影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか?   作:ガイドライン

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どうも。早くに更新出来ました。
それも今までの中では一番文字数長いと思います。
伏線を回収したり、伏線を張ったりと色々書いてます。
……これこの先大丈夫かなと思いながらもやっていきますので、分からないことは遠慮なく聞いてください。
それではどうぞ。




影の薄さはきっと、色んな影響を与える。

「本当、余計なことをしてくれたわ……」

 

 

暗く暗く、漆黒の闇よりも暗く、

深く、深く、抜け出せない闇の中で、

何も、誰も、生命そのものがいない中で、

小さく、小さく、響くこともなく、消え行く声

その姿を見えることはなく、現すことなく、

ただ一人、ある人を思う。

 

 

「あの子は、強くなる。きっと私よりもずっと」

 

 

だから許せなかった。あの子の力で成長する過程を異物(魔導書)によって変えられたことが。

あの子の器はすでに昇華できる。しかし、その芯たるものが見えてこない。まるであの子のカミカクシ(スキル)のような…

そしてその原因を【私】は知っている。それをどうすればいいのかも【私】は知っている。

だけどそれは、あの子が見つけなければいけないもの。そうじゃないとこれまでのあの子のやって来たことが無駄になる。

 

だから見極める必要がある。

あの子に身に付いた魔法(異物)が成長させる起爆剤になるのか、それとも成長の妨げとなる足枷になるのか。もしも後者なら、

 

 

「神と言えども()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

微かに微笑む表情、しかし微笑むといってもその顔は無表情そのもの。そうまるでハジメのような感じである。一歩、二歩と歩みを進めていき、抜け出すこともない闇の中を歩き続ける。

そして突然開けた明かりの下に出てきた者。まるで闇から光へ()()()()()()()()()()

そこはダンジョンであることは間違いないようだ。何故ならその場所には、目の前には一体のモンスターがいたからだ。

 

 

「あら、もしかして17階層辺りに出たのかしら?」

 

 

目の前のモンスターには見覚えがあった。そのモンスターはミノタウロス。その者との差は明らかでありミノタウロスが振るう拳が少しでも当たれば絶命するぐらいの力の差がみえる。

 

 

『ヴォオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 

ミノタウロスの咆哮。レベル1の冒険者なら怯み体が動かなくなるほどの威嚇。その者も逃げることもせずにその場を立ち尽くしてしまっている。

 

 

『ヴォオオオオオオオオオオウッ!!!!』

 

 

そしてミノタウロスはそれを嘲笑うように拳を振り上げてその者へと拳を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりダメね。モンスターには品がないわ」

 

『ヴゥオ!?』

 

 

そんな言葉が今度は確実に届いた。届いたといってもそこにいる地に這ったミノタウロスに届いただけである。何が起きたのかミノタウロスは分かっていないだろう。ただその者は自分に向けられたミノタウロスの拳を()()()()()だけだった。一度でも触れただけで絶命するだろう拳に対して2度触れた。

 

その2度触れたことがミノタウロスを地に這うことにさせたのだ。1度触れた時に体に異常を感じ、2度触れたと感じたときにはすでに地面にいた。

得体の知れない恐怖に恐れたのか、みっともない姿を去らせ出しているのにも関わらずにミノタウロスはその者から離れようと必死にもがいている。

 

 

「モンスターいえども【生】にすがるのね。

……そうだわ、それならその【生】をもっと感じさせてあげるわ」

 

 

もがくミノタウロスにゆっくりと近づくその者はさっきの立場が逆転したように、ミノタウロスに対してその手をミノタウロスへと向ける。

 

 

「生きたいのならもっともがいてみなさい。

あの子が味わったことを、皆知るべきなのよ。

そして願わくは、あの子の成長への糧にならんことを」

 

『ヴッ、ヴォ、ヴォオオオオオオオオッ!!!!!!』

 

 

無情にも響き渡るミノタウロスの咆哮は、まるでこれから始まる惨劇の合図だと後に知ることになる。

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

「何か聞こえたリリ?」

 

「いえ、私には何も。それよりも前から来てますベル様」

 

「今度は9匹か……」

 

 

順調にダンジョンを進んで9階層、すでに前回の半分の時間でここまでこれた二人の前には現れたキラーアント。しかしすでにキラーアントはベルにとっては準備運動にしかならなかった。

