影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
お昼ご飯を食べて?向かうは目的地である18階層へ。しかしその前に立ち寄るのは17階層であり、そこには
「今日はいませんね」
「運がいい。もう少しで出現するタイミングだったが」
階層主は一度倒されると復活までに期間があり、その間に少人数のファミリアなどはここを抜けるようにしている。もちろん階層主がいても逃げ切ってしまえばいいが、そう簡単にはいかないのが階層主である。一級冒険者であるアイズとリヴェリアでも倒すのは大変であり、牽制しながら17階層を抜けていく
「もう少しということは明日や明後日くらいに出現する可能性があるんですか?」
「期間的にはそうだ。安心しろ、流石にゴライアスと戦えとは言わない。完全な契約違反にあたる」
しかし17階層にもモンスターはいる。
ライガーファングの群れが現れハジメ達を襲う。デスペレートを抜き斬りかかるアイズ、自分が対象になるように攻撃をして一気に
【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に
詠唱を続けもう少しで終わりを向かえようとしていた。それに気づいたアイズはハジメに近づいて
「魔法が来るから、離れて」
「了解です」
と、声をかけられたハジメは今まで溜まっていた一時停止を足裏に設定して、解除をしたことで衝撃が放たれてハジメの体は浮き上がりその場からの緊急脱出をした。そして詠唱は、
吹雪け、三度の厳冬――我が名はアールヴ】
終わりを向かえた。
その瞬間17階層に、ライガーファングの群れに極寒の吹雪が襲いかかり、モンスターの動きを、時さえもいてつかせる無慈悲な雪波は一匹残さず凍りつかせた
「スゴいですね、これがリヴェ姉の魔法ですか」
「私はハジメの魔法の方がスゴいと思う」
「そうなんですか?」
「さっきのように魔法を発現するには詠唱が必要だ。強い魔法ほど詠唱は長くなる。しかしハジメの一時停止は詠唱要らずの
魔法だからと、いってもいい。必ず詠唱が必要となる。例え詠唱要らずの魔法だとしてもその名を名乗ることになるだろう。しかしハジメの魔法は、それさえもない。
「魔法ですよ。ちゃんとステイタスにもありましたよね?」
「あぁ、それは分かっている。しかし人は違うものを見てしまうと疑ってしまう。気分を害したなら謝ろう」
「いいですよ。それより18階層にいきましょう」
「………そうだな」
凍りつたモンスターを通りすぎ18階層へと歩き出す。するとアイズがハジメの横に付いて
「……さっきのは、なに?」
「さっきのはと言いますと……あの場所から抜け出した時のですか」
「うん、普通の動きじゃなかった」
「確かに、まるで足元から何かが噴き上げて飛んだ。そんな印象だった」
「間違ってませんよ。衝撃を掌から足の裏に変えて解除しました」
「………やはりとんでもない
「使い勝手がいいだけですよ」
大したことはないと言っているハジメだが、アイズもリヴェリアもその一時停止はただ何かを止めるだけのものではないと理解している。そしてそれはリヴェリアが持つ魔法よりも群を抜いて強いのではないかと……
前を歩くハジメに気づかれないようにアイズはリヴェリアに近づいて
(………実行するの?)
(どうだろうか、正直問題はないとは思う)
(私もそう思う、ハジメは強い)
(あぁ、魔法も私よりも強いだろう。そして心も。
しかし決め手がない、実行するだけの決め手が)
(………私に、任せて)
(何か考えがあるのか?)
