空気が包み込む。

「待ってよ2人共!」

遂には靖人も腰を上げ、2人を制止した。

「邪魔するな靖人!こいつは!」

「落ち着いて一夏!怒りに任せて言い合ったって意味無いだろ!頭を冷やすんだ!」

靖人は一夏を取り敢えず止めてから、セシリアの方を向く。

「・・・確かに、僕たちは弱い。ISの操縦に慣れているオルコットさんの方がクラス代表に相応しいかもしれない。」

「おい靖人!?」

靖人の言葉に一夏が声を荒げる。セシリアは鼻で笑い、勝ち誇った顔をする。

「あら、あなたは随分と物分かりが良いようですね。まぁ、わたくしが代表になるのは当然―」

 

 

そこでセシリアは言葉を詰まらせた。

今の今まで大人しそうな顔をしていた靖人の顔つきが険しくなっていた。

「だけど、僕たちはさておき、日本の事を馬鹿にするのはクラス代表として・・・いや、代表候補生としてどうなのかな?」

「っ―!」

靖人の言葉にセシリアは反論できなかった。

IS学園には世界中から生徒が集まるとはいえ、その半数は日本人である。勿論1年1組も日本人の生徒が一番多い。

先程のセシリアの『このような島国』『文化としても後進的な国』という、日本に対する発言に嫌悪感を抱いた生徒は少なくない。箒に至っては、日本刀のごとき目付きでセシリアを睨み付けていた。

いくら実力があっても、クラスメートから反感を買ってしまってはクラスのリーダーとして成り立たない。

また代表候補生としても今の彼女の発言は問題だ。国を代表するエリートともなると、言葉ひとつひとつの責任が重くなる。もしセシリアが国家代表になってから、今のように怒りに身を任せ罵倒しようものなら、国家間の関係が劣悪になってしまうのは容易に想像がつく。

ふぅっ、と短く息をはき、靖人が言葉を紡ぐ。

「とにかく、2人共頭に血が昇りすぎだよ。1回落ち着いてから―」

「決闘ですわ!」

・・・え?

靖人が2人を落ち着かせようとしていた最中、いきなりセシリアが提案してきた。

「こうなれば正々堂々と勝負して、一番実力がある者が代表になれば良いでしょう!よろしくって!?」

「あ、あの・・・オルコットさん?」

全く落ち着く素振りを見せず、逆にクラスメートの前で虚仮にされた事ですっかり逆上したセシリアはとんでもない提案をしてきた。

(いや、だから代表になるにはIS操縦の実力だけが必要って訳じゃ無いんだってば!ってか決闘って何!?)

靖人は全然話を聞いてくれない彼女に辟易した。

あれだろうか、俗に言う『騎士道精神』ってやつだろうか・・・ってそんな事はどうでもいい。

「いいぜ。受けて立つ。」

「一夏っ!?」

一夏があっさり承諾し、靖人は驚きのあまり振り返る。セシリアは代表候補生だ。自分たちより何倍もの時間、ISを動かしている彼女に勝つのは、至難の技どころか不可能に近い。

「わりぃ靖人。お前の言う通りちょっと冷静さを欠いてた。でもよ、ここまで言われたからには、黙って退くわけにはいかない!」

一夏が真剣な眼差しを靖人に向けた。

あぁそうだ。一夏はかなりの負けず嫌いだった・・・。靖人は一夏の性格を改めて実感した。そして―

「どうやら話がまとまってきたようだな。よし、3人にはクラス代表を決める試合を行ってもらう。異論は無いか?」

今まで口を開かなかった千冬が提案する。

「無いです。」

「ありませんわ。」

一夏とセシリアが闘志を燃やしながら賛同する。

―もう後には退けない。

「・・・分かりました。」

靖人も肯定する。これで、1年1組のクラス代表決定戦の開催が決定した。

「日程や場所等の詳しい内容は決まり次第報告する。候補者は試合に向けて準備するように。それと―」

そこまで言った千冬が、出席簿を持って教壇を降りる。・・・凄く嫌な予感がする。

3発、千冬の出席簿が火を吹き、一夏・靖人・セシリアが悶絶する。

「授業中に大声で騒ぐな馬鹿共。他のクラスに迷惑だろう。」

千冬からありがたい指導を受けた。

(ってか滅茶苦茶痛いんだけど・・・!一夏はこれを何発も食らってたのか・・・!)

一夏の脳細胞は壊れていないだろうか。自分と同じく机に倒れ込んだ前の席の友人を心配する靖人。

「では、授業を始めよう。」

教卓に戻った千冬が教科書を開く。靖人は激痛に耐えながら、ゆっくりと着席した。




次回からオリキャラが出ます。何かと私の趣味が反映されてる娘ですがすいません、生暖かい目で見てください。
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