まずは先頭のキラーアントを一撃で仕留めたあと左右から攻めてきたキラーアントの足を即座に切り落とす。動けなくなった所で確実に急所を狙い仕留める。残り6匹は少し離れておりこれならとベルは右手をキラーアントに向けて

 

 

「ファイアボルトォォォ!!!!」

 

 

掌から放たれた炎雷(えんらい)は目の前のキラーアントをあっという間に殲滅させた。本来魔法とは詠唱を行った後で発現するもの。しかしベルの【ファイアボルト】は「速攻魔法」であり、その魔法の名を唱えただけで発現する魔法。

リリに話したらやはりこんな魔法は初めて見たようで、この魔法の威力とどのように使うかを決めるために()()()()()()使()()()()()

 

 

「やっぱり唱えるだけで発現する魔法みたいですね。すごいですよベル様。これなら不意討ちで魔法を使えるので奇襲にもってこいです!!」

 

「なんかそれは悪いような……」

 

「何を言ってるんですか!!ダンジョンで良いも悪いもありません!!それにこの魔法はベル様にとっての【切り札】です。不用意に使わないようにしてココだ!っていうときに使えるようにしないといけません。そのためにはまずこの魔法に慣れて、まるで手足のように使いこなさないと……」

 

「なんかリリって、本当の仲間みたいだよね」

 

 

ベルの何気ないその言葉にリリの体がビクッと揺れた。その言葉を言われて気がついたのだ。どうしてここまで私が真摯になって考えているのかと。そしてベルから言われた「仲間」という言葉はリリの心の奥へ突き刺さる感じがした。

 

 

「な、何を言ってるんですかベル様は。私達はあくまでも契約の元で一緒にいるだけですよ。それにベル様がもっと強くなったらさらにダンジョンの奥へ行くことも出来ます。それはつまりお金をもっと稼げるんです。私とベル様は利害が一致しただけの関係です。本当の仲間がお望みでしたら他の方を探してください」

 

「ご、ごめん…リリ……」

 

 

明らかに落ち込んでしまったベルに対してやり過ぎたと後悔するリリ。しかし言ったことは本当のことだ。私はベル様を騙して稼いだお金を誤魔化して盗んで、そして今日はベル様と決別すると決めたのだ。

しかし逆を言えば今日までのこと。いまここで士気を落とされて危険な目にあうのは困る。そう結論に達したリリはベルにも分かるようにため息をつき、

 

 

「しかしいまは私がベルの仲間です。お互いの命を預けあって一緒にダンジョンに潜ってこうして進んできたんです。ベル様はそれだけでは「仲間」とは呼ばないのですか?」

 

「そ、そんな事ないよ!!改めてよろしくねリリ!」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いしますベル様」

 

 

簡単に機嫌が治ったベルは10階層へ向けて歩き始める。その後ろをリリは歩きながら

 

 

(ベル様が悪いです。リリにあまりにも深く入ってきたから……だからこれでいいんです……)

 

 

その決意は揺るがない。今までの冒険者と同じだと言い聞かせてその冒険者の背中を追いかける。

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

「もうー本当になんだったんだロキのやつは!!!」

 

「……ごめんなさい」

 

「いやヴァレン某君が悪い訳じゃないんだよ……っていつの間に僕は僕のベルを取ってしまうだろう相手に話しかけてるんだ……」

 

「??」

 

 

これまでがあまりにも衝撃が強すぎた為に、恋敵であるヴァレン某(アイズ)と普通に話していた。いつもならその姿を見るだけで警戒するのだけど…分かってしまったのだ。黄昏の館で住んでから常に警戒して少しでも欠点がないか観察していたのに

 

 

「くそ!こんなに、こんなに良い子だと分かってしまったら……否定しようにも出来ないじゃないか!!

