影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
どうも!!
結構早く更新できました。
やはり盛り上がるところは一気に書けますね。
久しぶりに「とある」も更新しまして、「あっ、こんな感じて書いていたなー」と思い出して昔の感覚が百戸ってような気がします。
よし、この調子で更新頑張ります‼
「ヘスティア…ファミリア……」
確かにそう名乗った。ベル様と同じファミリア。
いつかベル様が紹介してくれると言ってくれた仲間
その人がいま、見えないけどいまここに、いる。
するとキラーアントの群れの向こうから声が聞こえてきた。
「こらー!!!儂を置いて先に進むではない!!!」
「すみませんツバッキー。後始末はよろしくお願いしますね」
「ふざけるではない!!あぁーもぅー!!手前ら邪魔じゃー!!!」
椿は手に持った刀でキラーアントを切り裂いていく。
先ほど殺られた冒険者とは違い、苦戦することもなくただ邪魔だから切るという発言道理に動作をしているだけ。
(す、スゴい……キラーアントを簡単に……)
今まで冒険者と一緒にダンジョンに潜ってきたがあんなに強い人は見たことない。ならいまこっちに向かってきているのは、
(……一級冒険者……それもツバッキーって…何処かで……)
そんな事を考えているとキラーアントの群れを一直線に切り開いてきた椿は、ハジメが停止させたキラーアントを飛び越えて安全圏へと入ってきた。
「どれだけキラーアントを呼び寄せとるのじゃ!
儂とてあれだけの数は骨が折れるぞ!!」
「ご苦労様です。ですが後ろ見てください」
「なっ!?」
この安全圏を作った
「き、気持ち悪い!!」
「もう少しリーリと話すことがあるので少しの間よろしくお願いします」
「それを後回しにして手伝わんか!!って、無視をするな!!」
ハジメの姿が見えないのでどういうことが起きているのか分からないが、どうやらこの女の人を無視して
無視をされた椿は「覚えておれ!!」と叫びよじ登ってくるキラーアントを左右に移動しながら安全圏に侵入されないように撃退している。
「足が、足が気持ち悪いのじゃ!!はよ、話すことを話して手伝え!!!」
「了解です。
さてリーリ、君には聞かないといけないことがあります」
この状況下でハジメがリリに聞きたいこと。
なんとなく、いや、言われることが想像出来ていた。
きっとここにいないベル様ことだと。
ならどうしてここにいないのかと。
何故一人でいるのかと。
それを聞かれたらもう素直に話すしかない。
誤魔化してその場をやり過ごそうが、正直に話そうがきっとどちらとも同じ罰を受けることになる。
なら、ここは正直に話してしまおう。
そう決めたリリはゴクリと唾を飲み込みその言葉を待った。
「リーリ、君は、
ちゃんと年齢に応じた下着履いてますか?」
「貴方があの時の犯人ですかああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「何を変態じみたことをいっとるのじゃ手前はああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
それはもうこの絶叫でキラーアントを倒せるじゃないかと思うぐらいの大声を上げる二人。現にキラーアントが少し後退をして何故か進行を躊躇っているようだ。
それを確認したのか、もう言わずにおれなくなったのか、椿はハジメの所に近寄り胸元を掴んで吊り上げた。
「そんな下らない事を言うために儂にあんな気持ち悪いものと戦わせておったのか手前は!!!」
「重要ですよ?」
「下らない事とは何ですか!!?この人は人の部屋に無断で入って来たんですよ!!!それも勝手に乙女の部屋を物色して下着まで見られたんですから!!!!」
「女の子が住むにはあまりにも酷かったもので」
「酷いのは手前の頭じゃ!!!」
「酷いのは貴方の頭です!!!」
正直殴ってやりたかったが攻撃が効かないと分かっている椿は、考えも無しに安全圏からハジメをキラーアントの群れに向かって投げ飛ばした。
姿が見えないリリだが、椿の動作を見てそこにハジメがいることは分かっていた。しかしそのハジメが椿の手により投げ飛ばした動作を見てしまうと流石に血の気が引き
「な、な、何をしているんですか貴女は!!!
