影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか?   作:ガイドライン

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影が薄いのに何かを求められる。

「どうですか神様は?」

 

「恐らく疲労と寝不足だと思います。寝ていれば大丈夫ですよ」

 

「ありがとうございますシルさん!!」

 

「さすがシル姉です」

 

 

 

 

倒れたヘスティアを『豊穣の女主人』に運び、シルに看病をしてもらった。幸いヘファイストスと一緒にヘスティア・ナイフを作った疲労と徹夜による寝不足が、モンスターを倒したときの安心感により一気に出たようだ。

 

 

 

「トキサキさん、ミア母さんが仕事をしろと」

 

「分かりました。それじゃベルベル、神様をお願いします。

後でご飯でも食べに来てください」

 

「うん」

 

 

 

リューとハジメは一緒に戦場(仕事場)に向かう。シルはベルと一緒にヘスティアを見てくれるようだ。お店を休憩場として使うため代わりにハジメが働くことになった

 

 

 

「トキサキさん、本当にクラネルさん一人であのシルバーバックを倒したのですか?」

 

「そうですよ。僕はベルのサポートしただけですから」

 

 

 

ここに運ばれた時、何があったかと聞かれたためシルバーバックをベルが()()()()()()ことにしたのだ。実際あの場ではベル・ヘスティア・ハジメしか本当の事を知るものはいない。周りからしたらベル一人で倒したように見えている。ならとそう伝えたのだが、

 

 

 

 

「そうですか…でも貴方も冒険者でありクラネルさんの仲間だ。そしてサポーターとしてクラネルさんの役にたったならそれは一人ではない。自分を貶めるのは止めなさい」

 

「…………そう、ですね。きっとこれをベルベルが聞いたら怒りますね」

 

「はい、怒ります」

 

 

 

クスッと笑うリューの顔にジィーと見つめるハジメ。見つめられているリューはその行動に驚きを隠せず

 

 

 

「な、なんですか……」

 

「いえ、笑った表情が可愛いと思いました」

 

「なっ!!!??」

 

 

 

突然の言葉に慌て頬を赤くするリューはハジメに見られないように顔を反らす。そして直ぐに平常心を取り戻すが追撃はまだ続いていた。リューの反応が気になったハジメは真正面に周り()()()()()()()()()()()()()()()

エルフであるリューは心を開かない人に触られたら鉄槌()がお見舞される。これはリューだけではなくエルフ全般を指すのだが、現在はリューを指すがそのリューが()()()()

 

 

 

「熱はありませんね。しかしならどうして顔が赤いのでしょうか??」

 

「そ、それはいいですから、手を離してください……」

 

 

 

弱々しく言うリューに本当に体調が悪いのだろうと思い、素直にリューの言葉通りに動いた。手が離れたことによりホッとするリューだが、何故か物足りなさを感じてしまった。まるでまだハジメに触って貰いたかったような………

 

 

 

「体調が悪いようでしたら休んだほうがいいですよリュー姉」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そうですか、何か出来ることがあればいってください。僕に出来ることならお手伝いします」

 

「そこまでは………」

 

 

 

しなくていいです、と続く言葉があったのだがどういうわけか言葉が詰まった。その時頭に「あんたの手を握れる男が現れたら逃しちゃ駄目よ!」という心に刻まれた亡き知己の言葉が過り、

 

 

 

「…………何でも、出来ることなら、いいんですよね」

 

「はい、どうぞ」

 

 

「…………を……ってくれませんか………」

 

「よく聞こえなかったんですが、もう一度いいですか?」

 

 

 

聞き直したハジメだが言葉を発したリューは少しうつむき表情を隠した。それでも頬が赤くなっているのだけは確認出来た。そしてゆっくりと右手をハジメに向けて付きだし

 

 

 

「…………手を握ってくれませんか?

もしかしたら、その、こんなことを頼んで失礼なのですが、えーと、殴ってしまうかもしれませんが…」

 

「分かりました」

 

 

 

 

少しの躊躇いもなく差し出されたリューの右手を両手で握るハジメ。突然すぎる行動に驚いているリューだと思ったがどうやらそれだけではないようだ。何故か握られた手をじっと見て、その手に力を入れたり緩めたりして何かを確かめているようだ。

 

 

 

「…………本当に、あなたは……

………あなたは、もう少し何を行動するにも考えて行動したほうがいい。

私に殴られるとは考えなかったのですか?」

 

「殴られてもダメージはありませんので。

それにリュー姉は僕にとって()()()()ですから殴られようとも問題ありません」

 

 

 