はっ!!?もしかしてこれもロキの策略なのか??あの貧乳め……」

 

「……大丈夫ですか?」

 

「いや大丈夫だよ。君とこう話してるのもあのロキ(貧乳)のせいだと分かったからね。だけどね!絶対にベル君は渡さないから覚悟しておくんだよ!!!」

 

「………はい」

 

 

よし!!と宣戦布告して満足なヘスティアだが、アイズは訳も分からずに返事しただけである。伝わっていないことに気づいていないヘスティアはアイズと共にお昼からのバイトに向かって歩いていた。

すると目の前にからこちらへ向かってくる一人のエルフ。それも見覚えのある姿にヘスティアをジィーと見つけてすぐそばに近づいた所で

 

 

「ここで会えて良かったですヘスティア様。それにアイズさんにも会えるなんて…」

 

「確かエイナ君だったね。どうしたんだこんなところで?」

 

「ベル君は今日ダンジョンに行ってますか!?」

 

「それは行ってるけど…ベル君がどうしたんだい?」

 

「先ほど偶然に聞いたんですけど……」

 

 

そこで語れたのはソーマファミリアの会話だった。そこにはベルのサポーターであるリリが同じファミリアからお金を催促されていること。そしてそのリリが今日ある行動に移すだろうということ。

 

 

「一体何をするのかは分かりません。ですが間違いなくベル君に何かが迫っていると思われます。私ではクエストを頼めません。ですからこうしてヘスティア様の元へ急いでいました」

 

「……何かあるとは思っていたけど…ベル君……」

 

 

いくらロキファミリアの訓練を受けていようが不意討ちをされたらどうなるのか分からない。何よりもベルは純粋である。そこに漬け込まれた結果だと知ったらベルは……

そんなことを考えているとエイナはアイズの方へ

 

 

「こんなことをお願いするのはおかしいと分かってます。ですがお願いします。ベル君を助けてくれませんか!!」

 

 

勢いよく下ろされたエイナの頭に思わず目を開くアイズ。それを見たヘスティアは

 

 

「僕からも頼むよヴァレン某君!!ベル君を助けてくれないか!?」

 

「でも、私はヘスティア様の護衛を…」

 

「ベル君の為ならバイトだって休むさ!!黄昏の館で大人しくしている。なんならロキと仲良く……するように努力だってするさ!!だからお願いだ!!ベル君を助けてくれないか!!!」

 

 

その勢いのまま頭を下げようとしたヘスティアの前にアイズが

 

 

「分かりました。私も心配だから」

 

「本当ですか??」

 

「ありがとうヴァレン某君!!」

 

「それじゃ、行ってきます」

 

 

流石一級冒険者というべきなのだろう。あっという間に走り去ってしまったアイズ。その走り去る前、表情が軽く微笑んだように見えたが気のせいだろう……

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

「アイズには悪いことしたな」

 

「仕方ない、これもヘスティアファミリアを守るためのことだ。それにバイトでジャガ丸くんをつまみ食いするのが目に見えている」

 

「アイズはアレには目がないからの!!」

 

 

ロキファミリアの遠征。

構成員とし一級冒険者のみが選抜されたこの遠征は「ダンジョンの調査」をするためのものだった。すでに50階層まで進出したロキファミリアだが未だにその階層全てを見回ったわけではない。もしかしたら新しい道、新種のモンスター、珍しいアイテム、セーフティゾーンが見つかるかもしれない。

普段なら遠征のためにヘファイストスファミリアの一級鍛治師と共に遠征へ向かい武器や防具の調整などをしてもらうのだが、あくまでも今回は中層の調査をするためものである。なので少人数で一級冒険者である彼らが選ばれたのだ。

 

 

「チィッ、なんで今さら中層の調査なんか…」

 

「未だに「あの時の現象」が何なのか分かっていない。ギルドに要請はしたが調査は難航しているようだ。ならば経験者である私達がというのが今回の調査だ」

 

「でもそれならなんでハジメはいないわけ??」

 

「言っておくがハジメはまだレベル1だ。いくらゴライアスを倒せる実力があってもそう簡単には中層に連れていくわけにはいかない。フィンは調査に連れていくようだったが私がそれを止めたのだ。それとも何か?何か意見があるなら話を聞くが……」

 

「う、ううん。何にもありません!!」

 

 

リヴェリアの凄みにティオナはそれ以上何も言わない方がいいと判断した。これがよくロキが言っていたお母さん力かぁーと感じながら

 

 

「今日はベルもダンジョンに行ってるんだよね。フィンにリヴェリアにガレスにベート、四人の先生から訓練されてるんだから10階層ぐらい楽勝なんじゃない」

 

「そういう油断が命取りになるって知ってるわよねティオナ」

 

「もう!揚げ足とらないでティオネ!!

