影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか?   作:ガイドライン

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昨日ぶりです。
さてここでお知らせです。
仕事やプライベートで更新がかなり遅くなります。
正確には7月始めまではかかるかと。
出来れば一ヶ月に一回は更新したいです。
なので応援よろしくお願いします。
作者は誉められて伸びる、調子に乗るタイプです(笑)

それではどうぞ!!


影が薄くてもその手を握ることは出来ます。

リューは元々【アストレア・ファミリア】と呼ばれるファミリアに所属しており、迷宮探索以外にも違法行為を取り締まっていた。それは正義として行う正しい行いだったのだが、同時に対立・敵対するものも多かった。

 

そしてある日、ダンジョンで複数の敵対ファミリアによる怪物進呈(パス・パレード)により、ファミリアは自分だけを残して全滅してしまった。

その復讐を果たすために主神のアストレアを都市外へ逃がし、

 

 

「仲間を失った私怨から、私は仇である【ファミリア】に一人で仇討ちしました」

 

 

そう、敵対ファミリアへの闇討ちをたった一人で敢行した。

 

 

「あれはもう正義ですらなかった。復讐に突き動かされた私は、彼の組織に与する者、関係を持った者、疑わしき者全てに襲いかかりました」

 

これがギルドのブラックリストにも載ったことの顛末。行き過ぎ報復行為は一般人も含めて多数の無関係の人間も闇討ちした事で冒険者の権利を剥奪されてしまった。

 

 

「復讐を果たした私は、力尽き、誰もいない、暗い路地裏で」

 

 

多数の追っ手との戦いで瀕死の重傷を負って、

 

 

「血に濡れて、汚泥にまみれ……愚かな行いをした者には、相応しい末路でした」

 

 

復讐をやり遂げ、主神も、仲間も失った彼女を「生」に繋ぎ止めるものはなく、

 

 

「けれど……」

 

__大丈夫?

 

 

 

あの日シルのその温かい手が、汚れ切った彼女の手を取った。その後シルがミアに頼み込み豊穣の女主人の店員として向かい入れられた。

 

 

「詰まるところ、私は恥知らずで、横暴なエルフということです。

だから私は、トキサキさんの好意を受け取るわけには、受け止めるわけにはいきません。このまま貴方の隣にいればいつか必ず私は貴方を不幸にしてしまいます。この手は、この身は、もう汚れきってしまった。だから──」

 

 

「むかし、むかし」

 

 

突然割り込んできたハジメに、一体何をと言おうとするがそれさえも言わせまいと話を続ける

 

 

「といってもそんなに時間は経ってませんが、ある少年とその家族がいました。」

 

 

その語りにリューは言いかけた言葉を忘れてしまった。何故いまこのタイミングでと問いかけよとするがハジメは続けてこう語る。

 

 

…………………………………………………………………………

 

 

「その家族は貧しい生活を送ってはいましたが、いつも幸せでした。いつものように父が叱り、母が慰め、姉がちょっかいを出す、ありふれた家族で、大切な家族でした」

 

 

「姉はいつも言います。「いつまでも私に付いてこないの!!あんたも自分で「友達」を作りなさい」とまるで口癖のように言ってきます。それでも離れたくはなかった。姉のような人に少年はなりたかったから」

 

 

「しかし、ある日姉が夜遅くになっても帰ってきません。前日少年と姉がいつものように喧嘩をしてました。そしていつものように姉から叱られました。だから何でしょうか、次の日になると少年は姉に付いていかなかったのです。

心配になった両親は必死で姉を探しました。少年も一緒になって探しました。どうして姉に付いていかなかったのかと後悔しながら。しかし姉は見つからずにただ時間だけが過ぎました」

 

 

「一週間後、ある冒険者がいいました。「もしかしたらあの女の子が……それならダンジョンで見かけた」と。ありえない話でした。姉は冒険者ではなく一般人だったから。しかし情報がない今それにすがるしかありません」

 

 

「両親は家にある全財産をその冒険者に渡して「娘を探してください」と頼みました。初めは渋っていた冒険者ですが姉の捜索を手伝ってくれることなりました。ただその冒険者と姉だという確信もありませんでしたので、両親が荷物持ちとして一緒にダンジョンに潜ることになりました」

 

 

「その冒険者の所属するファミリアは大きく、大人数での捜索をしてくれました。両親から留守番するように言われた少年でしたがあの時の後悔をしない為に、自分で姉を見つけるために、見つけて喧嘩のことを謝るために、荷物に隠れて一緒にダンジョンへと向かいました」

 

 