確かに死に値することをしましたけどキラーアントの群れに投げなくても!!!あのままだと死んじゃいますよ!!!」
「…なんじゃ、手前は優しいの。
あれぐらいのことをせんと腹の虫が収まらぬと思っておったが」
「し、下着を見られたのは嫌でしたが…部屋はもう快適になりましたので………って、言っている場合ではないですよ!!!はやく助けないと!!!」
「心配入らぬ。あれぐらいで死ぬなら儂は苦労しとらんわ」
それはどういう意味なのかと思っていると飛ばされた位置から突然に土煙が上がり、次の瞬間にはキラーアントの群れの一部が直径三メートルの穴を開けるように
比喩でもなんでもない。言葉の通りにキラーアントの群れが何かに押し潰されたように倒されたのだ。
そして次から次へと同じように群れが潰され丸い穴が空いていき最終的にすべてのキラーアントが潰された。
唖然としていたリリの近くに何が落ちてきた音がし、そこへ椿が近寄っていき、
「手前、一体何をしたのじゃ?
あんな倒し方見たことがないぞ」
「空気を一時停止させた後にその上から止めていた衝撃を解除さてました。するとまるで階層主級に潰されたみたいになります」
「……全然参考にならん戦いじゃ……」
はぁーとため息をつく椿。だがリリはそれどころではなく、
「く、空気?一時停止??衝撃???
一体何を話しているのですか??」
「リーリは知らなくてもいいですよ」
「いや、あんなの見せられて!!」
「それより言わないといけないこと、ありますよね?」
それには思わず身体がビクッと反応した。さっきの衝撃的な発言で忘れていたがリリにとっては未だに危機から逃げていない。仲間であるベル様を置いてきたなんて、それも盗むことを目的として近寄り、自分の身が危ないと感じてベル様を窮地に追い込んだなんて……
「そ、それは……」
「でも僕に話しても何も解決しませんし、こういうのは本人に話さないといけませんね。ということでベルベルがいるところまで案内お願いします」
「えっ??で、でも…ベル様は………」
「何をしたかは聞きませんよ。聞くとしても僕の目でリーリの目で確認してからです。まぁ、大方
「ッ!!!??」
図星に身体がまたビクッと震えた。いやそれだけではない。いま自分の身に起こったことを自分がベルにしたという現実が襲いかかってきた。あの恐怖を孤独をベルが味わっていると思うと、罪悪感や孤独感や恐怖が頭や心を埋め尽くしていく。
だから気づかなかった。その言葉を聞いてビクッと震えただけではなく今もずっと全身が震えて顔が青ざめていることに。
「あら?当たってしまいましたか」
「んな呑気に言っている場合かあ!!
手前の仲間は手前とは違い普通の
すると椿はリリの胸元を掴んで吊り上げ
「言え!!はよ行かなければ並みの冒険者では死ぬぞ!!!」
「……もう…無理…ですよ……」
「!!!手前はぁ!!!!」
思わず手を出してしまう椿に対してリリは目を瞑らなかった。こうなることは分かっていた。リリはダメな子だから仕方ない。それにベル様を殺してしまったのだから暴力されても…
「はい、ダメですよツバッキー」
「なっ!!?止めるなハジメ!!!」
何をしたのか分からないが当たるハズの拳が途中で止まっていた。それも拳を受け止めて止めたようには見えず、まるで拳そのものを、攻撃を、動きを止めてしまったような止まり方をしている。
「こんな事をする前に確認です。
確認しないことには何も始まりませんから」
「手前はそれで良いのか!!?
間違いなくこの手前は仲間を裏切り、さらに何かの方法でモンスターを大量に呼び寄せて一人にしたのだぞ!!!
それがどういうことか、手前でも分かるはずじゃ!!
なのに何故そんな冷静でいられる!!?手前は仲間ではないのか!!!!」
そうだ。この姿の見えない冒険者はおかしい。
仲間が死んだかもしれないのに、こうしてその原因が目の前にいるのにどうして冷静にいられるのか?