でもベルってもうレベルアップしてもおかしくないよね。どうしてレベルアップしないんだろう?」

 

「どうなんだろうね。確かに器は出来上がっている。しかし何かが足りない…いや妨げているというべきなのか……」

 

「フィンも同じように感じていたのか。訓練中どうしても「何かから抜け出せない」という感じが見えていた。恐らくそれが原因だろう。しかしそれはベル自身が抜け出すしか、乗り越えるしかない」

 

「そうだよね。あぁ、ベルもハジメも早くレベルアップしないかな~」

 

 

そんな事を言っていると遠くからざわつき始めた。なんだろうとティオナが振り向くと道の奥から土煙を上げて近づいてくる何かが……

 

 

「……アレって、アイズ?」

 

「なに??まさかヘスティア様の警護を無視して遠征に行くつもりか?」

 

 

リヴェリアも振り向いてみると向こうからアイズがトップスピードで近づいてくるのが分かる。だがさっき自分が口にした遠征に付いてくるとは何かが違うように見えた。

 

 

「なんじゃい、なんか必死になっとるように見えるぞ」

 

「そのようだね。おーいアイズ、どうしたんだい?」

 

 

アイズもフィン達に気づいたようでトップスピードから減速をして合流をした。トップスピードで走った割には汗一つかいてないとは流石一級冒険者だというべきだろう。

 

 

「おい、アイズ。いくら遠征に行きたいからってトップスピードで走ってくるなんてなに…」

 

「もうベートうるさい!!どうみても違うでしょうが!!」

 

「そうですよ!!アイズさんは遠征に行きたかったのにキチンとヘスティアの護衛に勤めたのです!!ここに来たのだって訳があるんですよ!!!そうですよねアイズさん!!」

 

 

レフィーヤの熱の籠った言葉に一瞬「あっ」という表情になりかけたがグッと堪えて本来の目的を話すことにした。いまベルと共にダンジョンに向かっているサポーターが何かを起こす気だということ。そしてそのサポーターはソーマファミリアであり、金銭的にかなり困っており追い詰められているようだということを話した。

 

 

「ロキから話は聞いていたが…」

 

「そのサポーター、バカじゃねえのか?あの兎の奴から俺達がいるって聞いてねえのか??それとも分かってやってるのか??」

 

「あぁ~それ多分分かってないよ。この前ベルと話したんだけど「全然信じてくれなかったんですよ!!」って嘆いていたもん」

 

「ベルみたいに純粋な子なら騙されている、なんて考えるわよね。それもロキファミリアから訓練を受けているなんて話したら、同じ立場だったら信じてないわよ」

 

「なるほど。やはり普段のダンジョン探索から一人でも護衛につけるべきだったか。ベルという人柄を含めるべきだった」

 

「そんなこと言っている場合ではないぞフィン。ベルがダンジョン向かった時間を考えると恐らく10階層に到着しているはずだ。あそこは霧が出て視界も悪い、不意討をかけるならそこが一番適している」

 

 

その話を聞いたアイズは一目散にバベルへ入っていった。後ろから声が聞こえたがそんな事は気に止めなかった。いまアイズの頭の中ではベルの安否しかなかった。

 

 

(無事でいて……)

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

「なんていう奴じゃ…

これでは本当に武器も防具も必要ではないではないか……」

 

「ですから初めから言ってましたよ?」

 

 

椿と共にダンジョンに潜っているハジメは先ほどまで『オーク』『バッドバット』『インプ』の群れを相手していた。椿としてはここでハジメの【本質】を見極めようとしたのだが失敗に終わった。

 

理由は簡単である。()()()()()()()()()()()()からである。

 

モンスターから攻撃は全て一時停止のより完全防御。そして喰らった衝撃をそのままお返ししているだけ。周りから見たらただ佇んでいるハジメにモンスターが群がり自滅しているようにしか見えない。

まるで光に集まる虫がその光の熱に殺られているのと同じだと感じた。

 

 

「しかもその「石火」という短剣。完全に使い物にならん筈なのにモンスターに貫通しておるし……」

 

