影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
はい、更新遅れてすみません❗
言い訳ありません❗
こんな僕ですがこれからもよろしくお願いします。
それではどうぞ。
カキン、カキンと甲高い音が鳴り響く。真っ赤に燃え上がった鉄の塊が鎚に叩かれ姿を変えていく。何度も叩かれち鉄はまた業火の中に入れられ後、再び鎚に叩かれ鍛えられその姿を「刃」へと
椿はあの日からずっと工房で作業を続けている。
「……………」
あの日以来、すっかりと自信をなくしてしまった…ということにはならなかった。確かにこれまで積み上げてきたものが全て崩し落とされた。だけどそこにはただの瓦礫ではなく次に繋がるための土台があった。
そしてその土台にいま必死に【自信】を積み上げようと抗っているのだが、
「……ダメじゃ……」
途中でこのままだとダメだと分かってしまう。まだ完成もしない鉄の塊はただの鉄屑となってしまった。そうやってすでに
思い出してしまう…
自分の自慢の
あの輝いていた
それを思い出してしまうとどうしても自分の武器に魂を打ち込むことが出来ない。全て拒否しているあの力を、あの少年の似合う武器を、この手で作り上げるイメージが出来ない。
そんなことが頭を過ってしまい手が止まってしまうのだ。
「またダメだったみたいね」
「主神様……」
振り向くとヘファイストスが立っており、その手には2つのコップを持っていた。その一つを椿に渡して口に含むヘファイストス、それにつられるように椿もコップを口に運んだ。
「もう、よく分からぬ……ハジメという者を考えるとどうしても出来ぬのだ」
「今まで見たことのないタイプよね」
「一体……どうしたらよいのだ……」
「………………」
いつも生き生きと武器を作る椿がこんなにも自信を無くし迷っている姿は見たことがなかった。どんなに辛くとも自分を信じ打ち続けた椿だが、その信じてきた自信はあの時の、武器から光が消えてしまったあの光景が、全く武器に対して興味を示さないあの瞳が浮かんできてしまう。
ヘファイストスもその光景を見ている。見ているからこそ下手なことは言えなかった。あくまでもハジメの武器を作るのは椿であり、そこにヘファイストスがアドバイスをしてしまうとそれはもう違う武器に変わってしまう。それを一番嫌う椿に発言するつもりはない。
だが、ここまで自信喪失した椿を見たことはなかった。故に発言をしないのではなく、かけるものが浮かばなかったのだ。
だから武器に関してではなく、椿に対してアドバイスをかけることにした。
「迷っているのならちょっと外へ出なさい。
気分を変えるだけでも違うものが見えてくるわよ」
「……それで打てるとは思えぬ……」
「だからといってここに籠っても変わらないわよ」
「そんなことは分かっておる!!!」
大声を出しながら持っていたコップを地面に叩きつける。ハァハァと息を切らす椿、それだけでも追い込まれていることはハッキリと分かる。
「す、すまぬ…主神様……」
「いいのよ。私もこんな時にごめんなさいね」
今は一人にした方がいいと工房から去ろうと動き出すヘファイストス。扉に手をかけて工房から出ようとした時ふっと思ったことを口にした。
「……もしかしたら、ハジメという人を知らないから打てないのかもしれないわね……」
「……………」
「冒険者のレベルに違いがあっても本質的なものは変わらなかったけど、ハジメの場合はそれが見えてこない。なら、自分で見るしかないと思うのよね。まぁ、思い違いかもしれないけど」
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最近、リリはおかしいんじゃないかと思う。
いつものように冒険者に媚を売ってサポーターとして雇ってもらい、物のように扱われながらも最後には武器やドロップアイテムを盗んでお金に変える。たまに危険な目に合うときもあるが【シンダー・エラ】により姿を変えているため見つかることはない。
だから今回も同じようにするつもりだったのに…
どうしてダンジョンで稼いだお金を独り占めしないのか?
どうしてそんな当たり前のように簡単に大金を渡せるのか?
どうしてリリを他の冒険者のように「物」として扱わないのか?
不信があるのにどういうわけか未だにあの冒険者、ベル・クラネルの元でサポーターをやっている。一度武器を奪うことに失敗したのに、逃げることもせずにここにいるのは、こうして確かな収入を手にすることが出来るから?それともお人好しすぎるあの人に甘えてしまっているのか?
あの優しい笑顔が目に浮かび、否定するように首を左右に振って現実に戻る。とにかく明日はまたあの人とダンジョンに向かうことになっている。準備をするために買い出しに言っていたリリは明日に備えて早めに就寝しようと家に帰って来た。扉を開こうとドアノブに手を伸ばしそうとした時あることを思い出した。
(そういえば…あれはなんだったんだろう……)
ベルのサポーターになる前、突然酷かった部屋が綺麗になり置き手紙にかなり失礼な事が書いてあったあの日。
それからというものずっと警戒をしていた。特に下着は鍵がついた引き出しに入れるようにしていたのだが、あの日から全く変化がなった。
一体何が目的であんなことをしたのか?
