影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
理由としたら次回の話の為です。
前回のタイトルのままだと次回の話に合わないからです。というか、タイトル通りに出来なかった僕の力不足です。
僕にスミマセン!!
…
……
………
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あれはヘスティアとハジメが出会いファミリアとなってから何日か過ぎたある日のこと。
このときはヘスティアはハジメにダンジョンへ向かわせることを禁じていた。魔力以外0であるハジメをダンジョンに向かわせれるハズがない。例え一時停止があったとしても子を心配する親なら簡単に行かせれるわけがない。しかし一人から二人に増えたことにより食事も増えることになり、それはお金が必要となる。ヘスティア一人のバイトだけでは足りない為、仕方なくハジメもバイトをすることにした。だが、そう簡単に見つかるわけもなくこうやって街中を歩き回っていた。
夕方となり夜になりそうな夕方、結局バイトは見つからなかった。ヘスティアのバイトもそろそろ終わる頃だと思い迎えに向かったハジメだったがそこに、
「あぁ!?金が足りねぇだと??」
「そうだよ、ちゃんとボクは君達にジャガ丸くんを3つ渡したよ。でもここにあるお金は2つ分しかないんだ。キチンと代金は払ってもらうよ」
「テメェが落としたんじゃねえのか?それに俺達が2つ分しか渡してない証拠があるのかよ!!」
「知っているはずだよ、神様に嘘は効かないってことは。君達は嘘ついている、それは自分がよく分かっているはずだよ」
二人組のゴロツキに対して一歩も引かずに支払いを要求するヘスティア。目の前にいる神様を侮辱していることになんて罰当たりなと思いながらヘスティアに近づき、
「大丈夫ですか神様??」
「ハジメ君、あぁ問題ないよ。さぁキチンと代金を払うんだ」
「……うるせぇな!!こんな物のために誰が払うか!!!」
そういったゴロツキの一人が持っていたジャガ丸くんを地面に叩きつける。それを見たもう一人のゴロツキも同じように叩きつけた。
「なんてことをしてるんだ!!」
「さっきからウザいんだよ!!神だからってな、なにもできねえくせにいい気になってるんじゃねぇ!!!」
これは後から知ったことだがこのゴロツキ達はつい最近ファミリアから追放されたようだ。ファミリアの掟を破った罰として追放されたのに、自分達は悪くないと追放した神様へ逆恨みをしていたのだ。
だからこうしてヘスティアに対して暴言を吐いた。まぁヘスティアは怒りはするがきっとそのあと許してくれるだろう。しかしヘスティアの隣には、
「……訂正してください」
「あぁ??さっきからなんだテメェは!!関係ねぇやつは何処かに言ってろ!!」
「……訂正してください」
「うるせぇんだよ!!何回も言ってやるよ!!!