「力業なんですけどね」

 

「何なんじゃおぬしは!!これでは手前は何も作る必要がないではないか!!!」

 

「ですから作らなくてもいいといったんですけど」

 

「ふざけるではない!!そんな事をしたら手前のプライドが許さぬ!!絶対に作ってやるから覚悟しておけ!!!!」

 

「ということはまだ潜るんですね」

 

 

やっと帰れるかと思いきやまだ諦めていない様子の椿の姿を見ながらため息をつき、次にハジメ達が向かうのは9階層。

 

 

「もうベル達に会っても良い頃なんですが…どうやらかなりのペースで進んでますね」

 

「それをおぬしがいうのか?おぬしこそ本当にレベル1なのか疑わしいぐらいのペースで潜っておることに気づいておるか?」

 

「そうなんですか?ベルと一緒の時は合わせて潜ってましたし、アイズ姉の時は同じスピードだったので特に気にしてませんでした」

 

「いや一級冒険者と同じペースの時点でおかしいと……思わんからこうしておるんじゃったな……」

 

 

あの時はアイズもリヴェリアも特には何も言ってこなかった。それもそうだ、あの時はハジメの一時停止に驚いており、尚且つハジメのようなレベル1と一緒にダンジョンに潜る機会もない。なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

椿は武器の試し切りなどでこういう機会もあったからこそ言えるのだが、それでも初めは普通のペースで潜っていたために気づくのが遅かった。

 

 

「しかしどうしてベルと一緒に行かぬ。おぬしの実力なら三人でいけば中層へもいけるだろう」

 

「それは無理ですね。リーリが隠し事している間は一緒にいけません。というか僕の姿は見えませんから」

 

「確かそれがおぬしのスキルだったの。なるほど信用に値せぬものと共に行っても三人ではなく二人になるの」

 

「はい、まぁベルにはある意味()()()()()()()と思ってリーリと一緒にダンジョンに潜ってもらってますが……さて、そのソーマファミリアはどうしてくれましょうか………」

 

「な、なんじゃい、おぬし……なんか急に雰囲気が変わったぞ……」

 

「すみません、ちょっと苛立つことを思い出しまして」

 

 

平然としているように見えるハジメだが、未だに頭の中ではソーマファミリアを文字通りに【消し去ろう】と考えていた。だがリューに嫌われたくないという理由が今のハジメをとどめている。

もし、そのとどめているものが決壊したら恐らくソーマファミリアは……

 

 

「!!!?」

 

 

突然何かを感じたハジメ。殺気や視線、虫の知らせとは違う、何かを忘れていた大事なモノを突きつけられたような感覚が……

 

 

「どうしたんじゃ手前。よく分からんが気分が悪そうに見えるの」

 

「大丈夫です。ちょっと何かを感じたような気がしたので」

 

「特にはなかったが…気を付けた方がええかもしれんな。大体こういうのは生死に関わることが多い。おぬしではなく周りかもしれんしの」

 

「……ならツバッキーも危ないですね」

 

「そうじゃな!!しかしおぬしの武器や防具を作るためじゃ!多少の危険なぞ知ったことか!!」

 

 

高笑いしながら先頭を行く椿。その姿を見ながらさっきの感覚についてハジメは何か思い出しそうとしていた。しかし何かが引っかかりそれ以上思い出せないと感じたハジメはそれを頭の片隅に残しダンジョンの深みへと歩みを進めた。

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

「ふふふ、面白くなってきたわ」

 

 

『神の鏡』と呼ばれる、下界で行使を許された『神の力(アルカナム)』がある。本来は天界から下界を覗くための千里眼めいた一方通行の能力。

神が催しのみしか使用を許されていない、バレたら即刻天界へ強制送還である。

しかしそれでもフレイヤは『神の鏡』を使用していた。

周囲にいる(おとこ)を誑しこみ『今日1日限り』『どの【ファミリア】にも不利益をださない』『ダンジョンの一部分』という誓約のもと、リスクを承知で一本の抜け道を作り出していたのである。

 

 

「さぁ、私に見せてあなたの輝きを。あなたの魂の輝きを」

 

 

これから始まるだろう一戦。

見逃すわけにはいかない。

全てはベルの魂が、その魂の輝きを見るために。


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