「冒険者が見かけたのは16階層。もしかしたら18階層にいるのではないかということでした。それでもダンジョン内部を広範囲で捜索してくれました。しかし目撃した16階層でも姉に繋がるもの1つさえも見つかりませんでした」

 

 

「そして17階層へ到着した少年の前には」

 

 

……

………

…………

……………

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!』

 

 

『足だあああぁぁぁ!!足を狙えええええぇ!!!』

 

『攻めろ!!!攻め続けろ!!!階層主(ゴライアス)に反撃させるな!!!!』

 

『詠唱はまだ終わらねぇのか!!?』

 

『攻撃が来るぞ!!!防御しろ!!!!』

 

『うわあああああああああ!!』

 

『逃げるな!!戦え!!』

 

『くそ!!!退け!!ここから逃げろ!!!!』

 

 

『ちょっと待ってくれ!!!娘を探してくれるんじゃないのか!!!!』

 

『状況を考えろ!!!いまは逃げるんだよ!!!!それにこんなところにあんたの娘が生きてるわけがないだろうが!!!!』

 

『なっ!!!』

 

『貧乏の割には金払い良かったからな、適当に切り捨てるはずが………テメェが余計なことを言わなければこんなことにはならなかったんだよ!!!!』

 

『待ってくれ!!!置いてかないでくれ!!!!』

 

『あなた!!!あそこに逃げましょう!!!!』

 

『何を言ってるんだ!!あのバケモノの隣を通りすぎらないといけないんだぞ!!!』

 

『それでも今は他の冒険者に気をとらわれているわ!!それに18階層ならあの子が、あの子がいるかもしれないわ!!!!』

 

『…………分かった。いこう!!!』

 

 

 

『………待って、待って!!お父さん!!お母さん!!!!』

 

『!!!?? 何でこんなところに!!!!!』

 

 

………………

…………

………

……

 

 

「それからは本当に地獄絵図でした。何人も何人も冒険者が無惨にも死んでいくなか、両親は少年を連れて必死で走りました」

 

 

「だけどやはり一般人。冒険者とは違い18階層への穴にたどり着く前にゴライアスが冒険者を殺し尽くしたあとに3人へ攻撃を始めました」

 

 

「力無きものがそれを喰らえば、いや余波でさえも死んでしまうその攻撃が向かってくるときはもうダメだと思いました。しかし両親は諦めませんでした。息が切れて身体がボロボロでもう倒れそうな状態でも、最後まで諦めませんでした」

 

 

「結果からいうと少年だけは助かりました。攻撃が当たる直前に穴へ投げられた少年は無事に18階層へ到着したのです」

 

 

「だけど両親は、少年を投げた両親はその時優しい目をして「お姉ちゃんを頼んだぞ」と言い残して土煙に呑まれました」

 

 

…………………………………………………………………………

 

 

 

「それから少年は18階層で生きていきました。誰にも見つからないように息を潜めて、冒険者が食べ残した残飯で命を繋ぎ止め、冒険者やモンスターに殺されないように木の上で寝て、姉が見つかるまで18階層で生き続けました。

しかし何年たっても手がかり1つ見つけられませんでした。それを意識してしまった少年は絶望に襲われ自殺まで考えるようになりました。

だけどしなかった。少年には()()()()があった。両親と、そして姉からもらった言葉が少年を「生」へと繋ぎ止めました」

 

 

『いつまでも私に付いてこないの!!あんたも自分で「友達」を作りなさい』

『お姉ちゃんを頼んだぞ』

 

 

まるで姉が自分がいなくなっても、少年を支えてくれる人を見つけるようにいってくれたようで。

両親が絶望ではなく、僅かな光でもそれを希望として生けていけるように。

 

少年はこのダンジョンに来たと同じように冒険者の荷物に紛れて数年ぶりに地上へと戻ってきた。しかしその数年が我が家を壊して、思い出の場所も建物などが建ち面影さえもなくなっていた。

それでも少年は諦めなかった。姉が言ったいたように友達を作るために、両親が言っていたように姉を見つけるために。

 

 

その少年は、冒険者になったのだった。

 

 

その壮絶な少年の話にリューは何も言えなかった。いや口出すことが出来なかった。それでも辛うじて言い出せた言葉は、

 

 

「……どうして、どうしてそんなに強いのですか?」

 

「強くないですよ。それに僕がそんな風に見えるならリュー姉もその強さを知っている。だったらリュー姉も強いです」

 

「そ、そんなことはありません。私は、私の心を抑えることが出来なかった。激情にかられて復讐という許されないことをしてしまったのです」

 

「だから僕と一緒にいられない、ですか」

 

 

