影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか?   作:ガイドライン

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11月ですね。
昨日はハロウィンでしたが、皆さんは仮装されましたか??
はい、特にこれ以上話を広げられませんでした(笑)
それではどうぞ♪


影の薄さよりも僕が変だと思われている。

「ふっ!!」

 

 

 

只今第16階層である。

上層ではモンスターはまるで紙切れかのように、アイズ姉の振るデスペレートに簡単に斬られていた。なので上層から中層までは最速で到達して今に至る

 

 

 

 

「アイズ姉だけでここまで来れましたね。あんなにモンスターがいたのに」

 

「アイズにとっては肩慣らししかならないだろう」

 

「……終わったよ」

 

 

 

ついさっきまで四方を囲んでいたアルミラージの群れがいたのだがあっという間に全滅した。それも苦労というものもなく準備運動をしてきたよ、という感覚しかないのだろう。目の前でこんな戦いを、レベル5の戦いを見たことなかったので本当に「スゴい」としかいいようがない。

 

 

 

 

「しかし………本当に見えていないのだな…

ここまで来たというのにハジメは一度もモンスターに()()()()()()()

それに普通は上層から中層に向かうに連れてモンスターのエンカウントが増えるというのに、減ってきている気がするのだが……これもハジメの影響だというのか??」

 

 

 

 

「だと思いますよ。影が薄いというのはその単体だけではなく周りもその影響がある。と誰かが言ってました」

 

 

「…………なるほど。ではずっといる私達も同じように周りから認識されなくなるのか?」

 

 

「いえ、影響があるだけですから。そうじゃないと神様やベルも誰にも認識されなくなりますよ。」

 

「なるほど、理解した」

 

 

 

 

良かったです、とリヴェリアの前を歩くハジメ。その姿を後ろから眺めるリヴェリアは

 

 

 

 

(そう誰にも認識されない。それはどれくらい辛いことなのか……普通に話せる事が出来ず、目にも止められず、そこにいても気づかずに通りすぎる……冒険者だろうが一人の人間……君にはどれだけの苦しみが………)

 

 

 

いくらスゴいスキルを持っていようが「人が人である」というそれを無くしてしまったら、人はそれを耐えることが出来るのだろうか…………

 

 

 

「どうしましたリヴェリア姉?」

 

「い、いや。何もない。さぁもう少しで18階層だ」

 

 

 

「ねぇハジメ」

 

「なんですかアイズ姉」

 

 

 

「貴方の力を見てみたい」

 

「あぁ、そうですね。ここまでアイズ姉がモンスターを倒してくれましたし、ここからは()()やりましょう」

 

 

 

そういってハジメはアイズとリヴェリアの前に先頭へ出てきた。確かにアイズはハジメの力を見てみたいとは言ったが

 

 

 

「ちょっとまて、いまの発言はハジメが一人で戦うようにしか聞こえない。確かにハジメの力はスゴいだろうがレベル1であることは変わらない。中層であるここで一人で戦うとなると契約違反になる」

 

 

 

契約では勝てそうな時だけ戦闘に参加する。となっている。中層でそれも一人で戦うなんて……無理にも程がある。この中層では上層とは違いモンスターの強さもそうだが数が一気に増えて出現確率も上がっている。アイズ達のようなレベル5ではないかぎりパーティではないと攻略できないのだ

 

 

 

 

「契約違反はいけませんね。でしたら数を減らして貰ったところで僕が戦う、というのはどうでしょうか?」

 

「なるほど、それならまだいいかもしれん。しかし危ないと思ったら強制的に終わらせるからな」

 

 

 

「僕の力を見るためなのに守ってもらっているというのは、なんか矛盾してませんかね?」

 

「気にするな。私も思っているが無茶はさせられん」

 

「それじゃ、あれでいいのかな?」

 

 

 

 