あのベル様のお仲間ならきっとベル様を大事にしていると思ったのに……
「大丈夫ですよ。今日ステイタス更新したそうですから。それに
「確かにステイタス更新すれば強くはなる。だが、」
「とにかく行きましょう、見てみれば分かります」
その自信満々な言葉と冷静な態度に椿はこれ以上は言わなかった。もしかしたら何かあるのかと思ってしまったのか、呆れてものが言えなくなったのか…
何も言わずに掴んだ手を離してリリを解放した。
それと同時に椿の腕自体も動くようになったようだが、リリはそれどころではなく未だに顔が青ざめていた。
すると何処からか声が、見えない冒険者から、優しい声が、
「ベルベルなら大丈夫ですよ。
なにせ
「………誰ですかそれ……」
その声は、更なる不安しかなかった。
………………………………………………………………………………
「そ、それでは貴女はヘファイストス・ファミリアの団長なのですか?」
「そうじゃ、団長の椿・コルブランドじゃ」
10階層に走りながら自己紹介をしてもらったリリは衝撃を受けた。ヘファイストス・ファミリアといえばヘファイストスが主神であり、鍛冶の神としては他の追随を許さないほどの技術を持っており、それに裏打ちされたヘファイストス・ブランドは冒険者の間で最も信頼が厚いと言われている。
その中でも【ヘファイストス・ファミリア】の頂点に君臨するのが椿・コルブランドであり名実ともにオラリオ最高の鍛冶師。ダンジョンで自らの武器の試し斬りを続けたことで強くなり、鍛冶師でありながら第一級冒険者級の戦闘力を誇ると聞いたことがある。
そんな凄い方がどうして名も知れないファミリアの、それも聞いた話だとレベル1の冒険者と一緒だなんて……
「どうして椿様が、その……えーと……」
「言いたいことは分かるわい。しかし手前もさっき見たはずじゃ、あれはレベル1ではありえん力だと」
「そ、それは……」
「まぁ、一番の理由はそんな規格外の奴の武器や防具を作ってみたくなったのじゃ!!それだけでは理由としては弱いかの??」
「い、いいえ!そんなことはないです!!!」
それだけの理由とはいうがきっとそれは自分では想像できないほどの思いがあるのだろうとリリは感じた。
実際椿は規格外すぎて何をどうしたらいいか分からなくなっている。だなんて言えない。言う必要がない。
そこからしばらく黙ったまま走っていたが、
「リリと、申したな。儂はまだ手前を
「は、はい……」
「それでもこうして一緒におるのはベル坊の安否を確かめるためじゃ。もし最悪、いや、冒険者としての生命が絶たれておったら……儂は手前を切る」
「ッ!!!」
分かっていた。分かっていたいたがこうもハッキリと言われると恐怖で身体が動かなくなりそうだった。恐怖で息を止めてしまいそうだった。それでも心の何処かでベルの無事を信じている希望があるからなのか…その足を止めずにすんだ。
「何を言っているんですかツバッキー」
「手前は黙っとれ。
手前のファミリアの問題だということは分かっとる。
しかし儂は手前のように冷静ではいられぬ。この感情を押し殺したままではおられぬ。やったらやり返すなどと子供じみたことだとは分かっていてもなお儂は……」
「ツバッキーはいい人ですね」
「な、なんじゃいきなり!!!??
大体手前が罵声の1つでも言わんから儂が!!!」
「……そこまでいうのでしたら1つ」
何故だろう。さっき椿様が怒ったような恐怖の感じではなく、冷たく、痛く、まるで氷のようなものがリリの周りを………
「この先、また同じようなことをしたときは止めます」
「……えっ、それは……どういう……」
「言葉の通りですよ。
分かった。分かってしまった。
これは殺気だった、それも氷ように冷たく、肌にヒリヒリと感じる、本当に
それを感じた時にはリリの足は動かなくなり、呼吸さえも忘れてしまい、その場に倒れてしまった。
「お、おい!!!」
「……やっぱりやり過ぎましたね……」
「なんじゃさっきの殺気は!!?」
「うまいですねツバッキー。「さっき」と「殺気」をかけたんですね」
「て・ま・え・はー!!!!」
「すみません。どうも昔から感情をコントロールするのが難しくてですね。とくにこういう感情を出すときがやり過ぎてしまいまして」
だから抑えていた。
なんて言葉では簡単だが感情をそうも簡単には抑えることが出来るのか??そしてコントロール出来ないほど強い感情を持っているということなのか?
