影が薄くてもダンジョンを攻略する。のは間違っているだろうか? 作:ガイドライン
ただしばらくは書けないかも、もう一つの小説を進めたいのでよろしくどうぞ。
ベルと一緒に食事をしてさて休憩を終えようしたころ、どっと十数人規模の団体が酒場に入店してきた。
その団体――ファミリアの主神を筆頭に小人族、アマゾネス、狼人、エルフ、ドワーフ、ヒューマンと他種族同士が案内された席へと歩いていく。
「ッ!!」
「どうしましたベルベル」
『豊穣の女主人』に入ってきた団体はオラリオ最強の一角【ロキ・ファミリア】
そのなかでも一人、ずば抜けてオーラの違う者が、其処らの女性よりも、美しい、綺麗、そういう言葉がしか当てはまらない女性冒険者がお店へと入ってきた
「……おい、もしかしてあれ……」
「…あぁ…巨人殺しのファミリア」
「第一級冒険者のオールスターじゃねえか」
「じゃ、あれが【剣姫】なのか……」
どうやらお客と同じようにベルベルもあの剣姫を見ているようだが、お客とは違い見る目が違うことに気づいた
「……へぇ、ベルベルは見る目はあるんですね」
「な、なに言ってるのハジメ!!!」
「いいんじゃないんですか、夢は見るものですから。それからどうなるかは知りませんが」
「フォローしたいの!!?落としたいの!!?」
誤魔化しているが明らかに好意があるのは分かる。すると休憩しているハジメに向けてミアが
「坊や!!仕事だよ!!いま入ってきた客に持っていきな」
「分かりました、それじゃベルベル楽しんで」
「う、うん……」
未だに真っ赤なベルは空返事をしながら料理を食べている。その様子に特に気にも止めずにハジメはミアから料理を受け取り先程来たお客「ロキ・ファミリア」のテーブルに料理を並べる。
「うおっ!!!料理がいつの間にかある!!!」
「おぉ!!!今日は「ステルス」がおるか!!!
相変わらず訳の分からん奴やな、この神でも見抜けないなんて一体なんやホンマに……」
その名前はハジメがバイトを始めてから一週間もせずに付いた名だった。誰にも気付かずにテーブルに料理が運ばれ知らないうちに空になった皿が無くなっている。
初めはオバケとか幽霊とか騒がれていたが、ミアから従業員になにいってるんだい!!と激怒されてそれからお客の間では存在するが見えないという意味をこめて「ステルス」と名付けれた
「それはともかく、ダンジョン遠征みんなごくろうさん! 今日は宴や! 飲めぇ!!」
主神であるロキ様のもと、ロキ・ファミリアの宴が始まった。それからベルは目を皿のようにしてヴァレンシュタインさんを見つめていた。まるで夢心地のような表情に先程とは違う意味で笑みがこぼれる。
ハジメはというと次々と注文された酒や料理を運んでいた頃、宴が半ばに差し掛かりヴァレンシュタインの向かいの狼人が声を張り上げた
「そうだ、アイズ! お前のあの話を聞かせてやれよ!」
「あの話……?」
ヴァレンシュタインさんは心あたりがないのか首を傾げる。
「あれだって、帰る途中で何匹か逃がしたミノタウロス! 最後の1匹、お前が5階層で始末しただろ!? そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」
その瞬間、ベルが凍りついたように動きを止めた
「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐに集団で逃げ出していった?」
「それそれ! 奇跡みてぇにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたのによ~」
ハジメは未だにこの話がベルのことを言われていることに気づいておらず料理を運ぶ
「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせぇ
抱腹もんだったぜ、兎みたいに壁際へ追い込まれちまってよぉ! 可愛そうなくらい震え上がっちまって、顔をひきつらせてやんの!」
「ふむぅ? それで、その冒険者どうしたん? 助かったん?」
「アイズが間一髪ってところでミノを細切れにしてやったんだよ、なっ?」
「……」
「それでその震えてた方、あのくっせー牛の血を全身に浴びて……真っ赤なトマトみたいになっちまったんだよ!」
「うわぁ……」
「アイズ、あれ狙ったんだよな? そうだよな? 頼むからそうと言ってくれ……!」
「……そんなこと、ないです」
「それにだぜ? そのトマト野郎、叫びながらどっか行っちまってっ………ぶくくっ! うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのおっ!」
ちょっと落ち着いてきたのでハジメはベルの所へ向かおうとしたのだがどうもがおかしい。
「しかしまぁ久々にあんな情けねぇヤツラを目にしちまって、胸糞悪くなったな。野郎のくせに、泣くわ泣くわ」
「……あらぁ~」
「ほんとざまぁねぇよな。ったく、泣き喚くくらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ、なぁアイズ?」
「ああいうヤツラがいるから俺達の品位が下がるっていうかよ、勘弁して欲しいぜ」
少しずつベルの表情が悪くなっていく。それに伴ってさっきから聞こえてくる声が、言葉が、耳に入ってくる
「いい加減にそのうるさい口を閉じろ、ベート。
ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。巻き込んでしまったその少年に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利はない。恥を知れ」
「おーおー、流石エルフ様、誇り高いこって。でもよ、そんな救えねぇヤツラを擁護して何になるってんだ?
