影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか?   作:ガイドライン

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明けましておめでとうごさいますー❗
今年もよろしくお願いします。
新年一発目、張り切ってどうぞ♪




影の薄さで再び野良犬を倒しましょう。

黄昏の館、訓練所

新人の指導から上級同士の試合など己を磨くための場所ではあるが、たまにファミリア内の喧嘩を決めるためにここで戦うことがある。それがまさにいま、ここで行われようとしていた。

すでに訓練所にはロキファミリア、ヘスティアファミリア、エイナ、リューが集まっているのだが、どうやらこの中で1人だけまだ来ていない者がいる。その者はこれから戦おうと意気込んでいたベートをイラつかせる人物

 

 

 

「なにやってるんだアイツは!!!」

 

「ドチビ、なんでハジメが来とらんのや?」

 

「ちょっと用意したいものがあるって……」

 

「もう1時間待たされてんやで!!何しとるんや!!!!」

 

 

ベートだけではなかった。ここにいる全員が未だに現れないハジメに対してイラつき出している。気の短いベートはもう血管が切れそうなほどイライラして、さっきから貧乏揺すりが止まらずにいる。

 

 

「お待たせしました」

 

 

その言葉と共に現れたハジメは背中に大きなリュックを背負って訓練所に現れた。そのリュックは中に入りきれずにお玉や木の枝やズボンなどが見える。

 

 

「遅ぇんだよテメェ!!ってか何だそれは!!?」

 

「べベートを倒す武器、になるかもしれないものです」

 

「…ビン…風呂敷……糸屑……

……ふ、ふざけるのも大概にしろよテメエエエエエエエエェェェェェェ!!!!」

 

 

襲いかかろうと一歩踏み出そうとすると、

 

 

「準備しますのでちょっと待ってくださいね」

 

 

と、こんな状況にも関わらずにマイペースにリュックを下ろして中身を取り出し始めた。出鼻を挫かれたベートを大きく舌打ちをしが大人しく待つことにした。ここで襲撃することは簡単だが、徹底的にハジメを潰すならこの準備さえも無意味だと分からせる必要がある。どんな準備をしようがレベル1が一級冒険者に勝てるはずがないとその身に刻み込ませるために。

 

 

「何を企んでいるかは知らねえが、小細工で俺に勝てるとでも思っているならさっさとここから出ていけ」

 

「至って真面目なんですけどね」

 

 

そんなことをいうがリュックから出てくるのは明らかにガラクタばかり。小さな木箱や複数のビンの中に様々な色の物が入ってたり、小さな銀色の球体までも出てきた。これでどうやってベートに勝つつもりなのか?

 

 

「……おい、ドチビ。ハジメ何がしたいんや?」

 

「ボクも知らないよ。でもふざけてやってるようには見えないのは確かだよ」

 

「なら、意味があるっていうわけか。楽しみやで。これでハジメの実力が見れるや、ベートには感謝せんといかんな~」

 

 

そんな呑気なことを言っているロキだがベートはその意味不明な行動にもう怒りが爆発しそうになっていた。それはそうだろう、目の前ではただリュックからガラクタを出しているだけ。そんな姿を見ていたらそれは怒りも蓄積していき、

 

 

「………いい加減にしやがれ!!!!」

 

 

我慢出来なくなったベートは跳躍し、そのフロスヴィルト、特殊金属「ミスリル」を加工したミスリルブーツでリュックを踏み潰した。跳躍からの攻撃でリュックの中身は弾け飛びガラクタが更にガラクタになる始末。

 

 

「ベート!!何をやっている!!!」

 

「うるせぇクソエルフ!!!こんなゴミを出しているのを待っていても何も変わらねぇよ!!!!」

 

 

いつものように誰に対しても毒ずくベート。しかし今回はやめて方が良かった。ここにはエルフが1人だけではないのだから……

 

 

「…トキサキさんといい、彼には一度痛い目にあった方がいいかと」

 

「…ハジメ君は意味のない行動なんてしません。なのに勝手に決めつけて、エルフだとバカにして……」

 

「…ここはどちら側にも付くつもりはなかったが……」

 