何にもできねえ
無表情。喜怒哀楽が分かりづらいハジメだが今は間違いなく「怒」である。そしてハジメもそれが分かっている。こんなことを改めて言うのはおかしいが、周りが思っている通りハジメ自身も自分が感情を表に出すことはないと理解していた。だからこそなんだろう、
「………僕の……」
「あぁ!!?なんだ、ハッキリ言いや……!!??」
小さく誰にも聞こえない声だったが、見えてしまったハジメの目がゴロツキの言葉を止めた。その目は明らかに人を殺める目だと、そしてそれが自分達に向けられていることを。
しかし、逃げることも叶わなかった。いや、逃げるという考えすら持てなかった。その恐怖を感じていたときにはすでにゴロツキ達は意識がなかったのだから。
「……な、何を……したんだい……ハジメ君…」
何が起きたのか分からなかった。確かについさっきまで変わらない景色だったのが、瞬きをした時には景色が、世界が変わってしまった。
ヘスティアとハジメを中心に周りが凍りついていた。ジャガ丸くんもお店も地面も草も、そしてゴロツキ達も、周りにあったものすべてが一瞬にして変わってしまった。そうゴロツキ達はまるで氷の彫刻のように完全に凍りついてしまっていた。
「こ、凍りついている……詠唱も言わずに魔法を……」
こんな広範囲で強力な魔法を無詠唱で使えるなんてありえない。どんなレアな魔法やスキルでも詠唱無しなんて…それこそ
そんな状況に戸惑っている間にもハジメはゴロツキに近づき、その右手を握りしめて振り上げた。
「ちょっ、ちょっと待つんだハジメ君!!そんな事をしたら彼らが!!!」
しかしヘスティアの制止を聞かずにハジメはその右手を降り下ろし、周りに砕けるような音が響き渡った。
…………
………
……
…
「な、なんやこれは……」
ロキの目の前には一瞬にして訓練所が真っ白な世界へと変わってしまった。柱や床や天井は凍りつき空間は未だに冷気が漂っている。
そしてすぐにその冷気は消えていき、その先に見えたのはこの状況を作り出したと思われるハジメと、
「べ、ベート!!?」
訓練所と同じように凍りついてしまったベートがそこにいた。ただそこにある人形のように、色白く生きていると感じさせない。
そんな中いつの間にかベートの近くにいたハジメは、右手を握りしめ拳を振り上げた。
それを見ていたフィンはハジメが何をしようとしているのか分かった。
「や、止めるんだハジメ!!ベートの敗けだ!!さっきの言葉もキチンと謝罪させる!!!だからその手を降ろしてくれ!!!!」
その言葉に誰もがこれから何が起きるのか理解できた。特にリヴェリアは身に覚えがあった。
『ウィン・フィンブルヴェトル』
その魔法で凍りついたモンスターを叩けば瞬く間に粉々にくだけ散る。モンスターの体の芯まで、細胞一つ一つを凍らせてしまえばたった少しの衝撃でもその原型を壊してしまう。
そしてそれがいまベートに向けられている。凍りついてしまったベートが生きているかは正直分からない。分からないがいまこれを止めなければ生きている可能性さえもなくなってしまう。
しかしフィンの言葉は届くことなくその右手は降り下ろされる。
「やめろおおおおおおぉぉぉぉ!!!」
必死に壊すこと出来ない
「ッぷは!!!て、テメェ何し…ってなんだこれはオイ!!体が動かねえ!!!!」
「おっ。目覚めも早いですし、すぐに状況把握。さすがベベート」
砕けたのはベートの頭部だけであり未だにその下は凍りついたままである。何とかその氷から抜け出そうとするベートだがまるで鋼を身にまとっているようで動かない。というか寒すぎる、というか痛すぎる、というか死んでしまうほどヤバい。すでにベートの顔色は青白くなっていく。
「……こ、これを…溶かし…やがれ……」
「神様に謝ってからですよ」
「…………り……」
「はい?」
「…………ワリ………」
「ベベートにしては及第点ですかね」
そしてハジメはベートの胸部を叩く、すると下半身だけを残して氷は砕けた。それと同時に訓練所周りにかけていた一時停止が解け、フィンは直ぐ様ベートの元へ駆け寄り無事であるか確認した。
「…無事、みたいだね」
「ったく…ヒヤヒヤさせて…お前は……」
「これは一体どういうことや?ベートは凍りついてヤバかったんやなかったんか?」