ただの嫌がらせにしては意味が分からない、かといってリリに恩を売るためにしたとは思えない、むしろあの置き手紙は喧嘩を売っているとしか思えない。
(気にしても仕方ありません……とにかく明日も稼いでもらわないと……)
気づかないうちにリリは「盗む」という目的から「稼ぐ」に変わっていた。どちらともお金は手にはいるが無意識に心が痛まない方へ向かっていた。だけどそれももう終わりを告げることなんてまだ知らない……
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「………コレは、
「ぐ、ぐりもあっ?
な、何なんですか、ソレ……」
「簡単に言っちゃうと、
『発展アビリティ』なんて言ってもわからないと思うけど、とにかく『魔道』と『神秘』っていう希少なスキルみたいなものを極めた者だけしか作成できない、記述書なんだ……」
ヘスティアの手にあるのは昨日持ち帰った一冊の本。半分も読まずに寝てしまい、ヘスティアに起こされるまで熟睡していたようだ。「ベル君は勉強が苦手なのかな♪」と弄りながら今日ダンジョンに向かうベルのステイタス更新を行うと提案した。
ダンジョンでは何が起こるのか分からない。特にいま怪しいと感じているあのサポーターには気を付けたほうがいい、そう直感が囁いている。
そうやってベルを説得してステイタス更新を行ってみると、
《魔法》
【ファイアボルト】
・速攻魔法
とついこの前までなかったステイタスに新たに魔法が追加されていた。これにはベルもヘスティアも驚き今にも使いそうなベルを止めてお互いに落ち着かせた。
ダンジョンで試し撃ちにするにしろいきなり使うのはマズイ。かといって使うなと言っても使うのが男の子何だろうなーともう一人の男の子を思いだしどう説得しようかと悩んでいたところで、この本が目に留まり何気なく本を開き読んでみたところ、とんでもないことが発覚したのだった。
「君の魔法の発現はこれが理由か……。ちなみにベル君、この魔導書は一体どういう経緯で今ここに存在しているんだい?」
「知り合いの人に、借りました。……誰かの落とし物らしい、デス……」
「……」
「ネ、ネダンハ……」
「【ヘファイストス・ファミリア】の一級品装備と同等、あるいはそれ以上……
ちなみに、一回読んだら効能は消失する。使い終わった後はただ重いだけの
それを聞いたベルの額には大量の汗が、いや身体中に冷や汗が流れていた。見た目はそんな風に見えないのにこれがそんなスゴいものなんて……それも持ち主に返すことも出来ないなんて……
「い、今すぐに謝って…」
「何を言ってるんだいベル君!!
聞けば落とし物なんだろう、その落とした人が悪いんだよ!!!」
「で、でも……」
「よく聞くんだいベル君!!落とした人もそうだが、それを持っていっていいと言った者も悪いんだ。言うならばベル君は三番手であってまず罪には問われない」
「流石に都合がよすぎますよ神様!?」
あくまでもベルには罪がないと言っているヘスティア。それについてはもちろん嬉しいが真面目なベルからしたらそれは罪悪感が残りどうしても人のせいに出来ない。
本を手に取り謝りに行こうとするが、その本をヘスティアが掴み離さない。もちろんベルの方が力がありどんどん引きずられているヘスティアだが絶対に離そうとしない。
「…………何してるんですか?」
「は、ハジメ!!本から神様の手を外して!!」
「ダメだよハジメ君!!!ベル君を止めるんだ!!その本を持っていかれる訳にはいかないんだ!!!」
その痴話喧嘩みたいな状況を見たハジメは「ハァー」とため息をついて
「それでは終わったら教えて下さい」
「なんで立ち去ろうとしたるの!!」
「君はこの状況を見て何も思わないのか!!?」
「それを分かってるならちゃんと話し合えばいいだけですよね。
バカらしいことに巻き込まないでください、僕もその本を早く読み終わらないといけないんですから。今日返す予定がまさか本を読みながら寝てしまうなんて……失態です。神様がこっそりとお店のジャガ丸くんを食べてしまうぐらい失態です。ベルがサポーターを信じるあまりに任せていた分け前を誤魔化されてそれに気づかないほどの失態です。」
「出鱈目なことを言わないでよハジメ!!
リリが、神様がそんなことするわけないですよ!!」
「そ、そうだよハジメ君!神である僕がそんなことを………というか、ハジメ君。さっき君「その本を早く読み終わらないと」って言ったかな?」
「言いましたけど、なにか?」
その時のヘスティアの表情は、口をポカーンと開けた間抜けな表情はしばらく脳裏から離れなかったという。