 

「「「その(無礼者)(狼人)(ベート)を泣かしてください!!」」」

 

 

よほど頭に来たのだろう、声ピッタリに合わせる三人。それに答えるようにハジメはベートの目をじっと見てながら、

 

 

「了解です」

 

「はぁ?雑魚が俺を泣かすだと…やれるならやって見やがれ!!!」

 

 

ベートの上段蹴りがハジメの頭を襲う。その一撃はもちろん手加減しているが、喰らえばハジメの身体は簡単に吹き飛び訓練所の壁も貫くだろう。しかしハジメの一時停止の前では無意味、手加減しようが本気だろうが全て停止させるのだから。

 

 

「チィッ……うらああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

予想外、というわけではない。でも舌打ちをせずにはいられなかった。話しには聞いてはいたが本当に攻撃を止めるなんて想わなかったからだ。しかしこうやって目の前でやられたからには()()を打つ必要があると考えていたのかベートはハジメに拳と蹴りの連打を繰り出す。だけどこんなことをしても全て一時停止により止められてしまうので意味がない。

しかし、その意味のないことをやるということに()()がある

 

 

「なるほど、考えたねベートは」

 

「どういうことですか、団長?」

 

「闇雲にやってるんじゃないんですか?」

 

「そうだね、ハジメの一時停止の前では攻撃は無意味だろう。だけど()()()()()()()()があるんだよ」

 

「……なるほど、そういうことか!!

ベートは一時停止の多用による精神疲弊(マインドダウン)を狙っているのか!!!」

 

 

ベートの考えはこうだ。どんな攻撃も一時停止により止めてしまう万能な魔法かもしれないが、()()()()()()()()()()()()()()と考えのだ。いくら攻撃を止めても精神疲弊すればハジメを守る盾はなくなる。

 

 

「精神疲弊すればハジメに攻撃せずに勝つことが出来る」

 

「一時停止が凄くて「魔法」だったことを忘れてました」

 

「でも、それならハジメに勝てる」

 

 

そんなことを言っている間にもすでに100回以上の攻撃をしている。それでも未だに攻撃の手を緩めないベート。対してハジメはまだ精神疲弊の兆しはない。

 

 

「アレだけの攻撃を喰らっても顔色一つ変えないとは…」

 

「流石レア魔法といったところか」

 

「で、でも、レアならむしろ消費が激しいんじゃ…」

 

「必ずしもそうとは限らない。現に僕達はいま一時停止というものを目にしている。だけどどんなレアでも魔法は魔法だ。必ず精神疲弊はくる」

 

 

そう魔法を使用するかぎり底が尽きる。身体を動かし体力が尽きるように魔法を使い精神力が尽きる。いくら体力があろうが精神力がなければ気絶してしまう。ベートはそれを狙っている。この無敵といっていい一時停止に対抗するにはこれしかないと判断したのだろう。

 

 

………………………………………………………………………

 

 

「……はぁ、はぁ、はぁ……くそが……」

 

「うそ…でしょう……」

 

 

あれからどれだけ時間が過ぎたのだろう。1分かもしれないし10分かもしれない。それだけ濃い時間が流れたのだが目の前の現実は残酷な真実を突きつけるだけ材料にしかならなかった。

 

 

「もう終わりですか?粘ったほうですけど()()()()じゃ足りないですよ」

 

「……ふざけやがって……」

 

「いえいえ、ふざけてませんよ。やり方は間違ってませんけど()()足りないだけですよ」

 

「………くっ……」

 

 

ケロッとした表情でハジメはベートに語りかける。それだけじゃ足りないと、ただ足りないと。つまりハジメにも精神疲弊(マインドダウン)はある。だが、

 

 

「あれだけやって……まだなのか……」

 

「ドチビ!!お前まだウチらに隠してることがあるやろう!!!」

 

「………あるよ。だけどこれは本当の秘密だ。打ち明けるつもりはないよ」

 

「こんだけのことをしてまだそんなことをいっ」

「だからこそだ!!