それはてめえの失敗をてめえで誤魔化すための、ただの自己満足だろ? ゴミをゴミって言って何が悪い」
ほうーなるほどこの話の題材はどうやらベルのようだ。
「アイズはどう思うよ? 自分の目の前で震え上がるだけの情けねぇ野郎どもを。あれが俺達と同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?」
「何だよ、いい子ちゃんぶっちまって。……じゃあ、質問を変えるぜ? あのガキどもと俺、ツガイにするなら誰がいい?」
「うるせぇ。ほら、アイズ、選べよ。雌のお前はどの雄に尻尾振って、どの雄に滅茶苦茶にされてえんだ?」
すでにこのベートと呼ばれる獣人の声しか聞こえない
……なるほど、ファミリアの仲間をこんな風に言われるとこんな風になるんですね……
「黙れババアッ。……じゃあ何か、お前はあのガキどもに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?」
「はっ、そんな筈ねえよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りしてる雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねぇ。
一刻も早くその口を閉じさせたかったので
「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合
「五月蝿いから黙ってください。」
ハジメが持っていたのは真っ赤に染まった唐辛子たっぷりの液体。それはもう飲み物、食べ物の枠を越えていておりそれをベートの口の中へと押し込んだ。
「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ハ、ハジメッ!!!!」
「何してるんですかトキサキさん!!!?」
さっきまで落ち込んで苦しんでいたベルが、どういうわけか驚いている。おぉ、少しは元に戻ったかな?
「トキサキさん、貴方は何をしてしまったのか分かってるんですか!!!」
「五月蝿いワンコに躾です」
「ロキ・ファミリアの第一級冒険者なのですよ!!そこら辺のチンピラとは訳が違う!!」
リューからの説教をされていると苦しんでいたベートが近づいてきて
「そこにいるのかクソステルスが!!!
こそこそせずに文句があるなら直接向かってきたらどうだあぁ!!!」
「待ってください!!!この人には理由が!!!!!」
「知るかあ!!!
俺が誰か分かってやってんだよな!!!だったら出てきやがれ!!!!てめぇが売ってきたケンカだぁ、買ってやるよ!!!!」
完全に自分を見失っているベート。ロキ・ファミリアはベートの暴走に呆れかえっている。しかし主神であるロキは
「なにやってるんやベート。お店の邪魔になるやろうが、やるなら外でやらんか」
「止めないんですかロキ様!!?」
「無理や無理。あのバカ完全に頭に血が上って止められんわ。それに……ステルスの正体が見れるならベートの一人くらい問題ないわ」
何気に酷いことを言っているように聞こえるが、信頼しているからこそ言える言葉とも取れる。
すると厨房から出てきたミアがハジメに向かって
「坊や!!店に迷惑かけんじゃないよ!!!明日から一週間給料なしだからね!!!」
「はい、分かりました。」
「本当に分かってるのかい!!
負けたら一ヶ月タダ働きだよ!!!!!」
「分かりました」
「ミア母さん!!?何を言ってるんですか!!!」
「安心しな。流石に勝ちはしないだろうが