凍りついた体はまるでシャーベットのように細胞一つ一つを凍らせて衝撃を与えれば砕けてしまう。なのに氷が砕けてもその体は無事でありすぐに意識を取り戻した。
「凍りつく前にベートの周りに一時停止をかけました」
「なるほどな、だから凍りつかんかったんか…ってか、なんやさっきの魔法は!!?詠唱無しとかレアにもほどがあるわ!!!ドチビ!!ステイタスに細工したやろ!!!!」
「なわけないだろう!!それにこれに関しては完全にトップシークレットなんだ!!!見てしまったことは仕方ないとしてもこれ以上話すつもりはないよ!!!」
これに対してなんやて~!!と反論しようとしだがフィンが割り込んできた
「ロキこれ以上はやめておこう。さっきも見たはずだ、彼が大切に思うものに対しての
「……分かったわ……」
フィンとロキも周りもそれ以上は何も言わなかった。怒らせるとベートのように凍らされることを。詠唱もなく防ぐ術もなく、一瞬に終わってしまうその力を。その目で見て分かってしまったのだ。『絶対にハジメを怒らせたらダメ!!』だと
「オイテメェ!!!残りの氷も砕きやがれ!!!」
さっきから下半身の氷を砕こうとしていたのだが、一級冒険者の力を持ってもその氷を砕くことが、欠片を出すことさえも出来なかった。分かりましたと返事をしようとしたハジメだったがその言葉をリヴェリアが被せてきた。
「いやベート。しばらくそのままでいろ」
「何言ってや…」
「今回!!今回こんなことになったのは全てお前が原因だ。どんな原理かは知らないがずっと溶けないわけではないのだろう?」
「はい。凝縮した氷ですから初めは解けませんが、半日ぐらいしたら溶け始めますので」
「だそうだ。反省としては短い気がするがその氷による拘束を考えて半日で許してやる」
「ッざけんな!!!」
全然反省するつもりのないベートを見たファミリアの仲間はハァーとため息を付きながらベートから離れていく。普通なら氷の中で数時間いるだけで凍傷するのだが、一級冒険者の耐久力ならギリギリ大丈夫だろうという判断だ。なので全員ベートに反省してもらうべく、いや反省しろということで無視することにした。
「今回といい前回といいハジメには迷惑をかけてしまった。君達がよければ気がすむまでここで生活してくれ」
「……正直反対したいところやけど…仕方ないか……」
「ありがとうございます」
なんだいその態度は?とか、うっさいわボケ!!とかまた神様の喧嘩が始まったのだが、こう何回も見ていたら「もう無視していいんじゃないか?」ということでスルーすることにした。
「代わりというわけではないがあの日起きた出来事「脱力感」について調査をしようと考えているのだが、それに参加してくれないだろうか?」
「元よりそのつもりなので、よろしくお願いします」
これで一通り話が纏まり、早速ベルやヘスティアの元にロキファミリアの冒険者が集まり「舘の案内をするよー」とか「お部屋を案内します」など共同生活の話が進んでいる。ハジメはここまで付き合ってくれたエイナとリューの元へ行き、
「二人とも今日はありがとうございました」
「ううん、いいのよ。これで安心できるわね」
「何かありましたらいつでも言ってください」
帰る二人を見送ろうとハジメは一緒に黄昏の舘の外まで着いていった。エイナはそのまま家に帰るということで近くまで送っていこうと提案したのだが「私の家は近いからいいわよ」とさっさと帰っていった。残された二人は何となく「豊穣の女主人」の近くまで歩いてきた。
「ここでいいです、ありがとうございました」
「いいえ、明日はお迎えにあがりますのでよろしくお願いします」
その言葉に何か納得していないような表情のリューに、
「どうしたんですか?」
「……どうして私なんですか?他の女性と違い愛想もなければ好意を持たれることもない。私はトキサキさんに……好かれる要素を持ち合わせていない」
ここまでハッキリと言うとは思わなかったのかハジメにしては珍しく放心状態になっていた。だけどそんな状態はたったの1秒ぐらい。
「リュー姉だからですけど、何か?」
「いや何か…って、あのですね…」
「僕はリュー姉だから誘ったんですよ。だからそれが全てです。それではよろしくお願いします」
一礼をしたハジメは呼び止めようとしたリューの仕草をスルーしてその場から離れていった。残されたリューはどうしたらいいのか分からずにしばらく立ち尽くしていた。
前回から今回にかけて出てきました