君なら分かるだろロキ。いくら契約を結ぼうが明かせない秘密があるってことを。全くないとは言わせないよ」

 

 

それを言われたロキは黙ってしまった。いくら契約を結んでも全て明かすことなんて出来ない。ましてやファミリア内でも明かせないこともあるのだ、自分の都合で明かるほど軽いものではない。

 

 

「じゃ次は僕の番でいいですよね。リヴェ姉、べベートに体力回復薬を渡してください」

 

「テメェ!!ふざけてるのか!!!!」

 

「いや、正々堂々とやるために…」

 

「これは喧嘩だぁ!!テメェの施しなんているかあぁ!!」

 

 

未だに肩で息をしている状況でもハジメを睨み付け吠えるベート。その姿に諦めたのかハジメは近く落ちていた小瓶を手に取った。

 

 

「それじゃ遠慮なくいかせてもらいますよ」

 

「いちいち聞くんじゃね!!」

 

「まだまだ元気ですね。それでは」

 

 

そういってハジメは小瓶の蓋を取り、右の掌に小瓶の中にある液体を流し落とす。その中身はどす黒いものであり掌に触れた途端に液体から固体へ、まるで屋根に出来る氷柱がその掌から生えてくるように高く高く積み上がっていく。そして小瓶の中身がなくなった時にはその黒い棒は1メートル近く出来上がっていた。

 

ハジメはそれを握りベートに向けて走り出す。ベートは未だに動くつもりもなく、いや逃げるつもりもないだろう、ただその場に立っている。そう完全にハジメを舐めているのだ。それでもハジメはベートに近づきその黒い棒をベートに向けて殴り付ける。

 

 

「はっ!遅せえよ!!!」

 

 

その場から動くことなく身体を最小限で動かすだけでハジメの攻撃は当たらない。単純な戦いで一級冒険者にハジメが勝てるわけがない。そう()()()()()()()

 

ハジメはベートがこの攻撃を避けることは分かっていた。だから避けた瞬間が狙いだったのだ。ハジメのこの一撃だけを避けたことによる体勢。それからもう一度避けることは難しい。例え避けれたとしても()()()()()()を避けることが出来るだろうか。

ハジメは黒い棒にかけていた一時停止を解除する。それと同時に黒い液体になった物に一時停止で止めていた衝撃を放つ。それにより黒い液体はハジメやベートを巻き込んで広範囲に撒き飛んだ。

 

その一瞬がベートに見えたのだろう。無理やり身体を動かして黒い液体から距離を置こうと飛び逃げた。その一瞬の判断、黒い液体がヤバイものだと直感で感じ取った為その場から逃げ出した。そしてそれは正解だった。

 

 

「な、何なのアレ!!?」

 

「床が……溶けているのか…」

 

 

黒い液体は床に当たった瞬間にそれを溶かし始めた。グツグツと気泡を立てながら溶かしていく。床も天井も柱も何もなかも。ヘスティア達は訓練所から出て観覧席から見ていたために液体が飛んでくることはなかったが、

 

 

「ベートがあれ避けなかったら……」

 

「あぁ、危なかっただろう……」

 

 

現に避けたベートの服にも液体が付いたようで溶けて穴が空いている。あと僅かでもズレていたら、僅かでも投げるのが遅れたらその身体に穴が空いていた。

 

 

「……て、テメェ……」

 

「安心してください、穴空いてませんよ。

それにベベートなら()()()()()避けられると分かってやったんですから、問題ないですよね?」

 

 

グッ!とそれ以上は言えなかった。これで「危なかった」と言えばベートはハジメを「強者」と認めることになる。今でも「弱者」だと思っているベートがその言葉を言うわけがない。

 

 

「さて次にいきましょう。ここにはべベートを倒すための色んな物がありますから」

 

 

今でもベートはハジメを「弱者」だと思っている。しかしその「弱者」の中でもこいつは「強者」だと認めてしまった自分にイラつきを覚えながら、これから始まる喧嘩に集中することにした。知らずに「弱者」ではなく「強者」だと気づかずに。

 

 





はい、話が終わりませんでした(笑)
しかし次回は遂にハジメ無双が!!!
そしてベベートの運命は!!?
お楽しみ~❗


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