しかしそれ以上は聞かなかった。
そこからはプライベートなことであり、きっとハジメも聞かれたくないだろう。
そう思いとにかく倒れたリリを背中で担ぎあげた椿は
「しかし手前が起きんと正確な場所が分からんぞ」
「……そうでもなさそうですよ」
小さな声で言ったハジメに何かあるのかと言葉を止めて静かに耳を澄ませてみた。すると遠くの方からザザザザと何かが駆けるような音と、ザスッと肉を裂くような音が響いてきた。
「どうやら近いみたいですね」
「急ぐぞ!!」
その音は恐らく10階層の入り口から聞こえて来るものだろう。そしてその音は恐らく………
音が聞こえてくる距離だからだろう、10階層に近づいてきたようで二人の視界では遠くの方に小さな光が見えていた。
洞窟を走り抜けて拓けた所に出てきたら突然に眩い光が視界を奪った。あまりの眩さに一時見えなくなっていたが少しずつ視力が戻ってきた。そしてそこで椿が見たものは、
「こ、これは……」
そこには恐らくオークと思われる真っ黒に焦げた三体の死体があった。そしてその前には息を切らしているベルは未だに戦闘態勢を崩さずにいた。そうまだ周りにはオークが複数存在している。
「ぶ、無事であったか!!いま手助けに」
「ダメですよツバッキー。手を出さないでください」
「な、何を言っておる!!?もう立っているのもやっとではないか!!」
「ダメです。いまベルベルは戦っているんです。
そしてそれは……リーリがキチンと見ないといけないことなんです」
その言葉に椿の背中で動きがあった。それを感じた椿は何も言わずにしゃがみこむとリリはゆっくり背中から降りた。未だにその目で映る光景が信じられないのか確かめるように一歩一歩ともっと見える場所へと歩きだす。
「……うそ…です……」
信じられなかった。確かにそこいらのレベル1よりもベルは強いと思っていた。だが、それでもレベル1の枠から離れているなんて思っていなかった。そしていま息を切らしながら再びオークへ駆け出すベルは
「…あの方は…本当に…本当にレベル1なんですか……」
「そうですよ。間違いなくレベル1です」
「でもあの動き、スピード、判断、力どれもレベル1なんて思えません!!!」
「それはそう感じますよね。ステイタスには
あっ、ステイタスに影響してないというわけではないですよ。ただですね、いまのベルの戦い方は間違いなくレベル1ではないでしょうね」
そんな屁理屈で…と思うが現に、今現在ベルはオークと戦っている。そしてそのオークを
「……圧倒している……」
囲まれた状況にも関わらずにベルはまるで何処から攻撃が来るのか分かっているかのように回避して、そのままスピードを上げて確実な急所を狙い攻撃が当たる瞬間に力を一気に加えて致命傷を与える。それを繰り返しながらあっという間に囲んでいたオークを全滅させた。
しかしまだ正面には五体のオークが近づいていた。
そしてベルはもう倒れそうである。あれだけ動けばもう倒れ込んでもおかしくないのにまだ立っている。
「……こを……け………」
何かを言い一歩、一歩とオークに向かって歩く。それを見ていたリリも思わず駆け寄ろうとしたが何かに遮られた。
「なっ!?ど、退いてください!!もう十分じゃないですか!!ベル様はもう」
「いえ、まだです。ベルベルはまだ立ってます。そしてまだ戦おうとしてます」
その言葉にリリはもう一度ベルの方を見る。未だにベルはオークに向かって歩いている。もしかしてベルは「逃げる」という選択肢が見えていなく「オークを倒す」と言うことしか見えていないのか?
「……そこを…どけ……」
「……えっ……」
違う。ただ倒すだけならそんなセリフは言わない。
ならどうしてオークが何かに対して
「……リリを……リリを助けるんだ……」
「……べ、ベル…様……」
自分の名前を言われてやっと分かった。
一体なんの為にわざわざオークと戦っているのかを
「……リリは苦しんでいるんだ……苦しまなくてもいいのに……苦しんでいるんだ……」
「……私の……私……は……」
逃げてもいいのに、ベルはオークから逃げない。
逃げたらリリを助けられないと思っているから。
すでに満身創痍で思考もまともに働いてなくても、ベルはただリリを助ける為に、
「……だから…だから僕は……そこから助けないといけないんだ……もう…リリを苦しませないためにも……僕は………」
あんな酷いことをしたのに。裏切ったのに。
お金を騙し取ったのに。大事なナイフも盗んだのに。
ベルはまだ、疑うこともなく、大切な仲間を、リリを、
「そこを、どけええええええぇぇぇぇっ!!!!」
助ける為に戦っているのだ。