(………うん)
(分かった、だが慎重にすることだ
でないと
ハジメを殺してしまうかもしれないからな)
…………………………………………………………………………………
「テントを借りたいのだが」
「いや、それより宿に…」
「テントを借りたいのだが」
「……わ、分かりました。少し待ってください」
無事に18階層に到着したハジメ達は、まず今夜の宿を決めることにした。しかしセーフティゾーンである18階層だからこそ、地上にある宿屋より値段は高く、モンスターなどが襲撃でもしているのか宿屋自体もボロくマトモに休息を取れる場所ではない。なのでロキファミリアはここに来る旅にテントを張っている。しかし今回は少人数でテントを持ってきてはいない。
「す、すみませんが状態のいいテントはこのひとつだけなんですが……」
「構わない。これだけあれば足りるか」
と、テントを借りるにしては多すぎるお金を渡したリヴェリア。近くに宿屋があるのに泊まらないのだ、これぐらいはと多く支払ったようだ
「ありがとうございました‼」
「これで寝床は問題ないな」
「いや、問題しかありません」
テントを手にしたリヴェリアに対して間もなく答えたハジメ。しかしどういうことだろうと首をかしげるリヴェリアは
「どんな問題がある??このテントは三人でも充分なスペースはある。確かに食事は自炊になるかもしれないが……」
「そこは僕がやりますので問題ありません。問題なのはそのテントにどうして僕も一緒なんですか?」
「あぁ、そういうことか。ハジメは私達を襲いたいのか?」
「一級冒険者に、いえ、許可も、いえ、同意も、いえ、お互いが信じあい許しあいどんな時もその人を思い続けることが出来る相手ではないと」
「分かった、分かった。
私達はハジメと一緒でも問題ない、後はハジメ次第だが無理というなら宿を手配する」
「いえ、お二人がいいのなら僕も構いません。しかし簡単に異性と一緒でも大丈夫だと言わないでくださいね。いくら一級冒険者とはいえ女性なんですから自分を安くみないようにですね………」
「私が悪かった!!そこまで考えてくれるとは思っていなくてな。それに安くなんて見ていない。ハジメだからいいと私もアイズも思っている」
リヴェリアの言葉にアイズも頷く。「そうですか」とそれ以上は追求してこなかったが、
(冒険者としても人としても申し分もない。だが決め手が見えない……アイズに任せるしかないか……)
何を考えているのかハジメには分かるはずもなく、いまは夜ご飯の為に買い出しのことを考えていた。リヴェリアから充分なお金を貰っているためこの18階層の物価が高くてもそれなりの物は買える
「何を作りましょうか……」
「ハジメ」
「なんですかアイズ姉」
「ジャガ丸くん、作れる?」
「まぁ、神様がよく貰い物として食べてましたのでどの様な物かは分かりますから出来るかと」
「作って」
「いや、もっとちゃんとしたものを…」
「作って」
何か譲れないものがあるのだろう。真剣な眼差しでジャガ丸くんを作ってくれというアイズ。ハジメとしてはちゃんとした料理を作ろうと考えていたのだが
「………分かりました。メインはジャガ丸くんにしますので後は何かありますか?」
「特にない」
「そうですか、リヴェ姉は??」
「栄養のあるものを頼む。でないとアイズはそれだけしか食べないかもしれないからな」
「そんなこと、ない」と言っているがあんな眼差しでの後でそんなことを言っても説得力がない。とにかくハジメは買い出しを、アイズとリヴェリアはテントを立てた後水浴びに向かったのだった
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それからしばらくしてアイズ達は水浴びを終えて帰ってみるとすでに料理は完成していた。そこにそこにあったのはアイズのリクエストであるジャガ丸くんとリヴェリアのリクエストである栄養のあるものということで野菜とお肉を一緒にスープで煮たものがあった
「おお、これは美味しそうだな」
「ジャガ丸くんだ」
「リクエスト通りに出来たと思いますが」
「正直、昼間のアレを見て心配だったが、これなら安心して食べれるな」
「それはどういうことなのかと聞きたいですが、お腹も空きましたし気にしないことにしましょう」
食事の前に感謝を込めて祈った後、直ぐ様アイズはジャガ丸くんを手にとって口に入れた。熱々だから一気に食べようとすると火傷してしまうが気にせずに食べ進める
「………ッ! 美味しい……」
リヴェリアはスープを手にとってスプーンで掬ったそれを口に入れる。
「これは美味しい。まさかここまでとは……」
「そんなにですか?普通に作っただけですよ」