それがトドメをさした。

ハジメほどではないが表情が変わりにくいリューが完全に顔を真っ赤にさせて、表情もどうしたらいいのか分からないとあたふたしている。もうどうしたらいいのか分からなくなったリューは近くにあったモップを空いている左手で取って

 

 

 

 

「は、は、離して下さい!!!!!」

 

 

 

思いっきモップをハジメの頭にぶつけるリュー。モップはへし折れたが全くダメージを受けていないハジメ。しかし突然のこととリューの言葉に思わず手を離してしまった。その瞬間を逃さずにリューは全速力でその場から駆け出した。

 

一体何が起きたのかと戸惑っているハジメの元へ、厨房から現れたミアが

 

 

 

 

「やってくれたねハジメ」

 

「やはり何かやらかしたのですか??」

 

 

「………いや、むしろ()()()()()()()()というべきだね……

……しかしあのリューがね……こりゃあんたには責任を取ってもらわないとね」

 

「はい、リュー姉の分まで働きます」

 

 

 

その的外れな言葉に呆れるミアだが、すぐに豪快に笑いだしハジメの背中をバシバシと叩いて

 

 

 

「いまはそれぐらいが調度いいかもしれないね‼」

 

「それは、毎日リュー姉の分まで働けということですか?」

 

 

「ハジメがやりたいなら私は止めないよ」

「今日だけにしてください」

 

 

 

本気でやりかねないと悟ったハジメはすぐさま返事をして仕事場に向かう。しかし、

 

 

 

 

「そうだハジメに客だよ。料理を持って接待してきな」

 

「つまり話をしながら料理を注文させろということですね」

 

 

「分かってるじゃないか!!沢山注文させなよ!!!!!」

 

「僕の影の薄さ知ってますよね?」

 

 

 

それでもやり方があるだろう‼とミアに渇を入れられはぁ~とため息をつきながら向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

「こちらのテーブルとなると……ロキ・ファミリアですか……」

 

 

 

料理を運ぶ場所はと探してみるとそこはロキ・ファミリアが座っていた。この前のように大人数ではなく主神であるロキとアイズがいた。相変わらずハイテンションなロキは「お酌してくれんかアイズさん~」と駄々をこねており、アイズはアイズで変わらずドライな対応で話を無視して料理を食べている

そのテーブルの空いている場所に魚料理を置いてみると

 

 

 

「おお!!来たか「ステルス」!!!

ミア~ちょっとコイツ借りていいか~‼」

 

「私に断りいれるならドンドン料理を頼みな!!」

 

 

「今度来たとき子供達に死ぬほど食わせるわ‼」

 

「ならいいよ。しかしあまり時間をかけるんじゃないよ‼」

 

 

 

 

勝手に決められた感はあるがロキ・ファミリアがいると分かった時点で諦めていた。まぁミア母さんから許可も貰ったのでテーブルの席に着くことにした。すると着席を確認したロキがそこへ紙とペンを置いた

 

 

 

「それがないと会話できんからな。

しかし席に座っとるのに本当に見えんとはな」

 

[ですがこちらからしたらじっと見られているので、あまり直視してほしくないのですが]

 

「ええやんか、これからもよう会うんやから」

 

 

 

どういうことだろうと聞こうとしたが先にアイズから話しかけられた

 

 

 

「今日の戦い、おめでとう。」

 

[見ていたんですか?スゴいでしょうベルベルは]

 

 

「うん、戦いはまだまだだけど、いいと思う」

 

[それをベルベルが聞いたら卒倒しますね]

 

 

 

近くにいることだし後で呼びにいこうかな~と考えていると、

 

 

 

「でも私は貴方に興味がある」

 

[はい?]

 

 

 

紙にこれ以上何を書いたらいいのか分からず待っていると

 

 

 

「シルバーバックが何もないところで攻撃していた

そこには貴方がいたはず」

 

[いましたね]

 

「姿は見えないけど恐らく貴方は無傷」

 

[そうですね]

 

 

「私は、その()()を知りたい」

 

[はい?]

 

 

 

何を考えているのか良く分からない。

どうして上級冒険者であるアイズがどうして僕なんかに興味があるのか、ましてや強さを知りたいなんてどういうことなのか……

 

 

 

「そりゃそんな反応するわな。もちろんタダとは言わへん」

 

[と言いますと]

 

 

 

これが僕のダンジョンを攻略する第一歩になるなんて、次の言葉を聞くまでは思いもよらなかった。

 

 

 

「お前のところの主神次第やけど、今度の遠征に参加せんか?」


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