すると目の前に現れたのは先程と同じアルミラージの群れ。それを確認したアイズはゆっくりとデスペレートを抜き一気にアルミラージに近づく。そして近づくだけではなく何故か通りすぎた。立ち止まりデスペレートを鞘に納めた時アルミラージの胴体は切れ、中にあった魔石さえも切られた

 

 

 

 

「スゴいですね。全く見えませんでした」

 

 

 

 

そしてさっきハジメが提案した通りにアルミラージが一匹だけ残っている。そのアルミラージは圧倒的な敵に恐れているようでその場から動けないでいる

 

 

 

 

「さて、あの一匹でも大変だが周りには私達がいる。心配せずに思いっきりやってくれ」

 

「分かりました。それでは折角ですからベルから貰ったこの小刀《石火》の試し切りですね」

 

 

 

 

そういってハジメは石火を抜いた。そしてアルミラージに向けて歩いていく。普通に歩いているがアルミラージにはハジメのことは見えておらず目の前に近づいても気づいていない。そして石火をそのまま降り下ろした

 

 

 

 

 

「………えっ」

 

「まさかと…思っていたが……」

 

 

 

 

アイズ達の目の前にはハジメが降り下ろした石火がアルミラージの体を貫く、ところではなく刃先が当たった状態で止まっていた。一時停止で止めている訳でも、無意識でスキルが発動している訳でもない。

 

思い出してほしい。

ハジメのスキルや魔法は確かにレア中のレアではあるがその代わり、

 

 

 

力:I0 耐久:I0 器用:I0 敏捷:I0 魔力:S999

 

 

 

と、変則過ぎるステイタスの持ち主であることを。

 

 

だからハジメがいくら攻撃しようがそれは蚊が刺した程度しかないのだ。刺されたことに気づいたアルミラージは一度距離を取って見えない敵に向かい、さっきいた場所よりも少し前に向かって飛んだ

思わず助けに行こうとしたアイズに対してリヴェリアはそれを阻止した。確かにレベル1ならアルミラージと言えども危険なものには確かだ。しかしすぐに危険な状態に陥るとは思っていなかった

 

そしてその予想は当たり危険なことに陥ることはなかった。アルミラージの攻撃はハジメの体に触れたとたんに停止させられていたからだ

 

 

 

 

「う~ん、やっぱり武器を持っても攻撃は当たりませんか」

 

 

 

ハジメも当たってないよね‼と、ここにベルベルがいたらそう言っていただろうな~と考えながら次から次へとアルミラージからの攻撃を防いでいる

そんな姿を見て驚いているのはアルミラージだけではない。

 

 

 

「本当に…本当にすべての攻撃を防いでいるというのか……」

 

「……スゴい…」

 

 

 

初めて見る光景に驚く二人。アイズとはいえアルミラージの攻撃をただ受けるだけとなると怪我をするだろう。なのにレベル1であるハジメは怪我もなく抵抗もせずにその場に立っているだけである

 

 

 

 

「この前アイズ姉が見ていた、と言いますか見るはずだった事を今からしますね」

 

「あのシルバーバッグの戦いのこと?」

 

 

「はい、これが僕の戦いです」

 

 

 

未だに攻撃してくるアルミラージの目の前に右の掌を翳した。そして今まで受けていた攻撃を、止めていた攻撃を、それを全て右の掌に集結させて一気に一時停止を解除(再生)させた。

その攻撃が、衝撃が、一ヶ所に集まったことにより一撃では倒せない攻撃を一撃必殺に変えてしまった。アルミラージの体はその場で吹き飛び魔石も粉々になって消えていった

 

「魔法」のような攻撃。それは一時停止は魔法ではあるが、さっきの一撃はレベル1では考えられないものである。だから信じられないのだろう、いくら頭で分かっていても、冒険に誘うとき()()()()()()()()の者だと分かっていてもだ。

 

 

そこにいる人物は何者なんだと考えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

「ここでお昼にしましょう」

 

「いやここでお昼を?」

 

 

 

 