自分で告げたことだというのにハジメから言われた言葉に衝撃を受けてしまった。しかしこれでいいのだと言い聞かせ

 

 

「私は罪人(つみびと)です。この罪を背負って生きていかないといけません。この罪があるかぎり私は幸せになってはいけないのです。私は」

 

 

すると突然ハジメはリューの頬を両手で挟み込んだ。それによりうまく発音出来なくなったリューは戸惑いどうしたらいいのか分からなくなっていた。

 

 

「そんなことを言わないで下さい。シル姉はミア母さんはきっとリュー姉が幸せになってほしいと願ってます。そのツラい過去があるからこそ人一倍に幸せにと。それでも自分が許せないなら、やっぱり幸せになるべきです。

罪を背負い意識して生きることは辛いです。でもさらに幸せを噛み締めたうえでその罪を背負うことはもっと辛いです。厳しいことを言っていると思いますが罪を背負うだけならリュー姉が所属していたファミリアの皆さんは納得しないと思いますよ。

罪を忘れろなんて、その手で殺めた人を忘れろなんて、過去を忘れろなんていいません。ただその手で幸せを、シル姉がリュー姉の手を取ったように、リュー姉が手に取りたいものを取ってもいいんですよ」

 

 

ハジメはその両手を頬から離して、そのままリューの両手を握った。冒険者だったとは思えない小さく守りたくなるような手。その手を握られたリューは

 

 

「……いいんでしょうか、こんな私が」

 

「はい」

 

「幸せを、温かさを求めても」

 

「はい」

 

「私は、私は一人で生きなくてもいいんですか。シルやミア母さんと一緒にいても……トキサキさんと一緒にいても」

 

 

 

「はい、いてください。

そして、リュー・リオン。僕は貴方の傍にいます」

 

 

 

不思議と涙は流れなかった。こんなにも嬉しいというのに、トキサキさんの腕の中で感情が高ぶって瞳から溢れそうになったのに流れることはなかった。きっと心の何処かでこうなることを望んでいたのかもしれない。私の大切な人の傍にいたいという、この幸せを手にしたいと望んでいたからと。

 

 

 

…………………………………………………………………………

 

 

 

「すみません、こんな時間まで」

 

「いえ、ここで大丈夫です」

 

 

結局夕日が沈み空が闇に染まるまであの場所にいた二人。すっかりと夜になり少し離れた場所からでも聞こえるほどにすでに豊穣の女主人は賑わっているようだ。

 

 

「今日は本当にありがとうございました」

 

「いえ、なんかデートらしいことは出来ませんでしたが」

 

「なら良かったのでわ?私は買い物に付き合っただけですから」

 

「そうでした、今日は買い物でしたね」

 

 

お互いに苦笑をする。変わらずに無表情なハジメだが気持ちは自分(リュー)と同じだと思っている。

 

 

「それではリュー姉、また明日」

 

 

そういって去ろうとするハジメの手を、リューは温かさに触れたその手でハジメの手を掴んだ。

 

 

「リュー姉?」

 

「私が最初に手を振り払わなかったのは、貴方で三人目です」

 

 

 

──なに、名前はリュー?言いにくいわね、今日からあんたのことをリオンって呼ぶわ!──

一人目は、自分を【ファミリア】に誘った活発な少女の冒険者。

 

──大丈夫?──

二人目は、冷たくなっていく自分に温もりを、居場所を与えてくれた心優しい酒場の少女。

 

 

そして、三人目が……

──はい、いてください。

そして、リュー・リオン。僕は貴方の傍にいます──

私に幸せを教えてくれた、いつまでも傍にいてくれると言ってくれた無表情な少年

 

 

「私のことは、「リュー」と呼んでください

私は「ハジメ」と対等でありたい」

 

 

「リュー姉」だとハジメと同じ道のりを歩けない。一緒に歩くのならとまずは呼び方からだと考えたようだが、

 

 

「はい、「リュー」。明日は早めに出勤してきますから一緒に買い物にいきましょう。確か「リュー」が言ってきた物が無くなりそうでしたから。そうです、お店が終わったら今度は僕が「リュー」の為に料理を作りますね。二人ともお休みが会ったときは今度はデートをしましょうね「リュー」」

 

 

まさかの連続で名前を言われると思わなかったリューは今までの中でも一番の真っ赤な表情で、

 

 

「貴方はもう少し遠慮ということを知るべきです!!」

 

 

前のように殴るわけもなく、本当にただの女の子ようにプイッと視線を外して、身体を豊穣の女主人への方向へ向けて歩きだした。

その姿をただ眺めていたハジメはリューの姿を見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。

 

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