「こんなことをいうのはなんだが、ダンジョンに潜ると料理を作ると雑になってしまうんだ。皆本業は冒険者。料理など食べて栄養があれば味はというやつが多いのだ」
「そうなんですね、美味しい方がいいのに」
言っていることは分かるが食事は大切である。それこそ一日を変えてしまうほどに。心を満たしお腹も満たし次の冒険の活力となる。だからキチンと食事をしたほうがいいと思う。
だけどロキファミリアにも事情というものがあるのだろう、これ以上はいわないことにした
「しかしそれを差し引いても本当に美味しい。なにかコツがあるのか?」
「う~ん、たまにミア母さんに強制的に試食で色々言われているからですかね」
「なるほど、それなら納得がいく」
「おかわり」
「はい、まだありますけど食べ過ぎたらダメですよ」
「うん大丈夫」というがさっきからスゴい勢いで食べ進んでいる。よほどジャガ丸くんが好きなんだろう。
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食事を終え寝ることにしたのだが、どの位置で寝るかと少し騒ぎになった。どういうわけかハジメを二人の間に寝てもらうとなったのだ。だがハジメの主張は二人が並んだ隣で寝ること。まぁ結局はハジメが折れて二人の間で寝ることにした
しかし寝られるはずもなく、起こさないようにテントから抜け出した。この18階層を見渡せる丘を見つけてそこに座り景色を見渡す。
結晶がキラキラと光り、それが周りを照らし出して
「綺麗ですね」
「……うん、綺麗」
気づかなかった。一級冒険者だからだろう、気配を消して近づいてきたようだ。
「アイズ姉、ビックリしました」
「全然驚いているように見えない」
「顔に出ないタイプなので」
「私も、言われる」
そんな些細な話から少しずつ話題が膨らんでいく。ジャガ丸くんのことや仲間のこと神様の話など、大した話ではないかもしれないが楽しいと感じている
「………ねぇ、ハジメ」
「なんでしょうか」
「私はハジメの強さを、知りたい」
「前にもそんなことを聞いてましたね」
さっきまでの和やかな雰囲気から一変して真剣な眼差しでハジメを見るアイズ。
「僕の強さですか……スキルか魔法ですか?」
「違う、知りたいのは……」
そう言いながらアイズはハジメに向けて指を指す。正確にはハジメの胸の中央を
「その強い……心」
「心ですか?」
「うん」
「強いですね……ちなみにどの辺ですか教えてくれますか?」
一体何が強いのか自分では分からなかった。普通にしているだけなのだから強いと言われても答えられない
「普通はどんなモンスターでも襲って来たら逃げるか、戦うか、恐怖して立ち止まるか。
なのに逃げもせずに、戦うこともせずに、怖がることもなく攻撃を受けている。
どうしてそんなことが出来るの?」
冒険者なら戦うだろう。ヤバイと思ったら逃げることも大事であり、強敵が出てきたら動けなくもなるだろう。だから知りたいのだ。その強さを。
「どうしても何も、自分を信じているだけですから」
「信じている…だけ」
「普通ですよね。
信じているといいますか「自分」ですからね、迷うことなんてありませんよ」
本当に迷いなんてないとアイズはハジメの瞳を見て理解した。曇りもなく真っ直ぐに見ている。
「それがハジメの強さ……」
「強さ、なんですかね。僕はベルベルやアイズ姉のように「強くなりたい」と「強くありたい」と思えません。もちろん冒険者ですから強さを求めますよ僕も。でも二人のように高みを目指せない。僕はそれが羨ましい」
「……どうして、そんな……」
「こんなところにいたのか」
何かを聞こうとしたところでリヴェリアが現れて言葉を遮られた。どうやら二人がいなかったことに気づいて探していたようだ
「明日の為にも早く寝ることだ。ほら二人とも帰るぞ」
「そうですね、いきましょう」
「う、うん……」
そういって二人よりも早くその場から離れていくハジメ。その背中を見ながらリヴェリアはアイズに
「どうだアイズ?」
「………何よりも自分を信じている。だから強いのだと思う」
「なるほど、疑わない強さということか……」
それを聞いたリヴェリアは何かを決意したように頷いたあと
「なら、私達はやるしかないな」
「うん」
「ハジメには、
長かったですよね~。
なので簡潔に、次も同じぐらいになるかも。
余談ですがハジメのツッコミはどうでしたか?
なんとか違和感なく出来たかと思います
次もヨロシクね♪
~追記~
11/7、6:00に新たな話を更新して読まれた方もいると思います。すみません、未完成の状態で投稿してしまいまして削除させてもらいました。
明日11/8に完成した話を更新しますので、あと少しお待ちください。よろしくお願いします。