いまハジメ達がいるのは三人が余裕で入れる横穴の中。奥行き5㍍ぐらいあり休憩するには持ってこいかも知れないがここはセーフティゾーンではない。ではなぜここでお昼を取ろうとしているのかというと、その横穴の入り口全体に一時停止による空気の壁を作ってモンスターの侵入を食い止めているからだ。もちろん壁からモンスターが出現しないように壁にも一時停止で止めている。

なので、アイズの目の前では空気の壁の向こうで爪を立てて攻撃したり火を吐いたりして中に侵入をしようとしている。だが一時停止によって止められたものは再生しないかぎり()()()()()()()。だからハジメは安心してバックを背中から下ろしてお昼を取ろうとしている

 

 

 

 

「まさか空気さえも止めることが出来るなんてな…」

 

「でもこういう「枠」というのがないと一時停止出来ません」

 

 

「流石に何からなんでもというわけではないのだな」

 

 

 

その言葉はなんか含みのある言葉に聞こえたが、それよりお昼を取りたいというのが優先されたため気にしないことにした。バッグからお弁当箱を取り出したところで

 

 

 

「………いいな」

 

「持っていないんですか?」

 

「18階層で食事を取ろうと考えていたからな」

 

 

「………食べますか?」

 

 

 

その言葉にハジメと同じぐらい表情が変わらないアイズが嬉しそうな表情になり、リヴェリアはすまないと頭を下げてお礼を言った。

元々一人で食べるつもりはなかったがこんなに欲しそうな表情を見ることになるなんて考えていなかった。お弁当箱を3人の座る中央に置いて蓋を開けると

 

 

 

 

 

「……………えっ」

 

「な、なんだこれは……」

 

 

 

 

そこ見えたものは到底食べ物には見えない。だってそれは真っ黒な物で、形は歪で……これ「大丈夫」という言葉が出てこない

 

 

 

 

「おぉ、サンドイッチですか」

 

「「サンドイッチ!!!??」」

 

 

 

「どうしたんですか二人とも?驚いているようですが」

 

 

 

「これ、サンドイッチじゃないよ」

 

「間違いなく食べた者の体を壊すための物だ」

 

 

「失礼なことを言わないでください。これはリュー姉が作ってくれたサンドイッチですよ。そんなことをいうのならあげられません」

 

 

 

 

いや食べられません、というか、食べ物でもありません。と言いたい衝動をグッと抑える二人。無表情なハジメがどこかワクワクしているように見えるのだ。食べるのを止めろなんて……言えなかった

ハジメはその黒色それを手に取り、なんの躊躇(ちゅうちょ)もなく、躊躇(ためら)いもなく、それを口にした。

普通では考えられない音がハジメの口からする。それでも表情が全く変わらずにモグモグと口を動かす

 

 

 

 

「……………」

 

「……どうなんだ……」

 

 

 

 

特に変わった様子もなく口に入っていた物をゴクッンと胃の中へ流して食べ終わった。しかし一切のアクションを起こさずにまるで一時停止により止められているように動かないハジメ。やっぱりヤバイものだったのではないかと思いリヴェリアが声をかけようとした時

 

 

 

 

「卵サンドの次は野菜にしましょうかね」

 

「……………ハジメって……」

 

「……味覚オンチなんだろう……」

 

 

 

 

ハジメの新たな一面を、見たくない一面を見てハァーとため息付く二人

 

 

 

 

「そうでした、リヴェリア姉とは少し呼びにくいのでリヴェ姉と呼びますね」

 

「全くの脈絡もないのか……」

 

 

 

 

頭痛が治まるまでここで休憩したことは言うまでもない。





小刀の名前を「石火」にしました。
意味は「きわめてわずかの時間、はかないこと、すばやい動作」
しかしハジメには勿体ない武器だったかも?
これから頑張ってほしいですね♪

…………他人事のようですが、これからどうするかは考えてなかったんですよ(笑)

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